トピックス -企業家倶楽部

2015年08月26日

生活者と企業をつなぐ化粧品業界の旗手/株式会社アイスタイル代表取締役社長兼CEO 吉松徹郎

企業家倶楽部2013年4月号 今、日本を最も面白くする企業家たち


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

吉松徹郎(よしまつ・てつろう)1972年生まれ、茨城県出身。 96 年東京理科大学基礎工学部卒業。同年アンダーセンコンサルティング株式会社(現アクセンチュア)入社。システムの導入や管理会計など、業務改革に関するビジネスモデルの構築を専門領域とした業務に携わる。99 年7 月株式会社アイスタイル設立に参画。同年11月コスメ情報専門サイト「@cosme(アットコスメ)」開設にあたりアンダーセンコンサルティングを退社し、アイスタイル代表取締役社長に就任。



人生は「運と縁と恩」で前進してゆく

 我々アイスタイルは、日本最大の美容系口コミサイトである、「アットコスメ(@cosme)」を中心に事業を展開しています。アットコスメは、美容の総合ポータブルサイトとして、口コミランキングをチェックしたり、オリジナル商品の企画に参加できたりと、美容についてあらゆる角度から様々な情報を提供しており、サイトの登録メンバー数は実に197万人、商品登録数は20万点、総レビュー数は1010万件に及んでいます。化粧品を使うお客様のデータは、化粧品専売店などで高い信頼性と共に集約されているため、最近では多くのお声がかかるようになっています。そこで、今回の上場を機に化粧品専売店以外の所にもユーザーを紹介し、つないでいきたいと考え、手始めにサロンから事業を展開させております。最近では、サロンを紹介する情報サイト「アイスポット(ispot )」を運営していた株式会社サイバースターを子会社化し、プレミアムクーポンという新サービスも開始しました。

 アイスタイルの強みとしては、ユーザーの声を中心に置いている点が最も大きいでしょう。サイトだけ見て下さった方には、「アマゾンやカカクコムと似ていますね」と言われますが、そちらはあくまでもeコマースの会社です。一方で当社ではユーザーの声でeコマースも実際の店舗運営もしています。また美容業界に集中しているので、そこは最大の強みだと考えています。そのような中での2012年3月の東京証券取引所マザーズへの上場は、今迄やってきたことがようやく認められたという意味でも大変嬉しかったです。それと同時に、改めて株主の皆様の期待をひしひしと感じています。

 創業直後の99年5月は、インターネットバブルが盛り上がり始めた頃だったのですが、やはり世の中甘くはなくて、最初の半年間はお金も集めることができず苦労していました。そのような中で年末に3000万円調達できて、これでようやく開発ができて人も集められると思ったのも束の間、2000年4月頃にインターネットバブルがはじけたのです。8月末には債務超過になり資金調達も出来ず、二ヶ月連続で給与を出せないこともありました。日本に100社以上あるベンチャーキャピタルを当時は全部回ったと思います。もうダメかと思った時に、九州のある方が投資先を探しているということで、わらをもつかむ思いでそちらに訪ねました。事業説明の次に禅問答が10時間程続いた後、その方は快く了承してくださり、その場で1億円の小切手をきってくださいました。100名のうち99名がNOといっても、1名くらいは面白いじゃないかと言って下さる方がいる。その方のご尽力で一歩を踏み出す事ができたのです。人生は運と縁と恩と言いますが、やはり、事業を進めていくとそういった要素が重なり合って物事が進んで行くのだと感じました。本当に感謝しています。



ニーズに応えた細かなサービスを

 私たちは、「生活者中心の市場を作る」という理念の下で、お客様の声を集めて反映させることを目的とした会社です。従来のシステムでは、あくまで自社の商品を使っているお客様の声しか集める事ができません。そこで、他社の商品を使っているお客様の声をメーカーやブランドを横断して集まる仕組みが出来たら面白いだろうと思ったことが起業の契機でした。こういった想いから、ポータブルサイトを基盤にした広告事業や、その場に集まってくるお客様に対して必要な物を売るeコマース、さらには実際の店舗事業まで運営するなど、お客様の声を基軸に多様な事業を展開しています。

 品揃えに関してですが、「アットコスメ」のサイト内のように、多種多様な商品が揃っているのがユーザーにとって嬉しいだろうと考え、プランタン銀座やルミネエスト新宿等にて店舗作りをしています。しかし実際、様々な流通面での問題や、メーカーやブランドの意向があって、全部の商品を揃えられるわけではありません。そこで、その商品を売ってはいなくてもサンプルをおき、試供品として使っていただいたり、それが売られている場所を紹介したりしています。

 また近年、ある食品会社がネットの口コミサイトを利用して、自社製品の評価を意図的に高く喧伝した事件がありました。これはいわゆるやらせ問題ですが、当社はこの問題に対し大きく3つの防止策を実施しています。まず1つ目にサイトの中立性と公正性維持のための「アットコスメ宣言」というものを策定し、各メーカーにも協力していただいています。つまり、私たちのサイトにおいてはメーカーの協力のもと、宣伝行為をしないという宣言公示に取り組んでいるのです。2つ目は、口コミを全て人の目でチェックすること。そして3つ目は、意図的な宣伝行為が発生しにくい仕組み作りです。私たちはブランドではなく商品のレビューにしているので、一般の消費者が「B商品はA 商品よりも期待できない」と低評価した時、Bを入れ替える努力をするようメーカーの方に煽っています。そうすることで、新しい市場の開拓や商品のリニューアルができるので、やらせが発生しにくい環境が実現されているのです。

 ちなみにコストの話をすると、食料や飲料は3ー5%程度が広告宣伝費なのに対し、化粧品は20 %近く宣伝費をかけています。その上この業界は成熟産業で、この5年で考えると市場も徐々に小さくなってきています。したがって企業経営者としては、利益を確保するためにはどこかを効率を良くせねばなりません。つまり、広告の効率化が求められる化粧品販売市場では、旧媒体からインターネット広告に転換することが利益の確保につながるのです。しかし私たちの売上のうち、広告収入は1%に達しません。インターネット時代が到来しているにもかかわらず、情報伝達を図るうえで必要なコストはネットへ移行できていないのです。この点が私たちの大きな課題だと捉えていますし、その問題を解決していくことが私たちの目指すべき未来なのだろうと思っています。



キレイになりたい世界中の女性へ

 私自身、30年後どうなっているのだろうと想像します。今と変化しているなら誰が最初の第一歩を踏むのだろうと、よく逆算して考えているようにしています。その時に第一歩になる会社が私たちであれば良いと思いますし、私たちでないのなら、その会社になる確率の高い会社と今から資本と業務の両面で提携を組みたいと考え、努力しています。例えば、2012年12月上旬に東京ビッグサイトにて、1万5000人を集めて行う日本最大のビューティートレンドショーを開催いたしました。注目すべき美容情報を一堂に会すことで、メーカーと消費者とのリアルな接点を創造し、マーケティングできる活動の機会を提供したのです。特にステージショーでは、美を通して世の中の人々の共感を得た日本・アジアで活躍する有名人や、美容だけにとどまらない豪華ライブなど、最新のエンターテインメント要素と美容の流行を盛り込んだ今までにないコンテンツを企画しました。その他にも、実際に化粧品を使用した人から、一年間に投稿された約100万件の口コミを元に集計し、人気を集めた商品を発表する『2012年@cosmeベストコスメ大賞』授賞式も実施しました。イベントは大盛況に終わり、我々としてもこのビューティートレンドショーが日本を代表するものとして確立されるように、今後推進していく所存です。

 海外展開としては、北米、ヨーロッパ、アジアという大きく3つの化粧品市場があるので、その中でも特に美白に着目し、インド以東のアジアに注力しています。日本の化粧品市場が徐々に縮小化している中、現在あらゆるメーカーが世界に向けて進出していこうとしています。今後、私たちも進出しないわけにはいかないですし、海外進出には大きな可能性があると確信しています。「アットコスメ」のインド版や中国版は出来てはいませんが、中国で似た様なサイトを6ー7年前に立ち上げた会社がありました。現在では、その会社に出資して様々な情報をいただいて業務提携をしています。その中であらゆる情報を得たので、今年の5月、香港に「アイスタイル香港」、そして上海にも「アイスタイルチャイナ」という会社をそれぞれ創設しました。日系化粧品メーカーの中国進出及び現地のマーケティングサポート実施を試みる等、これから積極的に海外事業も展開して行くつもりです。

 具体的な事業展開としては、まずは日本の化粧品メーカーが海外に出て行くのを支援するビジネスから始めようと考えており、実際に二人三脚で流通開発や業務提携をしながら、新しいアジアネットワークを作ろうと考えています。これは大きなチャレンジです。今や海外から日本の化粧品を調べようとする際に最初の窓口になっている我々にとっては、今後も注力していきたい最大のポイントです。

 そんな我々が抱く夢は、ユーザーの声を中心に据えつつ、ユーザーの欲しい物が実際に彼らの手元に届くことです。さらに、メーカーとユーザーの両方の声を聞きながら、新しい業界の仕組みを作ること。思えば私は、初めから起業しようと思っていたわけではありませんでした。コンサルティング会社に入社して、当初はコンサルタントとして精進しようと意気込んでいたのです。しかし、ネットと化粧品は上手く掛け合わせられるのではないかと思い立ち、気付けば会社を立ち上げていました。インターネットが出てきて世の中の仕組みやユーザーは変化し、今、メーカーも大きく変化を遂げようとしています。これは日本だけでなく、アジア全体においても同様に言えることでしょう。そのような時代で、新しい社会の仕組みを我々自身で構築していきたいと考えています。



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