トピックス -企業家倶楽部

2007年12月27日

ネットを活用した中小企業のための商社/イー・クラシス代表取締役社長 宮下崇俊

企業家倶楽部2008年2月号 注目企業

ビジネスパーソンのためのポータルサイトを運営

肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

   オフィスに入るなり、20人ほどがいっせいに立ち上がって「いらっしゃいませ!」と挨拶をする。これだけでイー・クラシスがどんな会社かわかるだろう。

   事業内容がビジネスポータルサイト「FIDELI(フィデリ)」(http //fideli.com)によるBtoB事業ということになっているので、IT系の企業ではあるのだが、実際は営業系の企業である。ビジネスポータルサイト「フィデリ」を看板にした営業会社といえばわかりやすい。「フィデリ」は中小企業、自営業者らが利用したくなるようなコンテンツが数多く掲載されている。オフィス用品の予約・購入、フランチャイズビジネスのサービス比較、ビジネスブログのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ビジネスローンの比較・紹介、ビジネスセミナーの案内などである。コンテンツの拡充により無料登録の会員数は約9万人にまで増えた。ビジネスユーザーに役立つ無料サービスを提供することで見込み客を呼び込み、その中からこのサイトを活用したいという人に対して、イー・クラシスの営業社員がサービスを提供する。



営業社員がきめ細かく対応

   今、収益の柱になっているのはビジネスマッチングのサービス。業務の委託先を探している企業と受託企業とを結びつけるサービスだ。特に、税理士に企業を紹介するサービスが伸びている。250名の税理士が参加し、税理士には参加料と毎月の利用料が発生する。いくつかのプランがあり、1社紹介でいくらという形で料金が発生する。企業間の電子商取引会社としてはアリババ・ドット・コムが著名だが、同じBtoBでも手法は異なる。アリババはシステムで企業間取引を実現させるが、フィデリの場合は営業社員がきめ細かく対応する。企業と税理士双方に対して、「このような税理士さんがいますがどうでしょうか」「このような会社がありますがどうでしょうか。アポイントをいれましょうか」といった働きかけをして商談・契約の後押しをする。

「企業と企業をネットのシステムだけで結びつけるのは理論としては可能だが、実際には難しい。実際に人が入ると入らないのとでは、結果が全然違ってきます。やはりネット上だけの取引では不安が残りますから」と社長の宮下崇俊は言う。

   もう一つの収益源は仕入れサポート。中小企業の商品を「世界から仕入れ、世界へ売る」サービスを展開している。現在は売る方が9割で、売り先は中国が中心。上海に現地法人をおき、購入企業を探している。日本の一般雑貨、電子商品、アーケードゲーム(ゲームセンターにあるゲーム機)がよく売れる。日本で型落ちした商品でも中国では喜ばれる。

   2007年12月期は売上高11億円、営業利益1億円、08年12月期は売上高24億円、営業利益3億5000万円を見込む。まさに急成長の途上にある。



高校時代に起業を志す

   社長の宮下崇俊は1973年、山梨県生まれ。高校2年生の頃、同級生が進路を早々に決めていく中で、自分だけはとにかく勝負をしたいと漠然と考えていた。何で勝負をするか。ビジネスで勝負をしようと決めた。東洋大学に進学し、その4年間はビジネスの軍資金と人脈づくりに走り回った。このとき事業計画書を送ったことで、ユニバーサルホーム社長の加藤充らの知己を得た。起業しようと決めていたので就職活動をまったくせず、3年間ほどフリーランスで創業の準備をしていた。企業家の本を舐めるように読んでいたという。

   この頃すでに、インターネットの恩恵を最も受けるのは中小企業だと気づき、現在の企業間取引を支援するビジネスポータルサイトをやりたいと思っていた。 

   99年10月に創業の決断をし、知人・友人ら約20人の資金協力を得て、資本金1640万円を集め、2000年3月に会社をつくった。もう一人の創業メンバーと2人で、最初は取り組みやすいインターネット広告事業から始めた。インターネット広告事業を黒字化したのは3期目。そこでビジネスポータルサイト「フィデリ」をスタートした。インターネット広告事業は「やってみると意外におもしろく、奥が深い」仕事だったという。ただ、急成長は期待できない。なぜならBtoCとBtoBでは市場規模が違う。BtoBの方が圧倒的に大きい。「アリババ・ドット・コムがベンチマークだ」と宮下は思っている。そこで収益の柱であったインターネット広告事業を05年にすべて売却して、ビジネスポータルサイト事業に特化し、現在に至っている。



「理不尽合宿」で新卒教育

   3年前まで6名だった社員が、現在は65名。そして、08年には7 0名の新卒が入ってくる。ただ社員を増やしているだけではない。新卒社員に対して、富士山のふもとで16泊の「理不尽合宿」を行うのである。

   意味もなく巨大な穴を掘らせる。競争をさせ、負けたチームには風呂無しなど、待遇に大きな差をつける。この理不尽さに意味がある。

「社会に出るとすべてが競争。理不尽なことがいっぱいある中でへこたれずに、勝ち続けなければならない。それを昨日まで学生だった人に知らせたい。学生気分を最初の段階で払拭してもらうために信念を持ってやっています」と宮下。最初の段階で強い圧力をかけることで、しっかりした規律ができる。応接室の壁にはこう書いてある。

「厳とした規律の下、最上級の礼を持ち、修羅の如く戦い、一銭の利を食む」。これが同社の理想とする社員像なのである。

「テクテク手当て」や「定年75歳」といったユニーク社内制度もある。テクテク手当ては、会社がある笹塚まで歩いて通えるところに住めば、月2万円から5万円の手当てを与えるもの。通勤時間ほどもったいない時間はない。無駄なことを省きたいという宮下の考えからできた制度で、経費を浮かす意味ではない。けれども悪い面もある。後ろの時間を気にしないでいいから、深夜までだらだら働いてしまう社員が増えたという。「75歳定年」には、死ぬまで一緒に働こうというメッセージを込めている。「今、うちの会社の最年長が4 0歳ですから、まだ35年ありますけど」と宮下は笑う。

   宮下は今後、イー・クラシスをどんな会社にしたいのだろうか。

「ビジネスポータルサイトのモデルを早く大きな収益の柱として完結させたいです。そうして早く別のサービスをやりたい。クラシスとは艦隊という意味。さまざまなビジネスに果敢にチャレンジする艦隊という意味なんです。私が目標とするのはイギリスのバージン・グループです。将来はネット以外のビジネスにチャレンジしたい。新しいビジネスを生み出すことに興味があるんですよ」

   ビジネス意欲が非常に旺盛な期待の若手経営者である。



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