トピックス -企業家倶楽部

2006年12月27日

中途人材と企業を橋渡しするスカウト事業で躍進/レイス社長 藤修

企業家倶楽部2007年2月号 注目企業

転職するべき人が転職していない

肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

   団塊世代が一気に退職する「2007年問題」を目前に控え、人材難にあえぐ企業が我先にと人材採用に走っている。しかし問題がある│いい人材がくるとは限らないのである。単純だが解決が非常に難しいこの問題に、1つの解決策を提示する企業がある。人材のスカウト、新卒採用コンサルティングを手がけるレイスである。

「レイスが行うスカウトこそ、他のどの手法よりもいい人材を獲得できる方法だと思います」。レイスの藤修社長は、そう自信を持って語る。

   レイスのスカウトとはすなわちヘッドハンティングのこと。現在、日本の大学生は「規模・ブランド・安定性」を望み、大手企業に入社する傾向が強い。しかし、5〜10年後、彼らの価値観は「仕事の裁量・いかに社長と近いか・自分の努力が会社の成長に直結するか」に変わる。彼らのような人材に声をかけ、必要な企業に送り込むのが、レイスのスカウトである。

   なぜ転職サイトではなく、スカウトなのか。藤社長は理由をこう語る。「前職で実績をあげ、周りからも信頼されて、人間的に魅力がある人は、そもそも転職市場に出てこない。彼らを採用しようと思ったらスカウトしかない。今の転職市場は、転職すべき人が転職せず、転職すべきでない人が転職している傾向がある」

   ニーズは高い。06年9月期のスカウト事業の売上高は17億円、07年9月期では26億円を見込む。この成長を支える強みは2つある。第一に、企業への提案力である。業績を伸ばしたい上場前の会社には「営業力、開発力に秀でた人材」を、上場準備段階に移行したら「管理体制を敷ける人材」を、上場後は「新規事業立ち上げができる人材」を提案する。「営業力」に優れた人材についても、さらに細分化する。

   例えば、営業マン一人当たりの売上高・営業利益を上げたいマンションデベロッパーの場合、営業マンは「商品力」「営業力」を身につけてなくてはならない。商品力の場合、「仕入れ力」「デザイン力」「施工力」の3つがあればいい。営業力の場合、「営業企画力」「営業マンのスキル」の2つがあれば成績が伸びる。さらに枝分かれして、「営業マンのスキル」も、「採用力」「教育力」の2つがある。

   その会社がどんな問題を抱えていて、何に悩んでいるのか。レイスはこういった問題点を整理し、優先順位の高いところを抽出して、そこにあった優秀な人材をスカウトしてくる。ある会社はレイスがスカウトした営業部門、管理部門の人材が役員となり大活躍。その結果めでたく上場を果たした。

   結果を出すには、レイスが優秀な人材をスカウトする必要がある。それを可能にするレイスの第二の強みが、人材のネットワーク力である。

   レイスは、3年前から完全に分業化している。今までのヘッドハンティング会社は、ヘッドハンターが企業に提案して、自分の人脈をもって人を探すという1人完結型が多かった。それに対してレイスは、営業・提案・リサーチ・スカウトエージェント・アフターフォローにそれぞれ専門部隊がいる。「1人完結型ではなく、産業として確立していきたい」との思いがあったからだ。

   具体的な流れはこうだ。まず、リサーチを手がける子会社が雑誌や新聞を見て優秀で実績を出している人材を選び出し、月間で2000〜3000人に電話でアポイントを申し込む。同時進行的にレイス本体の営業部隊が企業を訪問し、企業側の問題を整理、欲しい人材をリストアップする。そして両者をマッチさせる。この方式で、2005年度は337名、2006年度には447名(来年度の見込みは600名)の移籍を手がけた。トップマネジメント層も手がけるが、企業のニーズが高い30歳前後の人材が事業全体の7割を占める。また、ベンチャーは1人の存在によって大きく変わるため、レイスの顧客にはベンチャー企業が多い。

「新卒の時、自分は何がやりたいのか、それを実現するステージはどこなのかを見極めるのは難しい。5〜10年後、もう一度改めてゆっくりと自分の価値観を考える機会が必要だと思うのです」と藤社長は語る。



顧客の声で生まれたスカウト事業

   レイスの創業者はリクルート出身の中島誠一会長である。藤社長は創業から3ヵ月後にレイス(当時の社名・日本ビジネスタンク)に入社した。きっかけは偶然見たダイレクトメールだ。その時、「自分達で会社をつくっていく」という選択肢に気づいたという。

   当時のレイスの中核は新卒採用の支援業務だった。しかし、新卒採用産業はリクルートの一強全弱状態。そこで、レイスは各企業のニーズに合致した「提案ベース」でリクルートとの差別化を図った。ターゲットは、リクルートお抱えの大企業ではなく、学生に発見されないベンチャー企業。ダイレクトメール、テレマーケティングといった発見率の高い手法を用い、個別コンサルでオーダーメイドの提案を続けたが、同時に毎日のように新規事業開発会議を行った。「松下・ホンダ・ソニーのように、輝いた社員が大勢いる会社をつくりたい」中島会長の持つ強い思いを実現するには、新しく柱となる事業が必要だった。

   そして4年後、誕生したのがスカウト事業だった。「即戦力でいい中途が取れない」という企業の声があまりにも多かったからだ。当時、日本のヘッドハンティング会社は20〜30しかなく、その多くが零細企業。外資系は、一部上場の役員クラスしか手がけていない。ベンチャー企業が欲しがる30歳前後の層はニーズもあり、競合相手もいなかった。

   いざ取り組んでみると、思った以上の反響だった。先般の2007年問題など時代背景の後押しもあり、「企業に営業電話をかけると、2件のうち1件はアポが取れる」という。今やスカウト事業は、レイスの社員約150名のうち100名以上が担当するコア事業へと育った。



めざすはスター選手が揃った会社

   06年9月期のレイスの売上高は22億円、経常利益は1.5億円。07年9月期は人材採用と新規事業への先行投資を図り、売上高は30億円、経常利益は2億円を見込む。新規事業の一つとして考えているのが、「究極のベンチャーキャピタル&インキュベーション」。レイスがスカウトの際に接触する2000〜3000人が企業を離れ、独立した時の応援をするのだ。

   課題は急拡大する組織の人材育成。08年、レイスは新卒採用で50名の獲得をめざしている。営業力に力点が置かれる会社なので、若い世代をいかに教育し、質の高い営業ができるかに勝負がかかっている。藤社長は人材育成への思いをこう語る。

「レイスでは若い人にどんどん任せる風土があります。抜擢人事をして、責任者・リーダーに指名する。失敗したら、またチャレンジすればいい。志ある若い世代が育つために、彼らの活躍を阻害する環境はいけない。彼らが一番伸びる環境を用意することが私の仕事だと思っています」

   藤社長の憧れは松下幸之助氏である。「松下は10 00社以上のグループ会社があった。つまり松下は、何千人というスターを作ったのです。レイスではグループ会社計画を毎年発表していますが、それはグループ会社を多くするよりも、スターを輩出する会社にしたいから。スターを作るという意味で松下を超えたいですね」



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