トピックス -企業家倶楽部

2015年09月14日

無駄なことなんて何一つない/ボヤージュ・グループ代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典

企業家倶楽部2015年10月号 ボヤージュ・グループ特集第3部 編集長インタビュー


   肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

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「全ての経験は見えない線で未来につながっている」。強い志を抱くクルーとともに、「360°スゴイ」と自信を持てる事業を世に送り出す日を夢見て、宇佐美は突き進む。業界の展望を鋭く捉えて変化し続けるボヤージュ・グループ。ネット時代の荒波を行く海賊船の船長、宇佐美進典の経営スタイルと信念を聞いた。( 聞き手は本誌編集長 徳永健一)




ネット業界はまだまだ伸びしろがある

問 商業インターネットが誕生してから約20年、進化を遂げてきました。最近注目しているネットビジネスは何でしょうか。

宇佐美 シェアリングエコノミーは伸びていると感じます。空き部屋を短期で貸出したい・借りたい人をマッチングさせるサービスを提供するairbnb(エアービーアンドビー)や、スマートデバイスを使ったタクシー配車・決済サービスを提供するUber(ウーバー)がその筆頭です。助け合い精神が根底にあるビジネスは昔からありますが、ITが入ったことによってより可能性が広がったと思います。最近だとIoTも話題になっていますが、まだまだこれから盛り上がっていくと考えています。

問 スマホの普及、クラウドといったトレンドがありますね。次に来るトレンドは何でしょうか。

宇佐美 それが分かったら苦労しないで済みますが…すぐにうちが事業化しますよ!(笑)

 今後のトレンドとしては、B2Bの領域におけるサービスが展開してくると思います。例えば、freeeがやっているオンライン上の会計サービスとか、総務・法務・経理・人事などの、社内のバックエンド系の作業をサポートするクラウド系サービスがビジネスになると思います。それに応じて、社内の中の基幹系業務、受注・見積もり・発注などの業務が、オンライン上の取引に変わっていくと思います。

 ネットリサーチの部分であれば、過去のデータを貯めておくサービスなども出てくるでしょう。動画の制作をするとなればネットを通してクリエイターを発注するとか、そういった形で、いろんなB2Bをネット上で済ませるサービスというのは、業界特化型で成長してくると思います。

 秋まで訳があって発表は出来ませんが、今うちでも仕込んでいる新サービスがあります。楽しみにしていてください。



起業を夢見て

問 大学を卒業後、大手コンサルティング会社に就職しましたね。いつ頃から、独立・起業に興味があったのでしょうか。

宇佐美 就職する前から起業は意識していました。19歳の時に学生結婚をして、何故だか当時の私は、世間一般で良い会社とされる企業にはもう入れないだろうなと思った。そうすると、自分で会社を作る方が良いのだという考えに至りました。とはいえ、自分が何をしたいのか、何が出来るのかもわからなかったので、いきなり起業するのは難しい。そこで、起業に一番つながるのはコンサルティング会社だろうと、トーマツコンサルティングに入社しました。

問 そこから、実際に起業するまでにはどんな経緯があったのでしょうか。

宇佐美 そこで約2年システムコンサルティングの仕事をしました。起業に向けて、「戦略」や「マーケティング」を勉強できるだろうと思っていましたが、実際の業務は期待とは少し違っていましたね。しかし今振り返ってみると、あの時の経験がその後の企業家人生に大きく役立っているので、何がどうつながってくるか分かりません。その後、営業を経験する為、社員が3、4人のベンチャーに転職しました。そして、ベンチャー向けの助成金1億円を得て、いよいよ起業をしましたが1度目は仲間を集められずうまくいきませんでした。経験を活かして今一度自分のやりたいベンチャーとは何かを模索し、1999年に今のボヤージュの前身を立ち上げました。



大局を見る経営者

問 創業から15年以上、企業経営をされてきましたね。どんなタイプの企業家だと思いますか。

宇佐美 学生時代を振り返ってみても、自分からトップに立ってやることに積極的なタイプではありませんでした。でも楽しい雰囲気が好きなので、場の盛り上げ役を担ったりしていました。輪の中心にいる調整役、連絡係という感じでしょうか。

 サッカーでいうと点取り屋タイプではないですね。私はディフェンスが得意なタイプです。基本はみんなの後ろで守りつつ、攻めにも参加する。かといってミッドフィールダーほどみんなに指示を出して試合をコントロールするわけではなく、一歩引いた視野から全体を見て大きな声を出すタイプです。

問 なるほど、社員の方に話を聞くと、「自由にやらせてもらえる」と言う方が多い印象を受けました。トップとして何か意識している心構えや信条はありますか。

宇佐美 担当者に任せると言っても程度問題だとは思います。2006年頃に機能別の組織から事業部別に変えて、一人一人が責任持って事業を進めるという形にしてからは、基本的には現場に任せるようにしています。私の仕事は、考える際の材料だしのための質問をすることと前提条件の擦り合わせです。会社が進みたい方向を理解していないまま、担当者が見えているところだけで突き進むと、会社の目指すところからずれてしまう。

 私はマネジメントに特別なスキルがあるとかカリスマ性があるわけではないと思います。事業を創るときにも、そんな私でもできるようなやり方で等身大で背伸びせずにやっていこうと心がけています。王道をやっていくことが結果として早道になると思っています。

 そうすれば、事業部や子会社の社長も私のやり方を参考に出来る。カリスマ性のある人のやり方はその人にしかできないので次につながりませんから。


大局を見る経営者

良いものづくりは内部から

問 2001年から2012年にMBOするまで、ボヤージュはCAのグループ会社でしたね。ご自身もCAの役員をされていたということで、その時に学んだことはありますか。

宇佐美 当時のボヤージュは戦略ありきの経営スタイル、それに対してCAは採用に圧倒的な重きを置いていました。後は文化作りにかける情熱が違いました。例えばCAは、制度・仕組みの中身だけではなく、名前にすごくこだわっていた。実際に使われやすいものでないと意味が無いという理由からです。オフィスの場所も文化の一環として大事にしていました。当時の私にとって、全てが驚きでした。そこから企業文化作りや仕掛けの大切さを意識するようになりましたね。

問 逆に、ボヤージュからCAに持ち込んだものはありますか。

宇佐美 CAで役員になった当初はメディア部門の副統括として入り、2、3年目から技術部門担当になりました。私が技術担当になると決まった時、Ameba関連事業のシステムを全部外注で作っていたということがあって、より良いものづくりのために内製化を目指しました。他の役員は営業出身だったので、「エンジニアの育成やものづくりカルチャーを変えるなら、ボヤージュでの経験がある宇佐美さんが一番適任だ」と任されました。そこで、ボヤージュで使っていたエンジニアの評価や採用体制をCAに持ち込むことにしました。

 みなさん、アウトソースが安いことを理由に外注されることが多いですが、そうするとノウハウがたまらない。ネットサービスの場合は作って終わりではなくて、むしろそこからが勝負になります。作ってからユーザーの状況、事業の戦略上の変化をスピーディーに捉えて改善することが必要です。その際、内部に担当しているエンジニアがいないと、まず見積もりからしてシステムを変えてと、どうしても実行までに時間がかかってしまう。

 それに、外部のエンジニアだと、仕事を発注する側と受託開発する側になってしまって、目的意識などの点で同じ目線にならないのです。受託開発はビジネスの成功ではなく、システム開発の受注額を大きくすることが目標になったりして、プロデューサー・営業が考えているところとのギャップが生じます。内製化して、エンジニアを自社で採用・育成することでそのギャップを埋め、スピード感を兼ね備えたもの作りに取り組めるというわけです。



ローマ帝国に倣え

問 最近では子会社が作られていますね。グループ経営のお手本に1000年続いたローマをあげられていますが、会社の規模が拡大したり、息の長い経営を目指すうえで参考にしている点を教えてください。

宇佐美 ローマ帝国は、言語も文化も制度も異なるいくつもの国・地域が、唯一ローマ市民権という共通の価値観ひとつで結ばれ出来た帝国です。あれだけ国として勢力を拡大しつつも長く続いた理由は、多様性を認めていると同時に、グループとしての共通認識がしっかりしていたのが肝だと分析しています。

 具体的には、インフラを徹底的に整えたこと。ローマには城壁がなく、代わりに道路を作ることによって、なにかあった時に各拠点にいるローマの軍隊がすぐ駆けつけられるようにした。さらに、道を作ることによって人通りが増えて盗賊対策にもなり、商売場所としても使われるようになった。人の交流を盛んにする仕組みを作ることで守りを強くしてきました。

 一方で、ローマはある一定のところで道路の拡大を止めたのです。川を境界線にした国境のところで止めてそれ以上は領土を広げないとか、地形を意識した国境政策をとった。それを見習って、規模が大きくなった暁には、さらに成長させるところと、それ以上成長させない、もしくは事業領域としてここから先は広げないところの見極めをすることが、長く続く秘訣だと思います。

 今の段階では、僕らはまだ帝国というよりもローマ周辺の市民国家、都市国家レベルなので、まだこれからです。



無駄なことは一つもない

問 宇佐美さんの今後の夢はなんですか。

宇佐美 ボヤージュでは「360°スゴイ」という経営理念を掲げていますが、僕らが今手がけているサービス・事業には、まだ「360°スゴイ」と言い切れるものがあるとは思っていません。アドテクであったり、メディアであったり、その他のものも含めて、これこそが!と言えるものをこれから作り上げていきたいです。

問 若い人に向けてメッセージをお願いします。

宇佐美 若い時は、今自分がやっていることが5年後10年後にどう自分のためになるのか、イメージがわかないと思います。私自身も、最初のシステムコンサルティングの仕事は将来やりたいと思っていた起業には結びつかないと思っていた。でも結果として、そこでやっていたことが、実はその2年後ネット業界で仕事をしていく上で非常に役に立ったということがあります。CAのグループ会社だったことも、順調だった事業が一転して赤字の危機を迎えた「ハリケーン」もしかりです。細かいことを言い出したらきりはないけれど、大きな失敗をしたとは思っていません。CAの役員経験がボヤージュにもたらした変化や、ハリケーンから得た学び、そしてそれをきっかけにしたCAからのMBOなど、すべてが良い経験で、今につながっています。

 特に若いうちは、目新しく学ぶことばかりです。自分がやっていることと将来やりたいと思っていることがつながっているように思えなかったとしても、実は見えない線でつながっています。

 なので、まずは自分の身の回りの人、それは上司であったり同じチームの人であったり、もしくは取引先の人であったり、人に対して信頼されるような仕事をして結果を出すことに集中することです。無駄なことなんてありません。目の前の仕事に一生懸命取り組んで、チャンスをつかみ、自分の可能性を広げていって欲しいと思います。



宇佐美進典(うさみ・しんすけ)

1972年愛知県生まれ。96年早稲田大学商学部卒業後、トーマツコンサルティング入社。99年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を創業、取締役COO に就任、2002年代表取締役CEOに就任。05年サイボウズと合弁でcybozu.net を設立、代表取締役CEOに就任。05年サイバーエージェント取締役に就任。14年7月東証マザーズ上場。第16 回企業家賞チャレンジャー賞受賞。



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