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トピックス -企業家倶楽部

2014年01月07日

世界のベンチャー事情/MOVIDA JAPAN代表取締役兼CEO 孫泰蔵

企業家倶楽部2014年1/2月号 孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレス vol.15


   今回は、一週間ほどフィンランドへ足を運びました。世界的に有名な電気通信機器メーカー「ノキア」や世界130カ国で売上1位を独占し、先日ソフトバンクが買収したゲーム会社「スーパーセル」などが生まれた国です。人口は、僅か500万人しかいないにもかかわらず、ビジネスで大きな盛り上がりを見せています。

   他にも隣国のスウェーデン、ロシア、そしてバルト海を挟んでエストニアという国がありますが、この4カ国は現在、国内のIT化が高い水準で進んでいます。ネットを用いた無料通話サービスとして代表的なスカイプもエストニアから生まれたものなのです。   



■北欧流先進的ITを学ぶ

   これらの国々がある北欧では、既に電子政府が出来上がっています。例えば、閣僚会議は資料が全てデータで配布され、参加者はPCやタブレットで閲覧できます。選挙もネットで投票できるようになっており、日本のように街頭演説が行われたり、選挙ポスターが貼られることはありません。税金の申告、納付も全てカード決済で済みます。驚いたのは、交通違反による切符すら、電子端末によって処理されているということです。

   北欧がここまでITに力を入れている背景には、旧ソ連時代、近隣の小国に軍の情報通信機関が密集していたことが挙げられます。後にこれらの国々はソ連から独立し、自分たちの国を立ち上げ、一番の強みであったIT産業を拡大させていったのです。また、これらの国々は、消費税が20%と高い代わりに福祉や教育が一切無料です。国民全員が無償で大学まで進学できるという制度を設けており、高い教育水準を実現しています。

   これらエストニアやフィンランドなどの強みは、国の方向性をすぐにシフトできることにあります。日本のように1億人以上も国民がいると、既存のシステムから抜け出しにくいという欠点があるのです。トップの先進国であるアメリカですら、シリコンバレーがあるカルフォルニア州やニューヨークから離れた地方の街にはITが浸透しておらず、二極化が著しい状況です。

   今、世界の各地で第二、第三のシリコンバレーができつつあると感じています。例として、元々金融街として栄えていたロンドンの東側が挙げられます。地価が安くなったことに伴い、2000社にも及ぶITベンチャーの集積地にとなり、活気あふれる地域となっているのです。他に旧東ベルリン地域、ストックホルム、モスクワにも同様の集積地が生まれつつあります。

   日本は現在、ITベンチャーが1000社ほど存在しますが、現状に満足せず質と量を増やし、アジアのシリコンバレーとならなければいけません。カルフォルニア州は、ヒューレット・パッカードの時代から世代が二巡三巡しており、IT文化が熟成されています。反面、日本は、未だ次の世代を育てる一巡目を終えたに過ぎず、後れを取っています。しかし3年前に比べると、大学でも頻繁にビジネスプランコンテストが開催されるようになりました。

   今、私が注目している「トリガー」というビジネスコンテストがあります。毎年、様々な大学から学生が参加して開催されているイベントです。昨年私自身、壇上で講演を行ったのですが、一度に1000人ほど学生が集まっていました。学生たちの間に日々起業意識が芽生え始めているのを感じます。



■北欧のベンチャーが集うイベント「スラッシュ」

   今回、北欧で、世界から数多くのITベンチャーが集う「スラッシュ」という講演イベントに参加させていただきました。2008年から毎年開かれており、フィンランド政府主催のもと、NPOが運営を行い3日間開催されます。参加者には、シリコンバレーの有名なITベンチャー企業家をはじめ、スカイプの創業者ニクラス・ゼンストローム氏や、スーパーセルのCEOイルッカ・パーナネン氏、日本からはディー・エヌ・エーの南場智子さんと私が招かれました。会場は、廃工場を丸ごと改装して作られた、まるでコンサート会場のような空間です。来場者は、7500人にも及びます。数々の著名な投資家や経営者が講演するなか、私も「ベンチャーの生態系を創る」と想いを語らせてもらいました。

   日本にはまだ、フィンランドのように政府が主催してベンチャーを盛り上げていこうという感覚がありません。新たなベンチャーは大企業から生まれ出てくるものだと思っているからです。また、若い人たちの政治に対する関心が薄い為、ベンチャー支援を掲げることは票集めとして有効ではないと考えている政治家が多いという事実があります。

   また「法案に書かれていないグレーゾーンは、原則禁止」とする日本の規制体系は早急に改善するべきです。法の縛りによってモノやサービスが作れない環境に置かれている企業はたくさん存在します。例えば、安価でデザインにも長けた電子車いすを開発したベンチャーが、既存の車いすと大きさや持ち手が異なることから発売禁止を命じられたケースがありました。最近では、パナソニックから冷蔵庫や洗濯機など家電をスマホで操作できるシステムが開発されましたが、国から「スマートフォン端末で家電を操作してはいけない」という規制がかかり、商品発売を取り下げざるを得なかったという事件もあります。このような規制体系では誰も得をしません。新しいモノが生まれず損ばかり重なります。国は真摯にこの問題へ向き合っていかなければなりません。



■アリババ上場で都市が生まれる

   ソフトバンクが36・7%出資をしている中国のeコマース最大手アリババは、創業以来右肩上がりの成長を続けています。アリババは、電子商取引以外に、ショッピングモールや、オークションなどを始めており、これらすべてのサービスにおける取扱高を算出すると2012年度時点で16兆円にものぼります。これは、アマゾンの6.1兆円、アメリカ通信販売大手のイーベイの7.5兆円を大きく上回り、現在世界で一位のeコマースとなっています。注目すべきは、脅威ともいえる伸び率であり、昨年の四半期では220億円だった純利益が13年の1?3月には、660億円を突破。僅か1年で3倍の成果を出しているのです。アリババは中国国内の小荷物配達シェアの7割を占めており、業界パートナーと一緒に都市内部に、鉄道、空港、高速道路を完備、国内どこでも24時間以内に物が届けられるような最適な物流網の構築を目指すそうです。今後の動きに注目していきたいです。




Profile 孫 泰蔵(そん・たいぞう)

1972 年、福岡県西新生まれ。佐賀県鳥栖育ち。96 年、東京大学在学中に、日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のコンテンツ開発のリーダーとしてプロジェクトを総括。その後、数々のインターネットベンチャーを立ち上げ、日本のネット業界の活性化に貢献。2009年、MOVIDA JAPAN 株式会社を設立。これまでの成功体験と失敗経験を活かしてベンチャー企業の創業・育成支援を手がける。現在、若手ベンチャーへの支援プログラム、Seed Acceleration Program を推進。



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