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トピックス -企業家倶楽部

2013年11月04日

物事を考える力を持ち真に自立した大人になれ/日本経済新聞社参与 吉村久夫

企業家倶楽部2013年12月号 著者に聞く





21世紀の世界における落とし穴とは何か。人々はそれに対応してどう生きるべきか。その中で、日本人の果たすべき役割とは何か。日本経済新聞社に記者として入社し、日経ビジネス編集長、日経BP社社長などを経て、現在は日本経済新聞社参与を務めるベテラン・ジャーナリストが、現代に潜む問題の本質をえぐる。

『二十一世紀の落とし穴』
吉村久夫 著 企業家倶楽部(740円+税)



指導力不足の日本

問 ご著書では日本の抱える問題が浮き彫りにされています。特に改善すべき部分はどこでしょうか。

吉村 まずは政府の統治における指導力です。国家を率いるだけの社会常識を備えているかが疑わしい。日本語の読めない政治家は論外として、政治とは何かという基本的な認識や、自分が政治を通して何がしたいのかという志が見えてきません。政治家という職業が家業になってしまったのです。政治が一族郎党の利権になっているため、地縁・血縁のある人間を押し立てることに躍起になっています。

問 そうした癒着体質は制度で変えられますか。

吉村 もちろん可能です。例えば3世代以上は同じ選挙区から立候補してはいけないなど、利権を継承できないようにする。アメリカの大統領も3選はできません。そうした歯止めを作ればいいのです。



社会全体で教育を

問 どのようにすればリーダーシップを備えた人材が育つのでしょうか。

吉村 リーダーシップ以前に、有権者の政治家を選択する能力を高めなければいけません。すなわち、自立心ある大人を増やす必要がある。有権者の識見を高めるためには、子供の時からの教育が重要となります。

   教育は学校任せにせず、社会全体で行うべきです。もちろん学校は教育の専門機関ですが、限界があります。今は、家庭で子供の教育ができておらず、全て学校任せなのです。それにも関わらず、学校の方針に不満があると、すぐに先生を吊るし上げる。これでは子供も先生を尊敬しません。

   学校と家庭とが相まって人を育てていく。隣近所の子供が間違ったことをしていたら注意できるような社会環境が望ましい形です。会津藩の教育方法を調べると、制度の完成度もさることながら、家庭環境もしっかりしていたことが伺えます。有名な「什の掟」の最後を締める「ならぬことはならぬものです」という言葉は、世の中にはやってはいけないことがあると端的に教え込んでいるのです。

問 現代では個人主義が広まっていますからね。

吉村 過度な個人主義は間違っています。人間は一人では生きられません。社会は集団で作る組織であり、皆で考えるべき事柄もあるのです。他人に干渉しすぎるのも考えものですが、人間関係を無機質化してはいけません。何事もバランスが肝要です。

   例えば、自由と規律。やりたいことを自由にできる社会は大切で尊い。そこから本当の創意工夫が生まれます。しかし、放任主義という理解では世の中が収まりません。独占禁止法や公正取引委員会があるように、自由と言ってもあくまで基本的なルールの上に成り立っています。自由を放縦と勘違いして勝手をする人は、社会から必ず糾弾されます。

   権利と義務も同じ。権利を主張できるのは義務を果たしている者だけです。自由と規律、権利と義務。現在はそれらの均衡が崩れており、そのバランス感覚を理解できる自立した大人を教育しなければなりません。



学校教育制度を見直せ

問 教育と言っても様々あります。

吉村 教育の中でも重要なのは基礎教育、特に幼児教育です。ソニーを創業した井深大氏も『幼稚園では遅すぎる』という本を書いています。3歳までに人間の脳の配線は決まると言われ、「三つ子の魂百まで」という諺もあながち迷信ではないのです。幼児のうちにしっかりと躾をすれば、立派な大人になれる可能性も高まります。

問 学校教育についてはどうお考えですか。

吉村 私は現行の6・3・3制を4・4・4制に改めるべきだと考えています。最初の4年間は読み・書き・そろばんを徹底すればいい。次の4年間で将来の専門分野に進むための、もう少し幅広い知識を与え、高校になると大学に入るための本格的な教育を施す。例えば歴史教育では、4年間で郷土の歴史、次の4年で日本史、最後の4年で世界史を教えるというように、徐々に視野を広げていく。小中高で日本史を教え続けるなど無駄です。

 さらに、高校卒業と同時に1年間インターンシップとして企業で働いたり、社会奉仕をしたりする義務を課すといいでしょう。そして、インターンシップや社会奉仕の上での仕事ぶり、意欲などを人事が評価し、大学入試の点数に加える。世の中のことが少しは分かり、自分の進みたい方向性が定まった上で進学すれば、有意義な大学生活が送れるのではないでしょうか。

 大学の4年間では主に人文科学を教えます。様々な古典を読ませ、ものの考え方を訓練するのです。知識の形成だけではなく、人間としてバランスの取れた人格形成の場にすることが肝要です。

 本当に専門分野を極めたい人は、大学院や他学部への進学と言った選択肢があります。お金が無ければ、一度社会に出て稼いでから再び進学するのもいいでしょう。一旦社会に出た上で、学びたいこと再認識してからもう一度大学に入った方が、モチベーションも高く、知識の習得も早まるでしょうし、有意義だと思います。



結果ではなく機会の平等を

問 日本では大学に行く意義を深く考えていない人が多いですね。

吉村 人が行くから自分も行くという横並び意識が強すぎます。我が道を行く、志の持てるような教育をしなければいけません。親も親で、進学率の高さ、一流企業への就職率ばかりに囚われているのです。今の社会は均質化しすぎていて、成功者は足を引っ張られてしまう。むしろ、成功者を尊敬する風土がなければいけません。

 もちろん平等は必要ですが、それはチャンスの平等であり、結果の平等ではありません。日本は最も成功した社会主義国家だという冗談がありますが、結果の平等ばかり求めて、向上心溢れる人たちのやる気を削いでは、社会全体が停滞してしまいます。政府がやるべきは、システムによって機会の均等を生み出すことであり、お金をばらまくことでは無いのです。

問 確かに、学校教育においても過度に結果の平等が追求されているように感じます。吉村 今の世の中は平等を求める余り、人間一人ひとりの姿かたちが違うのと同様に能力も人それぞれだという事実を認めようとしていないのです。学業成績が優秀な人、スポーツ万能な人、誰もが優れた才能を持っていますから、教育現場においてもそれを評価すればいい。隣の芝生ばかり見て羨んでいても何の得にもなりません。それが分かるような大人を社会全体で育まなければならないのです。

 国民全体がバランス感覚を持った自立ある大人になる必要があります。物事の基本的な考え方を皆が持たなければなりません。自分は何のために生まれてきたのか。人間とは何か。社会とは何か。そうした思考を巡らし、深く持論を醸成させられるような人間になることが求められているのです。



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