トピックス -企業家倶楽部

2015年10月16日

軍事情報後進国から脱却せよ/ハドソン研究所首席研究員日高義樹 氏 

企業家倶楽部2015年10月号 著者に聞く


日本人が知らない「アジア核戦争」の危機』

日高義樹 著 PHP研究所(1600円+税)

海軍力増強、人民元の国際化に失敗した中国の次の手は核戦争とサイバー戦争。アジアに迫る危機を防ぐために日本はどうするべきか。ハドソン研究所首席研究員である筆者、日高義樹氏の取材に基づいた事実から考える。



核を使う中国

問 アジア核戦争の危機とおっしゃいますが、中国は核兵器を使いますか。

日高 中国の海軍力増強の失敗は明らかとなってしまいました。大規模潜水艦部隊を西太平洋に展開したという中国側の発表は事実ではないとアメリカの調査で判明し、ロシアから買い付けた中古空母の修理は不可能、新たに建造する技術も持っていません。通常戦力では中国はアメリカに敗北していると言えるでしょう。

 そこで中国は核を「使える武器」として開発しました。「通常戦力で勝てなければ核戦力を使う」という基本戦術は毛沢東の時代から根付いていたようです。

問 冷戦時代のソ連も核は使いませんでした。

日高 他国の軍事戦略と大きく異なり、中国では核戦略と通常戦略が明確に区別されていません。一般にこの二つは区別され、従事する部隊も異なります。旧ソ連も同様です。なにより、アメリカも旧ソ連も核戦争は避けようとしていました。しかし、中国は核戦争も辞さないとしています。

 また、アメリカとソ連は欧州の考え方をするので、相手の手の内はわかるのです。アジアの国々ではお互いの考えがわかっていません。 アメリカのメディアでは米中対立が第二の冷戦と呼ばれることもありますが、米ソ冷戦とは事情が全く異なります。「核を持たない国には使わない」と外交上は言っていますが、実際どうなるかはわかりません。裏を返せば核を持っている国、例えばアメリカには使う意思があるということです。既に大陸間弾道ミサイルを開発、アメリカ本土を攻撃することは可能になりました。

問 しかし、中国は石油使用量の60%を輸入に頼っており、安い製品を輸出しています。核を使い、孤立してしまっては経済が止まってしまうのではないですか。

日高 経済的、政治的要求を通すために核保有国であることを利用するでしょう。海軍力の増強、人民元の国際通貨化に失敗した今や、核の力に頼るしかないはずです。かつてアメリカが核による抑止力をもって世界の大国になったことを見て、逆算的に核の利用を考えていたことでしょう。



アメリカの核の傘はなくなった

問 アメリカで大統領選が盛り上がりを見せていますね。

日高 ヒラリー・クリントンが勝つことがアメリカにとっては良いかもしれませんが、今すぐに選挙を行えばジェブ・ブッシュが勝つでしょう。

 また、アメリカの選挙は州ごとなので、アメリカ全体の人気の度合いは結果に反映されるとは限りません。国民を選挙へ駆り出せるかどうかも重要です。

問 アメリカは日本を守ってくれますか。

日高 中国が核を持った日には、アメリカの核の傘はなくなったことを認識すべきです。アメリカは核を持つ中国と戦争することは考えていません。東京が攻撃を受けたとしても、日本を助ければそれを口実にニューヨークやワシントンが中国の核に狙われるかもしれないですよね。本当にアメリカが本土を犠牲にしてまで助けると思いますか。もはや日米安全保障条約は意味を成していません。

問 では、日本も核をもって対抗しますか。

日高 核は抑止力の象徴であり、安上がりです。高濃度ウランも手に入りやすくなり、簡単に作ることができます。核は使えない兵器だと言われることもあります。が、持っていて使わないことと持っていなくて使えないことには雲泥の差があることも事実です。

 しかし、抑止力とは核だけではありません。中国の沿岸部の主要工業地域を全て破壊する軍事力を持つことも抑止力となるでしょう。化学兵器や生物兵器もあります。中国の不法行為と断固として戦うのであれば、なおさら必要です。

問 軍事力を持つことを国民は反対するでしょうね。戦争は嫌なものです。

日高 戦争は孤立して存在することはありません。外交交渉が行き詰まり、戦争になるのです。戦争は政治と切り離せません。

問 日本では戦争について論じられませんね。

日高 戦争のことを具体的に話し合うことは戦争を認めてしまうことになるという考え方があります。日本では武力を放棄し、戦争はないという前提がありますから、ないものについては議論できません。



ひとりよがりの集団的自衛権

問 安倍首相は集団的自衛権を持とうとしていますね。

日高 日本が軍事的責任について言及したことは評価できますが、見当違いです。まず集団的自衛権という考えは冷戦時代のものです。アメリカが日本に望んでいることはサイバー攻撃に対する協力だと米国国防長官も記者会見で述べています。戦闘行為でもホルムズ海峡での機雷の撤去作業でもありません。日本は冷戦までの安全保障の論理で未だに考えているのです。

問 かつては日米合同で機雷除去作業も行いましたが。

日高 そのときはアメリカの技術が足りず、日本の技術が必要だったためです。今はアメリカの技術も進み、レーザーを利用して機雷を探知、破壊する技術があります。日本の力は必要ありません。

問 日本が海外の戦争に自衛隊を派遣することになってしまうのでしょうか。

日高 安倍首相はアメリカを助けに行くと言いますが、共同戦線を組むことは簡単なことではありません。戦闘の指揮はアメリカ海軍がとっていることでしょう。しかし海上自衛隊員の生命のことを考えれば海上自衛隊には日本の司令官が命令しなければなりません。指揮系統が2つあっては前線が混乱してしまいます。長らくアメリカに軍事を委ねていた日本側には軍事情勢に関する基本的な理解がないのが現状です。また、武器を作る技術はあっても実際に配備されていないものは使えません。いたずらに自衛隊の危険が増すだけです。

問 集団的自衛権の考えは自衛隊から出されたものではないのですか。

日高 自衛隊も集団的自衛権には反対でしょう。戦争を知らない外務省か内局から出されたものだと思われます。

問 日本はどうするべきですか。

日高 抑止力をもって戦争が始まる前に介入するしかありません。しかし、有事が起こらなければ変わらないでしょう。そして起こってからでは遅すぎるというジレンマに陥っています。核戦争を防ぐ現実的な戦略を打ち出してほしいものですね。



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