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トピックス -ビッグベンチャー

2013年08月27日

株主総会における取締役の説明義務/クレア法律事務所弁護士 佐藤未央

企業家倶楽部2013年10月号 ベンチャー企業の法務心得 vol.22


 本件は、Y社の株主Xが、平成23年6月28日開催のY社定時株主総会(本件株主総会)にて可決された決議について、取締役に説明義務違反があり、決議の方法が法令に違反し、又は著しく不公正であると主張して、会社法831条1項1号に基づき、その取消しを求めた事案です。

 本件株主総会において、Xは、まず、Y社の監査役Bが長年にわたってY社工場で不法投棄を行っているとして、①監査役Bに対する損害賠償責任、②監査役Bの監査役としての地位への影響、③監査役Bによる不法投棄が発覚した後のY社役員の責任、④Y社のコンプライアンスについてのY社の考えについて質問しました。

 これに対し、Y社の社長Aは、Y社工場の件は不法投棄に当たらず、Xの質問は前提を欠くため回答義務はないとした上で、不法投棄該当性については、所管行政庁に事実関係を報告し、同庁との協議に基づき調査を行った結果、周辺環境への影響がないことを確認しており、今後は、同庁からの指導に基づき、定期的に水質調査を実施し、適切に対処する予定であると説明しました。

 次いで、Xは、①Y社工場に関して現時点で確認できている投棄及び不法投棄の事実を明らかにし、②検討している不法投棄の処理方法及び費用、③処理が決算に与える影響等を明らかにするよう求めました。

 これに対しては、社長Aは、重ねてY社工場の件は不法投棄に当たらないとした上で、本件は所管行政庁の指導の下で対処したと説明するとともに、処理費用については不法投棄をしたとの前提を欠いており回答の必要はないと説明しています。

 裁判所は、「取締役等は、会社法314条に基づき、株主総会において、決議事項の内容、株主の質問事項と当該決議事項との関連性の程度、質問がされるまでに行われた説明の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて、質問株主が保有する資料等も総合的に考慮して、平均的な株主が議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明をする義務を負う」としました。

 本件については、社長Aの説明は、不法投棄に当たらないとする根拠等を明らかにしていない点でいささか不十分ではあるものの、Xの質問が不法投棄であることを前提としたものであった点に照らすと、各質問について、不法投棄であることを否定し、質問に回答する必要がないとした上で、所管行政庁への報告・調査の事実や今後の対策を説明したことが不合理であったと認めることはできないとしました。

 また、平均的な株主も、社長Aの説明により、その時点で廃棄物の撤去は求められていないこと、今後も所管行政庁の指導に従って定期的な水質調査を実施するなどの対応をとる予定であることを理解することができ、本件株主総会に上程された議案との関係でも、議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明があったものと認められるとしました。

 そして、Xの質問に対する社長Aの説明が、会社法314条が定める説明義務に違反したものと認めることはできないとして、Xの請求を棄却しています。

 本件は株主総会決議取消事由はないと判断されましたが、取締役としては、株主総会における株主からの質問には丁寧に回答することを心掛けるとともに、どの程度回答すれば説明義務を果たしたことになるのについて十分理解しておくことが重要です。


※参考にした裁判例:東京地裁平成24年7月19日判決



クレア法律事務所弁護士 佐藤未央

システム開発系の企業におけるシステムエンジニアとしての8年間の勤務を経た後、弁護士となる。現在は、主に、ベンチャー企業に対する会社法・金融商品取引法を中心とした法的アドバイスの実施や各種契約書の作成、労働問題などを担当している。平成19年弁護士登録。東京弁護士会所属。



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