トピックス -企業家倶楽部

2015年10月20日

携帯電話業界のレクサスショップを目指す/テレックス関西 代表取締役 上村計明

企業家倶楽部2015年10月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.16




リピーターより口コミ戦略

「お父さん、スマートフォンにしたからには将棋アプリですよ。これでお孫さんと楽しく遊べるでしょう?」「今の電車乗換アプリは高性能です。駅構内まで手に取るようにわかります」

 初めてスマホに触れるお年寄り、営業で移動することの多いビジネスマン、各顧客のニーズを汲み取り、基本的な操作方法から有用なアプリまで寄り添って接客を行うスタイルで大躍進を遂げている企業がある。

 テレックス関西。昨年売上高100億円を達成、進化の早い携帯電話業界において、今やその名を知らぬ者はいないとまで言われる携帯販売代理店である。

 近年、スマートフォンの普及や技術の革新的な進歩によって激化する携帯キャリア3社の縄張り争いは、これまでに無い局面を迎えている。携帯電話は日本中どこで購入しても同じ製品であり、価格帯も変わらないため、差別化を図るのは難しい。

 そんな中、同社は1995年の創業当時より、アルバイトや派遣は一切雇わず、徹底的な社員教育をくぐり抜けたスキルの高い社員のみで運営を行い、この過酷な市場を独走してきた。

 携帯販売代理店の他にテレックス関西が柱として構えるのが、他社の販売店に従業員を派遣して同社の販売の現場で培われた質の高い従業員教育メソッドを応用する教育事業。自社の接客が圧倒的優位性を保っているからこそ成り立つこのビジネスは、社外からの評判も高い。

 そんなテレックス関西の社長、上村計明は「お客様は、新しい携帯電話を買ったら誰かに見せたいもの。そんな時に自慢できるようなアプリや機能をちょっとアドバイスするだけで喜んでいただけます」と微笑む。

 テレックス関西の店舗で購入した顧客は、自身の感動体験を家族や友人に伝えるため、新規顧客の獲得に繋がるケースが多い。「ちょっとした感動」によって「顧客が顧客を呼ぶ」、この口コミ戦略。一般的に携帯電話の買い替え周期は2年だが、この戦略でそうした周期に振り回されることのない契約数を達成してきた。



人ならではの付加価値を加える

 現在、スマートフォン市場で流通しているアプリ数は100万を優に超える。しかし、あまりにも数が多すぎて、何から手を付けていいのか分からないという人は依然として多い。そこでテレックス関西では、顧客の世代やニーズに合わせた提案を行うことで、顧客目線の付加価値を提供している。

 例えば、30代のファミリー層には無料の計算アプリ。空いた時間で子どもに遊ばせれば、勉強しながら家族のコミュニケーションも生まれるだろう。もちろん、アプリの紹介をしたからといってマージンが入るわけではない。しかし、使い方を提案することで、「スマホは私には難しい」と不安を抱く顧客を繋ぎ止めることができる。

 上村がこの接客スタイルに至ったのは、創業当時の出来事がきっかけである。店頭で接客をしていた時のこと。携帯電話の使い方がよく分からないと悩む顧客の着信音を好きな歌手の曲に変更すると、心の底から喜ばれたのだ。

「携帯電話の機能に無頓着な方であればあるほど、少しの驚きが心を動かします。そうした小さなニーズを拾っていくことで、お客様はファンになって下さるのです」

 このように、モノの先にあるコトを意識してもらうことができるのは、人による接客ならではの強み。これを最大の付加価値とし、テレックス関西は伸び続けている。



ESこそCSの源泉

 顧客に接客で感動を与えるためには、従業員の販売意欲や販売スキルが求められる。そのためには一昼一夜の研修ではなく、半年や一年といった長期的な従業員教育が必要となり、コストも膨大になる。 そのためテレックス関西では、宣伝広告を最小限に抑えている。結果、資金を従業員に還元することができ、最終的にはES(従業員満足度)がCS(顧客満足度)に繋がるのだ。

「ESを上げるためには、従業員の声を聴けるところまで聴くことが重要」と説く上村。テレックス関西は、社内のネットワークシステムの一つに「社長行き」のボックスを設置し、従業員なら誰でも社長に意見を言うことができる制度を導入している。

「初めは不満が9割で、見たくもありませんでした」と上村は苦笑するが、その要因を一つひとつ従業員と話し合いながら解消していくうち、徐々に不満は減少。現在では感謝や企画の提案といった投書が多数を占めるようになった。

 無論、社員一人ひとりとの対話も怠らない。定期的に従業員20?30人を引き連れて山登りやクルージングに出掛け、面談も積極的に実施している。個人の特性を知り、しっかりと目配りすることで、常に従業員のモチベーションが維持されるよう配慮しているのである。

「従業員には、楽しむだけでなく何かを得て帰ってほしい」と語る上村。社員に対して、とことん同じ目線で接することを忘れない。



新卒3年間で人生は決まる

 テレックス関西では3年前より新卒採用を実施している。初めの1?2年は、新卒の従業員を丁重に指導した結果、いざ販売の現場に立った時に尻込みする社員ばかりになってしまった。その失敗を踏まえ、上村は今年度入社の新卒から、心を鬼にして徹底的に教育した。入社後初めての10日間の研修は、精神的にも肉体的にも厳しい試練である。

 しかし、その試練を経ると、辛さが達成感に変わり、新卒同士の絆やチームワークもより強固なものとなった。販売の現場でも研修での試練は自信となり、従業員の活力源として機能し始めたのだ。

 上村は「新卒3年間で人生は決まる」と言い切る。辛い状況でも結果的には自分の糧になる。「若いうちから志を持っていれば、高い意識を保ったまま生きていくことができる。逆に、新卒の時点で迷いがあれば、その先には悩みが尽きない人生が待っている」。3年間でどこまで自分のスキルを磨けるかは、人生の豊かさを決める重要な要素だ。



売り上げ1000億円が目標


 携帯電話業界は、まさに数字がモノを言う世界である。しかし上村は、そのような状況だからこそ数字だけを追うのではなく、顧客満足を追求すべきだと訴える。クレームの大半が、「買うつもりの無い商品を買わされた」という内容であることからも分かる通り、必死で数字ばかり追っている従業員から商品を買いたい顧客はいない。上村が目指すのは、顧客に喜んでもらえるような「ワクワク感」のある接客である。

「価値の訴求をしっかりと行い、お客様には電話とメールしかしていなかった昨日からもう一歩進んで、新しい世界に踏み出してもらいたい」

 そんな上村の未来の展望は、安売り合戦ではなく、営業の原点に立ち返って顧客と真摯に向き合いながら1000億円の売り上げを出すことである。目指すのは、言わば「携帯電話業界のレクサスショップ」。コンシェルジュのように顧客に寄り添い、ホスピタリティ溢れる接客を今後も実現させるためには、従業員の「ワクワク感」も欠かせない。

「働きやすい環境をしっかりと整備し、企業としての理念をより従業員に浸透させて、会社一丸となって突き進んでいきたい」と語る上村。高次元な接客とブレない顧客目線で快進撃を続けるテレックス関西から、今後も目が離せない。



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