トピックス -企業家倶楽部

2015年10月27日

オンリーワンを創り続け女性が幸せに生きる社会に貢献/ランクアップの21世紀戦略

企業家倶楽部2015年12月号 ランクアップ特集第1部


   肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

   

女性が幸せに生きる社会を創るという理念を掲げ、実感と無添加をモットーとした化粧品で躍進するランクアップ。創業10年で、売上高75億円、経常利益8億5000万円(2015年9月期見込)を達成、急成長を遂げる。率いる女性ベンチャーの岩崎裕美子は、広告代理店からの転身組。自らの肌荒れ解決を目的に、効果が実感できる製品に徹底してこだわる。女性を活用、残業ゼロで右肩上がりの成長を続けるランクアップの勝因はどこにあるのか。(文中敬称略)





 2015年10月2日、眩しいほどの秋晴れが輝くこの日、東京・銀座のイベント会場に、多くの女性が次々と集まってきた。13時きっかりに、白いスーツに身を包んだスラリとした美人が、中央に進み出た。そして明るい声で語りだした。

「皆さんランクアップにようこそ、入社内定おめでとうございます。私たちは化粧品業界のベンチャーです」

 会場は静まり返り、社長の岩崎裕美子の話に耳を傾ける。2016年の入社内定式が開催されているのだ。華やかな会場には社員43名と、内定者3名が一堂に会す。

「ランクアップは私と取締役の日髙由紀子が理想の化粧品を目指して起こした会社です。最初はなかなかうまくいかず、故郷の北海道に帰ろうかと思ったこともありました。それが今年10周年を迎え、こんなに多くの社員に囲まれる会社になったことを嬉しく思います。諦めずに頑張ってきてよかった。当社は今年、売上75億円を達成します。社員一人当たりの売上げが1億円あれば優良企業といわれますが、当社ははるかに上を行っています」

 
 誇らしげな岩崎のことばに、集まった社員たちの顔には“一緒に頑張ってきた” という満足の表情が浮かぶ。岩崎はさらに続ける。

「皆さんが入社したらたくさんの仕事を任せたい。小さな会社ですが、やりたいことができる会社です。3人に期待しているのは、1期生、2期生にない個性を発揮し、いい意味で会社をかき回して欲しいということです。そして先輩社員を大いに刺激していただきたい。皆さん、私たちの会社を選んでくれてありがとう。一緒に仕事ができることを楽しみにしています」。岩崎の温かくもパワフルな挨拶に、会場には高揚感が漂う。

 続いて、内定証書の授与である。リクルート姿に身を包んだ学生一人ずつに、岩崎から内定証書が手渡される。と、社長の岩崎が声を挙げた。「ごめんなさい。名前を読み間違えたのでやり直します!」。緊張感が漂っていた会場は一瞬で和み、笑い声が響く。そしていつものアットホームな雰囲気に変化した。



未来を創る新人パワー

 続いて内定者一人ひとりのプレゼンが始まった。それはこの会社の未来を示唆する力強い内容であった。

 1番バッターはストリートダンスが得意という北條咲綺である。緊張した面持ちで、マイクを握ると語りだした。「私がランクアップを選んだのは、その理念です。挑戦する心、ここに賛同したからです。特技はストリートダンスです。その映像をご覧下さい」。しかし、なかなか映像が上手く出ない。すると彼女はやおら、ストリートダンスを踊りだした。ほんの10秒だが、会場には驚きと感嘆の声が漏れた。「スゴイ!カッコイイ!」

 2番目は東北出身の、食べることもつくることも大好きという佐々木春佳である。震災で全てを無くした東北大学のヨット部のマネージャーとして、50人分の食事をつくってきたという。画面には彼女がつくった料理が何種類も映し出される。会場からはスゴイ!の声。「私は人の役に立つ仕事がしたい、ランクアップでは人の役に立つ事業を手がけたい」と結んだ。

 そして3人目も個性的だ。大学院を中退、既に大手予備校で働いている野中真夏である。新しいことに挑戦するのが好きで、既に予備校では京都支社を立ち上げ、成功に導いたという。「ランクアップは新人でも新規事業を任せてもらえる。だから私は教育の分野で新規事業を立ち上げたい」。力強い宣言に会場からは驚きと感嘆の声が響く。

 初々しくも力強い内定者の発表は、どの人も個性豊かで、社員たちの心を鷲づかみにした。この3人が新しいランクアップの力になってくれる。会場に集まった誰もが信じた。そして自分も負けてはいられない。そんなやる気スイッチに火が灯った内定式となった。

 一番前の席で3人のプレゼンを聴いていた岩崎は、満面の笑みを浮かべうなずいた。今年もチャレンジングで個性的な3人を採用できた。そして確信した。必ずや彼女たちが切磋琢磨し、未来のランクアップを創ってくれると。



化粧品業界の新常識

 ランクアップという会社は知らないが、マナラのホットクレンジングゲルなら御存知の方もいるであろう。今や累計販売個数500万個という、大ヒット商品に成長した。通信販売でここまで人気商品となっているのにはワケがある。

 そこには岩崎の強いポリシーがある。無添加でしかも効果が実感できない製品は売らないという方針だ。これは大変な決意である。それだけ自信がある製品ということである。本来なら美容ドリンク等サプリメントも手掛けたいところだが、効果が測定できないので販売しないと語る。徹底しているのだ。その誠実さがお客の共感を生み、今や定期購入会員は20万人に及ぶ。

 そこには時代背景もある。「今は効果が実感できる良い製品であれば、会社の大小は関係なくお客様が選んでくれる」と岩崎。無名の弱小企業が手がけるホットクレンジングゲルがここまでヒット製品になったのは、時代のあと押しがあったともいえる。

「インターネット時代の今は、お客様がブランドを創る時代」と日本最大の美容関連クチコミサイト、アットコスメを運営するアイスタイル社長の吉松徹郎は語る。実際ホットクレンジングゲルは、アットコスメの2014年クレンジングジェル部門で1位に輝いている。実際に使用したお客のクチコミだから信ぴょう性が高い。それだけにお客との信頼関係は重要だ。その点、効果の実感と安全という、相反する2つの条件をクリアしたマナラ化粧品は、お客の心を掴むには十分だ。まさに化粧品業界の新常識にチャレンジした製品といえる。


 化粧品業界の新常識

ホットクレンジングゲルで名を馳せる

 ランクアップとはどんな会社なのか、御存知ない向きに、紹介しよう。岩崎が2005年、前職の広告代理店をスピンアウト、部下だった日髙由紀子と共に、立ち上げた会社である。主力のホットクレンジングゲルが売上全体の5割強を占める。なぜクレンジング?と思うが、化粧はメイクアップよりも落とすことが重要であることを、岩崎自身が身を持って体験しているからだ。

 このホットクレンジングゲルの誕生物語は壮絶だ。メイクがしっかり落とせて、肌に優しい理想のクレンジングを求めて、どれだけ全国の業者を訪ねたことか。「そんなの無理、できません」。「安定剤を少し使ったら分離することはないのに・・・」。業者のこうした囁きに一切岩崎は耳を貸すことはなかった。頑固一徹、自分の理想を求め、まっすぐに突き進むだけだった。今でこそ無添加、美容液で洗うという発想が知られているが、10年前の当時は常識では考えられなかったのだ。

 もうこれ以上ダメだと思ったとき、埼玉のあるメーカーが一緒にやりましょうと、賛同してくれたのだ。なぜここまでこだわるのか。自分の肌そのものが実験だったからである。バリバリの営業マンだった岩崎は、連日の深夜帰宅で、肌がボロボロだった。実年齢より老けてみえる女性を救いたい。女性をもっと若々しく元気にしたい。その使命感が折れそうな心を強くした。

 そして2006年6月、ようやく完成。この渾身の力を込めた製品ホットクレンジングゲルを、肌荒れで悩む女性に訴えていった。製品には「感動化粧品マナラホットクレンジングゲル」と名付けた。マナラとは岩崎の出身地北海道の方言で、ナマラ(すごく・とても)を文字ったものだ。「使って頂ければその良さが実感できる」。岩崎は自信満々だった。

 販売チャネルは得意の通信販売を選んだ。岩崎も日髙も元々化粧品の通販が得意の広告代理店で働いていたから、そこはお手のものだ。「どのように見せたらお客様の心を捉えることができるか。どのキャッチコピーならお客様の心に刺さるか」、熟知していた。かつての経験がモノをいった。

 そして初年度から黒字を達成、マナラのホットクレンジングゲルの名がジワジワと知れ渡っていった。働く仲間も増えていった。オフィスも銀座に移転、順調に成長を続けていたかに思えた。



本音研修で暗黒時代から脱却

 創業10年で売上75億円、経常利益8億5千万円(2015年9月期見込)を達成するまでに成長させた、敏腕女性経営者として名を馳せる岩崎だが、ここまでくるのは順風満帆ではなかった。明るく闊達な会社に見えるが、つい3年前までは暗黒の時代だった。「うちの会社暗かったんです。今の明るさが夢のようです」と語る岩崎は、2012年の事件を忘れてはいない。

「岩崎さん大変です。すぐきて社員の皆さんに謝ってください」。研修会社からの連絡で、すぐさま会場の青山に駆けつけた岩崎は、その光景を今でも忘れてはいない。研修に参加していた社員たちが、最終日の決意表明のところで、全員泣き出したのだ。「私たち期待されていないのに会社にできることなんかないんです」

 それは「ワクワク冒険島」という2泊3日の研修の最終日だった。社員たちが素直であればこそ、それまで溜まっていたものが吹き出したのだ。岩崎は驚き、戸惑い、社員たちに謝罪した。そしてハッと気がついた。日髙と2人で立ち上げた会社だけに、全て2人で決めていた。超ワンマンな会社になっていたのだ。

 優秀な社員を採用しているにも関わらず、出番を与えていなかった。期待されないことで不満が渦巻いていた。社員30人足らずの小さな会社にも関わらず、トップと社員の間にズレが生じていた。

「日髙も私もバリバリの営業出身だから数値目標が明確で達成の欲求が強い。しかし数値目標で測れない仕事は承認の欲求なんです。そこを認めていなかった」

「とにかく皆に謝りました。そしてうちはベンチャーなんだから“挑戦”する会社にしたいと明確に伝えました。それまで伝えているつもりでも伝わっていなかった」と当時を振り返る。雨降って地固まる。その後は中堅社員の育成や、社員のモチベーションアップ、人事評価制度も整えた。この事件をきっかけに、本音で語れる会社に生まれ変わったのだ。社内が明るく闊達に変身した。その軸となる風土は“挑戦”である。

 その岩崎を感動させたのが、2015年6月10日の10周年のサプライズイベントである。朝礼の時間、いきなり10周年のお祝いが始まった。部屋の飾り付けは、残業ゼロのはずの社員が夜中までかかって飾り付けたという。10年の歴史が映し出され、社員からの感謝のメッセージ。そして岩崎の家族からのメッセージが映し出された。岩崎は感動で震えた。そして心に誓った。この仲間と一緒に手を携え、皆が輝ける会社にしたい。


本音研修で暗黒時代から脱却

女性が活躍できる会社 

 昨今、ランクアップを語るとき、製品そのものよりも「残業ゼロでも増収を続けている会社」として有名だ。まさに女性活用で名を上げているともいえる。そこには岩崎の苦い体験が生きている。前職の広告代理店では夜中までの長時間労働で、社員は2~3年で辞めていた。社員数43名のランクアップだが、その内41名が女性、しかもその半数が、働くママである。

「何人産んでも何度でも戻って来て欲しい」。岩崎のことばに、感動したと語るのは、開発担当の佐々木美絵である。大手化粧品メーカーから転身してきた佐々木は、今2度目の育休中だ。岩崎自身も41歳で出産、子育てをしながら社長業に奮闘してきた。だからこそ、仕事も子供も両方手にしたいという女性の心が痛いほどわかる。「なぜ子供を産んだら戦力外になってしまうのか」、「子供を産んだらなぜキャリアを捨てなければならないのか」。前職で、働く女性の限界を感じた岩崎だけに、自分が起業したら、女性が一生輝ける会社にしたいという強い意志があった。だからこそ女性たちのパワーが炸裂、残業ゼロでも創業以来右肩上がりの成長を実現している。



海外展開にも意欲

 2015年9月28日、岩崎はシンガポールのショッピングモールサンテックシティにいた。主力製品ホットクレンジングゲルを催事で紹介するために、自ら乗り込んだのだ。「意外にもホットクレンジングゲルを御存知の方が多く驚いた」という岩崎。現地の人々の反応の良さに、イーコマースで販売することを即決したと、興奮冷めやらぬ顔で語る。

 既に台湾ではホットクレンジングゲルのネット販売を実現。7月には台湾の美容家向けにイベントを実施した。製品は日本から送っているが、ゆくゆくは現地法人を立ち上げ、展開を加速したい考えだ。主力のホットクレンジングゲルをもっと世界にアピールしたい。まずは同じような肌を持つアジアの女性たちの悩みを解決したいと意気込む。

 海外戦略は現地での販売も大切だが、2020年まではインバウンド対応が重要と睨む。アジアから大勢の観光客が来日、ロフトなどの店頭で、ホットクレンジングゲルを見つけて買ってくれている。そのためには店頭でのチャネル拡大は大切な要素だ。今はロフトや東急ハンズ、アットコスメストアに並んでいるが、店頭のチャネルにも力を入れていきたいという。但し、百貨店と値崩れしそうなドラッグストアでの販売は考えていない。

 安全・安心で効果が実感できるマナラの化粧品は、必ず世界の人に理解してもらえると、自信をのぞかせる岩崎。まずは親日の台湾、シンガポールからスタートし、じわじわと拡大したい考えだ。


海外展開にも意欲

女性が幸せに生きる社会に貢献

 女性が幸せに生きる社会を創るという理念を掲げるランクアップ。新規事業は化粧品にこだわらない。女性が生き生きと輝く社会に貢献する事業ならどんなことでも挑戦OKだ。まずは美容関連からスタート。日焼け防止の帽子や傘、足が細くなる着圧ストッキングは一足1万円以上という高価格ながら売れている。

 その新規事業を担当するのが新卒の若手社員だ。差し当たり、育児、教育、介護サービスなどが視野に入ってくる。2年後には新規事業をスタートさせたいと意気込む岩崎だが、発想は柔軟だ。「失敗したっていいんです。やり直せば」。この明るさ、潔さが岩崎の持ち味だ。このパワフルなリーダーに導かれ、新卒者たちが、ランクアップのどんな未来にチャレンジするのか、楽しみだ。

「キャリアのある女性が一生働き続けられる社会にするために、影響力のある会社になりたい」と宣言する岩崎。純粋でパワフルで誠実、全て本音ベースだから、岩崎の周りには多くの応援団が集まってくる。

 この10年間、岩崎の熱い志とパワフルな行動力で、ここまで走ってきた。しかしこの先、成長に比例し、超えなければならないハードルは幾つも出てくるであろう。それを乗り越え、どこまで成長できるか。

 女性の時代と言われて久しい。確かに今の日本は女性が元気だ。その元気を持続し、本当に輝ける社会になれるか。岩崎率いるランクアップが、女性パワーを全開し、どこまで上り詰めるか楽しみだ。



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