• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2012年08月31日

産地直結で新鮮な魚料理権限委譲でリピーター増/APカンパニー 四十八漁場五反田店

企業家倶楽部2012年10月号 ヒットメイキングの裏側


市場を介さず、主に宮崎県の漁師から直接魚を仕入れ、築地より2日早く新鮮な魚料理を提供している居酒屋「四十八漁場」。一番の特徴は産地直結という仕入れルートの独自性だが、残った刺身のつまをサラダにアレンジし、生海苔を醤油に混ぜて刺身を食べる漁師流の食べ方を客に勧めたりと小料理屋のような接客サービスも話題になっている。「社員だけでなくアルバイトも含め、広くリピーターを増やすアイディアを募集している」と取締役企画本部長の米山順子さんは秘訣を話す。2011年7月15日に1号店となる五反田店が開店すると客単価4400円、1日の来店数140名の繁盛店となっている。




 JR五反田駅に隣接する商業ビル3階に、「四十八漁場(よんぱちぎょじょう)」五反田店はある。平日の夜だというのに、100席弱ある席が会社帰りのサラリーマンやOLで埋まり、賑わっている。この店の売りは、魚の鮮度。市場を介さず漁師直結で、宮崎県島野浦で、その日獲れた魚をその日の夜には、東京の店舗で提供している。

「今朝獲れと呼んでいますが、築地より2日早いので、鮮度抜群です」と五反田店店長の相良朋太さんは自信満々に語る。



水産資源2048年問題に挑戦

「四十八漁場」という社名の由来を尋ねると、そこには創業者の水産資源を守るという強い思い入れと危機感が込められていた。

 5年ほど前、アメリカの科学専門誌「サイエンス」に、2048年までに天然の魚介類が壊滅してしまうという衝撃的なニュースが報道された。すでに漁業資源の3分の1が壊滅的な状態であり、その減少傾向が急速に進んでいるという。

 本来、魚介類の水産資源は、繁殖するので、再生する量やスピードを間違えなければ持続可能な形で、これまで人類は恩恵を受けてきた。しかし、魚食の世界的な広まりにより、世界中の海で乱獲され、この「獲り過ぎ」が海が本来持っている再生する力を奪い、今、大問題となっている。目先の利益だけ追い求めた結果だ。

 漁獲量を決めず早い者勝ちで獲る方式を「オリンピック方式」といい、小さな網目で漁獲対象とならないサイズの魚まで根こそぎすくい取ってしまう。商業的に価値のない魚は海洋投棄され、1年ほどの未熟な魚は飼料用として二束三文で売られてしまっているのが現状だ。

「このままでは2048年までに食卓から魚が消えてしまう」

 この危機に対して、水産資源が持続可能となる漁法で、日本が誇る魚食文化を未来に残すというビジョンを掲げ、「四十八漁場」と名付けた。同じ価値観を持つ漁師と契約したことで、漁場を守り、水産資源を保つだけではなく、誰がどこでどんな魚を釣ったかも100%分かるトレサビリティーが可能になった。鯖や鯵は釣った際に骨を折り、血抜きを済ませておくと味が落ちない。しかし、通常の流通形態では、見た目が悪くなり、価値が下がってしまうので漁師は骨を折る作業をしない。四十八漁場では、血抜き作業を施した魚を高く買取るなどの工夫をして、漁師においしく食べるための協力をしてもらっている。

 現在、APカンパニーは、鮮魚専門「四十八漁場」、宮崎地鶏「塚田農場」など16業態、120店舗(直営77店、ライセンス43店)を展開中で、2012年3月期の売上高は80億円、経常利益は4億8千万円を見込む。



ありきたりじゃつまらない

 創業者の米山久氏は、もともと外食出身ではない。若い頃は役者を目指していたが、2001年に八王子でダーツバーを開業し、飲食業に参入。当時は、焼酎と地鶏が流行り出しており、おいしい地鶏を探していたら、宮崎の地頭鶏(じとっこ)に辿り付いた。仕入れ値が高かったので、どうすれば安く、おいしい肉を入手できるか考えたら、自社養鶏場を作ることになった。固定概念に縛られない自由な発想が生産者直結の仕入れルートを開拓したのだ。アウトサイダーが既存業界の常識を打ち破る典型といえる。

「ありきたりじゃつまらない。他と違うことをやろうが社長の口癖です」と相良朋太店長は言う。

 ある時、客の一人から「お通しで出している味噌がおいしいから販売していないか」と聞かれたアルバイトが店長に相談すると、すぐに了解してくれた。そこで、お土産で味噌を渡すとその客は大変喜んで帰った。

「このことをきっかけに、お客様に喜んでもらえることならどんな小さなことでもよいので実践していこうとなった」と米山順子取締役は語る。APカンパニーでは、無料で行うこうしたサービスを「ジャブ」と呼んでいる。お客の期待を少し上回る接客サービスを数多く仕掛けることで「感動」してもらうのが狙いだ。ひとつひとつは小さなことだが、ボクシングのジャブのように積み重なるとじわじわ後で効いてくる。

 例えば、刺身のつまが残っているとサラダにリノベーションして再度出している。刺身が余っていれば、生海苔を後から出して、海苔醤油で食べてもらう。時間が経ってしまい乾いた刺身は、漁師焼きといって、醤油を付けて七輪の炭で炙って食べてもらうなど、ひとつの料理でも何通りかの食べ方を提案している。

 鯵などを味噌と一緒に叩いた宮崎の郷土料理「たたっこ」は、食べ残していると油で揚げて、さつま揚げにして、また一味違う食べ方を提案する。

「魚を最後までおいしく食べて欲しいという思いから工夫しています」と相良店長は語る。

 定番となっているジャブには、初来店時に「主任」という肩書きの入ったお客の名刺を作成し、来店回数によって課長、部長と出世するシステムがある。出世意欲をくすぐり、来店頻度が増えるという訳だ。リピーターを増やす取り組みのひとつである。

 現在、アルバイトから集まった「ジャブ」は累計で900個にもなる。その中でも定番と言われる10個はどの店舗のアルバイトでも実践できるように指導している。これらの取り組みの結果、リピーター率は6割と外食産業では高い数字を誇っている。



活気ある店舗は「伝える力」から

 店長だけがやる気があっても活気のある店舗にはならない。店員やアルバイトスタッフにその意識がなければ、雰囲気の良い店舗にはならないからだ。

 相良店長は、スタッフ採用には時間とお金をかけていると胸を張る。面接者の志望動機を聞くだけではなく、店側の考えや求めていることをしっかり話すようにしている。その話を聞いているときの姿勢や話した後の反応を見て、採用かどうか決める。

「私たちの志に共感できているか、目を輝かせているか、面接が最初のきっかけになるので大切にしています」

 相良店長がポイントにしている点は、「伝える力」だという。お客にお勧めを聞かれて、「お刺身の盛り合わせです」では失格です。まだ暗いうちから漁師さんたちが漁に出て、朝まで泳いでいた魚を丁寧に血抜きして、その日のうちに提供していること、どこの海で獲れたかなども含めて、しっかり説明できるかどうかで最終的には店の収益も変わってくる。

 高校生、大学生のアルバイトには、周りの人からどれだけ影響を受けているか話をし、反対に自分たちも周りに良い影響を与えられるようにと諭している。

 そんな相良店長も月一回開催される店長会議を楽しみにしている。人気アニメ風にアレンジされた本社作成のプレゼンを聞くと「よし。やってやろう!」と活力が沸いてくるそうだ。本社の人間も店長たちを飽きさせない演出を考え、活気を呼ぼうとしている。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top