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トピックス -ビッグベンチャー

2012年09月05日

社長、今、本当にアジアですか?/ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ会長 森辺一樹

企業家倶楽部2012年10月号 新興国の現状 vol.17


アジアビジネスに長年たずさわる私がこんなことを言うと誤解をされてしまいそうだが、このテーマは今年6月に出版された私の著書『アジアで儲かる会社に変わる30の方法』(中経出版)でも少し触れており、非常に重要テーマなのであえて今回の題材にすることとした。



◆アジアの最大の魅力は15億人の中間層

 まず、今一度アジア市場の最大の魅力を振り返りたい。アジア市場の最大の魅力は中間層の拡大にある。現在、アジアには中間層が約15億人存在する。この中間層はアジアの経済成長のスピードに合わせ急激に増加しており、その所得も年々向上している。このまま進めば、アジアは日本や欧米とならぶ一大市場となる。従って、アジアへいち早く進出し、誰よりも先に先駆者利益を得るメリットは大きい。世界中の競合がひしめく市場だろうがなんだろうが、巨大な成長市場である限り、企業にとってアジアは次の成長エンジンとなる。

 この理屈からすれば、今回のテーマの答えは「YES」だ。しかし、これは全ての企業にとって「YES」ではない。アジアで2割、3割のシェアを取る必要がある大企業にとっては今後の有力な市場だ。狙っているシェアが大きいだけに、中長期の投資を行っても十分にリターンはあるだろう。

 しかし、中堅中小企業やベンチャー企業にとって、今のアジアは必ずしも魅力的な市場とは限らない。確かにアジアでは中間層が急激に増加しているし、今後も更に増加の一途を辿るだろう。しかし、現実問題、目下のアジアは一部の国や都市を除いてまだまだ日本のレベルには遠い。一人当たりのGDPも数千ドルであり、4万5000ドルを超える日本と比べれば天と地の差が存在する。その上、競合がひしめき、流通構造も、その抑え方もアジア独特のややこしさが存在する。このような市場で勝つには様々なことを変えなければならない。



◆中堅中小、ベンチャー企業にとっては必ずしもアジアではない

 特に価格は重要な要素となる。中堅中小企業にとって価格を下げるということは、そう簡単なことではない。価格を下げるのであれば、それだけ数を売らなければならない。数を売るということは、生産設備の増強が必要だ。生産設備の増強には当然ながら大きな投資が必要となる。アジアで2割のシェアを狙う大企業であればそれだけの投資も報われるだろう。

 しかし、中堅中小企業が必要なのはそんな大きなシェアではなく、今後落ち込む内需の代替え市場なのである。彼らの本音を言えば、価格も製品も然程変えなくて済む、ありものをそのまま買ってくれる新たな代替え市場が必要なのだ。そんな企業にとって、今、本当にアジアなのだろうか?私の答えは、「NO」だ。今のアジアは変わらなければ取れないし、何かを変えるには経営資源や戦略が必要になる。大きなシェアの為の変革は投資に見合うリターンがあるが、代替え市場の為の変革はリスク以外の何ものでもない。

 多くの企業がアジアで挫折するのを見て来た私は、今こそ中堅中小企業やベンチャー企業は北米を狙うべきだと考えている。



◆中堅中小・ベンチャー企業は今こそ北米を狙え

 まず申し上げたいのが、昨今、余りにも多くの企業が「アジア、アジア」と次の市場はアジア以外にはあり得ないと間違った思い込みをしている感が否めない。北米やその他G7の国々を市場候補として比較検討すらせずに、ひたすらメディア報道や大企業のアジアシフトだけを見て、自分たちもアジア市場だと思い込んでいるのだ。長年この仕事をやっていて言えることは、アジアはそう簡単には稼がせてくれない。



◆中長期投資の巨大市場より、即効性ある代替え市場

 確かにアジアはこれからの最有力市場であることは間違いない。しかし、冷静に考えれば、中堅中小やベンチャー企業にとって、拡大する15億人の中間層はそう大きな魅力ではない。アジアの中間層を獲得するということは、日本並みに成長するまで中長期で投資をするか、現状にこちらが合わせるか、その狭間で世界中の競合と戦っていくことを意味する。経営資源が乏しい中堅中小企業やベンチャーには相当な重荷となる。

 またそもそも15億人もの巨大な市場など本当は必要がないはずである。中堅中小企業が求めているのは中長期の投資をして得る大きなシェアではなく、今後落ち込む内需の代替え市場を出来る限り短期で得ることだ。



◆アジアで富裕層は狙うな

 最たる過ちは富裕層を狙いアジアへ進出することだ。アジアは当然ながら富裕層も先進国の数倍のスピードで拡大している。しかし、2010年、世帯年間可処分所得3万5000ドル以上の富裕層は、G7で5.4億人。対してアジアは1億人である。2020年の予測でも3.5億人とG7には届かない。なのに、なぜアジアの富裕層を狙うのか。先進国の富裕層を取り込んだ上で、更にアジアの富裕層をというなら話しは別だが、多くの企業はそうではない。

 更に言えば、アジアで富裕層に分類される人達はかつての日本がそうだったように、欧米ブランドに強い憧れを抱いている。残念ながら今の日本には80年代に誇った存在感やブランド力はない。



◆進出先を今一度見直す重要性

 結論として何が言いたいかというと、これからの時代、海外に目を向けることは重要だ。しかし、北米を中心としたG7などの先進国を見ずして、アジア市場しかないという思い込みは正さなくてはならない。G7の中でも特に米国は、依然、圧倒的な超大国である。GDPは、15兆ドルと、2位や3位の中国、日本の倍以上だ。一人当たりで見ても上である。人口に関しても、現在の2.8億人から2050年には4.2億人へと増加が予測されている。

 勿論、GDPや人口だけで全ては語れないが、決して全ての企業にアジアが合っているとは限らない。自社の経営資源を今一度整理すると、実は、中長期の投資が必要なアジアではなく、まずはG7を始めとした先進国が優先され、アジアは将来的な市場と位置づけるべき企業も多いはずだ。

 アジア市場は魅力的な市場なだけに、海外ビジネスで失敗しないためにも、自社に本当に適した市場がどこなのか、今一度冷静に見つめ直して欲しい。




森辺一樹  (もりべ かずき)

2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。



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