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トピックス -企業家倶楽部

2012年07月12日

精神的不調を抱える従業員への対応/クレア法律事務所弁護士 佐藤未央

企業家倶楽部2012年8月号 ベンチャー企業の法務心得 vol.15





 最近、うつ病などの精神的不調を抱えている従業員との労務トラブルが増加しています。今回は、精神的不調を抱えた従業員に対する諭旨退職の懲戒処分を無効と判断した裁判例をご紹介します。 諭旨退職は、懲戒処分の一種ですが、その処分内容は懲戒解雇より若干軽く、懲戒解雇事由がある従業員に対し、まずは退職届や辞表を提出するよう勧告し、所定期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇処分をするという取り扱いが多くみられます。

 X氏は、平成20年4月、雇用主であるY社に対し、過去約3年間にわたって、X氏の日常生活が仔細に監視され、プライバシーを含めたX氏の情報がY社の従業員らに共有され、Y社の従業員がX氏に嫌がらせをしているなどと申告し、その調査を依頼しました。この申告を受けて調査を実施したY社は、同年6月3日、X氏に対し、X氏が当該事実を裏付ける資料として提供したICレコーダのデータを確認した結果、嫌がらせの事実はないとの結論に達したと回答しました。

 一方、同年4月8日以降、有給休暇を取得していたX氏は、同月22日、休職の特例を認めるようY社に申し出ましたが、Y社はこれを認めませんでした。また、同年6月、X氏は、社会貢献休暇の取得をY社に申し出ましたが、Y社はこれを認めず、X氏に対して出社するよう回答しています。結局、X氏の有給休暇は同年6月3日に全て消化され、X氏は、同年6月4日以降同年7月30日まで欠勤することとなりました。

 そして、同年8月28日、X氏は、Y社より、同年9月30日をもって諭旨退職処分(本件処分)とする旨の通告を受けました。これを不服としたX氏が、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、賃金の支払などを求めたのが本事案です。




 東京高等裁判所(控訴審)は、X氏の精神的不調が疑われるのであれば、Y社の対応として、職場復帰へ向けての働きかけや体調回復まで休職を促すことが考えられたとしました。また、精神的不調がなかったとしても、Y社が、X氏に対し、懲戒処分の対象となるなど、長期間欠勤した場合に同氏が被る可能性のある不利益を告知するなどしていれば、X氏が約40日間欠勤を継続することはなかったなどとして、本件処分は懲戒事由がなく無効であると判断しました。

 更に、最高裁判所は、精神的不調のために欠勤を続けている従業員に対し、Y社は、精神科医による健康診断を受けさせるなどした上で、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、経過を見るなどの対応を採るべきであり、かかる対応を採ることなく、X氏の欠勤理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちに無断欠勤と判断して懲戒処分の措置を執ることは、精神的不調を抱える従業員に対する雇用主の対応として不適切で、X氏の欠勤は正当な理由のない無断欠勤に当たらず、本件処分は無効であるとしています。

 従業員が精神的不調を訴えて欠勤を続けた場合、会社としては、まず、健康診断の実施や休職処分など、復職に向けた環境整備に配慮する必要があります。また、やむなく懲戒処分を検討しなければならない場合でも、長期間の欠勤が懲戒処分の対象となるなどの不利益を従業員にきちんと説明し、それでも改善が見られなければ処分を検討する、といった対応が求められます。

※参考にした裁判例:地位確認等請求事件(最高裁平成24年4月27日判決、東京高裁平成23年1月26日判決)




Profile 佐藤未央

システム開発系の企業におけるシステムエンジニアとしての8年間の勤務を経た後、弁護士となる。現在は、主に、ベンチャー企業に対する会社法・金融商品取引法を中心とした法的アドバイスの実施や各種契約書の作成、労働問題などを担当している。平成19年弁護士登録。東京弁護士会所属。



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