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トピックス -企業家倶楽部

2012年07月10日

原発事故後の不健全な社会

企業家倶楽部2012年8月号 石橋明佳のコーヒータイム vol.24


 東日本大震災を経て、今、大きなパラダイム転換を求められている。ところが、一旦喉元を過ぎて現実に戻ると、あの出来事は一体何だったのかと思いたくなるほど、元通りの思考しかできない人たちがたくさんいることに驚くとともに、残念な気持ちになる。福島県全体が軍でも出動して全員強制退去でも強いられない限り、福島県は県として生き残り続けなければならない。県外の人との温度差はそこで生まれる。福島県、特に線量の比較的高い地域では、放射能を話題にすることすら憚られる状況だ。「見ざる、言わざる、聞かざる」とは、まさにこういうことを言うのだと実感せざるを得ない。今、県内では大雑把に分けて2つのタイプの価値観がある。




A.放射能に敏感になっていて、できる限り気を付けて生活したい。できることなら移住したいくらいだが、現実問題として仕事や経済的な理由などからそれができない。県内産の食べ物は、たとえ基準値以下だと言われても極力食べたくない。基準値は厳しければ厳しいほどありがたい。国の基準値は信用できない。風評被害ではなく実害だ。いまだに放射性物質を放出し続けている原発を前に、除染だの復興だのはまやかしだとしか思えない。発表されている放射線量は実際よりかなり低い数字が公表されていておかしい。今は目立った健康被害がないからといって、まだ1年しか経っておらず、何年も後になってどういう影響が出るかもわからないのに、安全神話など広げないで欲しい。FUKUSHIMAが悪名高く世界中に轟いてしまった。

B.放射能、放射能と気にし過ぎだ。それで人なんて死んでない。気にし過ぎて神経過敏になってストレスで鬱になり、かえって健康に良くない。笑っていれば放射能も近寄れない。皆もっと身体に悪いこと沢山しているじゃないか。空気を汚染しているのは放射性物質だけではない。徹底的に除染して、県内産の食べ物を食べて応援し、とにかく復興だ。風評被害になんて負けないぞ。基準値が1キロ当たり100ベクレルに下げられたのは不本意だ。500ベクレルに戻してほしい。土壌が汚染されていても、別に土を食うわけじゃない。「ベクレルスープ」を販売したいくらいだ。風評被害が広がるばかりでいいことないから、検出された中でも最低値を公表すればそれでいい。こんなにも福島県が注目されたことはない。福島をPRするビッグチャンス到来!

 互いに180度違う価値観で、相容れない。どんなに話をしても、互いに平行線であり、ねじれの位置にあるので、下手に議論になると人間関係をこじらせかねず、皆段々話題にしなくなっていく。問題は、なぜか前者よりも後者の方が強く、前者は後者を前にすると本音を言えなくなり、遠慮がちになることだ。前者が本音を言えば、「それでもお前は福島県人か!? 」と白い目で見られそうで何も言えなくなる。逆に後者が前者に遠慮するということはまずない。戦時中に戦争反対と言えないのと同じ現象なのだろう。異常であることを異常だと口にできなくなると、それは戦時体制と同じなのだが、後世になって、その時のそのような現象はいかに異常であったかが語られるようになるのが世の常である。放射能の影響については、何年、何十年と経ってみないとわからないのが現実で、どのような考え方も今この時点で断言できる人など皆無のはずだ。だからこそ、どのような考え方や価値観も尊重すべきだし、特定の考え方や価値観を人に押し付けることはできない。自分の人生に責任を持てるのは自分しかいない。人それぞれの自らの考えに基づいた言動を許容できなければ、健全な社会とはいえないのではなかろうか。



Profile 石橋明佳

証券投資顧問業を経営する傍ら、独自の感性を方々に発信する魂の人。財務省の財政制度等審議会の委員等歴任。



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