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トピックス -企業家倶楽部

2012年02月29日

アジアでは人材に関する考え方を変えろ/ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ代表取締役 森辺 一樹

企業家倶楽部2012年4月号 新興国の現状 vol.14


肩書き、プロフィール、会社概要は掲載当時のものです。

アジアビジネスで成功を納める上で“人材”という経営資源は日本以上に重要となる。人材を如何に定着させ、その価値を最大化させるか。多くの企業がアジアビジネスにおける人材で頭を悩めている。しかし、それは全て企業側の姿勢にかかっている。アジアでビジネスをする以上、企業の人材に対する考え方も、従来の日本での常識からアジアでの常識に変革させなければならない。

リスクは“悪”ではなく“チャンス”

 アジアの企業と日本の企業ではリスクに対する考え方に大きな差が存在する。このことが日本企業のアジアビジネスに暗い影を落としているように思う。 日本人にとって“リスク”とはどのようなものなのか。日本では“リスク=悪”という印象をもった人が少なくない。リスクというものは存在自体が悪であり、恐いものであるといった印象が強い。従って、高いリスクを取って、高いリターンを狙うことなどもってのほかで、そんなことをする企業はタブーとされる風潮がある。可能な限りリスクを低く抑え、低いリターンでも良いので着実に得られる方が“正義”とされている。

 一方で、アジアでは、“リスク=チャンス”であり、多くの企業がリスクを積極的に取ることで成長をしている。所謂、“ hig h risk,hig h retur n、“low risk,low return”というロジックが確りと認知され、皆がそのロジックの中で積極的にリスクを取り成長に努めている。そのため、高いリスクを取って、高いリターンを得ることをタブー視する人など少ない。むしろ、高いリスクを果敢に取り成長するという姿勢の方が、失敗を怖がりリスクを取らないことよりもずっと評価に値する。

 いったいこの差は何から来ているのだろうか。成長期にあるアジアと成熟期にある日本では、リスクを果敢に取り急成長すべきと、リスクを極力避け現状を守らざる得ないことで、リスクに対する認識に大きな差が生じているのだろうか。もしくは、歴史が短いアジア企業と歴史が長い日本企業では、短いからリスクを容易く取れるのと、長いから躊躇してしまうという差なのだろうか。



リスクを取った 人材を評価せよ

 どちらも事実である。しかし、最も大きな理由は、多くの日本企業が、リスクを取って失敗した人を評価しないという組織の評価基準に問題があると私は思う。アジアの担当役員の多くは50歳以上、現地の執行責任者は40歳以上である。この年齢で失敗をすれば、本流から外され、今迄築き上げて来たものが一瞬で崩れる。日本に戻っても席は無い。こんな評価基準が平然とまかり通っている組織で、訳の分からぬアジア市場で果敢にリスクを取ってチャレンジすることなどできる訳が無い。とにかく余計な事はせず、前任者のしてきたことを任期が終わる迄維持する。誰もがそう考えるだろう。

 しかし、アジアビジネスとは、日本では当然“避けるべきリスク”でも、取らざるを得ないケースが多々ある。また、そもそも、それをリスクと判断していては、ビジネスが成り立たないケースもある。アジアでビジネスをするということは、

 そのこと自体が既にリスクであるし、アジアではやること成すこと全てにリスクが伴うと言っても過言ではない。であれば、そのリスクを果敢に取る姿勢を、会社組織が確りと評価しなければ、そんな人材は生まれない。リスクを避けた人間より、リスクを取って失敗した人間の方が、将来何十倍もの価値を生むのだから。



人材にロイヤリティーを求めるな

 海外法人に駐在している多くの日本人トップと話をすると、「現地人は会社に対するロイヤリティー(忠誠心)が無くて困る」という嘆きの声を多く聞く。

 要は、現地採用した現地人の社員を数年かけて教育し、ようやく一人前になったと思ったら、より良い待遇や条件の他社に転職をしてしまい、良い人材が定着しないというのだ。

 国により差はあれ、確かに現地社員は、より良い条件や待遇の会社へと転職を繰り返す。成長著しいアジアでは尚更そうである。勿論、国民性も大いに影響を及ぼしているが、基本的には全てが豊かで安定した環境にいる先進国の人材より、豊かで安定した環境を手に入れる最中のアジアの人材の方が転職を繰り返す傾向は強い。なぜなら現状にはまだ甘んじられず、より良い、より豊かな生活環境を求めているからだ。既にある程度のレベルでは満たされた日本人よりも遥かに強い欲を持ち、一生懸命生きている。だからこそアジアは今、高い経済成長を維持し続けているのだ。

 このような前提のある国々で、日本人の言う“粗無条件に近いロイヤリティー”を現地社員に求めることは難しい。そもそも日本人はなぜ会社に対するロイヤリティーが高いのかを考えれば、なぜ現地社員にそれを求めることが難しいのかが理解できる。



日本独特のロイヤリティーは通用しない

   今でこそ違うが、かつて、日本人にとって会社は人生そのものであり、日本企業は、終身雇用という絶対の約束で、当人は勿論のこと、その家族までをも守って来た。国は外資企業を規制し、日本企業を守り、官民が一体になり豊かな生活を目指しこれまで成長をしてきた。この国を支えてきた団塊の世代にとっては会社が全てであり、会社にロイヤリティーを持つことなどは当たり前の常識であった。しかし、時は流れ、日本企業の終身雇用が絶対でなくなり、成果主義といった概念が持ち込まれた現代、社員のロイヤリティーは薄れ、優秀な若手になればなる程、より良い環境、より高いスキルを磨ける環境へと身を移すように変化した。

求めるべきはロイヤリティーではなく、“ 定着”

 要は、日本は、世界的に見ても会社に対するロイヤリティーという面では特殊なのだ。これら日本の特殊な環境が社員を完全に守って来たため、社員も会社を全てと考えた。このような特殊な常識を現代の現地社員に押し付けても受け入れられる訳が無い。

 そもそも会社へのロイヤリティーという考え方自体がどの世界を取っても、現代には既に合わない考え方なのかもしれない。しかし、ロイヤリティーは得られなくとも、“定着”を得る事は可能だ。 転職を繰り返す優秀な現地スタッフはなぜ転職をするのか。他社がより高い評価をしてくれるからだ。では、評価とは何か?“条件”と“環境”である。

 日本企業には独特の目に見えない評価が存在するが、世界でそれは通用しない。目に見える“条件”と“環境”で確り社員を評価する仕組みを持てば、現地社員の定着は容易である。 繰り返しになるが、アジアで成功を納めるには“ 人材” という経営資源は日本以上に重要となる。

 企業の人材に対する考え方も、従来の日本での常識からアジアでの常識に変革させなければならない。


森辺 一樹(もりべ かずき)


2002年にSDI香港法人を設立。07年、本社を東京へ移転。充実した海外ネットワークを武器に中国・インド・東南アジア等を中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングの各種サービスを提供している。



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