トピックス -企業家倶楽部

2015年11月24日

メガネ業界に革命を起こす ジェイアイエヌ社長 田中 仁 × リンクアンドモチベーション会長 小笹芳央

企業家倶楽部2015年12月号 WBC 熱血企業家!


本記事は2015年4月放送の「熱血企業家!」を誌面化したものです。


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

Profile

田中 仁 (たなか・ひとし)

1963年群馬県生まれ。81年前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)入庫。88年ジェイアイエヌを設立、代表取締役社長に就任。2001年アイウエア事業「JINS」 (ジンズ)を開始。06年大証ヘラクレス(現JASDAQ)に上場。11年『Ernst&Youngワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2011』モナコ世界大会に日本代表として出場。13年東京証券取引所第一部に上場。「第15回企業家賞」受賞。

小笹芳央 (おざさ・よしひさ)

1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、リクルートに入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、00年リンクアンドモチベーションを設立、代表取締役社長に就任。07年12 月東証二部に上場。08年12月東証一部に指定変更。08年第10回企業家賞受賞。2013年代表取締役会長に就任。同社は、「人のやる気」にフォーカスを当てたコンサルティングで成長を続ける。

 

キャスター:木村久美(フリーアナウンサークラブ)



ユニクロ柳井氏の一言で奮起

小笹 御社は今や日本を代表するベンチャー企業になっていると思います。最近の業績はいかがですか。

田中 成長を続けてきました。この4年間で売上は約5倍になり、従業員数も3000人を超えました。

小笹 業界最安値の商品価格と追加料金0円というシステムから、御社は業界の革命児として登場されましたね。

田中 我々は2009年にレンズ変更の際の追加料金を0円にして、それまでメガネのフレームには使用されていなかった医療用素材でメガネを作りました。さらに看板を「JINS」に統一して、1年間で1億円しか使っていなかった広告宣伝費を1カ月で5億円使うなど激しい変化を経験しました。これらの判断をする上で一番大事にしたのは、その行動によって企業家として納得するか後悔するかです。

小笹 田中さんの著書『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』の中にも、「フルスイング」というキーワードが出てきますね。大きな判断をする時は、ここで振ってやろうと思っていますか。

田中 そうですね。振り返ると、小さなヒットやバントを狙って行った施策は後に活きません。失敗した時の怪我も小さいからです。でもフルスイングして空振り三振すると、反省も大きくなります。だからこそ学びがあり次に繋がるので、中途半端はいけません。

小笹 フルスイングしようと思う時は、データが根拠になるのですか。

田中 必ずしもそうではないですね。私は、大きな決断をする時期をずっと見極めていました。そのタイミングが来たのが2009年でした。

小笹 将来歩むべき道が明確になったターニングポイントはありましたか。

田中 上場するまでは運と縁に恵まれましたが、その後は大きな志を描けず悩んでいました。そんな時、ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長とお会いする機会があったのです。その場で「御社の事業価値は何だ」と単刀直入に問われましたが、私ははっきりと答えられませんでした。ただ、おかげで会社の事業価値やビジョンが明確でなかったこと、それらを深く考えるべきだったことに気が付いたのです。そうしないと本当の意味では成長できないことを、柳井会長から教わったと思います。



機能性メガネを生んだ原点

小笹 JINSと言えば、目に悪いブルーライトをカットする「JINS PC」というパソコン用メガネや、98%の花粉をカットする花粉用メガネなど機能性を重視した商品も多いですね。その発想はどこから生まれたのですか。

田中 商品開発をする際のイメージもビジョンから導き出しています。我々の原点にあるのは、メガネをシーンやファッションによって掛け替える文化を創り出すことです。パソコン用や花粉用メガネを掛けるのは生活の一時だけですが、普段の生活にはもっと様々な場面があります。その上で我々が提唱したいのは、「多様なシーンに応じてメガネを掛け替えることが、楽しいし眼にも良い」という理念です。「我々はどういう企業であるべきか」を軸に製品開発を行っていますから、発想ありきではありません。

小笹 企業にとって大事なのは「何をするかでなく、何がしたいか」だとよく言われますが、御社はまさにそれを体現されていますね。



メガネの歴史を変える

小笹 田中さんが企業家として一番大事にしていることは何ですか。

田中 ぶれないビジョン、方向性、判断です。

小笹 これまで迷ったりしたことはありましたか。

田中 いつも迷っていますが、取り返しの付く判断は即決し、後で大きな影響が出る判断は答えが出るまで寝かせるようにしています。

小笹 2009年に1カ月で5億円の広告投資をした際は、どちらの方法で判断しましたか。

田中 寝かせました。これが失敗した時に会社に出る影響について、最悪のシナリオをいくつも書いた。でも、あれで経営者としての覚悟と自信が付きました。今、業績は少し足踏みしていますが、私はものすごく前向きです。

小笹 様々な判断・決断はある意味賭けですよね。その決断を繰り返した人ほどカリスマ性があると思います。これまで急成長してきた御社ですが、最大の強みはどんなところですか。

田中 常識に囚われず、革新的なチャレンジをし続ける企業姿勢だと思います。業績が安定すると、企業は守りに入りたくなるもの。しかし我々はそうならず、今でもチャレンジしています。

小笹 業界である程度成功すると、知らず知らずのうちに自分がその業界の常識に染まってしまうことはありますよね。自社と業界との距離をどのくらいに置くか考えていないと、常識を外れることは難しいと思います。

田中 私は、メガネの歴史を変えたいと思っています。それは、今までのビジネスの延長線上にいては成し得ません。新しいイノベーションを起こし続ける必要があります。そして、「JINSのメガネがあったから、今のライフスタイルがある」と言われるような企業になれれば嬉しいです。



迷った時の判断基準は「納得できるか」

小笹 今の御社の業績から考えると、2008年当時は株価も低迷して成長する道筋も見えず危機に瀕していたと思います。どんな心境でしたか。

田中 株価が50円を下回った時期があり、証券会社からは企業売却を勧められました。正直「そうしたほうが良いのかな」と思う時もありましたね。とにかく先が見えなかった。でも、その後ビジョンを定めてからは、「まだ自分にできることがある」という思いでした。志を定めたことが一番大きかったです。

小笹 自分が会社をどうしたいのか、道筋が見えたということでしょうか。

田中 そうですね。ただ、それを実行するためには組織全体を変えないといけない。組織改革では、社員の意識を変えることから手を付けました。もちろん、抵抗する社員も少なくありませんでした。組織の壁を壊す過程で摩擦が生まれ、当時本部にいた社員50人のうち20人が、退職するか店舗勤務に移りました。しかし本部の人員が減ってからの方が、な ぜか円滑に業務ができました。小笹 一人ひとりが意識を高く持てば、6~7割の人員でも高い成果が出せるということですね。

田中 はい。私自身も、上場したことで慢心してしまった時期がありました。業績の低迷はその結果です。

小笹 社内の企業風土や社員の意識レベルは経営者の写し鏡だと思うことが、トップとして大事でしょうね。田中さんが経営をされる上で迷った時の判断基準は何ですか。

田中 自分自身が納得できるかどうかです。色々な条件に合わせて妥協した決断は、絶対に上手くいきません。社長が方向性を明確に示さないと、組織は崩壊します。

小笹 自分たちの価値、使命、ビジョンを軸に判断すると、成果が出なくても納得感があり、気持ちが良いですよね。

田中 組織の長がワンマンでなければ、組織は絶対にまとまりません。ただ、組織力を潰すワンマンではいけないと思います。私が気を付けているのは、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境や仕組みが整っているかどうかです。常に社長がいないと会社が回らない状況ではまずいと思います。



人の動きを感知するメガネ

小笹 新商品「JINS MEME」について、詳しく教えていただけますか。

田中 JINS MEMEは、ノーズパッドと額の部分に計3個のセンサーが搭載されたメガネで、それを掛けた人のまばたきや視線の動きを感知します。それによって心と身体をモニタリングできるのです。例えば、その人が何に興味関心を持っているかを感知する他、病気の予見もできます。我々はこの商品で特許を取得し、経済産業省からも賞をいただきました。さらに、アメリカで行われた世界最大の家電見本市「CES」では、ベストウェアラブル賞を受賞しております。

小笹 注目されているテクノロジーなのですね。

田中 はい。今IoT(モノのインターネット)が注目を浴び、将来的にはあらゆる身の回りの物が人を感知して、様々なデバイスに繋がる世界になると言われています。メガネという日常的な製品がその役割を果たすことは、期待されていますね。私は、「メガネを買うならJINS以外の選択肢はない」と言われるようなイノベーションを起こしてみたいと常に思っています。

 世界一目指し海外出店田中 我々の目標は、世界一のメガネ屋になることです。将来的には、最低でも5000億円の売上を目指します。イメージは、日本で1000億円、中国で2000億円、アメリカで2000億円です。

小笹 目標を達成するための課題は何ですか。

田中 最大の課題は、JINSが世界ブランドとして通用するかどうかです。中国では、日本以上の売上規模が見込める手応えを感じています。あとは日本ブランドが不得意な欧米ですね。今年、我々はアメリカ・サンフランシスコに北米1号店となる、「J INS  Union  Square 」をオープンします。そこでどう戦えるかが、世界ブランドとしての試金石です。

小笹 最後になりますが、若手のベンチャー企業家や起業を目指す方にエールを送っていただけますか。

田中 世界的に見ても、日本人は高い能力を持っていると思います。残念なのは、内向き志向な人が多いことです。そこで開拓者精神を持って外に出て行けば、日本人は結構な確率で勝てる気がします。なので、チャレンジを恐れず、やりたいことがあったら一歩踏み出して欲しいです。



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