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2015年11月26日

【竹中平蔵の骨太対談】vol.38 進化し続ける通販業界のパイオニア/vs ジャパネットたかた代表取締役社長 髙田旭人

企業家倶楽部2015年12月号 骨太対談


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

Profile

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。第2次安倍内閣において、13 年に日本経済再生本部の「産業競争力会議」の民間議員としても活動。14 年1月より、国家戦略特区の特区諮問会議のメンバーに就任。著書に『知っていると役に立つ世間話』、『竹中式 イノベーション仕事術』、『経済古典は役に立つ』などがある。

髙田旭人(たかた・あきと)

1979年長崎県生まれ。東京大学卒業後、証券会社へ入社。その後、ジャパネットたかたへ入社。販売推進統括本部、商品開発推進本部の本部長などを経て、2010年に総合顧客コンタクト本部本部長及び配送管理を行う商品管理部部長を兼任。同年、ジャパネットコミュニケーションズ設立時の代表取締役となる。12年にジャパネットたかた取締役副社長兼ジャパネットコミュニケーションズ取締役に就任。15年1月、ジャパネットたかた取締役社長就任。

 



父の背中をずっと見てきた

竹中 ジャパネットたかたというと、テレビ通信販売における先駆者ですよね。数少ないラインナップを大量に販売する戦略と創業者自らがテレビで物を売るスタイルで、業界で確固たる地位を築いてきました。

 創業者である髙田明前社長とも対談させていただきましたが、大変印象深く覚えています。それを引き継がれた若々しい髙田旭人新社長、今年の1月に就任されたと言うことで、まだ1年経っていませんがどんな想いで過ごされてきましたか。

髙田 今私は36歳ですが、1月16日に就任してからの9カ月はあっという間でした。「社長が変わったみたいだけどよく分からないね」と言われないように、体制変更や仕組みづくりに取り組んできましたが、思っていたより大変で思っていたより楽しいという感覚を持っています。

 父は自ら販売の最前線に立ち、「商品を見つけてその良さを存分にお客様に伝える」というジャパネットのビジネスモデルを確立してきました。それをテレビに出ない立場でどう実行していくか、自分なりのやり方を模索していますが難しさもあります。楽しい部分というのは、経営者として全ての場面で自分の最終決定が求められるところです。自分の責任でチャレンジできると捉えて、言い訳が出来ない状況で毎日チャレンジ出来ることをチャンスと捉えています。

竹中 先代がカメラ屋から始めて約30年、今ではテレビショッピング事業を軸に売上1400億円超、経常利益150億円超という企業にまで成長しましたね。小さい頃からお父上の仕事を側でご覧になってきたと思いますが、旭人社長がジャパネットに入られた経緯を教えてください。

髙田 大学卒業後、2年間証券会社で営業をしていました。ジャパネットで個人情報漏洩事件が起きた際、もともと理系で数学専攻だった私は調査委員会として原因究明など中心的に取り組みました。気付けば社員になっていた。その後は、媒体や物流の責任者からコールセンターまで、社内の部署を一通り経験しました。

竹中 最初、いきなり危機管理の部分から入られて、そこから時間をかけて全ての現場を理解できるように教育を受けられたんですね。業績が落ち込んだ時期も近くでお父上の経営を見てきたと思いますが、どのようにご覧になっていましたか。

髙田 恥ずかしい話ですが、1500億を超える売上があったので、私含め社員はほとんど売上に固執していませんでした。その中で社長である父だけが、テレビが縮小する可能性や数字に対する危機感を持っていた。当時は自分がいる場所で出来る役割をやろうという意識しかなかったのが正直なところです。経営を自分のこととして考えるスイッチが入ったのは、就任の話が出てからです。

竹中 今年1月に新社長が颯爽と登場されました。今、世間では創業者と二代目がもめている企業がよく話題になりますが、二代目がどういう経営者になるかで会社の未来は大きく変わる。自らがキャラクターとなって、テレビ販売の最前線に立っていた前社長の残した企業DNAが根強く企業を支えていると思います。それを引き継いでいくにあたり、どういうことを意識されてきましたか。

髙田 父の下で働き始めてから十数年、いつか自分が父の後を継ぐんだという自覚を持ってやってきました。

 経営者になった今、創業期から父が言っている「商品を届けることでお客様が幸せになる」という意義はぶれずに持ち続けていきたいと思っています。ジャパネットたかたとして1番大切にしていることは、とにかく自分たちが自信を持って良いと言える商品を見つけてくることと、その商品の良さを徹底的に伝えること。これがなくなれば、ジャパネットたかたである意味はないと思っています。

 量販店やインターネット通販だと、お客様が朝起きた時点で今日はどこに行って掃除機を買おうとか、ホームページでテレビを買おうと事前に決めている方が多いですが、ジャパネットのお客様は偶然番組を見て、私たちを信用してその場で購入を決める。その方たちに対して満足行かない商品を届け始めることこそ、当社の最大のリスクだと思っています。



新生ジャパネットたかた

竹中 偉大な創業社長が残されたものの基盤固めをされているのですね。しかしそれと同時に、企業として発展させる、もしくは変える部分も必要になってきますよね。

 例えば、テレビ離れが騒がれたり、ドローンなどの出現で物流が大きく変化する兆しも見られます。社会が変わり、技術が変わる。そうした大きな枠組みの変化の中で、どのような使命を感じて行動されていますか。

髙田 私たちは購入後に商品が使われることなく捨てられてもいいという感覚は持ちません。いかに使っていただくかを考える。近年は特に、商品そのものだけではなく、配送・設置・回収・処分など、その周辺の要素を意識しています。

 会社の規模が大きくなると目が行き届かない範囲も多くなりますが、そこで物をいうのは会社としての総力です。そこで、私が社長になるにあたって会社の体制を劇的に変えました。もともとホールディングス体制ではありましたが、グループ2社体制だったところを、今はホールディングス含めて6社体制でやっています。

 ジャパネット流通信販売のプロ集団である本体を核として、周りにコールセンター・メディア・配送などに特化した会社を配置。お客様の必要とするサービスをグループとして提供できる仕組みを作りあげました。

 特に力を入れているのはアフターサービス面です。今まで修理を外部のメーカーに委託していましたが、それを内製化しました。去年の11月7日に設立して、現在では250名体制の拠点を持っています。少品種多量販売だからこそ、修理を自社でやることでノウハウが溜まりますし、次の製品開発に活かすこともできます。取り組みが始まったばかりですが、究極的には修理相談の電話を受ける人と実際修理する人が同じになる仕組みを作りたいと考えています。

竹中 創業者が築き上げた文化や想いを忠実に守りながらも、さらにそれを発展させようという意欲を強く感じました。組織として、旭人社長が目指す新しいジャパネットはどういう企業でしょうか。

髙田 創業から29年間、創業者である父が圧倒的な存在感とパワーで会社を引っ張り、そこに社員がついていくという文化でやってきました。ですがこれからは、組織としての目標をはっきり設定し、それに対して一人ひとりの社員が自分の意思で走っていく会社に変えたいと思っています。父はホームランバッターでしたが、私は監督。社員が楽しみながら成長できる環境づくりを心がけています。

 変化に戸惑う社員も多くいましたが、「僕も36歳で社長をやるから、みんなも背伸びして頑張ろう」と伝えてきました。その結果か、ここ数カ月の間に社全体で取り組もうという一体感が生まれましたね。



守りを固め、時には大胆に

竹中 お話を伺うと、創業者と二代目で役割分担がはっきりしていて、非常に戦略的なガバナンスだと思います。前社長はやんちゃ坊主のようなところがあり、チャレンジャー。かたや新社長は非常に円熟した経営者のような印象を受けます。

 私の地元、和歌山県紀州出身の江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗は本来わんぱくな性格。しかし、思いがけず将軍になった時期は問題が山積みだったので、円熟したリーダーとなって周囲を取り込み地盤を固めていきました。

 旭人社長はここまでの9カ月、前社長の作り上げてきた組織を堅実に引き継いできたように見えます。しかし、いつかは思い切った決断をしなくてはいけない経営段階が必ず来る。その時について考えることはありますか。

髙田 その段階は私にとってまだ未知の世界です。実は社長に就任してすぐに会社を潰してしまった経営者の方の本を5冊ほど読みました。逆に、何世代にも渡って続いている企業を見ると、1代で1事業ずつのペースで新しいことを始めていたりする。自分にもいつかそういうタイミングが来ると思っています。

 5年後か10年後かわかりませんが、ビビッとくる瞬間があれば思い切った決断はできると自分で考えていますし、常にチャレンジ精神を持ち続けてタイミングを逃さないようにと思っています。ただ、父の代からずっと攻め続けてきた会社なので、まずは守りを固めて成熟した攻め方を探っていきたいです。

竹中 1日1商品をその日限りの特別価格で紹介する「チャレンジデー」を発案されたのは旭人社長だとか。当時、先代社長は反対されて、半ば押し切る形で実施に至ったと聞きましたが、そこまで強い想いを持っていたということですね。

髙田 そうです。父は大抵、直感で行動したら結果が出て、成功した理屈を後付けで考えるという経営スタイルをとっていました。ある意味天才的です。逆に私は、直感ではなく理屈で事前に考えて正しいことを何か見つけてみようと考えました。

 ある商品を工場が暇な時期に大量生産してもらい、ジャパネットで1日限定で販売する。それならば価格に乱れも与えず、中間のあらゆるコストも削ることができるという話から始まった企画です。しかし同時に在庫を何万台と抱えるリスクが伴います。売れ残ったらその値段ではもう絶対紹介しない。初めての試みだったこともあり、父は提案したときには難しいだろうと反対しました。

 しかし、いざ本番となると父が一番力を入れていて感服しました。自分が反対したものに対しても、時間をかけることを惜しまない。成功した時も父が一番喜んでいて、「俺は駄目だと思ったよ」と言われた時に、この人にはかなわないなと思いました。

竹中 ハイリスクハイリターンなチャレンジをされたわけですよね。そこは、さすがチャレンジャーの血を引き継いでいるなと感じます。そして、なにより成功の陰に前社長の包容力がありますよね。私も小泉さんと一緒に仕事をしていて、この人にはかなわないと思ったことが何度もあります。我々と違う目線でどこか遠いところを見ている感覚ですよね。そこから学べることはすごく多いと思います。



「今を生きる楽しさ」を!

竹中 マーケットが小さくなると先ほども話しましたが、そういう場面になると大抵M&Aを考えると思います。そうした一般論を聞いて、ジャパネットが今後進む道はどこにあると考えられていますか。

髙田 これまでずっと父の側にいて、当社の実績に関して景気や環境のせいにするところを見たことがありません。そのため、市場がしぼむという発想を僕も持たなくなっています。良いか悪いかはこれから証明するしかありませんが、今売上が1500億超の会社なので、良い物を見つけてきて徹底的に磨くだけでさらなる成長を見込むことは可能です。そのためには、商品カテゴリーを広げたり、海外に行ったりと選択肢は幅広い。とにかくジャパネットとして自信を持って紹介できるものを送りだすことを軸に毎日取り組んでいます。

竹中 約1年前、英オックスフォード大学でAIなどの研究を専門とするマイケル・オズボーン博士が、10年後に現存の職業の47%が無くなると発表しました。スポーツの審判員やレジ係、修理工などが挙げられ、その中に通信販売もあります。テレビではなく、ダイレクトにネットを通じて購入する人も増えているでしょう。そうしたトレンドに合わせてかなり時間をかけて次のステージに行く準備をしていく必要があると思います。

髙田 変化への対応力が試されますね。ジャパネットとしては、審判や家事がロボット化されるとなれば、ロボットを販売するチャンスが増えると思っています。それに、ロボットのように技術革新で便利になることもあれば、感情や情緒というところで人間の方が優れている点もまだまだあると思います。例えば、テレビショッピングの映像を撮る際に機械操作のオートカメラでやるところもありますがジャパネットは人が持ちます。やはり理屈を超えた良さがありますし、これからも貫いていきたいところです。

竹中 おっしゃる通りです。47%の仕事がなくなれば逆に新しく出てくる仕事が必ずある。時代の流れを読んで対応していくことが非常に重要になってきます。変化を好機と捉え、発展につなげていく強さがあると期待しています。

髙田 最終的に目指したいのは、ジャパネットと社員のやりたいことが一致している形です。全員が『今を生きる楽しさを!』という共通の軸を持って、様々な角度から世の中に貢献していくことが夢です。

竹中 これは割とマーケティングで使うことかもしれないけど、WantsとNeedsは違うと。Needsは実際に物を買いたいという気持ちですが、Wantsは何かわからないけど欲しいという感情。今はいろんなものが買えるようになったけれど、どこか満足していなくて何かが欲しい。でも何が欲しいのかよくわからないという人が増えています。ジャパネットたかたは、そこに対して常に「これ面白いかもよ」という提案を続けるフロンティアでいて欲しいです。



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