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2015年12月15日

世の中の仕組みを変えよう/べステラ代表取締役社長 吉野佳秀

企業家倶楽部2015年12月号 新興市場の星たち・1


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

P L O F I L E

吉野佳秀(よしの・よしひで)

1941年生まれ。愛知県出身。1974年べステラを設立。2002年、東京都に本社を移転。2004年7月、「りんご皮むき工法」の特許を取得。2010年4月、ロボット解体「りんご☆スター」開発。2015年9月、東証マザーズに株式上場を果たす。

 



ストップ高で値が付かず

 高速道路を走行中に車窓から緑色をした球形の貯蔵用タンクが見える。ガス会社が保有する大型のガスタンクだが、不要になった場合、どのように解体するのだろうか。化学工場などのプラント解体を専門に請け負う会社ベステラが、9月2日東証マザーズに株式上場した。

 「造った人には壊すことは難しい」

 「解体するときは造ったときの逆をやればいいという思い込みに、私たちは『ノー!』と言うところからスタートした」と社長の吉野佳秀はユニークな発想の持ち主だ。

 株式上場日、ベステラの株価は公募価格2500円を25%上回る3125円で初値形成後も上がり続けた。その後もストップ高となる日もあり、10月8日には年初来高値1万1870円を付けた。なぜ、それほどまでに人気が出たのか。理由は2つ考えられる。

 1つ目は、もともと新規公開株は公募価格が割安に設定されているため、多くの銘柄で初値が公募価格を上回ること。1日で投資額の倍になることもしばしば。抽選に当たった投資家はその差額分が利益となるため、プラチナチケットとして人気があるのだ。それを考慮しても、公募価格の4.7倍の値を付けたのだから、ベステラ株の人気は目を見張るものがある。

 2つ目は、ベステラの成長性だろう。1960年代の高度成長期にともない建設された製鉄所や化学工場だったが、急速に老朽化が進んでいる。新しい設備の性能が上がり、日本経済の成熟により以前ほどの生産量が不要になるなど、今後も過剰設備の廃棄が増加する傾向にある。そんな追い風もあり、ベステラの事業は将来性があると見込まれ、個人投資家を中心に株が買われているという訳だ。

 足元の業績もそれを裏付けている。2015年1月期の売上高は30億6000万円、経常利益は3億8800万円。2016年1月期の売上高は37億円、経常利益は4億3900万円と増収増益を見込む。


 ストップ高で値が付かず

特許工法の知的財産が強み

 ベステラが得意とする化学プラントの解体とはいったいどのようなものか。

 「今から20年ほど前、東京・豊洲にあるガスタンクを眺めていたら、解体法を突然ひらめいた」と吉野は今ではベステラの代名詞となった「りんご皮むき工法」を思い付いたときのことを話す。

 ガスタンクは大きいもので直径40mにもなる。造るのも大変だが、解体するのも一苦労だ。造った人は建設時の逆を考えるので、まず頑丈な足場を組み、手作業で本体を解体し、切断面をクレーンで吊るして降ろすという大変面倒な工程をふむことになる。また、球面の切断面をクレーンで吊るすのは不安定で安全面のリスクも大きい作業となる。

 しかし、吉野の思い付いた解体法ではまず足場を必要としない。球状のてっぺんに溶断ロボットを取り付けるとりんごの皮むきと同じ要領でタンクの表面を1.5 m幅で切断していく。切断された部分は重力で自然に渦を巻きながら降りてくる。足場を組まないことで工期は短縮され、さらにクレーンを使わず高所での作業がなくなるため安全性が大きく向上するというメリットもある。工期が短くなればコストパフォーマンスも上がり、一石二鳥どころか一石三鳥となるのだ。「より安く、早く、安全に!が我が社のモットー」と吉野は経営信条について語る。

 「りんご皮むき工法」といった他に類を見ないユニークな知的財産が評価され、現在では製鉄・電力・ガス・石油などの高い安全性と高度な技術力が必要とされるプラント解体業界でベステラの存在感は増している。現在取得済みの特許は14件、申請中のものが5件ある。

 「りんご皮むき工法の記事が新聞に載ったその日に大手ガス会社から『相談があるから、すぐ来て欲しい』と電話があった」と吉野は目を輝かせて話す。

 「実際の工事を通して検証を繰り返し、新たな技術を確立できるのが他社にない強み。更には特許工法まで高めて、プラント・スクラッピングのリーディングカンパニーを目指す」と吉野は夢を語る。


特許工法の知的財産が強み

IPO後の成長戦略

現在、吉野が注力しているのがプラント設備を3Dデータ化する新規事業だ。実は2005年以前に建てられた建築物の多くは2次元の図面しかない。化学プラントを所有する会社の人間でも、現在自社の施設内にある設備や建造物の実態を把握することは想像以上に難しい。建設されたのが40年前ともなるとアナログの青焼きの図面しかなく、しかも度重なる仕様変更や増設で最初の図面と実際の建造物が違うことも多い。

 また、長い間に担当者の引継ぎがうまくされていないケースもある。震災があってから、発電所や化学プラントの施工・改修のため、施設をデータで把握する必要性が大きくなっているのだ。

 そこで、ベステラでは3Dスキャナを使って施設を3Dデータ化するサービスを始めたところ、老朽化した設備を解体・補修を検討する企業から引き合いが多くなっている。一度CADデータとしてデジタル化すると、図面を読む専門性がない人でも情報を共有化できるメリットがある。データはPCで管理できるため、工事を行う現場のみでなく、資材の調達部門や決裁を行う経営陣とも情報を共有でき、便利である。

 「3D計測事業を今後の収益の柱に育てたい。そのため数千万円もする最新鋭の3Dスキャン購入など設備投資も決め、今後は人員も増やす」と吉野は新規事業への意欲を見せる。

 吉野は常に社員に対しても、自由な発想をするように促している。

 「思い込みをなくし、世の中の仕組みを見直してみよう」が吉野の信条。毎週火曜日には新しい発想で事業を考える「卵の会」を開いている。3Dデータ化や人材事業も卵の会から生まれた。これからも新しいアイデアを生み出し、社会があっと驚くような工法を発明していくことだろう。



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