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トピックス -企業家倶楽部

2016年01月04日

莫煩悩/良品計画前会長 松井忠三

企業家倶楽部2015年12月号 私の信条・上


 煩悩(ばくぼんのう)。「汝、煩悩する莫れ」、すなわち「あれこれ考えずに正しいと思うことをしなさい」という意味です。この言葉に出会ったのは、良品計画の社長として赤字経営からの再建に取り組んでいた最中でした。

 私の社長就任は2001年1月。明確な再建策などない中でのスタートでした。課題は山積みで、まずは各店舗の状況を把握する必要性を感じて店舗回りを始めました。すると思いの外、店長たちは元気でした。日々顧客に接する彼らは、業績悪化によって「お客様のため」との思いがさらに強くなったのでしょう。その一生懸命な姿を見て、私は救われました。

 しかし商品に目を向けると、店頭には前年や前々年の商品を大幅値引きしたものばかり。もちろん古い衣料品など全く売れません。このままではダメだと、断腸の思いで在庫を全て焼却しました。締めて原価で38億円分です。

 現場を歩くことで、少しずつ店舗や商品の実態が明らかになりました。それらの課題を一つひとつ改善していったのです。直営店の1割にあたる赤字店舗を閉め、無駄な経費を徹底的に削減。海外店でも人員整理を敢行しました。




 悩みながらも改革を進めていた時、偶然見たテレビ番組が私の迷いを払うきっかけとなりました。それはNHK大河ドラマ『北条時宗』で、元が圧倒的な武力で鎌倉幕府に降伏を求め、その侵攻が避けられなくなっていたのです。勝ち目の薄い相手に対して戦うか降伏するか。その決断を迫られたのが、幕府の最高権力者だった北条時宗でした。負ければ、武士たちはおろか庶民にも多数の犠牲が出ることは必須。非常に重い決断です。しかし、トップである彼には幕府内に相談相手もおらず、思い悩む日が続きます。そんな彼の窮地を救ったのは、ある一人の男でした。名を無学祖元と言う聡明な禅僧で、時宗が彼から教えられたのが「莫煩悩」です。その後、時宗はついに戦う決心をします。自分がすべきだと思ったことのために最善を尽くそうと考えたのでしょう。私には、そんな時宗が自分と重なって見えました。経営再建のために手を尽くしても良品計画の再生に繋がるかどうかは分からない。それでも、信じる道を行こうと決意したのです。

 すると、2002年の秋に少し希望が見え始めました。社長就任から約1年半後のことで、業績が増益になったのです。店舗を閉めたことで店舗運営の営業赤字がなくなり、一方で経費も下げたことで、その年の売上げは98億円、経費が95億円になりました。売上げと利益が増えたのではなく、経費削減結果の業績改善です。リストラなど打った手の効果が出始めたのです。私自身も、今の方向性で間違っていないと手応えを感じました。

 そこからは商品の改良にも着手しました。売上げ状況が悪かった衣料品を立て直すために、ファッションデザイナーの山本耀司氏と提携して衣料品を制作、生活雑貨でも「ワールド・ムジ」プロジェクトを開始。世界を代表するデザイナーと海外発の商品というコンセプトが顧客の心を掴み、売上げが急激に増加しました。ここまで来てようやく、負けの構造から勝つ構造に変わり始めました。「莫煩悩」に従い行動した結果が、復活劇を導いたのです。



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