トピックス -企業家倶楽部

2016年01月05日

ガルシアへの書簡

企業家倶楽部2016年1/2月号 視点論点


 頭の中にあるイメージを言語化し、相手が理解できるような言葉に咀嚼するのはテクニックを要する。リーダーと呼ばれる経営者は得意とするところであろう。そんな時に役立つのが、例え話である。10年前なら野球などスポーツに例えて役割分担や適材適所について教えることが出来ただろう。しかし、最近の若者は野球を知らない人もいる。漫画の「ワンピース」や「進撃の巨人」の方が分かりやすいのだろうが、私が知らない。もはや若者との共通言語がないのだろうか。いや、そんなことはない。

「企業家精神」や「当事者意識」といった概念がどのようなものであるかを伝えるのにうってつけの物語があるので紹介したい。「ガルシアへの書簡」をご存知の方もいるだろうが、まだ知らない方のためにも是非お勧めしたい。僅か数ページの冊子なので、弊社では新入社員やインターンの学生にも推薦図書として読ませている。が、これが効果てき面なのだ。誰かに仕事を手伝ってもらいたい時など、候補者を募ると主体的に手を挙げる者が増える。初めての仕事には誰もが尻込みするものだが、何から何まで先輩に聞くのではなく、自ら考えて行動するようになる魔法の物語である。

 この小冊子は日露戦争の際、ロシアの捕虜が全員この冊子を持っているというので日本語にも翻訳された。明治天皇がそれを読むと、全ての軍人と役人に配布するよう命じたという。

 もともとは米西戦争の話である。アメリカのマッキンリー大統領はキューバ反乱軍のリーダーであるガルシアに提携をするため、書簡を渡す必要があったが、山奥のどこにいるのか誰も知らない。誰かが大統領に進言した。「ローワンという人物がいます。必ずやガルシアを見つけ出すことでしょう」。かくしてローワンが呼ばれ、大統領はガルシアへの手紙をこの人物に託した。

 ローワンが米西戦争のさなか、海を渡りキューバの海岸に姿を現すと敵地であるジャングルを自分の足だけを頼りに通り抜け、どのように仕事を遂行したのかはここでは書かない。




 重要なことは、ローワンが大統領から書簡を預かる際に、「ガルシアはどこにいるのですか」とは尋ねなかったことだ。

 なんと頼りになる人物であろうか。仕事とは、言われたことをただすればいいのではない。自分が求められていることを正しく理解し、自らが持つあらゆる能力を駆使して、求められた以上の成果を生み出すことに価値があるのだ。当事者意識を持ち主体的に行動する人物とそうでない人の違いは一目瞭然である。

 試しにあなたの周りにいる部下を呼んで、「明日の会社説明会用のスピーチの資料を作って欲しい」と頼んでみてほしい。その部下は「分かりました」と言って、直ぐに仕事に取り掛かるだろうか。「スピーチをする対象は誰ですか」、「持ち時間は何分間で、どんなテーマにしましょうか」、「前回の資料はありますか」、「私ではなく、彼の方が適任ではありませんか」・・・。あなたの期待に応えるローワンのような人物が社内にどれだけいるだろうか。一人でもいたら、あなたはラッキーな方かもしれない。

 以前、ある経営者に「当事者意識とは何ですか」と質問したことがある。その経営者は「私は常に自分が総理大臣だったら日本をどうしたいのか、食事で入った店の店長だったらどのようなサービスをするか、はたまた報道番組の司会者だったらどう伝えるかと考えるようにしています」と教えてくれた。普段から食事をする際には、ただ美味いまずいといった客の視点だけでなく、従業員の数と客の入り具合はどうか、店の照明はどうか、店員の接客態度はどうか、トイレは清掃されているかなど、自然に目が行ってしまうという。経営者の皆さんには思い当たる節があるのでないか。意識せずとも当事者意識を持っているのがリーダーの証なのだ。職業病とも言えるかもしれない。

 重要なのは、一人ひとりの社員にどのようにして当事者意識を持ってもらうかだ。世代の違う若者でも理解できる例え話やエピソードをあなたはいくつ持っているだろうか。(K)



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