トピックス -企業家倶楽部

2016年01月07日

多様性溢れる貿易国家シンガポールの現在

企業家倶楽部2016年1/2月号 緊急リポート シンガポール視察記


2015年に建国50周年を迎えたシンガポール。交通の要衝として類まれなる飛躍を遂げてきた同国には、日本からも多くの企業が進出する。様々な言語、人種、宗教が混在する中、繁栄を享受してきた貿易国家の今に迫る。




 シンガポール・チャンギ国際空港から車に揺られること約30分、高速道路の左手に異様な建造物が見えてくる。マリーナ・ベイ・サンズ。今やシンガポールの顔と言っても過言ではない、リゾートホテル兼大型商業施設である。そびえ立つ三本の高層ビルの上に巨大な船が悠々と腰を下ろす様は有名だが、初めて実物を見る人には驚きと感動を与えることだろう。

   頂上のオブジェがプールやバーになっているのはご存知の通り。かろうじて北半球に位置するとはいえ、北緯1度のシンガポールはまさに赤道直下、常夏の国だ。年間平均気温は27.4℃を誇り、日本が真冬の1、2月でも大手を振ってプールに入れる暖かさである。

   エレベーターを乗り継ぎ、ホテルの宿泊者しか立ち入ることの出来ないプールに向かうと、あたかも天動説を根拠として中世に描かれた地球の果てのような光景が広がっていた。端まで泳いでいくと、そのまま真っ逆さまに下へ落ちてしまうのではないかという錯覚に陥るが、大丈夫。万が一にも人が落ちてしまわないよう、壁が二重三重の構造になっており、体が外に投げ出されることはまずありえない。

   その防護策が施された端から外に向かって顔を出すと、港湾に沿って林立するシンガポールの金融街が一望できる。シンガポール証券取引所が置かれているのはもちろん、UBS銀行、HSBC銀行、三菱東京UFJ銀行など、世界に名だたる金融機関が支社を構えるこのエリアは、まさに東南アジアのウォールストリートだ。



罰金大国シンガポール

 街に繰り出すと、とにかく綺麗で衛生的なのに驚かされる。それもそのはず。シンガポールは法規制が厳しいので有名だ。ゴミのポイ捨て、ツバや痰の吐き捨て、喫煙所以外での喫煙は、全て最高1000シンガポールドル(約9万円)の罰金。鳥に餌をやったり、公衆便所の水を流さなかったりしても処罰の対象となる。

 地下鉄の車内にはご丁寧に罰金の価格表が貼られている。それによると、飲食は500Sドル(約4万5000円)、喫煙は1000Sドル(約9万円)、火器持ち込みは5000Sドル(約45万円)を取られるようだ。ちなみに、その強烈な臭いからドリアンも車内持ち込み禁止。NOドリアンである。マラリア対策のため、大きな水たまりを作ると罰金または懲役という法律も。チューインガムは国外から持ち込むこと自体が禁止で、これに違反すると1万Sドル(約90万円)の罰金を取られるので要注意だ。

 罰則が厳しいと言えば、交通ルールも同様である。横断歩道や歩道橋を利用せずに道路を渡ると、罰金50Sドル(約4500円)を取られる。東京の渋谷や六本木で見受けられるように、大通りは地下通路を経なければ横断できず、しかも下へ潜ると地下街が発展しているため、入り組んでいて迷うこともしばしば。慣れていないと、歩行者にとっては不便な街に映るかもしれない。

 無論、自動車側に対する規制も厳しく、交通量の多い大通りでタクシーを拾うことは不可能。日本では、停車禁止の場所でも多少の乗降ならば大目に見られるが、シンガポールの駐停車禁止区間で手を挙げてもタクシーが止まってくれることはまず無いだろう。

 では、現地の住民はタクシーに乗らないかと言うと、そんなことはない。むしろ、自動車保有には金がかかる他、物価の安い隣国マレーシアで給油させないためにガソリンを半分以上入れて走行せねばならないという法律があるなど面倒事も多いため、安価な交通手段としてタクシーを活用する習慣がある。

 ちなみに、東京で700円はする初乗り料金が、シンガポールでは3Sドル(約260円)。また、日本で1kmにつき300円以上加算される距離料金も、現地では0.55Sドル(約50円)と割安だ。

 実は、シンガポールではスマートフォンのタクシーアプリが普及しており、現地人はそれを使って配車するのが一般的となっている。ただ、2~3日の旅程のためにアプリをダウンロードし、高額を叩いてインターネットに接続してまでタクシーを呼ぶ観光客は少ないだろう。ホテルや大きなショッピングモールのタクシー乗り場に行くか、地下鉄を利用した方が無難かもしれない。


罰金大国シンガポール

多くの日本企業が進出

 さて、金融街を離れ、シンガポールの目抜き通り「オーチャード・ロード」に向かうと、買い物客で賑わう様子がご覧いただけるだろう。高島屋や伊勢丹(2015年12月現在は店内改装につき全館閉館)があるのもこの通り。高島屋内には紀伊国屋書店が大きな店舗を構え、英語や中国語だけでなく、日本語の書籍も取り扱っている。店内の一部が日本発の漫画で占められており、フィギュアなどのグッズも販売しているあたり、ここにも「クールジャパン」の波が押し寄せているようだ。


多くの日本企業が進出


 通りの中でとりわけ目を引くのは、巨大ショッピングセンター「IONオーチャード」。地上4階、地下4階に渡って展開する約350もの店舗の中には、プラダ、ルイ・ヴィトン、ディオールといった世界ブランドたちに交じって、ユニクロ、サマンサタバサ、無印良品、ダイソー、和民、星乃珈琲店など、日本企業もズラリと並ぶ。




商品にもよるが、値段は日本と比べ若干高め。外の暑さに対してモール内は異常なほど冷房が効いているためか、ユニクロでは常夏の国ながらヒートテックやウルトラライトダウンまできちんと販売しているので面白い。無印良品も雰囲気は日本と変わりなく、商品コンセプトが世界共通であることが伺える。



高層ビル群からアラブ街まで

 目抜き通りでブランド品を買い漁るのもいいが、せっかく異国の地に来たからには街を歩いてみるのも一興だ。シンガポールの国土面積は718・3km2と、東京23区(621km2)より若干広い程度。1、2日あれば主要な観光名所は回れてしまう。

 地元の活気に触れたければ、「ホーカーズ」と呼ばれるフードコートには是非足を運んでほしい。ホーカーとは屋台の意。そうした小さな店が集まる一角で、チキンライス、チリクラブ、ラクサ(少し辛めのスープに米麺が入ったもの)といったシンガポールの誇るローカルフードを食べるのである。席を確保するのも一苦労というほど混み合っているが、地元の味を楽しめること必定だ。

 


高層ビル群からアラブ街まで


  また、シンガポールを歩くとその文化的・宗教的な多様性を目の当たりにすることだろう。言語は英語、中国語の他、マレー語、タミル語が公用語となっており、学校教育などにおいても平等に扱われている。人口構成は中華系74%、マレー系13%、インド系9%、その他4%。世界では宗教上の対立に端を発する争いが絶えないが、この地では仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教が共存している。

 アラブストリート(アラブ人街)に向かえばスルタンモスクが出迎えてくれ、エキゾチックな衣服や装飾品を買うことも可能。そのすぐ隣のリトル・インディア(インド人街)では大きな蚤の市が開かれており、絨毯から楽器まで様々な商品が並ぶという具合だ。




 この国は、現地の女性が「夜遅くまで外出していても身の危険を感じない」と太鼓判を押すほど治安が良いため、夜まで観光を楽しめる。オシャレなバーや、噴水ショー、ライトアップ鑑賞などにも気軽に出かけられよう。

 美しい夜景を見たければ、観覧車「シンガポール・フライヤー」がオススメだ。流石に「世界最大」を謳うだけあり、マリーナ・ベイ・サンズから金融街、街をかすめる高速道路を走っていく自動車まで、全てが芸術作品の一部のように感じられる。

 もっとアクティブに動きたい方は、街の中心部からタクシーで20~30分ほど走ればナイトサファリにも行ける。ここでは「夢を食べる」という迷信のあるバク、「サバンナの掃除屋」の異名をとるハイエナなど、多くの珍しい動物たちを近くで見られる他、園内で行われるショーで可愛らしい動物たちの披露する一芸を楽しんだり、生きた大蛇に直接手で触れたりすることも可能だ。

 マリーナ・ベイ・サンズのカジノに行く際はご用心を。ドレスコードは厳しくないため、パスポートさえ提示すればジーパンにTシャツでも無料で入れるが、タダより怖いものは無い。観光客が無料で入れる一方、政府が自国民には100ドルの入場料を課していることが示唆するのは、「外貨を稼ぐため」という意思表示だけではないだろう。カジノは来場者の大部分が負けて帰るという。他国民である私たちも、「ほどほど」を心がけねばなるまい。

 近代的な高層ビルがひしめく金融街からエキゾチックな雰囲気のアラブストリートまで、見所満載のシンガポール。多種多様な人間が混在するこの地に、一度足を踏み入れてみてはいかがだろうか。(相澤英祐)



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