• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2016年01月26日

挑戦と失敗を繰り返しピンチをチャンスに/ハウステンボスの強さの秘密

企業家倶楽部2016年1/2月号 ハウステンボス特集第2部 


   肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

   

世界一、世界初を標榜するイベント企画力で、来場者を飛躍的に伸ばすハウステンボス。しかし、その再建の道のりは決して平坦ではなかった。多くの挑戦と失敗を糧に前進を続けてきた同社は、いかにして生まれ変わり、どのような強さを身に付けたのか。その秘密に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・企画力

世界一、世界初を標榜

「狙うは世界一、世界初。これだけは外せない」

 次々と新しいアトラクションを立ち上げ、お客を飽きさせないハウステンボス。その再建を指揮した社長、澤田秀雄が語る企画力の極意は、ナンバーワン、オンリーワン戦略にある。

「常に新しいことを考えている」という彼は、次はどんなイベントでお客を喜ばせようかと、1年以上前から思索を巡らす。社員から提案を募ったり、世界を回って面白い要素が無いか探したりすることもあるという。

 社内外から集まるイベント案件を一手に取り仕切る専務取締役の髙木潔も「企画は進化が肝心」と気を緩めない。「毎年アトラクションが代わり映えしなければ、最初は感動していたお客様も徐々に慣れてしまい、リピーターになっていただけない」と危機感を募らせる。

 また、一度面白いアトラクションを作ると、良くも悪くも次の期待値が高まるため、それ以上のものを生み出さねば相対的にお客をがっかりさせることにもなりかねない。

 テーマパークはリピーターが命。新規顧客にだけ頼っていてはジリ貧になってしまう。一度来たお客にも更なるサプライズを提供するため、常に進化し続けねばならないのだ。

 例えば、1300万球のLEDを使用した「光の王国」。世界最大級を謳うだけあり、圧巻のこのイベントも、もれなくブラッシュアップの対象となる。澤田は「2014年は光の運河、2015年は光の滝でした。2016年にどんな新しいイルミネーションが登場するか、皆さんの驚く顔を見るのが楽しみです」とニヤリ。その笑みの向こうに、自信のほどが伺える。

 事実、ハウステンボスは来場者を伸ばし続け、新規顧客・リピーターの双方を巻き込んで現在年間300万人超が訪れるテーマパークとなった。実はこの数、再生前の実に2倍以上である。

 夜のイベントを充実させたことで宿泊客は2010年9月期の25万人から2015年9月期には34万人まで拡大。結果としてハウステンボス系列ホテルへの宿泊代が儲かるだけでなく、園内での滞留期間が長くなることで夜のディナーや翌日の朝食を楽しむ機会が増え、客単価も向上している。

3世代で楽しめるのが魅力

 これほどの成功を掴みながらも、さらなる高みを目指すのが澤田という企業家。彼がハウステンボスを採点すると、未だに「57点」という。時に微増、微減するが、要するに及第点(60点)には届いていないという意思表示だ。

 イベント会場のバックヤードが汚れていたり、手すりが少しでも錆びていたりしようものなら、即刻減点。細かい部分にまで神経を行き渡らせ、その場で改善を行う。普段は温厚な澤田だが、何度注意しても直らない場合には叱責も辞さない。年間の3分の1から半分はハウステンボスに居を置いているという本気度で、当然スタッフ一人ひとりに至るまで徹底力が浸透している。

 そんな彼らが作り上げたのが、ハウステンボスの誇る5つの王国。すなわち、前述の「光の王国」に加え、「花の王国」「音楽とショーの王国」「ゲームの王国」「健康と美の王国」である。これをいずれは7つに増やし、さらにその中で新陳代謝していく。

 これだけ多くの王国を作っても、東京ディズニーリゾート(TDR)の1.6倍と言われる敷地にはまだ余裕がある。再建前は、この広さが閑散とした雰囲気を醸し出してしまい、かえって仇となっていたが、今では活気がある中でもお客がゆったりと楽しめる効果をもたらしている。TDRのように何時間も並ばなければ入れないアトラクションが無い分、心にゆとりを持って楽しむことができるのだ。

 お客を見ているとシニア層の多さが目立つ。子どもに人気の「ゲームの王国」がある一方で、世界から一流のアーティストを呼んで広場で演奏してもらったり、ハウステンボス歌劇団によるショーを定期的に開催したりと、大人向けのアトラクションも多い。

 もちろん、イルミネーションや、建物などに立体的な映像を投影するプロジェクションマッピングといった世代共通で楽しめるイベントもある。子ども、カップル、家族連れ、シニアに至るまで、3世代に渡る広い客層をターゲットに、それぞれが感動するプログラムが提供され、人気を博している。

文明堂の社長が絶賛

 サプライズという点では、新規店舗と商品開発を担う執行役員の早坂俊も負けていない。彼は「商品を選ぶのは、あくまでお客様でなくてはならない」という信念の下、カステラ、ワイン、チーズなどを実際に食べ比べ・飲み比べした上で自分が最も美味しいと感じた商品を選んで購入できる「城」シリーズを考案、大成功を収めている。

 そんな彼が「カステラの城」を作って3日目。お客が50メートルもの大行列を成し、嬉しい悲鳴を上げている最中に事件は起きた。社員が早坂の下に駆け込んできて、「文明堂の中川安英社長が来られています」というのだ。

 文明堂と言えば、誰もが知るカステラ界の老舗。そこの社長が突然押しかけて来たとなれば、どんな苦言を呈されることか。会うや否や、腰を低くして丁重に謝る早坂。すると、中川から思いもかけないセリフが飛び出した。

「あれはすごいわ。感動した。あんなことは、僕らの業界ではできない」この大絶賛に恐縮した早坂だが、「褒められついで」に新たな企画を提案するのも忘れなかった。なんとその場で、最高級のカステラを共同で作る約束を取り付けてしまったのである。こうして生まれたのが文明堂の「金無垢」。これがまた大当たりし、「カステラの城」の名をさらに高めることとなった。


強さの秘密1・企画力

強さの秘密2・選択と集中

限定感が集客に繋がる

 企画力が強みのハウステンボスだが、その運営に関しても確かな戦略性を持っている。

 例えば、前述した大盛況の「光の王国」。このイベントは現在10月末~4月上旬に開催しているが、当初は11月末~1月で行っていた。評判が良いので徐々に期間を延ばしていった結果、約半年間の長期プログラムとなったのである。

 時期を延ばすほどお客は増えていったが、ここで現状に落ち着かないのが澤田。次なる一手を聞くと、「今度はイベントの期間を徐々に縮めていく」というから驚きだ。

 長期間に渡ってイベントを開催していると、お客が「いつ来ても大丈夫」と安心してしまい、集客が間延びする。限定感を出すことで、来場者をその期間に集中させられる上、迷っている潜在客も獲得できるというわけだ。まさに、顧客心理を突いた施策と言えよう。

 こうした考えに至ったのは、澤田がハウステンボス再建を開始したばかりの頃、花火のイベントを見たのがきっかけだ。花火は毎日のように打ち上げられていたが、その間わずか1~2分と明らかにインパクトに欠けた。「これではお客様は感動しない」と察した澤田は小規模の花火を止めさせ、代わりに世界中から花火師を呼んで来て約20分のイベントに改善。花火の数もどんどん増やすと、それを目当てに来るお客も増えていった。

 しかし、そこで予想外の事態が発生した。イベント規模を拡大し続けた結果、逆にお客が減ってしまったのである。「花火はいつでも見られる」と踏んだリピーター客が離れていったのが原因だった。

 そこで今度は「九州一」を銘打ち、2時間に渡る一大花火大会を開催した。限定イベントということもあって、これが大当たり。1日で3~4万人のお客が集まり、約4億円も売り上げた。澤田は「何事も程々が重要。イベントも選択と集中に限る」と肝に銘じた。

経営資源を有料ゾーンに結集

 選択と集中は、ハウステンボスの再建当初から澤田がとってきた施策である。せっかく入場料を払ってもらっているのに、園内は閑散としており、店もろくに開いていない。これでは失望されても当然と考えた彼は、ハウステンボス内をフリーゾーンと有料ゾーンに分けた。

 フリーゾーンはお金を払わずとも入れるため、たとえ電気が消えていても不満が噴出することは無い。一方、有料ゾーンにはきちんとコストをかけ、店を全てオープンした上、灯りも付けて賑やかな雰囲気を創出。これにより光熱費は1~2割削減され、予算全体を見ても3分の1をカットするに至った。

 実は、選択と集中を行って経営資源を投入するのは澤田がエイチ・アイ・エスを創業して以来の得意技。ハウステンボスの再建においても、この戦略が大いに当たったというわけである。


強さの秘密2・選択と集中

強さの秘密3・失敗から学ぶ

入場無料でもお客来ず

 数々の施策により、18年連続で赤字だったハウステンボスをたった半年で黒字化した澤田。その経営手腕を評して、「澤田マジック」と讃える人もいる。もちろん、約10回もの社長交代を経て彼がトップに就任し、見事に再生を果たした事実を鑑みれば、そうした見方もできよう。しかし、その成功の裏には、数々の失敗があった。

 澤田がハウステンボス再建に際してまず行ったのは、価格破壊。彼の出身元であるエイチ・アイ・エスのお家芸であり、圧倒的な安さを武器にお客を引き込む作戦に出たのだ。夕方以降の入場料を3000円から2000円、1000円と徐々に引き下げ、それでもお客の入りが芳しくないと見るや、なんと限定的にタダにしてしまった。

 その結果、どれほどの集客効果が上がったのか。予想に反し、無料ですらお客は入らなかったのである。

「これまで得意としてきた手法が通用せず、ショックでした」

 流石の澤田も意気消沈したが、彼はこんなことでへこたれる男ではない。

「お客が入らない理由は、価格とは別のところにあることが分かった」と前向きに捉えた。ならば、次はどうするか。

 その頃は、ハウステンボスには自信を持って薦められるアトラクションが無く、雰囲気も暗くて寂しかった。お客が楽しいと思えるイベントを企画すれば、必ずや多くの人が喜んでやって来るだろう。問題は値段ではなく、コンテンツにあることを悟ったのである。

陶器市で大失敗

 そこで澤田が音頭をとって2011年11月に開催したのが、陶器市。九州には有田焼をはじめとして陶器の名産地が多い。「これを引き金にすれば、多くの来場者が見込めるはず」。澤田は入場価格を元に戻し、イベントで勝負をかけた。

 しかし、これもまた大失敗。全く人が集まらなかったのである。なぜ上手く行かないのか。広く意見を求める澤田に対し、社員の一人がポツリと言った。

「社長、有田焼の陶器市には歴史がありますし、もっと規模の大きいものが既にあちこちで開催されています。片や、うちの冴えない陶器市なんか、わざわざ入場料を払ってまで来るわけありませんよ」

「馬鹿野郎、それを早く言え!」

 普段は温厚な澤田だが、イベントの企画段階で発言しなかった社員をなじった。一方で、中途半端なイベントではお客に見向きもされないことを学んだ。

100万本のバラ祭が大ヒット

 そうした失敗が連続する中、ついにヒットする瞬間が訪れた。企画の一つとして打ち上げたバラ園が大盛況となったのである。

 実は、この企画も元々立ち消えとなる瀬戸際にあった。バラの手入れにかかる金額が億単位と知った澤田が、経費節減のために花を無くしてアウトレットにしてしまおうと考えていたのだ。すると、4月になって美しいバラが咲き始めたではないか。澤田はこれに惚れ込み、「行ける!」と確信した。

「ボタニカルガーデン」という名のこのバラ園も最初は人が集まらなかった。しかし、コンテンツとしての素晴らしさを信じ込んでいた澤田は、呼び込み方を工夫。ヒット曲から取り、キャッチコピーを「100万本のバラ祭」とした。さらにバラの鑑定士も招聘し、「世界で3本の指に入る」とのお墨付きをもらうや、「日本一のバラ園」と銘打ったのである。噂は噂を呼び、お客は一気に3~4割激増した。

「お客様は、イメージが湧かなければ来ない。綺麗なバラが咲いているというだけではインパクトに欠けるが、日本一の100万本のバラと言えば、観に行きたくもなる」

 そう語る澤田は、「コンテンツさえ素晴らしければ、値段が高くてもお客様は来る」ことを痛感。同社が今なお「オンリーワン、ナンバーワン、旬のアトラクション」にこだわり続けるのは、こうした試行錯誤の結果なのである。


強さの秘密3・失敗から学ぶ

強さの秘密4 ピンチをチャンスに

不人気だった冬を一番の稼ぎ時に

 バラ園のイベントは成功したものの、そもそも花自体があまり咲いていない冬は「寒い、暗い、寂しい」と言われ、ハウステンボスの弱点とされてきた。通常ならば、「冬に集客が減る分をどこで吸収するか」と考えそうなものだが、そこは名経営者、澤田秀雄の腕の見せ所。「花が無ければ咲かせればいい、暗ければ明るくすればいい」と、園内全体を巨大なイルミネーションとしてしまったのである。

 また、プロジェクションマッピングを日本で初めて導入して話題を呼んだのも、ここハウステンボス。静かすぎて寂しかった園内には大量のスピーカーを導入してエリアに合わせた音楽を流すことで、賑やかさも演出した。

 現在ハウステンボスの主力イベントとなっている「光の王国」はこの延長上にあり、さらなる進化を続けている。これにより、元来不人気であった冬は一気に稼ぎ時となり、学校が休みとなる関係で集客の多かった3月、8月を抜き去った。クリスマスシーズンも相まって、2014年12月の単月来客数は35万4000 人(年間来客数の12.3%)と、今では12月が一番の書き入れ時と言うから驚きだ。

テーマの不在を逆手に取る

 ハウステンボスは、テーマパークという面からTDRやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と比較して語られることが多い。

 TDR、USJ は共に関東、関西という1000万人単位の巨大商圏を擁している他、それぞれディズニーアニメのキャラクター、ハリウッド映画という具合に、軸となるコンセプトが明確だ。映画が上映されるたび、そのキャラクターが登場するアトラクションやイベントを新たに投入することでリピーターも含めた集客が可能となっている。

 一方、ハウステンボスはと言うと、近場の商圏となるのは合計人口100万人にも満たない長崎と佐世保の街。テーマとして思い浮かぶのはオランダの街並みと風車、そしてチューリップといったところだろうか。それはそれで悪くないが、往復の飛行機代と宿泊費を出してまで行こうというモチベーションはなかなか生まれまい。まして、リピートしてまで行こうと思うお客は稀だっただろう。

 コンセプトの弱さという、テーマパークとしては致命的と言っても過言では無い欠点をどのように埋めるか。普通ならばブランディング方法で頭を悩ますところ、澤田の答えは単純明快ながら虚をついたものだった。

「コンセプトが無いというのは、裏を返せば何でもできるということ。テーマに縛られるTDRやUSJには出来ない芸当を色々考えられるのでちょうどいい」

 結果としてコラボすることになったのが、人気アニメ「ワンピース」。作品中に登場する、主人公たちの海賊船「サウザンドサニー号」をハウステンボスに停泊させた。残念ながら、この船はすでにハウステンボスを離れ、現在は同じく澤田が経営する愛知県のラグーナテンボスに居を移しているが、ワンピースとのコラボ企画は今でも継続中だ。

 テーマに縛られずに「旬のもの」を取り入れた事例では、人気アイドルグループのAKB48を呼んだことが挙げられる。その際は、平日の昼間にも関わらず、1万人ものお客が押し寄せ、招いた側の澤田も困惑したほどであった。

 転んでもタダでは起きないのが澤田流。まさに、ピンチはチャンスというわけだ。一般的には悪条件と考えられるような状況すら逆手に取って好機としてしまう逆転の発想が、ハウステンボスの飛躍を支えて来た。

 常に進化し続ける本テーマパークに足を運べば、病みつきになること間違いないだろう。澤田が次はどんな「マジック」を見せてくれるのか、期待に胸が高まる。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

2017年度 第19回企業家賞
骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top