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2016年03月01日

【ベンチャー三国志】vol.36 アメリカ、中国のベンチャーは日本より凄い!

企業家倶楽部2016年4月号 ベンチャー三国志


アメリカ、中国の大手ベンチャー企業の動向を探ってみよう。日本ばかりでなく、アメリカ、中国のベンチャー事情を紹介してこそ、真のベンチャー三国志になる。アメリカでは、インターネットの発祥国らしく、アップル、グーグル、フェイスブックなどが活躍している。アップルの時価総額は6595億ドル(約76 兆円)と世界一であった。中国もネット人口が6億人を超え、世界一のネット王国である。アリババ、テンセント、バイドゥなど、ネットの巨人たちが覇を競う。アリババは2014年にニューヨーク証券取引所に上場、時価総額は一時、25 兆円を超えた。米中の次はインドがネット大国として台頭する。すでに孫正義は自分の後継者にニケシュ・アローラというインド人を就えた。(文中敬称略)

【執筆陣】徳永卓三・三浦貴保・徳永健一・相澤英祐・柄澤 凌・庄司裕見子



アメリカ、中国のベンチャー企業

 ここで、アメリカと中国のベンチャー企業の動向を記しておこう。アメリカはインターネットの発祥国でもあるし、グーグルなどのネット企業を輩出している。中国はネット人口が今や6億人といわれており、世界最大のネット王国である。

 さまざまの企業が活躍している。その活躍振りは日本の比ではない。まず、ネットの発祥国である米国から紹介しよう。

 米国では、まず、アップルだ。スマートフォンのアイフォンを開発し、世界にその名を轟かせた。スティーブ・ジョブズが創業した企業で、もちろん、アイフォンもジョブズが開発した。ソフトバンクの孫正義が一番尊敬している経営者だ。2011年、すい臓がんで亡くなったが、葬式には孫正義も出席した。

 ソフトバンクはいち早く日本でアイフォンを販売し、携帯電話の販売台数を飛躍的に伸ばした。孫はアイフォンを単なる携帯電話とは考えず、「これはポータブルパソコンだ」と定義した。

 そのため、ドコモなどライバル企業がアップルの大量販売契約を躊躇したのに対し、ソフトバンクは「売れる!」と判断し、アップルと大量販売契約を結んだ。この時、ジョブズは部下に向かって、「ソフトバンクと契約したのは、孫社長が創業経営者だからではない。ソフトバンクと組むのが日本で勝利すると思ったからだ」と語った。

 その言葉通り、アイフォンは日本で売れ、ソフトバンクもドコモ、KDDIとともに携帯会社として生き残った。

 アップルとソフトバンクの関係はこれくらいにして、本論に戻ろう。アップルは1976年、ジョブズが創業した。パソコンの全盛時代で、「アップル」というパソコンを開発、製造、販売し、一世を風靡した。それまではIBMやマイクロソフトがコンピューター業界を牛耳っていたが、アップルの登場でステージが代わった。



アップルとグーグル、時価総額で競う

 つい最近まで、アップルの時価総額は2位以下を大きく引き離していたが、2016年2月2日時点でアップルとグーグルなどを傘下に持つアルファベッドが5300億ドル(約64兆円)で並んでいた。現在はアルファベッドが上回っているようだ。

 アップルの売上げの半分以上を占めるのは、創業事業のパソコン部門ではなく、アイフォンなどの端末事業である。それに続くのがアイポッドを中心とした音楽事業。

 端末事業の好調要因は一貫した高価格戦略だ。世界では安価なアンドロイドに比べて高い機能性を持つ高級端末として、確固たる支持を得ている。

 グーグルも健闘している。1998年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが立ち上げた若い企業。検索の最大手で、皆さんもお世話になっていると思う。直近の売上高は187億ドル(約2兆円)、営業利益は47億ドル(5383億円)で、IT企業としてはアップルをしのぐ時価総額を持つ10億人のユーザーが強みである。

 同社の事業は現在7つある。

 ウエブ事業としては、検索エンジンが基幹事業。検索回数は1日当たり30億回に達する。インターネット閲覧ソフトのグーグル・クロームがある。

 メディア事業も強力だ。ご存知、ユーチューブはグーグルの傘下。2006年にグーグルが16億5000万ドルで買収した。1日の閲覧回数は数十億回に達する。

 このほか、自社開発のスマホ向けOS「アンドロイド」、位置情報や広告関連の無料サービス「アドセンス」なども無料提供している。インターネットに欠かせない企業だ。



マイクロソフトも健在

 3番目はビル・ゲイツのマイクロソフト。1975年に創業、瞬く間にIT業界に君臨した。ウインドウズとオフィスの両ソフトを両輪に業績を伸ばした。パソコンのソフトとしては欠かせない。マイクロソフトのソフトなしにはパソコンは動かない。ウインドウズは実に80%強の圧倒的なシェアを誇る。

 このほか、ビジネス部門ではワード、エクセルなどの商品を持ち、このままパソコンの時代が続けば、マイクロソフトの天下が続いた。しかし、インターネットの時代が到来、主役が交代する。

 ある経営者が言っていた。あるステージで王者になったものは、次のステージでは王者になれない。たとえば、大型コンピューターの時代はIBMが王者。パソコンの時代はマイクロソフト。インターネットの時代はヤフー、グーグルという具合だ。スマホの時代はどの企業が天下を取るのだろうか。

 アマゾンはネット通販最大手として台頭して来た。1994年創業だからマイクロソフトに約20年遅れている。IT企業としては第5位の2763億ドル(約32兆円)の時価総額を誇る。

 アマゾンのビジネスは楽天などと異なり、業者の売り場を提供せず、自身で商品を販売する。200万強のアイテムを出品する巨大プラットフォームを持つ。在庫を効率的に管理し、即日発送を可能にした。

 アメリカでは一部地域で生鮮食品・加工食品まで拡大中だ。このほか、「アマゾンキンドル」という電子書籍サービスも手がけている。何と60万冊も揃えた。さらに、「アマゾンMP3」という音楽配信サービスも始めた。将来はドローンを使った「アマゾンプライムエアー」という配送サービスも予定している。アマゾンから目が離せない。

 最後はフェイスブック。時代がポータブル端末(持ち運び可能な)を迎えて、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が増えて来た。SNS時代の覇者がフェイスブックだ。10億人を超えるユーザーがついている。2004年創業だが、時価総額はIT企業4位の3193億ドル(約37兆円)に登る。

 同社のSNSは一般ユーザーが開発したアプリケーションを自由に追加できる点だ。また、実名でないと登録できない点も他のSNSとの顕著な違い。個人や企業が宣伝活動に使う。主な収入源は広告事業である。

 動画広告には、マーケットプレイス広告とプレミアム広告の二種類がある。前者は出稿者が予算と広告掲載の目的を設定できるため、少額でも効率の良い広告出稿を実現できる。



中国ではジャック・マーのアリババが活躍

 次は中国のIT企業を見てみよう。

 中国インターネット協会、中国工業・情報化部情報センターはこのほど、2015年版の「インターネット企業トップ100」ランキングを発表した。それによると、1位はアリババ、2位はテンセント(騰訊)、3位はバイドゥ(百度)、4位はジンドン(京東)、5位はチーフー(奇虎)360となっている。

 収入、利益、マンパワーなどの財務指標のほか、通信料、アクティブユーザー数などの業務指標などを考慮し、さらに会社の規模、社会的影響力などを加味し、格付けした。順次みていこう。

 アリババ(浙江省杭州市)は企業間電子取引のオンライン・マーケットを運営している。1999年6月にジャック・マーと18人の仲間で創業し、2001年に黒字化を実現した。2005年にヤフー!中国を買収、国際的に有名になり、2007年にアリババドットコムを香港証券取引所に上場、時価総額2兆円を超え、話題を呼んだ。2014年には、ニューヨーク証券取引所に上場し、240カ国に1億人強の会員を持つ大企業に成長した。

 また、2008年にソフトバンクの出資を受け、アリババドットコム日本法人を設立、日本事業をスタートした。

 会員数2.1億人強で、中国内消費者向け電子取引サイト、「淘宝网(タオバオ)」は80%のシェアを持つ。検索サイトの「ヤフー!中国雅虎」や電子マネー決済サービス「アリペイ」、クラウドコンピューティングサービスを提供する「アリソフト」などの各種サービスを持っている。

 余談になるが、中国では11月11日を「独身の日」と呼ぶ。ネット各社が熱い商戦を繰り広げる。アリババは1日の電子商取引が1兆円を超えた。11月11日は「1」の数字が4つ並ぶことから独身の日と呼ばれる。

 アリババが2009年に割り引きセールを開いたことがきっかけになって、EC各社が大規模なセールを行なうことになった。

 アリババは10日、北京市内で前夜祭を開き、2015年のテーマ「世界を揺らせ」をキャッチフレーズに大いに前景気を煽った。浙江省の本社から中継で記者会見した張勇CEOが海外商品の販売拡大に力を入れた。



テンセントのユーザーは6億人

テンセント(広東省深セン市)は、SNSやインスタントメッセンジャー、ウェブホスティングサービスを提供している。1998年に創業、2004年に香港取引所に上場を果たした。

 インスタントメッセンジャーはネット上でチャットやファイル転送などができる「テンセントQQ」を提供、ユーザーは6億人といわれており、中国のインスタントメッセンジャーユーザーの99%がテンセントを利用しているといわれる。またミニブログ「テンセント微博」も有名だ。

 バイドゥ(百度)は中国最大の検索エンジン会社である。資本金4億6000万円で2000年1月に創業した。現在の社長は張成煥である。全世界の検索エンジン市場では、2009年はグーグルに次いで第2位であり、中国国内では、グーグルを押さえてトップに立つ。

 バイドゥは日本においても積極的に事業を展開しており、2006年12月に日本法人バイドゥを設立した。2014年9月、キーボードアプリ「Simeji」アンドロイド版は1000万ダウンロードを達成した。話題のドラマや人気アニメキャラクター名やせりふなど、面白い変換や顔文字も豊富。



ジンドンは中国の“アマゾン”

ジンドン(京東)は1998年6月に創業した中国国内最大手の直販型インターネット通販企業である。2014年の売上高は2602億元(約5兆1051億円)、純利益は1150億元(約2兆2563億円)に達する。2015年上期の売上高は2023億元(約4兆円)と引き続き好調である。2014年5月、ナスダック市場に上場し、中国の直販型ECサイトの売り上げのうち、56.3%のシェアを持つ。

 ジンドングループはB2Cオンラインショッピングサイト「京東全球購(JDワールドワイド)」において 、2015年6月に日本製品専門サイト「日本食館」を開設した。オープンに当たり、日本企業300社の5万アイテムを販売した。米国のアマゾンとの競争が見ものだ。

 チーフー サンロクマル(奇虎360)は本社を北京市に構える中国の代表的なインターネットセキュリティ企業である。創業は2005年9月というから約10年の歴史。広告収入と有料サービスで利益を得ている。2011年3月にニューヨーク証券取引所に上場した。米マイクロソフトとモバイルセキュリティーや人工知能分野で提携した。

 時価総額は100億ドルを超え、最も急成長している中国のインターネット企業の1つと考えられている。2014年6月時点で、360のパソコン端末製品及びサービスの月間アクティブ数は4.96億に達し、360製品のユーザー浸透率は94%。

 すでに、各社の合従連衡の動きも活発だ。

 中国の二大インターネット会社のアリババとテンセントは2015年10月8日、共同購入と呼ばれる割り引きクーポンサイト事業を統合することで、合意した。検索大手のバイドゥの追い落としの側面もあるようだ。アリババグループの共同購買サイトを運営する「美団」の王興CEOは8日、テンセント参加の「大衆点評」と新会社設立で合意したことを明らかにした。

 美団と点評は新会社設立を通して、両社の事業を統合していくとみられる。美団と点評はいずれも共同購入サイトを運営している。消費者がスマホで割り引きクーポンを入手し、格安で飲食や買物が出来る。

 両社はさらに、顧客を実店舗に呼び込むサービス「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」も提供する考え。

 市場シェアは美団が約5割、点評が3割、バイドゥが1割とされている。統合会社がほぼ独占するとみられる。これまでバイドゥが赤字覚悟のサービスを展開するなど、消耗戦が続いていたが、2社の統合で終止符が打たれることになる。バイドゥはこの分野で窮地に追い込まれることになりそうだ。

 中国では「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)といわれる。ネット大手3社が競っている。しかし、ここへきて、各社のサービスが重複し、多くの分野で競合している。そのため、アリババとテンセントが組んで、バイドゥを追い落としにかかっている。2強の時代になるのか、それともバイドゥが盛り返すのか。成長分野である、O2Oでの攻防が注目される。

 また、アリババとテンセントは2015年に入り、タクシーなどの配車割引アプリで合併した。中国で攻勢を強める米ウーバーテクノロジーと手を組んだバイドゥへの対抗策のためだ。

 このように、中国のネット業界では、早くも合従連衡の動きが活発になってきた。



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