トピックス -企業家倶楽部

2016年03月03日

主婦の承認欲求がヒットを生む

企業家倶楽部2016年4月号 ビジネストレンド





 インターネットがあらゆる世代に浸透した昨今では、一昔前と違い、画像をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿するまでが消費行動だ。今や生活はプライベートであると同時に、披露に値するものでなければならない。しかし、毎日イベントだらけの人も稀だろう。そうした中、ささやかな特別感を上手く演出しているのが主婦層である。特に料理は、その格好の機会となっている。

 例えば、2015年の流行語となった「おにぎらず」は、広げた1枚の海苔にご飯を乗せて、真ん中に具を置いて折り紙のように四方から包めば出来上がり。その名の通り、握らずに完成するおにぎりで、1991年発刊のマンガ「クッキングパパ(講談社)」が発祥だ。そのままでも良いが、真ん中から切って弁当箱に詰めると断面がサンドイッチのように華やかになる。人気を受け、専用の弁当箱など関連商品も発売された。




 その他、SNSの画像から話題になった料理には「スープジャー」弁当、「ちぎりパン」などがある。かつてのランチジャーは大きくかさばり、主に男性が土木建築などの現場で温かい白ご飯と味噌汁を食べるためのものだった。しかし、魔法びんメーカー各社が売り出した「スープジャー」は、高さ10センチほどの大きさで軽く、色もバリエーションに富んだ女性好みのデザインとなっている。保温力抜群で熱々のスープやシチュー、鍋などが楽しめるようになった。

 使用法はそれだけではない。朝、熱湯とごしらえした材料を入れておけば、ランチタイムにスープやリゾットなどが仕上がる調理器具としても支持された。まさに「魔法」びんである。デザインやサイズの違う商品が相次いで発売され、定番となりつつある。

「ちぎりパン」は、小さなパンが連なって1つの商品を構成している。好きな分をちぎって食べればよく、大手パンメーカーからも販売されているが、これを手作りするのが流行となっている。




 難しいパン作りを手軽にして人気に火を付けたのは、パン型つきレシピ本「日本一簡単に家で焼けるちぎりパンレシピ」(宝島社)。同シリーズ3部の合計発行部数は60万部を超えた。強力粉で作るものに加え、ホットケーキミックスでより簡単に作れるレシピも考案され、幅広い年代に受け入れられている。

 女性が夢中になったのは、ふわふわの食感と愛らしい見た目。ココアで着色するなど、可愛くデコレーションできるのも魅力だ。少し検索すれば、ぬいぐるみのようにお手製のキャラクターちぎりパンを積み上げたり、並べたりした画像が容易に見つけられるだろう。

 これらに共通するのは、簡単で手間が要らず、アレンジができ、おいしくて見栄えがすること。関連商品もさほど高価なわけではない。料理上手なら手間を加えたオリジナルレシピが作れるため、レシピ投稿サイト「クックパッド」には多数のレシピが載っている。初心者でもレシピ通りに作れば、思わずSNSで自慢したくなる一品が出来上がる。投稿先も好みによって住み分けが進み、インスタグラム、ラインやフェイスブックなど様々だ。家事は評価されにくいが、SNSへの投稿で主婦の承認欲求が満たされ、日常がほんの少し華やかに彩られる。それがヒットを生み出す源泉だ。

 流行を先取りして人に伝えたい欲求は、インターネットの登場で誰もが満たせるようになった。さらに反響もリアルタイムで分かるため、1枚の画像がビジネスチャンスに結び付くことも夢物語ではない。手軽に試せること、見栄えが良いことがヒットの秘訣。アレンジ需要を受け日本製粉は2016年春季にアレンジ対応のホットケーキミックスを発売する。企業もこの流れを見逃す手はないだろう。(庄司裕見子)



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