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トピックス -企業家倶楽部

2016年03月07日

2016年、世界経済危機再び?唯一の成長エンジン・米国も景気後退か/梅上零史

企業家倶楽部2016年4月号 グローバル・ウォッチ vol.6


2016年、おとそ気分も抜けないうちに世界の株式市場は大混乱に陥った。市場は昨年8月の中国ショックから立ち直り、米国も予定より3カ月遅れの12月に9年ぶりの利上げに踏み切ったが、年明け早々に中国経済への不安、原油安リスクが再認識された。このまま8年前のリーマンショックに端を発した世界金融危機のような悪夢の再現となるのだろうか。

 

 

Profile 

梅上零史(うめがみ・れいじ)

大手新聞社の元記者。「アジア」「ハイテク」「ハイタッチ」をテーマに、日本を含むアジアのネット企業の最新の動き、各国のハイテク産業振興策、娯楽ビジネスの動向などを追いかけている。最近は金融やマクロ経済にも関心を広げ、株式、為替、国債などマーケットの動きもウォッチしている。




 2015年のビッグイベントが米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げだとしたら、16年のイベントは11月の米大統領選挙だろう。歴代大統領の成績表としてしばしば在任期間中の株価上昇率が用いられる。現職のオバマ大統領は1月26日時点で103%増で、戦後の大統領ではクリントン、レーガン、アイゼンハワーに次いで第4位。しかし任期切れまではまだ1年ある。この好成績を維持できるのか。

 米国の景気は5~6年の周期で好不況を繰り返している。全米経済研究所(NBER)によれば直近のピークが07年12月だったので、もうピークを過ぎていてもおかしくない。5~6年の周期ということは2期8年の任期を勤めた大統領は最低1度は景気後退を経験することになる。景気後退は株の暴落をしばしば伴い、実際、最近の大統領ではレーガン氏がブラックマンデー、クリントン氏がIT(情報技術)バブル崩壊、そして8年前の大統領選最中、ジョージ・ブッシュ氏がリーマンショックを経験している。

 経済協力開発機構(OECD)が算出する米国の景気先行指数は15年5月から連続7カ月で100を切り下降傾向にある。米供給管理協会(ISM)が製造業の仕入れ担当役員にアンケート調査を実施して算出するISM製造業景況指数は15年7月から下降しており、12月は好不況の分岐点とされる50を2カ月連続で割り込んだ。

 大和総研は世界経済が「株安・生産減」に転落するかどうかの参考指標として、米国の「民間非金融法人企業の債務残高の対国内総生産(GDP)比」を挙げている(「第187回日本経済予測(改訂版)」、15年12月8日)。直近では44%超となっており、45%超だったITバブル崩壊時及びリーマンショック時に状況は極めて似てきている。こうした様々な指標が米国景気に警告を出す中、FRBは失業率の低下を確認して利上げに踏み切った。しかし失業率は景気の遅行指標だ。

 米国が景気後退に陥るとの見方をするエコノミストはまだ少ないが、みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは世界経済は15年からバランスシート調整局面の第3局面にあり、米国が利上げで失速すれば「世界連鎖不況」に陥る「第4局面」に突入するリスクを1月18日付のレポートで指摘している。2000年代の欧米住宅ブームで積み上がった先進国の民間債務問題が、サブプライム危機、リーマンショックで調整されたのが07~08年の第1局面。ギリシャなど欧州の政府債務危機が表面化した09~12 年が第2局面。新興国の債務問題がクローズアップされているのが15年から続く第3局面だ。

 新興国の債務問題の中心が中国の債務問題だ。中国の総債務は13年末でGDP比で219.4%。そのうち企業債務(非金融企業)が急増し同146.6.%となり、バブル最盛期の日本の132.2%(1989年末)を上回っている(関辰一日本総研研究員の「限界に向かう中国の企業債務拡大」、15年5月)。中国企業は不動産会社や地方政府の投資会社などに間接融資をして利ざやを稼ぐ「財テク」に走ったからだ。企業間の直接の貸し借りは禁止されているため、企業は低金利の社債などを通じて調達した資金を銀行に貸し、その資金を銀行が不動産会社などに高く貸し付ける仕組みだ。国有企業の多くが財テクをしているとみられている。

 中国の株式市場や不動産市場が下落すれば、価格上昇で見込んでいたキャピタルゲインがロスに転じる。銀行融資は焦付き、社債はデフォルト(債務不履行)というマネーの逆回転が始まる。中国の経済成長率は15年は6.9%で25年ぶりに7%を割り込んだ。中国の経済はGDPの4割を投資が占める「投資主導型経済」であり、投資が減少すれば成長率は維持できない。

 中国の旺盛な需要を見込んで高騰していた原油や資源価格も下落が止まらなくなっている。11~14年には1バレル100ドル前後で推移していた原油価格も1月に入りついに30ドルを割り込んだ。原油など商品価格は30年を周期とする「スーパーサイクル」で変動しているという説があり、仮に30年前の1986年前後の原油価格動向と同じようなパターンをたどるとすれば、向こう15年間は30ドル前後で推移していくとみられる。

 BRICsともてはやされた新興国4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)のうちブラジル、ロシアは産油・資源国でもある。両国の通貨は資源価格に比例するかのごとく下落し続けている。輸入物価の上昇で国内はインフレ率も上昇し消費は落ち込み、両国の経済成長率は15年にマイナスに陥り、16年もマイナスに落ち込んだままと予想される。中国ほど債務は大きくはないが外貨準備は急速に減少しており、経済危機が表面化する可能性もある。

「2001年に破綻したエンロンに匹敵するような、巨大資源メジャーや素材大手の破綻、資源国のデフォルトが起きるかもしれない。資源メジャーの破綻は、単に一企業に留まらず、世界的なシステミック・リスクに発展する可能性がある」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「2016年の投資戦略」(15年12月)の中で指摘する。15年9月にスイスの資源大手グレンコアの株価が信用不安から暴落したことがあったが、アングロ・アメリカン、BHPビリトン、リオ・ティントなどの3大資源メジャーの株価も下落を続けている。

 原油価格の下落は中東の産油国の経済にも打撃となっている。原油下落の原因の一つは石油輸出国機構(OPEC)が減産で合意できないという供給側の問題もある。OPECの盟主サウジアラビアが減産せずに原油価格が下落するのに任せ、米国のシェールオイル/ガスつぶしに動いているとされる。しかしそれは自らの首を絞めることでもあり、サウジの16年度の財政収支は2年連続で10兆円規模の赤字になる見通しだ。石油から上がる収入を国民にばらまいて安定を保ってきたサウジ家の国家運営体制も見直しを迫られる。

 産油国のソブリン・ウェルス・ファンドの逆流も始まるだろう。こうしたファンドの投資先は米国を中心とする先進国が多いとみられる。米国債も売られ、投資先の企業の株も売られる。米国のシェールオイル/ガス関連企業のデフォルトも頻発するだろう。中国経済不安、原油価格下落から始まった市場の動揺は、世界経済のけん引役としてほぼ唯一の希望だった米国に回り回ってやってくる。
 

 08年のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した世界金融危機は07年8月のBNPパリバショックが始まりだったとされる。低所得者向けサブプライム住宅ローン問題に関連し、パリバ傘下企業がファンドの解約に応じないと発表したのを機に世界の株価が動揺した事件だ。2015年8月の中国ショックと重なる。

 世界経済の変調は当然、日本にも影響を及ぼす。みずほ総研の高田創チーフエコノミストは早くも2017年4月の消費増税先送りを争点として解散総選挙があるのではないか、と予想する。GDP比230%超に膨れ上がった政府債務の減少のメドも立たず、国債の事実上の引き受けをしている日銀のバランスシートも悪化を続ける。世界経済のバランスシート調整「第5局面」が日本の政府債務問題ではないと言えるだろうか。



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