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トピックス -企業家倶楽部

2016年03月15日

2016年以降ベンチャーキャピタル業界の潮流/東京大学エッジキャピタル(UTEC)代表取締役社長 郷治友孝

企業家倶楽部2016年4月号 キャンパスのキャピタリスト仕事録 vol.5


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。


Profile
郷治友孝(ごうじ・ともたか)

通商産業省(現経済産業省)で『投資事業有限責任組合法』(1998年施行)を起草、2004 年㈱東京大学エッジキャピタル(UTEC)共同創業。3本の投資事業有限責任組合(計約300億円)を設立・運用し、テラ含め16投資先ベンチャーの役員に就任。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士。日本ベンチャーキャピタル協会常務理事。




今回は、2016年以降のベンチャーキャピタル業界の潮流を考えてみたい。



●Exit環境の潮流

 国内のIPO企業数は、2015年には92社となり、2009年に底を打って以来6年連続の増加となった。また、国内のM&A(企業の合併・買収)件数も2012年以来増加傾向であり、2015年には2500件近くにまでなった。国内企業が国内企業をM&Aするケース(IN-IN)に加え、外国企業が日本企業を買収するケース(OUT-IN)も増加しており、UTECでも米国や中国の事業法人(グーグル、百度など)とのM&A事例が出始めてきている。

 こうしたExit(株式を売却すること)環境の改善に伴い、日本のベンチャーキャピタルも、よりリスクの高いとされているシード(種)段階やアーリー(早期)段階のベンチャー企業への投資が活発になってきている。リスクを取りやすくなったことも相まって、モノづくり、材料、バイオテクノロジーなどの技術を生かした、質は高いが時間のかかるスタートアップへのベンチャー投資が増えている。

 もちろん、Exit環境は永久に好転し続けるわけではない。IPO数を例に取れば、2006年に過去最高の188社を記録して僅か3年後の2009年には、リーマンショックの影響で、過去最低の19件にまで落ち込んだことがある。マクロ環境はいつ下降局面を迎えてもおかしくないことから、Exitを国内のIPOのみに頼らない複線化を進めておくことが重要であろう。



●VC業界の潮流

 VCのプレイヤーという面でも、世界展開の可能性を持つ日本の技術をベースに、競争力のあるビジネスモデルの構築に挑戦しようとするVCが日本でも広がりつつある。大学などの技術系ベンチャーへの投資を行う民間ベンチャーキャピタルの新設(みやこキャピタル、Next Beyond Ventures、ユーグレナインベストメント)に加えて、大企業や資金力のある事業法人も、技術へのアクセスや新規事業展開を狙って、VC事業を行う子会社を新設したり、VCのファンドにLP(有限責任組合員)出資をしたりする事例が増えてきている。既存のVCがテクノロジー投資を着眼点に、新規のファンドを設立する例も増えてきており、Draper Nexusが2015年6月に事業会社などと総額125億円規模のファンドを組成したり、グロービス・キャピタル・パートナーズが2016年1月に年金基金も入れて総額160億円の新ファンドを設立したりといった動きが見られる。政策面でも、国立大学出資事業(東大、京大、阪大、東北大)が開始され、大学発の技術をベンチャー事業化するエクイティ投資のための仕組みが整いつつある。東大ではVCと競合する事業を行うのではなく、民間VCファンドへのLP出資や民間との共同投資を謳っており、更に民間VCや事業法人のエコシステムが活性化されることが期待される。

 VC業界全体としては、昨年、実績に定評のあるグロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一氏が日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の会長に就任し、幹部層に様々な有力VCが参画したことを受けて、入会するVCが増加し、VC活動の意義についての広報や政策提言などの活動が活性化してきている。


●VC業界の潮流

●起業家・経営人材の潮流

 起業家や経営人材という面では、従来は稀であった、研究者や博士号取得者が起業する事例に加えて、大手企業のエンジニアが起業する事例も増えてきている。UTECではたとえば、HOYAの技術者がスピンアウトしHOYAとUTECで投資をしたCrewt Medical Systems 社などがある。

 経営経験のない技術者で構成される創業チームの場合、ビジネスモデルの構築や提携パートナーとの適切な関係構築、売り上げを伸ばすマーケティングや営業の体制構築を含め、技術以外の事業上・経営上の能力補完に課題があるが、近年は、経営経験豊かな経営者が、研究者やエンジニアとともに新たな起業に取り組む事例(UTEC投資先では、Vegetalia社、GLM社など)が増加しており、技術系ベンチャーの創業の難点を克服し得る潮流として注目に値する。こうした「連続起業家」(Serial Entrepreneur)は、経験に基づく視野の広さや視座の高さ、的確で幅広い判断力や経営能力、チーム組成力やネットワーキング力、逆境時の耐久力や回復力で優れている場合が多く、技術についても臆せずに外から取り込むことに長けている。今後のVCには、シードの段階から、創業技術者や研究者のネットワークだけではなく、連続起業家を含めた適切な経営陣を紹介したり組成したりできる能力がより一層求められるようになるだろう。たとえばUTECの例では、ペプチドリーム社の設立前年の2005年に、発明者の菅裕明東大教授に窪田規一氏(創業社長、現職)を紹介し、同社が創業されるきっかけをつくった例がある。


 ●起業家・経営人材の潮流

●着目投資分野

 投資の潮流は、科学技術の発展、市場の発展動向、顕在化する社会課題や政策の潮流とが絡み合って展開するものである。メディアやカンファレンス等でよく取り上げられている「ホット」なテーマ以外に、着目している分野を挙げておこう。

 一つは、アフリカをテーマとする事業である。アフリカは、現在人口11億人程度であるが、今世紀中には43億人にまで伸び、世界で最も人口が伸びる地域とされる。今年8月には東京で「アフリカ開発会議」も開催される。先進国では適用できない「非連続」な新技術をアフリカに提供することで、社会課題を一気に解決する事業が伸びる可能性がある。

 もう一つは、人間らしさを扱う事業である。人工知能に関する話題はかまびすしく、人間の多くの仕事が人工知能に奪われるとの予測もあるが、そうした中で、人格、性格、倫理、人間らしさ、ヒューマニティーの訴求価値が高まるのではないか。教育のみならず職場等の分野で、ヒューマニティーを扱う事業の展開が期待される。

 最後に、これまでは大企業が取り組むとされていた伝統的な産業分野である。例えば日本の農業は、従来はICT等の新技術導入に消極的であったが、昨今の農業人口の高齢化や減少、更にはTPPといった環境変化を受けて、ベンチャーの参入機会が出てきている。自動車分野も、電気自動車をはじめとする従来とは異なる駆動による自動車の登場や、自動運転技術や画像処理技術等の新技術へのニーズの高まりによって、ベンチャーの活躍分野が広がっている。



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