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トピックス -企業家倶楽部

2016年04月01日

宇宙産業は日本が勝てる領域/TomyK代表 鎌田富久

企業家倶楽部2016年4月号 特集第4部-1





(文中敬称略)

 東京大学在学中、盟友の荒川亨とともにACCESSを創業。携帯電話向けインターネットサービス「iモード」の開発でモバイルインターネットの技術革新を牽引するなど、約30年に渡りITの最先端技術開発に携わった鎌田富久が今、宇宙産業に注目している。

 彼が投資する上で軸となっているのは、日本からグローバルスタンダードを生み出せる可能性のある分野で活躍するベンチャー企業かどうか。マイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックといった企業の躍進が示すように、この20年、新興のインターネット領域で日本はアメリカ勢の後塵を拝してきた。同じネット業界で奮闘してきた鎌田も、「これを覆し、将来的に世界で勝てる企業家を日本から輩出するには相当な先回りが必要」と危機感を募らせる。

 では、日本勢が新たに世界を舞台に存在感を示せるような、ITの次のフロンティアはどこか。そう考えた鎌田が目を付けたのが、宇宙だった。



最初に花開くのは人工衛星ビジネス

 鎌田が宇宙ビジネスとして近い将来に成立すると考えているのは二つ。人工衛星を利用した通信ネットワークの構築と、同じく人工衛星網による地球観測だ。

 現在でも、地上の基地局による通信ネットワークの人口カバー率は高いが、モノ同士がインターネットで繋がるIoTの時代を迎えるにあたり、人の住んでいない箇所にも電波が通っている必要が出てきた。「そうなれば、人口カバー率ではなく地球カバー率が重要」と語る鎌田。もはや地上の基地局だけでは追いつかない電波の供給を、衛星が担うこととなる。

 一方、人工衛星網を使って地球の外側から情報を得ようという試みも進んでいる。通常のカメラで地上の画像を撮って利用する場合もあれば、波長の異なる電磁波を感知することで植物の生育具合などを観測することも可能だ。

 鎌田は衛星ビジネスについて「地球上全ての地域を対象に電波を供給したり、観測したりする特性上、自動的に全世界へと市場が広がっているのが強み」と指摘する。むしろ、面積の小さい日本だけを相手にしているようでは、せっかくの情報が惜しい。この未来の金脈を狙い、アメリカではすでにベンチャー企業が勃興しつつあるが、実績を踏まえればまだまだ日本と比べても横並びだという。



ハード×ソフトで勝つ

 世界を見渡しても、未だ有力な競合となりそうな企業が現れていない人工衛星ビジネス。「このように日本企業が世界で圧倒的な地位を築ける可能性のある分野には心が高ぶる」と興奮を隠さない鎌田は、「何とか皆で応援しなければ」と使命感に駆られる。そして彼の分析によると、この領域は日本に分があるというのだ。

 人工衛星を駆使したビジネスを行うためには、当然ながら衛星を製造し、打ち上げる必要がある。一度宇宙へ飛んで行った衛星は修理することが不可能なため、正確な軌道に乗せ、必要な情報を収集するとなると、生半可な技術力では運用が難しい。人工衛星製造は、実験に実験を重ね、計画通りに遂行する緻密な努力を要する参入障壁の高い分野。だがそれゆえに、日本の精密なモノづくりの強みが最も生きる場となるだろう。

 さらに、日本はアメリカと比べて宇宙産業への投資額が少ない分、限られた範囲内で安価に衛星を製造する技術力を身に付けてきた。「安くて高性能」は日本の衛星の売りとなっている。「しかし、それでもいつかは人工衛星製造が一般的となり、日本製品が駆逐される日が来るかもしれない」と鎌田は気を緩めない。事実、一時的に世界を席巻した多くの日本企業も、韓国や中国の新興企業が売り出した安価な類似品に対抗しきれなかった。

 そこで鎌田は、「まだ優位性のあるうちに人工衛星を多く打ち上げ、情報収集や分析といった付加価値サービスまで一気通貫して行うビジネスモデルを構築することが重要」と語る。いわばハード(人工衛星製造)とソフト(人工衛星網によるサービス)を組み合わせることで、他国の追随を許さないというわけだ。

 インターネット領域ではアメリカ勢に完敗したとの思いが強い鎌田。次なる宇宙産業でリベンジを誓う。



日本を宇宙産業の集積地に

「日本全体で宇宙産業を盛り上げたい」と願う鎌田だが、「宇宙産業について、国がより戦略的にベンチャー企業を振興する仕組みがあると良い」と説く。

 アメリカでは、NASAがイーロン・マスク率いる宇宙ベンチャーのスペースXと提携したことでコスト削減を実現した。「競争を起こすのはイノベーションの基本」と鎌田が言うように、既存企業とベンチャー企業を競わせれば価格が下がる他、新しい技術が生まれる可能性もある。より積極的にベンチャー企業を活用する政策が肝要だろう。

 また、人工衛星を打ち上げるのには当然ロケットが不可欠。これまでは希望する軌道に乗せるため、ロシアなど他国のロケットを使わせてもらうことが多かったが、輸出手続きが必要な上、余計なコストがかさんでしまう。「仮にJAXAが格安で相乗りでもさせてくれれば、打ち上げのハードルは下がるだろう」と鎌田は期待を寄せる。

 その他、人工衛星やロケットの開発には様々な設備が欠かせない。例えば、放射線の検査に必要な特殊な装置を安価で貸し出すなど、積極的・戦略的に宇宙ベンチャーを支援する施策を国が行っていけば、日本・海外を問わず企業が集まり、日本が宇宙開発の拠点となるかもしれない。

 現時点では、日本の宇宙ベンチャーと言うとようやく何社か挙げられるという段階だが、これがもっと増えていけば、人材もより集まるだろう。今は宇宙関連事業に携わりたくとも、「入社した企業に何かあったら」と万が一のことを考えると、あと一歩が踏み出せない。しかし、自らの培った技術が廃れることはないのだ。宇宙ベンチャーが多く興れば、その中から成功する企業も現れ、人材の集積地となるだろう。

 人工衛星やロケットを自前で作り、発射までできる国は世界でも数少ないため、現在でも国防衛星や気象衛星の製作を日本に依頼してくる国はある。しかし、草の根レベルで人材の交流が盛んかと言うと、そうでもない。宇宙産業の拠点と言うには、まだまだ程遠い状況だ。

 ただ、日本にも芽はある。「日本人は、本当は宇宙が好きなんですよ。宇宙について学べる大学がこんなにある国も珍しい」と鎌田が言うように、宇宙工学を専攻できる日本の大学は多い。留学生も積極的に受け入れているが、残念ながら今は受け皿となる企業が少ないため、日本で就職することなく本国に帰ってしまうのだという。

 宇宙産業に関して、留学も受け入れてくれるし、会社も作りやすい。人工衛星やロケットの製造にあたって必要な部品メーカーも揃っていて、打ち上げもしやすいとなれば、宇宙に携わりたい世界中の人が「日本でならば新しいことができそうだ」と思って来るようになるだろう。そうした産業全体を振興するような環境が整えば、いよいよ日本が世界で勝てる日も近い。



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