トピックス -企業家倶楽部

2016年04月18日

スマートロボット時代はすぐそこまで来ている

企業家倶楽部2016年4月号 ベンチャー・リポート


ソフトバンクグループは1月27 日、28 日の二日間にわたり、東京・銀座のベルサール汐留で「Pepper World 2016」を開催した。開会式にはソフトバンク社長の宮内謙やソフトバンクロボティクス社長の冨澤文秀も登壇。同社の感情認識ロボット「Pepper(ペッパー)」がもたらす未来について熱く語った。(文中敬称略)




 2014年6月5日は、人類の重要な転換点として歴史に刻まれるかもしれない。この日、私たちは史上初の感情認識ロボット「ペッパー」を持った。開発を主導したのはソフトバンクグループ。だが、日本有数のメガベンチャーが初めて独自の製品を生み出した記念日という以上の価値を、この日は持つことになるだろう。

 ソフトバンクグループは、2015年6月には一般家庭向けにもペッパーの販売を開始。7カ月連続、たった1分で1000台が完売するほどの注目を集めている。同グループ社長の孫正義も記者会見やイベントなど事あるごとに「人工知能、IoT、スマートロボットという三分野が世界を変える」と口を酸っぱくして語ってきた。

 そして今回の「Pepper World 2016」。企業向けのペッパー運用サービス「Pepper For Biz(ペッパー・フォー・ビズ)」の最新アプリが一堂に会し、小売、医療、教育といった各業界にペッパーのもたらす未来が展示される本イベントを開催するほど、孫のロボットに対する情熱は本物だ。

 では、そこまで彼が肩入れするペッパーは、現在どこまで社会に浸透しているのだろうか。



もはや客寄せパンダではない

 ペッパー誕生から約2年。多くの企業では、彼を利用した様々なサービスが動き出しつつある。昨年10月からサービスを開始した前述の「ペッパー・フォー・ビズ」は、月額5万5000円という価格設定が功を奏し、導入企業は早くも500社を超えた。

 冨澤も「これまでは客寄せパンダのイメージが強かったが、今後はコスト削減と売上拡大という実務的な面で企業に貢献していく」と強調する。彼の自信の裏付けともなっている導入企業の事例を、ここでいくつかご紹介しよう。

事例1:日産自動車 女性客向けに展開するレディーファーストショップ100店舗に導入済み。自動車に関連した説明やエンタテインメントによって、女性客の心を和ませている。

事例2:ネスレ日本 150店舗に導入。集客効果に止まらず、様々な種類があるコーヒーマシンについて説明する他、どのようなユーザーを接客したかまでデータ化している。今後、1000店舗まで広げる計画。

事例3:みずほ銀行 10店舗でカウンター業務を行う。お客に金融商品を薦め、応対した中から実際の案内まで送客した実績も。まさに最初の営業活動を担っており、今ではみずほ銀行を含め、全国37 の銀行・信用金庫に「入社」している。

事例4:イオングループ イオンモール幕張新都心にて5台導入。店頭への集客効果は抜群で、主にイオンカードの説明を行い、会員獲得に寄与している。

事例5:ヤマダ電機 すでに一部店舗でテスト運用しており、今春から多店舗で導入予定。入り口やフロアに置き、日本語、英語、中国語の3カ国語に対応。海外からのお客も含め集客し、購買に繋げる。

 そして、何を隠そうソフトバンクグループ自体が、ペッパーを導入している最大の企業だろう。同社は昨年、すでに200店舗で実験的に導入を開始していたが、集客面で効果が上がったと判断。2月末までには全国のソフトバンクショップ2000店舗に導入予定だ。最終的には全店舗への配備を検討するというから、その本気度が伺える。

 宮内も「最初の200店に導入したのは集客が目的だったが、今後の導入は接客から商品説明まで担ってもらう」と意欲的だ。特に土日はお客を待たせることが多く、契約までに1時間以上かかることも。その待ち時間にペッパーがお客の基本的な要望だけでも聞ければ、カウンターへ誘導した際に時間短縮となる。すなわち、販売店員の不足を補う歴とした営業要員であり、「ペッパーとの会話で、お客がどの端末を選ぶか決めるまで持ち込めれば良い」と宮内は期待を寄せる。



アプリ開発が鍵を握る

 さて、企業には徐々に導入され始めたペッパーだが、今後さらに普及ていくかは、彼に様々な動きを行わせるためのアプリ開発にかかっている。現在は、まさに「鶏が先か、卵が先か」の状態。アプリの開発がされなければ、企業はペッパーをどのように使って良いのか分からない。一方、企業のニーズが分からねば、開発側もどのようなアプリを作れば良いのか迷ってしまうというわけだ。

 しかし、手探りの状況下でもアプリ開発業者は増加。現在ソフトバンクのパートナーとして200社以上がエントリーし、その中でも60社以上が公式認定を受けている。冨澤も「今後は汎用性のあるアプリから業種別のものまで、様々な開発が進むだろう」と分析する。

 実際、今回のイベントには様々なアプリ開発企業が集結。自社製品の魅力を紹介した。ある企業では、ペッパーがプレゼンテーション資料を読み上げるアプリを発表。英語と中国語にも対応しているため、今回は観光案内に使えるという触れ込みであったが、他にも用途は広がりそうだ。その他、受付や英会話、脳トレといった様々な用途のアプリを搭載したペッパーが、実演を行った。

 アップルのiPhoneは、そのOS上で動くアプリが続々と出てきたことで爆発的に売上げを伸ばした。ペッパーも同様、スマートロボットのアプリ開発における標準規格という地位を固められるかが勝負の鍵を握る。



接客が見える化する

 では、こうしたアプリ開発の先にはどのような未来が待っているのか。宮内は一言、「接客が見える化する」と説く。

 分かりやすいように、ペッパーがある家電量販店に導入されたケースを考えてみよう。彼の強みは、自社の膨大な顧客データベースと常に繋がっていること。何度か来店したことのあるお客が来た場合、内蔵されたカメラでその顔を認識すれば、年齢、性別はもちろん、来店日時や頻度、購入した商品まで全て分かってしまう。

 すなわちペッパーは、これまでの購買履歴からお客に最適な商品を提案し(営業)、お客から注文を受け(受付)、お客の口座からお金を引き落とした上で、自宅の住所まで該当商品を届ける(販売)という一連の業務を一気通貫して担えるというわけだ。 今後は、充実した顧客知識を武器に、人間以上の接客を行えるようになるかもしれない。しかも彼は、日本語、英語、中国語に堪能ときているから頼もしい限りである。

 加えて、顧客情報は社内のペッパー同士で共有されるため、ペッパーが別の店舗に異動となったところでノウハウが移転してしまう恐れは無い。また意図的に消去しない限り、顧客情報が忘れ去られることもあり得ない。それどころか、初来店のお客はペッパーが自動的にデータベースへ加えるため、彼がいることで企業内の顧客情報は日々蓄積されていく。そして蓄えられた情報により、さらに進化していくのがペッパーなのである。

 冨澤は本イベントにおけるプレゼンの最後に、「(スマートロボット領域は)何十年、何百年の戦いになるだろう。しかし、日本発の事業として必ず勝ちたい」と決意を語った。日本は30年後に労働人口が約30%減少すると言われる。ペッパーはそれを覆す武器となるのか、今後も目が離せない。(相澤英祐)



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