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トピックス -企業家倶楽部

2016年04月26日

逆境が優秀な後継者を育てる/良品計画前会長 松井忠三

企業家倶楽部2016年4月号 私の信条・下


 社長交代は企業の命運を握る問題です。そのため、候補となる人材を育成し、たった1人の後継者を選ぶのは困難を極めます。トップにふさわしい人を見定める際に私が重視するのは、未来を予測する力と本質を見抜く目です。社会の変化を見通せる経営者ほど、的確な判断ができるでしょう。また、多様な個性を持つ社員たちをまとめるには、人や組織の内面を深く理解しなければなりません。

 こうした鋭い洞察力は、先天的な素質で決まる部分が大半です。ただ、実際の職務を通じて磨かれる面もあります。したがって、優秀な人材を会社のニーズに基づいて異動する育成が重要でしょう。未知の環境で逆境を経験した時こそ、人や組織の本質が最も見えるからです。私が西友から良品計画への出向を余儀無くされた際も、私の下を去る人と励ましてくれる人の差が顕著でした。

 そうした考えから、良品計画では有望な人材に海外支店の社長を任せてきました。彼らは言語も考え方も全く異なる人達を束ねなければならず、特に苦労するからです。能力が高いと見るや、国内店舗の勤務経験しかない課長をタイ支店の社長に抜擢したこともあります。彼もまた、慣れない新天地で逆境と対峙することになりました。

 彼が、現地の責任者として商品価格を下げる計画を立てた時のことです。売価だけを下げると利益が減るため、原価も同時に下げようと考えました。そこで注目したのが、タイが中国と締結するEPA(経済連携協定)です。中国から輸入する商品に関税がかからないこの制度を利用し、原材料を安く輸入する計画でした。

 ところが、問題が発生します。中国企業は輸出相手によって関税を変えており、無関税での輸入を実現する企業はほとんどなかったのです。交渉には膨大な手間を要し、高い壁を前に誰もが匙を投げてしまいました。しかし、社長である彼は諦めません。商社と協力して多くの障害を取り除き、とうとう無関税での輸入を実現します。それにより商品価格は約半分となって販売数が急増、売上げはなんと2倍に伸びました。困難を乗り越えて見事に結果を出したわけです。

 しかし、人材の育成が順調に進むと、次の難題に直面します。それは、複数の候補者から誰を社長に選ぶか。よくあるのは、自分と同じタイプの人を後継者に据えるケースです。彼らは上司の考えに従うことが多いため、会社の方向性に問題がある時でも、前経営者の方針から脱却できない傾向があります。業績が悪化しても社内では立て直せない状況が続き、最終的に外部の人間に社長を頼むしか無くなる。このような事態は防がねばなりません。

 私は、現在の社長と異なるタイプの人を選ぶのが良いと思います。この新社長は、前任者の方針に囚われず自分の信念に従い行動する。前例に流されず判断できるほうが、進路を間違えにくいのです。そうなると、社長を決める際は複数人で話し合うべきでしょう。自分と違うタイプを選べる度量の大きい経営者は少ないからです。

 社長交代はすぐに結果が出るものではありません。初めの1~2年は売上げが減り、株価が大幅に下落する事例もあります。しかし、それだけで失敗だったと決めつけるのは時期尚早です。10年経ってようやく結果が出ることもありますので、後継者については育成・交代含めて、長い期間でその成否を判断すべきでしょう。



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