トピックス -企業家倶楽部

2016年04月27日

中国でなぜネットショッピングが成功するのか/E&G株式会社 社長 張 海峰

企業家倶楽部2016年4月号 海外リポート


 現在、中国ではネット使用者は6億人を超えており、ウィブサイトは1500億個を超えている。ネットは影響力が高く、発展性の高い新たな産業とメディアになった。すでに社会生活の中で最も重要な存在となっている。ネットがここまで発展している中国ではネットショッピングはどうなっているのだろうか。

 中国のネットショッピングは1998年頃から始まり、当時はB2Cサイトが起点となった。早くも2000年には、ネットバブル時代を迎えた。転機となったのは2003年にコロナウイルスで感染する新型肺炎「サーズ」が流行ったことにより、室内にいながらネットショッピングができて商品を家まで届けてくれる便利さに多くの中国人が気付いた。そこから中国ネットショッピングの新たな時代を迎えた。現在は各企業が独自のプロモーション方法でネット通販のブームを起こしており、中でも最大手のアリババグループの「タオバオ」と個人のバイヤーである「ソーシャルバイヤー」がネット通販の主役となっている。



アリババ集団「タオバオ」の成功

 中国最大のネット企業アリババグループは、ネット黎明期に誕生し、ネット社会が抱える課題を解決しながら成長してきたといっても過言ではない。始めにアリババとタオバオの違いを説明しよう。アリババは企業間取引のB2Bが主体で取引量のロットが大きく、タオバオは一般消費者相手のB2Cモデルで基本的には品物1個からも購入できる。いずれにせよ、ネット間取引が盛んになると企業は決済方法で悩みを抱えた。

 すると、2003年10月、タオバオは「アリペイ」という中国で最大のネット決済サービスである第三者保証型決済システムをスタートさせた。「中国産業洞察サイト」のデータから見ると、2012年、アリペイは中国全体で第三者決済額の47%と半数を占めている。

 また、多くの企業や個人がウェブサイトを立ち上げたが収入を得ることは難しかった。そこで、2007年にネット広告事業を行う「アリママ」を設立した。主に、ホームページの広告とネットショップの広告を扱い、サイトを持つ会社や個人はバナー広告を掲載するスペースを設け、そこにアリママから広告配信を受けることで収益を得ることが可能になった。

 タオバオはアリババグループの中で、買い側と売り側の中間の立ち位置を務めることで成長した。
 



ソーシャルバイヤーが誕生

 海外で商品を仕入れ、中国のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で紹介し、ネット販売をする人を「ソーシャルバイヤー」と呼ぶ。2013年頃に誕生し、中国SNS大手のWe Chat(中国名は微信、ウィチャット)アプリの発展とともに生まれた新たなトレンドである。その人数は1800万人とも言われる。2014年に中国人観光客が日本で購入した商品の総額は1兆円を超えると言われ、在日中国人らの市場も含めるとソーシャルバイヤーの市場は約3兆円あると計算され、数年で10兆円になると言われている。

 簡単に言うと代理購入のことであるが、昨今の「インバウンド景気」、中国人観光客の「爆買い」と形容されるほど、大きなムーブメントになっている。特に化粧品、健康食品、服飾、高級お菓子、ベビー用品などが彼らの「買い物リスト」に並んでいる。

 なぜ、ソーシャルバイヤーが流行るのかというと、先行投資が少なく、リスクが低いことが挙げられる。携帯電話が一台、ウィチャットのアカウントさえ持っていれば、いつでもどこでも商売ができてしまう。友人知人などを介して購入するため安心できるなどのメリットがある。

 一方、急成長した市場では競争がますます激しくなっている。ネットは顔の見えない個人間の取引のため、「商品が違う、汚れていた、届かない」といった問題や「実際に商品を送っても入金がない」などトラブルは尽きない。従業人口も、市場取引規模も、社会関心度もほかの伝統的な業界と比べると比較にならないほど急速に大きくなっている。これまでは、初年度は売上げゼロから始まり、1億円を超えることは想像すらできなかった。しかし2014年には、ソーシャルバイヤーらの間でも稼ぎが1億円を超える人も続々と出てきている。間違いなく、ソーシャルバイヤーは過去2年間に中国全体で最も発展した業界といえる。

 急成長のひずみも現れている。業界の中にしっかりとしたルールがなく、ニセモノの商品が紛れている。噂はすぐに広まり、ネット通販全体への印象も悪くなるといった影響も出てきている。



今後のネットショッピング事情

 消費者にとって、ネットショッピングは買いたいものをネットで検索するとすぐに見つかり、時間を節約できるメリットがある。また、運営側は店舗や人件費を掛けずに済み、その分値段を下げることが出来、消費者にとってもウィンウィンである。また、売り場が必要ないので、品揃えも豊富で、デパートでいくら探しても見つからなかった商品を発見することが出来る。商品情報もデジタルで管理され、特徴が分かりやすく、比較サイトを使えば一番安い店も分かる。国土の広い中国ではわざわざ出掛けなくても家まで商品を届けてくれるサービスは喜ばれる。昨今ではPM2.5問題など大気汚染が深刻で外出を控える人も多い。ネットだと夜でも買い物ができ、時間を拘束されないなどメリットを上げればキリがない。

 以上のように、中国でもネットショッピングの市場が拡大し、伝統的な小売業にとってもネットは無視できない存在になり、自ら運営体制を作り始めるところも出て来た。公式モールやウィチャット公式アカウントなどで、タオバオでのユーザーを自社サイトに誘導するようにしている。

 また同時に会員体制を作り、ポイントやクーポンなどの手段を使ってユーザーを獲得している。このように、今後の小売業界はネットショッピング、ソーシャルバイヤー、伝統的な店舗販売という3つが均衡し、どれか1つが独占することはなく、長期的に共存することとなるだろう。




張 海峰(ちょう・かいほう)

(月に日本・中国半々在中)

90年代に日本に渡り、留学を経て、その後中国に帰国。日中の官民それぞれに関わるコンサルティングビジネスを経験し、その後E&G株式会社を創業。現在、E&G 株式会社にて運営するwechat日本専門情報公式サイト東京物語は、短期間で十万人以上の会員を集め、日本の情報発信を通して様々なサービスや日本企業向けインバウンド事業を拡大中。



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