トピックス -企業家倶楽部

2016年05月02日

吉野佳秀の人的ネットワーク/魅力溢れる不屈の人

企業家倶楽部2016年6月号 ベステラ特集第5部


野性的、博識、有言実行・・・吉野佳秀を称す言葉はさまざまだ。多趣味の全てが玄人はだしな様子は、バラバラなようで自らの限界にとらわれない吉野の生き方がよく現れている。その不屈の姿勢は魅力となって周囲を巻き込んでいく。
(文中敬称略)



理想的な企業家

俳優 中村敦夫


理想的な企業家


 1960年代から俳優として活躍し、脚本家、監督、作家、テレビキャスター、政治家など多面的な顔を持つ中村敦夫。吉野との出会いはかれこれ35年前、友人を通して内輪でできた中村の後援会に吉野が入ってきたのがきっかけだ。

 現在のスリムさからは想像できないが、当時の吉野は100キロ級の巨漢。「今と違ってもっと荒々しく、チンギス・ハンさながらといった風貌だった」と中村は笑う。大きな声に派手な所作。陽気で、いつも議論の中心には吉野がいた。

 豪快な雰囲気ながら、吉野は当時からよく読書をたしなみ、その博学さには定評があった。中村の書いた本も隅々まで精読しており、つぶさに感想を語る姿が心に残ったという。芸術が好きで、特に写真に関しては自ら展覧会を開催するほど。スポーツも、ゴルフをすればシングルプレイヤーを目指し、走れば東京マラソン、ホノルルマラソンに出場する熱の入れようだ。

 そんな吉野を、中村は「理想的な企業家」と高く評価する。財閥を成したような旧来の大企業家は、美術館を運営するなど心に余裕があった。現在でも、世界に目を向ければ慈善事業や環境運動をしている事業家は多い。だが、「今の日本には利益ばかり志向する経済人が多く、スケールが小さい」と中村は警鐘を鳴らす。これに対し吉野は、「苦労の絶えない中でも事業一本槍にならず、様々な分野に目を向けている点が型破り」というわけだ。

 吉野はその博学さや多芸・多趣味な様子から、一見すると芸術家肌にも思えるが、厳しいビジネスの世界における手腕は実績が示す通り。「どうしてあんな夢ばかり語る大雑把な男が企業を育てられるのか不思議」という中村も、吉野の緻密さには目を見張る。

 企業を率い、上場までさせる程の経営者は一握り。吉野も社員を引っ張るためには、時に突っ走ることもある。だが、「暴走に見えて、実は緻密に計算された正道を独走している」というのが中村の見立てだ。

 そう考えるようになったのは、吉野から写真に対する思いを聞いた折のこと。彼は「レンズを通すと、物事が客観的に見える。主観に因われると、見たいものしか見ない自分がおり、多くを見逃してしまうので、普段から客観的な視点を持つように心がけている」というのだ。偏見や狭いイデオロギーに縛られない吉野の大局観を垣間見た思いだった。

 また中村は、解体業の伸びしろに着目した吉野の眼力にも舌を巻く。

「高度成長期に築いた全ての建造物は必ず劣化する。これは壊さねばならない。つまり膨大なマーケットがあるわけです。先がよく見えている人だと感心しました」

 中村は以前より、環境問題が人類危急の課題となることを唱え続けてきた。「環境破壊を進めるほど利益の出る従来の経済体質では、破滅へ近づいていくのみ」というのが彼の持論だ。

「もはや箱物は必要ありません。自然を回復せねばならない中で、吉野さんの事業はまさに産業の本流。それに気付いたのだから、実に賢い方です」

 お互い多忙ながら、年に4~5回は会うという二人。普段は冗談を言い合う仲だ。吉野は、中村が様々な経歴を重ねていく過程を、歴史とともに全て知っている。

「吉野さんは年中面白い。一緒にいるだけで、精神的にリラックスして楽しい時間を過ごせる」

 友人として、これ以上の賛辞はあろうか。そんな親友に対し、中村は次のように締めくくった。

「吉野さんには好奇心があるから、様々なチャンスが巡ってくるでしょう。今までの生き方を続けながら、さらに深く、さらに広く生きて下さい」



天性の人たらし

朝日航洋元社長(トヨタグループ) 塚田彊
天性の人たらし


 企業経営者と交流が多い塚田が吉野に会ったのは、5年程前のベンチャー経営者が集うゴルフコンペでのこと。努力して一代で成功を収めた経営者は自負心が強い。よく言えばプライドだが、悪く言えばおごりとでも言おうか、独善になってしまい、それが態度に現れる人もいる。

 しかし、「吉野社長は肩の力が抜けていて、俗にいう『おごり』のようなものは感じなかった」と塚田は吉野の第一印象について語る。コンペ参加者と笑顔で冗談を言い合う姿から、人間的な魅力を感じた。「大成する企業家は、自負心をコントロールできる人物」と塚田はいう。

 世代も性別も関係なく、誰とでもユーモアを加えながら親しく会話する吉野について、「融通無碍な考えを持っており、幅のある人。私流にいうとおちょくっても大丈夫な人」と塚田は吉野の人柄について話す。

「吉野社長は物事を鋭角的にとらえず、ともすれば衝突しそうな場面でもさらりとかわす。そして、独自の意見も加える。場を仕切る力があり、参考にしている」と塚田は言う。

「一度会社に遊びに来てください」と吉野から社内の座談会の講師依頼があった。塚田も頼まれれば断らない。忙しいスケジュールを調整し、ベステラのオフィスを訪ねた。この勉強会にはオチがあった。夕方から始まり、おにぎりやお菓子、さらにビールなどのアルコールも振る舞われた。

 しかし、講演中の塚田はしゃかりきになって話をするものだから、飲んだり食べたりすることは無論できない。参加者が仕事終わりの一杯を美味しそうに飲むのを横目に講師役を全うした。さて、勉強会が終わり、その流れで二次会で赤ちょうちんに行こうとなった。塚田もやっと御相伴に預かれると思い参加すると、「一通り食事は済んでいるから軽めにしておこう」とさっさと終わってしまった。

「これには驚きました。しかし、計算でやっている訳ではないので、憎めないところが魅力。吉野社長は人の懐に入ってくるのがうまい」と塚田は話す。愛嬌で許されるのが吉野の人徳かもしれない。

 塚田が印象に残ったのはこのオチの方ではなかった。大抵は質疑が少ないのだが、ベステラの社員は違った。初対面でも気兼ねすることなく、質問が多くあった。さらに自分の意見を述べる社員もいた。

「社風は自由闊達で、思い切ったことが出来る会社という印象。この会社の財産でしょう」と塚田は言う。

 ベステラの強みを、「吉野社長が若いころ苦労し、貧乏を耐えてきた。どん底を経験したことは、会社経営でも役立っているはず。失敗したときに耐える強みがある」と塚田は分析する。

 また、「トライ&エラーを許す、挑戦する文化がある。成功を重ねてきた経験よりも、失敗から学ぶことの方が強い。ベステラの最大の強みは、逆境など負の経験をパワーにしていること」と塚田は話す。

 若いうちは現場に出て何でも一人でこなせる。しかし、会社も大きくなり、自分一人では仕事が回らなくなる。

「吉野社長は自分一人で出来る限界も知っていて、次のステップも考えながら、優秀な仲間を増やしている。その証拠に若い人がイキイキと発言している。天性の人たらし」と塚田は吉野を評する。

「これまでは吉野社長の力で引っ張ってこれた。次のステージは組織としての経営が課題になるでしょう。吉野社長の肉体年齢は実年齢より20歳は若いでしょうから是非、組織作りに取り組んで欲しいと思います。機会があればお手伝いが出来ることもあるでしょう」とエールを送った。



人生で目標となる経営者

Beyond Human Company CEO 橋本雅治
人生で目標となる経営者


「フルマラソンを走り、ゴルフをすればスコアは70台で回るシングルプレイヤー。若い自分らが到底敵わないのですから、『超人』でしょう」と橋本は吉野ついて語る。

 橋本自身もスイム・バイク・ランのトライアスロンを趣味としているアスリート経営者で、体力には自信がある方だ。42・195キロを走り切る辛さが分かるだけに、齢70歳を過ぎてもなおフルマラソンに挑戦している吉野の肉体的、精神的な若さに脱帽する。

「吉野社長はどこか天空を見上げながら話をする時がある。バイタリティーがあるだけでなく、博識でどんなジャンルの話をしても内容が深い。話に論理性があり、頭脳明晰。どこか超越しているところがある。吉野社長のような人物に会ったことがない」と橋本は語る。

「なんとなく馬が合う」

 世代は違えども、二人ともベンチャー経営者で趣味はゴルフとフルマラソンと共通点も多い。橋本もインテリア雑貨の企画販売を手掛けるイデアインターナショナルを創業し、ジャスダックへ株式上場を果たしたベンチャー企業家である。解体業の中でベステラが高い技術力でオンリーワン企業であるポジショニングを築いている点に注目する。

「会社を必要以上に大きくしないビジネスモデルが素晴らしい。工事用重機や工事部隊を保有せず、外で出来るものは全てアウトソースして、少数精鋭でコストをかけず利益を生みやすい組織を実践している点が強み」と橋本は分析する。

 創業社長は自分の感性で事業を起こし、ゼロから一を作るのが好きな人である。社員も全員の顔と性格が分かる50人位までが最適で、100人の壁があると言われる。会社が大きくなると社員の動きが見えなくなり、組織全体の統率が効かなくなってくる。時代の変化も早くなり、小回りが利かないと経営判断も遅くなるという弊害があるのだ。

「組織はなるべくコンパクトな方が良い。他では出来ないコアとなる部分だけ自前でやるに限る。吉野社長の経営姿勢に共感するところが多い」と橋本は言う。

「株式投資では負け知らずと聞いたことがある。その辺の相場観を読むのも長けている。趣味は写真と芸術性にも富んでいる。自分にない才能のある人物で、どこか得体のしれない魅力が吉野社長にはある」、個性豊かな経営者仲間の中でも吉野は異彩を放っているのだ。

 以前、会食の席で吉野から新天地を求め愛知県から上京した際の苦労話を聞いたことがあった。逆境からもう一度這い上がろうとする向上心が伝わってくるエピソードだった。実は、橋本も20代のころ、父親の会社が経営に行き詰まり、多額の借金を背負ったため、エリートサラリーマンを辞めて、親の会社の事業再建、整理に奔走した過去がある。食うものにも困り、夜逃げすることが頭を過ぎったこともある。橋本もどん底を経験したのだ。その時の資金繰りの交渉の経験がその後の起業、経営に役立った。

「どん底の状態を味わっている人は強い。知力、体力、精神力を兼ね備えている経営者で、吉野社長と今の若い経営者で対等にやりあえる人は少ない」と橋本は吉野の経営者としての強さについて話す。

「私たちにとって目標となる企業家なので、今後も現役で走り続けてください。吉野社長がやったのだから、僕らにも出来るという希望になるでしょう。これからの将来の夢を与えてもらえるような活躍を期待しています」と先輩企業家、吉野に敬意と称賛を送った。



有言実行の人

日本大学芸術学部教授 国際パフォーマンス研究所代表 佐藤綾子


有言実行の人


 佐藤が吉野に初めて会ったのは4年前、2011年4月の経営者が集う勉強会だった。メガネの「J INS」田中仁社長や「ホリプロ」堀威夫会長などに混じって、朗らかな笑顔で参加する吉野であった。質疑応答の時間になると一番に手を挙げて、「今の話はこういう意味ですか」と講師に質問しており、積極的な経営者との印象を持った。

 この勉強会がきっかけで佐藤は吉野の会社で社員向けに講演をしたこともある。

 佐藤は顔の表情分析で心理学博士号を持つ専門家。吉野は目じりが下がっており、常にニコニコしているような印象を与えるという。佐藤は吉野の目の形を見た時に本当に優しいかどうかをまだ知らずに、「優しく見える方だな」と感じた。

 社交辞令の「食事行こう」と「お化け」は一緒で、出たことがないとよくいう。「今度ご飯でも」、と言っても大抵は実現しないからだ。しかし、「吉野社長は有言実行の人です」と佐藤は言う。ある時、佐藤が主催しているセミナーに「今度行くよ」と吉野が声を掛けた。ベステラが株式上場を果たした後で多忙を極める時期だったので、佐藤は「当分は無理だろう」と思っていたが、佐藤の主催するクラスにふらりと吉野が立ち寄ることがあった。「本当に驚きました。吉野社長の誠実な人柄が分かるエピソードです」と佐藤は笑顔で話す。

「創業経営者で株式上場まで上り詰めた人物が自分よりも年少者である私に向かって、『佐藤先生から勉強している』とはあまり言わないでしょう」

「ぼくは佐藤先生に『ニコニコしていなさい』と言われたから笑っているんですよ」と言って、周りの人を和ませる吉野。

「自分に自信のある人間ほど、誰か他の人に学んでいると平気で言うものです」と佐藤は分析する。

 聖書に面白い言葉があると佐藤。

「建てるのに時があり、壊すのに時がある」有名な「全てに時あり」と呼ばれている言葉だが、建造物を作ることには皆、一生懸命になる。どんな材料を使っていつ完成させるのか、しかし壊すことまで考えない。戦後急速に発展した日本の建造物が50年の寿命を迎え、作り替えの時期になった。

「ベステラは益々今の時代でニーズを増すと確信しています」と佐藤は言う。

 もう自分は年だから、と若いうちに次の世代にバトンを渡すのがかっこいいと思っている経営者もいるだろう。

「吉野社長のようにご自身が最前線にいて、アイデアをどんどん提供している方は、聖路加国際病院の日野原重明先生がいます。『老化』は生物学的用語であり、『老いる』は心理的用語だと話していました。お二人とも若さの典型ですね」と佐藤は語る。

 また、吉野を知り合ってからこの5年間でも上場前と上場後で明らかにスピーチをするときの声が大きくなっていると佐藤は言う。「より広い社会へ向けての発信者としての決心が表れていると解釈しています」

 先日、吉野が趣味としているカメラの写真展に行き、そのアングルのユニークさに佐藤は驚いた。

「地面から地味にぽっと咲いているカタクリの花の写真が印象的でした。私も中学校・高校の美術教員の免許状を持っています。写真と同じで美に対する憧れをいつも持ち続けていること、ゴルフなどが共通点」と佐藤は言う。

 最後に、「これからも益々ベステラ(最善の地球)を作る企業として、ご発展されることを祈っています。ユーモアの陰に、誰にも負けない真剣さがある、二重仕立ての自己表現をなさる吉野社長。後ろから付いて行きたいと思っています。また、講演にも呼んで下さい」とメッセージを送った。



吉野佳秀の強みは“ 野性”と知識に裏打ちされた“ 先見性”

山口大学大学院技術経営研究科教授 泉秀明
吉野佳秀の強みは“ 野性”と知識に裏打ちされた“ 先見性”


 ベステラの顧問を務める泉秀明。清水建設勤務から清水建設アメリカ現地法人副社長などを経て、現在は山口大学大学院技術経営研究科(MOT)教授である。MOTとはマネジメント・オブ・テクノロジー。技術者から将来的に経営者となる人に対して経営を教えるもので、経営者やその二世、大手企業の部長などが主な対象だ。その泉は知人の紹介によって、吉野と多田を同時に知った。

「吉野社長の第一印象は『面白いおじさん』ですね。仕事の話はせず、趣味の話を繰り広げる様子は『千夜一夜物語』のようで、興味を持ちました」

 その「面白い人」からビジネスの話をしたいと持ちかけられた泉。技術の話を聞いているうちに、ワクワク感が湧き上がってきたという。

「人が何かをする動機は基本的に期待と夢とワクワク感でしょう。ベステラは夢を持ちながら、社会のためにしなければならないことをやっているというミッションが明確。しかも吉野社長はハッハッハッと笑い飛ばしながら事を進めて行く。真面目な人がロジックを詰めて目標を設定するよりも、その方が強いんですよ」

 このようにベステラにかかわることとなった泉だが、自身によればその存在は「メンター」。毎日メールをやり取りし、2カ月に1度は社を訪ねて、経営や建設業界、3D事業、ロボットなどについて語り合う。

 特に「パーフェクト3D」はベステラのコアなビジネスときっちり結び付いていると評価し、今後さらに相乗効果で展開していくことを期待する。またレスキューロボットをはじめ、将来的に需要が高まることが必至なロボットについてもベステラの3D計測が大きく関わってくると見ている。

 さて、こうして吉野と接するうち泉が感銘を受けたもの、それは吉野の持つ“野性”であった。

「知性、感性、野性。人はなかなかその三拍子が揃わないものです。知性は鍛えられるし、感性も磨ける。でも野性は天性のもの。身を乗り出して踏み込み、エネルギーを放出されたら、人はやらざるを得ない。吉野社長にはそんな野性的な魅力がありますね」

一方、自身も経営に携わっていた泉は、吉野の経営者としての強みの一つを“先見性”と語る。

「これまでの経験に加え、よく本を読み、気付き、学ぶ。その膨大な知識量と、そこから生まれてくる先見性は、尊敬に値します」

 またベステラの企業としての強みについては「技術力に尽きる」と言い切る。加えて、物を持たない身軽さも強みの一つと見る。機械を持つと、そのための仕事を取る羽目になり、動きが縛られてしまうからだ。その一方で、泉は課題も感じていると話す。

「今は吉野社長と社員の絶妙なバランスでうまく事が運んでいますが、人間は誰でも年を取る。循環や後継者を考えることも必要です。それに事業が大きくなると模倣や大手の参入が始まる。それを寄せ付けず、どのように上手く先取りしていくか。ベステラはきっと見事にやっていくだろうと希望も込めて考えています」


その泉が吉野へメッセージを送ってくれた。

「ベステラが行っているイノベーションは、大手では起き得ないもの。建設業界全体にとっても大切なミッション実現のために、吉野社長にはとにかく元気で長生きしてほしいです。ゴルフと酒はほどほどにたしなみながらね(笑)」



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