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2016年01月04日

リーダーは明るいビジョンを掲げよ/セコム取締役最高顧問 飯田 亮 

企業家倶楽部2011年1/2月号 新春インタビュー


厳しい財政状況に加え、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件などで混乱を極める日本。こういうとき、企業家や政治家はどうあるべきか。セコム創業者の飯田亮取役最高顧問は「どんな状況であれ、リーダーの仕事は、『こうすればみんなが明るくなって元気になれる』というビジョンを提案し、実行しなければならない。今こそ、明るいビジョンを掲げ、世界へと羽ばたくべきだ」と熱く語る。

(聞き手は本誌編集長 徳永卓三)



やるべきことを明確にする

問 まずは2010年を振り返りたいと思います。民主党政権になってから1年程経ちましたが、どのように見ていらっしゃいますか。

飯田 論ずるに値しません。落第点です。彼らは当たり障りのないことだけを言っていて、口が軽すぎます。政権を担当している党としては、目立ちたがり屋が多い。主張も党内で一致していないので、何をやりたいのかが明確ではありません。

問 どうすれば今の政治環境が変わると考えますか。

飯田 公約を掲げ、やるべきことをやる。それが政治家です。例えば、税収が足りなくて消費税を上げなくてはいけないとしましょう。その場合、なぜ消費税を上げるのかをきちんと説明し、国民の支持を得て実行することです。マニフェストで掲げた内容を実行するのが難しいならば、できない理由をはっきり言って、もう一度組み直しをしなければいません。それが無理ならば、なるべく早く総選挙をするべきだと思います。ただそれでは民主党が惨敗するので、できないでしょう。一国のトップを辞めさせるのも同じで、大変です。自分で辞めると言わなければ、辞めさせることがなかなか難しいからです。

問 中国との尖閣諸島問題など、外交も厳しい状況にあります。

飯田 民主党は以前から外交で手腕を発揮できていません。沖縄の米軍基地の移転問題にしても、最低でも県外と言っていたのを結局できないと言う。それでは沖縄の人たちはたまったものではありません。さらに日米関係も悪化してしまいます。そんなことをしているから、中国にも弱みを見せてしまうのです。政治家が弱みを見せてはおしまいです。ただし、政治が悪いくらいで、日本が沈んだりはしません。心配することはないでしょう。外交問題ならば、外務省の官僚に任せる部分は任せることが大切です。もちろん政治家は、外交や軍事も深く理解し、適切な対応をすべきです。それができもしないのに政治主導と言ってはいけません。大切なのは、まやかしでやらないことです。

問 確かに現状を見ると、官僚もやりにくいかもしれませんね。

飯田 今の政治の一番の問題は、官僚のやる気を失わせてしまったことです。政治家が官僚を表立って批判すれば、官僚もモチベーションが下がります。それで一国の政治がうまくいくなんてことはとても考えられません。政治家が官僚をうまく使うことが大切です。政治家が決断しても一人では何も出来ません。一人でできるほど日本の荷台は軽くない。官僚の協力も大切です。彼らをないがしろにするのではなく、官僚の知恵も活かさなくてはならない。

問 事業仕分けでも、官僚を追い詰めている印象があります。

飯田 事業仕分けはひとつの手法としては非常に良いけれども、現状のやり方は感じが良くない。答弁する官僚は逆らえない。逆らえない人間を前にして責め立てるのは得策ではありません。責め立てる人間は人間性を持って自制しなければいけない。相手は反論しにくい立場なのだから。気をつけなければいけないと思います。

問 国民は自民党政権にお灸をすえるために、民主党に政権を任せましたが、その民主党もダメとなると、これからの政治はどうなるでしょうか。

飯田 自民党は、既存勢力が落選や引退などで淘汰され、若手が台頭してきました。昔の自民党とはだいぶ変わったので、チャンスはあるかもしれません。もちろん今の体制よりもさらなる変革は必要でしょう。政局はなかなか読めませんが、若手を中心に勢力を結集させれば、良い塊ができるかもしれません。



応援する風土をつくる

問 政界で期待できるリーダーはいますか。

飯田 それはわかりません。情報も少ないからです。政治に限らず、経済界も教育界もあらゆる業界で、全体的に人材は不足しているように見えます。ではなぜ人材が不足しているように見えるのか。それは、新しい人が登場すると、マスコミが叩くからです。必ず叩く相手を見つけるのです。例えば、今の学校教育が荒れたのは、かつてマスコミが学校の教師をさんざん叩いてきたからです。教師が馬鹿にされれば、子供たちも教師を馬鹿にして信頼しない。それでは教育できない。だから優秀な教師も活躍できず、学校が荒れるのです。

問 確かにマスコミの問題も大きい気がします。

飯田 貶(おとし)めたり苛めたりしては、優秀な人材が出にくくなります。マスコミは教師の次に医者をいじめ、医療問題が生まれました。そして官僚いじめへと移って、今度は国もおかしくなった。そのツケが今になって表れてきたのです。マスコミが煽動する風潮はよくない。日本を元気にする情報を提供しなくてはいけません。マスコミが魅力的な人材を伝えれば、リーダーが自然と出てきます。出る杭が打たれれば、誰も出たがらない。例えば、官僚にしっかりと働いてもらうには、彼らを応援する必要がある。人間はおだてれば木に登ります(笑)。官僚を上手く使うのも政治家や国民、メディアの役目です。


応援する風土をつくる

どうなるかではなく どうしたいか

問 2011年はどのような年になると見ていますか。

飯田 どうなるかはっきりとはわかりません。今の日本の政治体制では希望を見出すのは難しいかもれない。ただ政治がすぐに変わるのを期待していては遅い。私は「将来が必ずよくなる」と信じています。重要なのは、どうなるかではなく、どうしたいかです。企業はそれぞれの領域で一生懸命やるしかありません。政策に左右されようとされなかろうと、企業は知恵を絞って道を切り開かなくてはいけない。知恵を出すというのは、お客様により満足をしてもらう商品やサービスを開発・販売するということです。そこで得た利益を未来の投資に使ったり、従業員とシェアすることです。

問 飯田さんはいつも「明るいビジョンを掲げよ」とおっしゃっていますね。

飯田 それがリーダーの使命です。日本の科学技術は世界屈指なので、その力を信て、日本国民が元気になるようなビジョンを打ち出すことです。日本の学者が科学技術の面でノーベル賞を数多く受賞していす。日本の人材教育が実ってきた証です。中国はノーベル賞も平和賞を取るのが精いっぱいです。だから技術で勝てる。そういう積極的な姿勢でいることが大切です。メディアもそういう情報を伝えること。積極性と勇気を伝え、日本を元気にしていくことです。

問 政治家も日本を元気にするビジョンを掲げ、国をリードしていくことが大切ですね。

飯田 それが国家のリーダーである政治家の役目です。政治家は国をリードするために存在します。それができないなら、政治家ではありません。世界一明るく楽しい国づくりを真剣に考えるべきです。「こうすれば、みんなが明るくなって元気になれる」というビジョンを提案するのが、政治家であれ、企業家であれ、最も大切な仕事です。我々は世界で最も明るく楽しい国を作らなければいけません。



海外事業を加速する

問 セコムは、企業向けオンライン安全システムや家庭向けのホームセキュリティシステム、個人を対象とした屋外用緊急通報システム「ココセコム」をはじめ、医療サービスや保険、地理情報サービスなど、様々な事業を展開しています。飯田さんが今、一番注目している分野は何でしょうか。

飯田 医療の領域です。日本が高齢化社会になり、老人が溢れている。誰もが病院に入れるとは限らなくなりました。医者や病院が足りないのです。在宅医療にしても、医者が必要です。訪問できる医者の数が足りない場合、在宅医療も難しい。コンピュータシステムなどを導入しても、やはり医者が直接見ることも大切です。その問題を解決することも、セコムの使命です。ただ人材育成だけでは間に合わないので、IT技術の活用や進化も重要でしょう。

問 ロボットも重要な分野になりそうですね。

飯田 セキュリティはロボット警備の時代へと進んでいます。ただしヒト型のロボットとは限りません。まずはセンサーの技術をいかに活用するかです。人が巡回するには過酷な危険区域、騒音や臭気の激しい環境でも、センサー技術を応用したロボットならば安心です。介護ロボットの開発も大切ですが、一番難しい領域です。

問 2011年3月期の連結業績は、売上高が前年同期比4.4%増の6833億円、経常利益が同11・7%増の1098億円で増収増益を見込んでいます。

飯田 今後は海外が伸びていくでしょう。現在のセコムは、台湾、韓国、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、英国、オーストラリア、米国の11の国と地域に進出していますが、これからさらに進出する国が増えていく予定です。

問 飯田さんは先日、インドに行かれたそうですね。

飯田 インドは面白い。デリーとムンバイに行きましたが、魅力的な国です。ただ現状でビジネスを展開するには非常に難しい。長い間、社会主義国家で官僚が支配しているし、それが急にはなくなりません。しかしマーケットは大きいので、可能性は十分にあります。

問 中国と比較していかがですか。

飯田 中国はインドに比べると、大都市を中心に社会資本整備が進んでいます。これからは社会資本の整備やビジネスの主戦場が沿海部から内陸部へと変わっていくでしょう。インドはこれから整備していくので、大変ですね。カースト制度も問題です。身分制度は非常に効率が悪い。それも複雑です。例えば、掃除をする人と、ゴミを拾う人は区別されている。ゴミを拾う人が掃除をしてはいけない。ゴミだけしか拾ってはいけない。これは非常に厄介な話です。この問題を解決するには、長い時間がかかるかもしれません。

問 その他の国の海外事業の現状はいかがでしょうか。

飯田 韓国では圧倒的なシェアを取っています。「セコムは韓国の会社だ」と現地では思われるほどですね。これから期待できるのは、インドネシアです。1994年に進出しましたが、今はセキュリティのリーディングカンパニーとして、首都ジャカルタを中心に事業が拡大しています。セコムのシステムはこれから世界中で必要とされるので、積極的に海外に進出していきたいですね。



世界から人材を集め世界に貢献しよう

問 セコムは前田修司社長が就任して約1年が経ちました。前田さんは早稲田大学理工学部を卒業し、セコムで研究開発や新事業開発の部門長などを担い、2010年1月から社長になられています。この1年のご活躍をどう見ていますか。

飯田 非常にアグレッシブなタイプで、優秀です。前社長(現・取締役副会長)の原口兼正も明るくて元気な経営者でしたが、前田も明るく挑戦的でせっかちです。経営者の条件は、明るくてせっかちな方がいい。

問 これから期待されることは何でしょうか。

飯田 明るくて元気な最高のセコムを作ることです。これからの世界で最高の会社を作るには、世界中から人材を集めることが必要です。各国に進出すれば、考え方も文化も性格もものごとを見る角度もビジネスのやり方もそれぞれ違います。それらを有機的に組み合わせることができたら最高です。我々はそういう会社を目指していきます。問 読者にはベンチャー企業家も多くいます。最後に応援のメッセージを頂けますか。飯田 確固たる企業理念を掲げ、世界に貢献する。大いに稼いで欲しい。若手の企業家が活躍すれば、日本も世界もよりよくなる。頑張ってください。


世界から人材を集め世界に貢献しよう

P r o f i l e

飯田 亮(いいだ・まこと)

東京都出身。学習院大学政経学部卒業後、家業である酒類問屋「岡永」に入社。1962 年、大学の同窓生・戸田寿一氏と日本初の警備会社「日本警備保障」を創業。76 年代表取締役会長。83 年、社名をセコムに変更。97 年、取締役最高顧問に就任。日本で初めてセキュリティ・ビジネスを立ち上げ、一代でセコム・グループを築き上げた日本を代表する創業経営者である。第1回から第8回の企業家賞審査委員長を務める。



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