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トピックス -企業家倶楽部

2016年05月12日

日本のベンチャーキャピタリスト群像/東京大学エッジキャピタル(UTEC)代表取締役社長郷治友孝

企業家倶楽部2016年6月号 キャンパスのキャピタリスト仕事録 vol.6


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。


Profile
郷治友孝(ごうじ・ともたか)

通商産業省(現経済産業省)で『投資事業有限責任組合法』(1998年施行)を起草、2004 年㈱東京大学エッジキャピタル(UTEC)共同創業。3本の投資事業有限責任組合(計約300億円)を設立・運用し、テラ含め16投資先ベンチャーの役員に就任。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士。日本ベンチャーキャピタル協会常務理事。




今回は、日本のベンチャーキャピタリストの群像を取り上げたい。本稿でいうベンチャーキャピタリストとは、LP(有限責任組合員)から出資されたVCファンドを運用するGP(無限責任組合員)ないしその出資者・責任者として、ベンチャー企業への支援に当たるプロフェッショナルを指すこととする。



●大手VC企業出身者

 筆者は1997年、「投資事業有限責任組合法」の立法に先立ち、日本最大手のVC企業であるJAFCOに3カ月程度出向したことがある。そこでVCファンドの仕組み、出資者集会の運営、ベンチャー企業への支援等について指導を受けたのだが、2人の課長から薫陶を受けた。現日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝氏と現JAFCO社長の豊貴伸一氏である。2人は、野村證券グループである同社において生え抜きという点は共通だが、タイプは正反対。村口氏は個人で高い実績を上げるのに対し、豊貴氏はチームとして業績を出す。村口氏は翌年独立して日本初の投資事業有限責任組合を設立し、以後個人で単独GPとなる投資事業有限責任組合を次々と設立。慶応義塾大学でベンチャーキャピタリスト養成講座を担当するなど後進の教育にも努め、教え子の佐俣アンリ氏(2012年ANRI設立)や木下慶彦氏(同年Sky land Ventures設立)なども活躍し始めている。他方、豊貴氏は2009年に初の生え抜き社長に就任する。氏は、JAFCOの発展を率いてきただけでなく、内外で活躍する多くの後輩の指導育成に当たってきた。


 JAFCO出身のベンチャーキャピタリストは数多いが、中でも99年にIncubate Fundを設立した赤浦徹氏は、ICT分野で高い実績を収めながら、自身より一回り若いベンチャーキャピタリストを対等の代表パートナーに迎え、若手ベンチャーキャピタリストにLP出資をしてGPとしての独立を促すなど、ベンチャーキャピタリストの養成に努めている。産学連携分野でも、1999年設立のバイオフロンティアパートナーズ代表の大滝義博氏、2013年設立の京都大学関連VCであるみやこキャピタル代表の山口哲史氏、2015年にBeyondNext Ventures を設立した伊藤毅氏のように、JAFCO出身者が活躍する例が増えている。

 それ以外の大手VC企業出身のベンチャーキャピタリストとしては、1998年に日本アジア投資から独立して投資事業有限責任組合を設立したフューチャーベンチャーキャピタル創業者の川分陽二氏、日本アジア投資でDFJ JAIC Venture Partners を立ち上げて今日のDraper Nexus Venture Partnersに発展させた中垣徹二郎氏、現大和企業投資(旧N I F)出身でIncubate Fund に代表として参画している村田祐介氏などが挙げられよう。



●コンサルタント出身者

  Globis Cap ital Partners マネージングパートナーで現日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)会長の仮屋薗聡一氏は、1996年にGlobisのVC事業設立に参画する以前、三和総合研究所の経営戦略コンサルタントだった。私は1997年に事務所を訪問させていただいたことがあるが、氏一人で同社のVC事業を切り盛りしていたことが思い出される。GCPは現在、日本で最も機関投資家系LPから信任されているVCの一つといってよい。

 B Dash Ventures 代表の 渡辺洋行氏も同じく三和総研出身の元コンサルタントである。三菱UFJキャピタル、ネットエイジ(現ユナイテッド)を経て、2011年にB Dashを設立した。同氏は、具現化力のある経営人材の見極めと、投資先のエグジットに優れたベンチャーキャピタリストである。

 フェムトグロースキャピタルを運営する磯崎哲也氏も、元長銀総合研究所の経営コンサルタントで、公認会計士資格も持つベンチャーキャピタリストである。ベンチャーファイナンスの仕組みや制度に明るく、ICT分野を中心にベンチャービジネスの経験も豊富である。

 East Ventures 代表の松山太河氏も、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に勤めていたことがある。同氏は個人としても多くのベンチャー企業の経営やM&Aに関わり、起業家的、エンジェル的なベンチャーキャピタリストとして数々の優れた実績を出すだけでなく、後進の育成と独立支援にも積極的だ。



●金融機関出身者

 2013年にシリコンバレーと日本をつなぐVCであるWiLを設立した伊佐山元氏は、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)出身である。氏はWiL設立までの10年間、シリコンバレーのVCであるDoll Capital Managementにて投資経験を積んでいる。

 この他にも、日本で初めて環境エネルギー分野の投資に特化したベンチャーキャピタルである環境エネルギー投資を2006年に設立した河村修一郎氏、1999年に設立されたモバイル・インターネットキャピタルの現代表山中卓氏も、興銀出身のベンチャーキャピタリストである。



●企業出身者

 企業出身者としては、三井物産出身でライフサイエンスに特化するレミジェスベンチャーズを設立した稲葉太郎氏、心臓循環器の医療機器を扱う日本ライフライン出身で医療機器に特化するメドベンチャーパートナーズを設立した大下創氏を挙げたい。それぞれ、創薬分野、医療機器分野の技術・事業に明るく、M&Aを含む数々のエグジット実績を上げて、2013年に独立している。

 新興企業出身者としては、創業期のアクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を経て2008年にサムライインキュベートを立ち上げ、2009年から投資事業有限責任組合を設立し2014年にイスラエルに移住した榊原健太郎氏、サイバーエージェント出身でWiLを共同創業した西條晋一氏、元起業家・Yahoo Japan 出身で同じくWiLを共同創業した松本真尚氏などがいる。彼らは創業期の新興企業での事業経験が強みである。



●起業家出身者

 成功した起業家が、自らの起業経験、ネットワーク、資金力等の強みを活かして、自らエンジェルやベンチャーキャピタリストとして起業家の後進を育成する例も数々見られるようになってきた。アクセス共同創業者でTomy K 代表の鎌田富久氏、あすかアセットマネジメント創業者の谷家衛氏のようにエンジェル投資に取り組む事例、ガンホー・オンライン・エンターテイメント創業者の孫泰蔵氏のように自身の投資会社(Mistletoe)から規模感あるベンチャー投資を行う事例のほか、2015年に慶應義塾大学関連のVCである慶應イノ ベーション・イニシアティブの創業社長となったGree共同創業者の山岸広太郎氏、2016年にグローバルIoTテクノロジーベンチャーズを設立したインターネット総研創業者の藤原洋氏のように、LPを募るGPを創業してベンチャーキャピタリストして大規模な投資活動を行う事例も出始めてきている。



●多様化と今後

 近年は、みやこキャピタル共同創業者の岡橋寛明氏やUTECの私のように経済産業省でベンチャーキャピタルの制度づくりに取り組んだ元官僚や、UTECの片田江舞子氏のように生命科学の研究をしていた元研究者のように、ベンチャーキャピタリストのバックグラウンドも多様性と深みを持ちつつある。

 日本から世界規模で産業の新陳代謝を起こすベンチャー企業を産み出すためには、資金だけではなく、ベンチャーを支援するベンチャーキャピタリストの質、量、多様性を一層高めるとともに、彼らが有機的に各々の強みを活かして協働し合う組織、関係、生態系を効果的に作り上げていくことが重要になってくるであろう。



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