トピックス -企業家倶楽部

2016年05月16日

人類を仮想空間へ誘うVRとは

企業家倶楽部2016年6月号 ビジネストレンド





 我々人間が外部から膨大な情報を得る際に使う五感。特に視覚から得られる情報の割合は約87%を占めるといわれている。その視覚に大きなイノベーションが起きようとしている。

 ヴァーチャル・リアリティ(以下VR)の登場である。VRとは「仮想現実」のことで、写真やCGなどを映像化して作り出された仮想空間を視覚に投影。あたかも実際にその空間にいるかのような体験ができる技術を指す。

 利用には、ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)といわれる装置を目を覆う形で頭部に装着する必要がある。このHMDは数多くの企業により開発・販売が進められており、ほとんどの製品には、目の位置に立体視を目的とした小型のディスプレイと広角レンズが一対ずつ搭載されている。装着者は両目の広角レンズを通してディスプレイに投影される立体映像を観ることとなる。表示される映像は装着者の位置や動きに連動して変化するため、思うがまま上下左右360度の全方位映像を楽しむことができるのが大きな特徴と言えよう。

 代表的な商品としては今年3月に発売となった「オキュラス・リフト」や6月に発売が決定しているソニーの「プレイステーションVR」、スマートフォンとの組み合わせで安価でVR体験を可能とした「グーグル・カードボード」が挙げられる。

 映像の動きはディスプレイに投影されているとは思えないほど滑らかに作られており、一秒あたりの表示されるコマ数は75枚。一般的に馴染みのある映像と比較すると、映画のコマ数が秒間24枚、テレビのコマ数が秒間30枚のため2倍以上映像が滑らかに見えるはずだ。




 最近になって一般にも認知され始めたVRだが、その起源は約半世紀前にまで遡る。1968年にアメリカの計算機科学者アイバン・エドワード・サザランド氏によってHMD「ダモクレスの剣」が生み出された。視認できる世界は単純な線で結ばれた像のみであったが、これが人類初のVRといわれている。昨今話題となっているオキュラス・リフトやプレイステーションVRは50年近くの下積みがあってようやく形になった商品なのである。

 VR技術はゲームや映像コンテンツだけではなく、今後多くの分野における活用が見込まれている。例えば介護・医療の現場だ。脚が不自由で旅行の困難な高齢者がVRを使うことで擬似的に目的の場所へヴァーチャル旅行できるような体験を提供することや、病院から離れた場所でも医師が患者を診察できるといった将来性もある。

 エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏が社長を務める長崎ハウステンボスでは、いち早くVRを使った事業に力を入れている。今年からVRデバイス「オキュラス・リフト」を用いたアトラクション「ザ・ヴァーチャル」を公開した。乗馬フィットネスマシンに乗り複数人で乗馬レースができる「Hashilus(ハシラス)」、鳥に乗って巨大な昆虫から逃げる「鳥獣ライド」、忍者となり手裏剣を使ったバトルができる「HANZO」と、3つの最新VRアトラクションを体験できる。

 しかし現在、VRを体験できる商品の多くは値段が5万~10万円と高価なモノであり、企業での導入は多く見られるものの一般人が気軽に購入できるような値段ではない。今後の普及による価格変動にも期待したい。かつてのウォークマンやスマートフォンのように改善や改良を重ね、今後進化を遂げていくであろうVR。ぜひ、その黎明期に立ち会ってみてはいかがだろうか。



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