トピックス -企業家倶楽部

2016年05月17日

フィンテックが世の中をもっと便利にする

企業家倶楽部2016年6月号 緊急リポート


昨今、金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた『フィンテック』という言葉が各所で取り上げられ、ITを活用した新たな金融サービスがビジネス界を賑わせている。

 電通グループの電通国際情報サービス(ISID)は2月25日、金融分野に新風を吹き込んでいる企業が集うイベント「金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)2016」を東京・丸の内で開催した。同イベントのメインプログラムである、フィンテック領域に特化したピッチコンテスト「FinPitch」では、国内外21 社のスタートアップ企業が各々の革新的な事業に関してプレゼンテーションを行った。(文中敬称略)




 FIBCはフィンテック分野に特化した国内最大規模のイベントで、2012年の初回以来、今年で5回目の開催だ。フィンテック分野の盛り上がりと共に登壇に名乗りを上げる企業の数は増え続け、今年は40社の応募の中から21社が選出。それぞれの企業が持ち時間7分の中で、デモンストレーションを交えた自社サービスの紹介を行った。

 また、今年初めての試みとして全ての参加者が英語でプレゼンを行うという条件が加わった。登壇企業のホームページなどを見ても、英語で発信している企業が多い。立ち上がったばかり、もしくはこれから提供開始のサービスが少なくない中、初めから世界をマーケットと想定したビジネスモデルがフィンテック界の特徴とも言えよう。

 以下、21社が発表した中から、抜粋していくつかのサービスを紹介しよう。



クレジットカードはもう古い

 ネットで買物をする際、注文の度に銀行やコンビニへ振り込みに行くのは正直面倒だと感じる人は多いだろう。また、オンライン上でクレジットカードの番号を入力することへのセキュリティ面の不安がないとは言えない。わざわざカードを出して番号を確認するのも手間に感じる。

 そんな人のための新しい支払方法を提供するのが、エクスチェンジコーポレーションの運営するPaidy(ペイディ)だ。同サービスを使えば、オンラインでの決済時に必要な情報はメールアドレスと携帯電話番号のみ。本人確認のため、携帯メールに届くコードを入力して、支払いが完了する。そして消費者は後日、1カ月分の決済をまとめてコンビニで支払う仕組みだ。

 支払いのたび振り込みに行く必要もなく、クレジットカードの番号入力も不要となることで、決済前の顧客離脱率を減らし、より多くの人に購入してもらえるという。同社代表のラッセル・カマーは「ただ商品を見て回るだけだった人を、買い手に変える」と意気込む。

 同サービスは、購買者の利便性のみならず、決済にかかる時間の短縮やカード決済などで発生するリスク回避に貢献する。一方の売る側にとっても、収益増加やセキュリティ面へのコスト削減に繋がり、売り手と買い手、双方のプラスを生み出す新たなサービスだ。

 2014年10月のサービス開始以来、既に100以上のECサイトで導入されているが、今後使用可能なサイトが増えるに連れ、決済方法の新しい選択肢として爆発的に伸びていくことが予想される。

 エクスチェンジコーポレーションとは別の切り口から、「ビジネスで社会問題を解決したい」と新たな買物決済の形を提案する企業がドレミングアジアだ。同社は世界に蔓延する貧困や格差を減らすというミッションに沿って、Payming(ペイミング)という給与を担保にした買物決済サービスを開発している。

 通常、クレジットカードやデビットカード決済をするためには銀行口座が必要だが、世界で口座を持っているのは人口のたった20%だ。つまり、それ以外の80%の人はその場で現金を持っていないと物を買うことができない。

 一方、ペイミングの決済サービスの最大の特徴は、給与をもらっている人ならば、銀行口座がなくても現金を持たずして買い物ができる点にある。同社代表桑原広充も、「メインのターゲットになる下層所得者層は世界人口約73億人のうち45・3%を占め、市場規模は10兆円にも上る」と説く。

 利用者は独自のプラットフォーム上で、自身の給与をリアルタイムで見ることができ、その日までに稼いだ手取額の範囲内で買い物ができる。その分の代金は給与日に会社の銀行口座から引かれ、利用者にはその差額が給与として支給される仕組みだ。

 桑原が目標とするのは「世界の労働人口の10%に当たる、3億3000万人の人にペイミングを使ってもらうこと」。2016年7月のサービス開始を目指し、目下開発中だ。



スマホひとつで経費精算 個人への送金までをこなす

  フィンテック分野では、日常に溢れる様々な面倒を改善するサービスの台頭が目立っている。

 例えば、2015年5月にサービスを開始した、クラウドキャストが提供するスマホアプリ「Staple(ステイプル)」は、煩雑な経理業務をサポートしてくれる。

 従業員は、領収書を写真で撮って共有することしたおサイフケータイ対応のアンドロイド端末にsuicaといったICカードをかざすと、その利用履歴を読み取ることも出来る。もちろんICカードの履歴の中には、仕事に関係しない個人的な利用もあるだろう。その場合はアプリ上でプライベートの部分はデータ削除し、経費として申請する分だけを簡単に選別、一括精算することができる。

 カードをタッチ、簡単な作業で必要な情報を選別、経理担当者に送信。これらの作業だけで、手元のスマホ1台で簡単に経理レポートが作成でき、経費精算にかかる手間はぐっと軽減する。忙しい会社員の味方になること間違いなしだ。

 管理者としても、レポート確認、経費承認、却下、払戻などの作業をまとめて行える他、直接ICカードのデータを吸い上げるため、経費のごまかしや二重請求などの不正を自動的に防ぐこともできると評判を集めている。

 これまで銀行振り込みのみに頼っていた個人間送金の新たなプラットフォームを作る企業もある。その一角を担うのが、Kyash(キャッシュ)。大きく分けて2つのサービスを提供している。

 一つは、保持するクレジットカードの支出をリアルタイムで確認し、何か問題があれば直接カード会社へ通知できるサービス。カードの利用明細はオンライン上であっても購入後数日かかってからデータに反映されることが当たり前だった中、使った直後に利用者に通知するという速さを実現した。

 複数枚のカードの使用状況を同時に確認できるため 、 1カ所に情報が統合されて利便性も高まる。

 もう一つは、「飲み会の幹事へ割り勘分の料金を支払う」、「仕送りやお小遣いを送る」といった個人間送金が可能なプラットフォーム提供で、そちらは2016年秋の公開を目指して開発中だ。

 利用者は紐づけたクレジットカードで自身のキャッシュアカウントへ必要な金額をチャージ。そこに貯まった金を友人のアカウントへ簡単に送金できる。もちろん銀行などを介して振り込む必要はなく、手数料もかからない。そうして送られてきた金は、店舗やオンラインでの買い物に充てるか、カード請求金額と相殺する形で使うことができる。


スマホひとつで経費精算 個人への送金までをこなす

SNSで気軽にクラウドファンディング

 SNSを活用し、グループ内での資金調達の仕組みを作り出す者もいる。SMILABLE(スマイラブル)が運営するサービス「アイムイン」は、これまでのクラウドファンディングとは異なるお金集めの形を提案。

 同サービスは、大きなプロジェクトのために一念発起して資金を募るといった大規模なものではなく、より日常的に発生する企画に着目した。例えば、歓送迎会といったイベントや贈り物などの企画を立てたら、まず初めにSNSを通じて企画自体を友人へシェアする。その企画に共感した人はクレジットカードを用いてお金を出し、合計金額が目標に達した時点で初めて、企画者の銀行口座に集まった金額が振り込まれる仕組みだ。

 同サービスの特徴は、友人同士でお金を出し合って簡単なイベントやプレゼントを実現させるために使える点にある。代表の澁谷洋介は「集まってお金を出し合うやり方では、その場に居られる人しか参加できないし、集まるのにも時間や交通費がかかり無駄がある」と、従来の友人間でのお金集めの問題点を指摘する。

 「ネット上でやり取りが完結するため、海外や地方など離れた場所にいる人からも参加してもらいやすい」と澁谷が言うように、企画に共感した時点で24時間365日、世界のどこからでもすぐに協力できるのが何よりの強みだ。

 参加者はそれまでに集まった金額や他の参加者などを確認することもでき、透明性が確保されている。企画者が一人ひとりに口座番号などを教える必要もなく、イベントや飲み会では事前に会費を集めることができるため、金銭の管理が容易かつ安全なのも特徴だ。

 近年、「フィンテック革命」という言葉があちこちから聞こえてくるようになった。スマートフォンや独自のプラットフォームを用いた金融サービスや商品が生まれ、個人の生活や会社の取引のあり方が大きく変わろうとしている。ビジネスの未知なる可能性に挑み、社会に貢献する企業家たちの夢を応援したい。



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