トピックス -企業家倶楽部

2016年05月20日

日本の起業シーンに新潮流あり スタートアップカンファレンス2016

企業家倶楽部2016年6月号 ベンチャー・リポート


日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合(NTVP)と慶應義塾大学ビジネススクールは3月15日、横浜の慶應義塾大学日吉キャンパスで「スタートアップカンファレンス2016」を開催した。本イベントでは、フィンテックやロボット、IoTといった最新分野に取り組むスタートアップ企業家が登壇。また、これと同時にSkylandVentures(スカイランドベンチャーズ)の行った企画「SVCampus」にて、躍進している20代前半の若き企業家たちが中高大生に向けて熱い想いを語った。(文中敬称略)



企業家予備軍の中高生が集結

「この中で、何か事業を手掛けている、もしくは手掛けたことのある人は?」

 スカイランドベンチャーズ代表、木下慶彦の質問に対し、パラパラと手を上げるのは、まだ20歳にも満たない若者たち。中には、若干15歳にして創業社長を務める中学生もいる。

 起業やベンチャー企業への就職に興味を持つ中高大生に対し、木下は情報交換や交流の場を提供すべく、「スカイランドベンチャーズキャンパス(SVCampus)」を企画。今回の「スタートアップカンファレンス2016」でも、本会場とは別室で同イベントを開催し、集った20名ほどの学生たちがビジネスのアイデアなどについて活発に意見交換を行った。

 彼らが同イベントに来た目的は、同年代との交流だけではなく、事業を立ち上げ今も成長を続ける若き企業家の話を聞くことにあった。その日、木下の他に学生へ向けて話をしたのは、3名の企業家やエンジニアたち。いずれも20代前半という若さだ。

「とにかく海外の大学に行った方がいいよ!」

 英単語学習アプリを提供するmikan社長の宇佐美峻は、まだ進路の定まっていない高校生に対して力説。彼自身は東京大学の出だが、「今の時代、海外に出なければ何も始まらない。若いうちに刺激のある環境に身を置くべき」と豪語する。

 また、中高生向けにプログラミング、デザインなどを教えるキャンプや学校を運営するライフイズテックCOOの小森勇太は、「中高生の可能性を最大限伸ばしたい」と語った。彼はアメリカ・シリコンバレーに渡った際、多くの小学生が猛烈な勢いでプログラミングをしている現場に遭遇。その光景に圧倒され、「日本も負けてはいられない」という危機感から、自社開催のキャンプでは参加者にプログラミングでスマホアプリやウェブデザインの制作をしてもらう、実践的な教育を行っている。

 木下も、「起業を意識したら、学生のうちにインターンなどに挑戦し、エンジニアとしてものづくりができるようになっておいた方が良い」と説く。

 これらの言葉に勇気付けられた学生たち。未だ10代の彼らが、自身の作ったモノやサービスを世の中に役立てようと夢見て、積極的に動いている。この熱気に触れれば、起業への新しい潮流が起こっていることが分かるだろう。



“起業したい病”に 罹患

 一方、隣の会場では、DeNA(ディー・エヌ・エー)を創業したベテラン経営者の南場智子が、自身の過去 や今後10年で取り組みたいことについて語った。

 南場は大学卒業後、外資系のコンサルティング会社に就職。寝る間も惜しんで鬼のように働いた。紆余曲折ありながらも、10年かけてコンサルタントという一つの職業を極めたと思った矢先に、突然転機が訪れる。クライアントに事業提案をしたところ、「そんなに熱心に語るなら、自分がやればいいじゃないか」と返されたのだ。「そりゃそうだ」と妙に納得した南場。その時のことを振り返り、「ふと魔が差したように“起業したい病”に罹った」と笑う。

 そうして南場が立ち上げたのがDeNAだ。「自分の人生がその日から始まったというくらい、色鮮やかになった」と言うほど、彼女は起業の魅力、面白さに取り憑かれていた。それからというもの、コンサル時代に培った旺盛な行動力を遺憾なく発揮。「成果を出すためには100%全力を尽くす」という信条のもと、会社は急成長を遂げた。

 しかし、起業してから10 年が経った頃、南場はあれだけ打ち込んでいた仕事からきっぱりと手を引いた。「もう一度自分が大切にすべきものと向き合うため」と彼女は振り返る。

 コンサルティングとDeNA、これまで10年ずつかけて各々の仕事を成し遂げてきた南場。「来年4月には55歳になる。65歳までの間が、プロフェッショナルとして仕事ができる最後の10年でしょう」と、次の10年に目を向ける。

「私が一番好きなのは、アイデアを思いついた瞬間でも目標を達成した時でもない。ゴールに向かって夢中で走っている時。たとえ苦しくて歯を食いしばっていようが、楽しくてたまらない」と語る南場がこれから着手しようと考えている分野は4つ。

(1) ヘルスケア事業

(2)スタートアップ支援

(3)初等教育におけるプログラミング学習の義務化

(4)趣味(ビジネスからは引退)だ。特にヘルスケア事業については、自身が家族の闘病で健康や医療と真剣に向き合った経験から、既に様々な取り組みを始めている。


“起業したい病”に 罹患

病気は運命ではない

 南場が目指すのは、自分や家族の健康に関して医者や専門家に任せきりにせず、意識的に取り組む社会作りだ。

 2015年には第一歩として、検診データ管理や個人に合わせた健康情報の提供をする「KenCoM(ケンコム)」と、遺伝子検査によって疾患に罹る可能性を調べる「マイコード」というサービスを開始した。

 例えば、ある疾患になるのに大きく影響する遺伝子が二つあったとする。この遺伝子を持たず、かつ飲酒喫煙どちらもしない人に比べ、遺伝子を二つとも持っていて、飲酒喫煙をする人がその疾患になる確率は189倍にもなるという。しかし、飲酒喫煙を止めるだけで、その確率は約30分の1の6.8倍まで下がる。つまり、マイコードを使って遺伝子を検査し、その遺伝子を二つ持っているとあらかじめ知ることが出来れば、自身の生活習慣を変えるだけでリスクを下げられるのだ。

「病気に罹るかは運命によって決まっているわけではなく、自分で防げるのだということを知って欲しい」

 もう一つ、南場がこれから作っていきたいと熱弁を振るうのは、患者向けの情報メディアコミュニケーションサービスだ。

 自身や周囲の人が病気に罹った時、南場のように「プロジェクトを作って、様々な療法を調べたり、海外の論文を読み込んで病気について勉強したり、さらにはその分野の専門家に会って話を聞く」という行動を起こすのは難しい。さらに専門知識の無さから、「医者が薦める以外の治療法について言い出せない」「副作用が分からなくて不安」といった声も多くある。

 そうした現状を目の当たりにし、南場は「患者さんがお互いに助け合える場所を作りたい」と考えた。今後も強い意志を持って、患者主体のヘルスケアサービスを作り上げることに邁進するという。

 
 中高大生からベテラン企業家まで、カンファレンス参加者は皆、夢に向かって日々考え、行動し続けている。彼らが牽引する日本発スタートアップの未来は明るい。



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