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トピックス -企業家倶楽部

2016年05月23日

知性と野性の融合で解体業界に革命を起こす/べステラの強さの秘密

企業家倶楽部2016年6月号 ベステラ特集第2部


   肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

 

リンゴ皮むき工法で解体業界に衝撃を与えたベステラ。豊かな発想力から生み出された独自の工法を武器に、「持たざる経営」を貫いてきた。時に理に適った自社の工法を説き、時に行動力をもって精力的に現場を飛び回る。知性と野性を兼ね備えたリーダーの指導の下、勤勉かつチャレンジ精神溢れる社員に支えられ、解体業界をリードする同社の強さに迫る。(文中敬称略)

強さの秘密1・独創性

4年間の思案が実りリンゴ皮むき工法誕生

 丸いガスタンクの上を這うように進む、小さな赤いロボット。火花を散らしながら、厚さ35ミリはある鉄板を1.5メートルの幅で徐々に裁つ。切断された鉄の塊は、自身の重みで、とぐろを巻きながらタンクの内側へと落ちていく。これが、ベステラの誇る「リンゴ皮むき工法」である。工期も早くなる上、切るのはロボットときているから、コストは従来の3分の1で済んでしまう。

 今やベステラの代名詞ともなったこの工法だが、生まれるまでには紆余曲折があった。最初のきっかけは約25年前、同社を率いる社長の吉野佳秀が「ガスタンクの解体を見て、アドバイスして欲しい」と請われ、他社の現場視察へ赴いた時のことだ。

「わざわざ外側に足場なんか組まなくても、タンクの中に水を入れて船でも浮かべればいいじゃないですか。切った鉄塊はどんどん水の中に落としていき、水を抜けば水位と共に足場も下がってくるでしょう」

 さらりと言ってのけた吉野の発想力に驚嘆し、担当者は早速特許を取ったというが、この方法にも難点はあった。球体の中に水を入れると、万が一大きな地震が発生した際にバランスが崩れやすく、ともすれば転がってしまう危険性も否めなかったのだ。

 より良い方法を模索し、4年間に渡って毎日のようにガスタンクを眺め続けた吉野は、ある時タンクを下から見つつ、思案に耽っていた。

「ガスタンクというのは下半分も相当大きいな。もしこの部分さえ無ければ、上から切った鉄塊は直接地面に落ちて、あとは片付けるだけなんだが……」

 ここまで考えた瞬間、吉野の身体に震えが走った。そこまで分かっているなら、最初に下部をくり抜けばいい。上部も、鉄塊を繋いだまま切っていけば、自分の重みで勝手に下がって来るではないか。

「良い発想は、決して急に湧いて出てくるものではありません。何とかして仕事が欲しいという想いを胸に、年中考え続けた結果、神様がそっと背中を押してくれるのです」

 こうして誕生したリンゴ皮むき工法は、業界に驚きをもって迎えられた。新聞の紙面に登場するや、最大手のガス会社から電話があり、受注。2004年には特許も取得、ベステラの飛躍が始まった。

理に適った解体は美しい


 最近では、東証一部上場企業と比較されながらも、実績を示して受注を得られることが多くなってきたベステラ。「お客さんが、作る人と壊す人を区別して考えるようになった」と吉野は喜ぶ。これまでは「作る人でなければ壊せない」と思われてきたが、むしろ「作った人では壊せない」という認識が世の中に広まってきた。

 そんな解体のプロとして、吉野は常々「美しく壊す」と口にする。それはすなわち、合理的な方法で解体を行うということであり、結果として最も安全な施工に繋がるのだ。

 その肝となるのは、吉野独特の表現を借りて「地球と仲良くする」こと。地球の重力に逆らわず、余計な力をかけることなく工事を進めるのが理想だ。前述のリンゴ皮むき工法はその最たる例だが、クレーンを使う場合でも、むやみに吊るすのではなく、あくまでモノを降ろすという発想が重要となる。

「はらわたをえぐるような汚い解体をしてはダメだ」と吉野が説くように、ベステラは独自の発想力で理に適った美しい解体を目指し、「より早く、より安く、より安全に」という社是を追求する。



強さの秘密2・時流 

解体の兆円市場に挑む

 ベステラの追い風となっているのは、その市場性だ。1960年代の高度経済成長期から50年が経過し、当時雨後のタケノコのように建てられた施設が急速に老朽化。旧式の設備は安全性、生産性を考えると維持が難しく、その更新費は今後50年で約190兆円にも及ぶと推測されている。

 ベステラの試算によると、各業界におけるプラント解体の市場規模は電力13・6兆円、石油・石油化学28・5兆円、製鉄1.7兆円と軒並み兆円単位だ。

 実際に、石油化学分野では現在、発泡スチロールやポリエステルといった商品の元となるエチレンの生産過剰が問題となっている。生産能力800万トンに対し、内需は500万トン。減産となれば、3分の1の設備が余剰となる計算である。

 また電力分野でも、東日本大震災時の事故により、原子力発電所の安全性が問われている。古い原発の解体が必要となるのは当然として、原発が動かないために現在稼働している石油火力発電所も見過ごせない。1キロワットの電気を起こすのにかかる費用は、風力、水力、天然ガス火力が10~15円なのに対し、石油火力は約40円と高額。しかも二酸化炭素の排出量も多いとなれば、二重苦と言える。環境負荷軽減を考えれば、いずれは廃炉にせねばならない運命だ。

この問題に対し、日本政府もただ手をこまぬいているわけではない。新エネルギーへの移行に向けて、補助金などの政策を決議。今後、プラント解体の需要が増すことが予測される。

 また、これに関連して、今年から建設業の許可業種区分に「解体工事」が新設されることとなった。1件500万円以上の解体工事を実施するためには許可の取得が必要となるため、施工に求められる品質や安全性が向上。数々の実績を積み重ね、施工管理における高い信頼度を誇るベステラの強みがますます生かせることとなるだろう。

 まさに今、解体業界には時代の追い風が吹いていると言える。こう表現するとIT業界を連想するかもしれないが、今後何十年にも渡って解体需要が約束されているのだから、昔ながらの解体業界に吹くこの風は、ゴルフで言えばフォローの風のようにベステラにとって有利に働こう。その証拠に、「この会社には将来性がある」と、銀行、鉄道、林業、IT、コンサルティングなど様々な異業種から同志がベステラに集結。兆円市場に挑む準備は万全だ。


 強さの秘密2・時流 

強さの秘密3・知性と野性

解体屋のイメージを一新

 こうして集まってきた社員たちは、剛柔を併せ持つ猛者揃いだ。「柔」で言えば、従来の「解体屋」とは一線を画すスマートさというところか。発注者の中には「どうせ無くすものだから、壊してくれればそれで良い」と考える人もいる。解体屋と聞いただけで、建物をただ荒々しく壊すというイメージが先行しているのだろう。しかし、プラントごとに異なる金属の素材を踏まえた上で、「なぜその工法をとるのか、値段の内訳はどうなっているのか」など、納得できるように丁寧に説明するのがベステラ流。あくまで理知的な集団であることを全面に押し出す。

 一度解体を始めれば重機の性能がモノを言うが、ベステラが行うのはその前段階。いかに「安く、早く、安全な」工事を提供するかという提案力が売りだ。提案の根底には、「空気や水を汚さない、近隣住民に迷惑をかけない、周囲の設備を傷つけない」など、様々な環境への配慮がある。また、見積もりを行う上でも、「工事の規模感を正確に掴む、工法を選定する、業者を決める、その地方独自の問題などを把握する、発注者の重視するポイントを聞き出す」といった様々な要諦があり、コミュニケーション力が重要となる。

 「こちらからの提案をベースに色を付けていく場合もあれば、発注者のニーズを汲んで考えることもあります。しかし、お客様から一つ要望をいただいたら、三つはお返しします」

 こう語るのは、ベステラ取締役で技術営業部長の小板幹博。彼らは必ず、どの工場のどのエリアで何を作っていて、その製品の製造プロセスや特性はどのようなものかまで予備知識を入れた状態で営業に向かう。これも、プラントを解体する上で予期せぬ危険に見舞われる可能性があり得るからだ。

 例えば、ガラス工場の解体を依頼された折のこと。ガラスは割れた破片にさえ注意すれば、それ自体は無害に見えるが、押し潰されて砂状になると毒性の高い物質に変わり、劇物扱いとなってしまう。小板はこれを把握した上で営業に行き、「解体する前に、散らばっているガラスの原料などを除却、集積して処分することが必要ですね」と確認。この素朴な質問一つで、「よく調べてきているな」と相手から信頼を得られ、他社を押さえての受注となった。

 こうした信用を得る術も、社長である吉野の背中を見て社員が習得したものだろう。彼が現場に出ていた当時はまだ規制も緩く、柔軟な対応が可能であった。

 「ここには良い素材がありますね。誰よりも高値で買いますよ。もしくは、ここの解体工事を無料でやってもいい」

 スクラップを一目見た吉野が、このように話を進めて契約に漕ぎ着けることもしばしばあったとか。ただ、勉強熱心で博学な吉野が、そのスクラップの中に銀やプラチナ、レアメタルといった希少鉱物が含まれているのを把握していたことは言うまでもない。

 今でも「この装置は何だ」「この製品にはどんな物質が含まれている」と事あるごとに社員を問い詰めるという吉野。常に学び、いざという時お客のニーズに応えられるよう腕を磨いておくようにというメッセージなのかもしれない。

技術営業社員が孤軍奮闘

 ベステラでは、いざ契約となって工事が始まると、予算管理、計画の変更、追加工事など、お金が発生する業務まで全て、現場を統括する社員に権限が委譲されている。建設業界では特異な例だが、「各々のスキルアップのため」と吉野は意に介さない。

 通常の建設会社では、発注者からの要望などを一度本部に戻し、検討結果を再び現場に返して工事が進んでいく。たとえ100 円単位のお金でも、扱えるのは本社の担当部署のみ。そうした役割分担が、作業効率を落としている面がある。

 一方ベステラには、そうした分業が無い。技術営業と呼ばれる社員が一人で何役もこなしながら孤軍奮闘。「会社から信頼されている」という高揚感の下、精力的にあちこちを飛び回る。これが前述の「剛柔」で言えば「剛」の方か。

 発注者や現場の工事部員からすれば、ニーズに即応してくれる機動性は魅力と映るだろう。こうした実績が売りとなり、高いリピート率にも繋がっている。


 強さの秘密3・知性と野性

強さの秘密4・持たざる経営

二度の石油ショックで辛酸

 ベステラの特異な点は、解体事業を営む企業にもかかわらず、実際の工事は外注し、工事部員や重機を自前では一切抱えない「持たざる経営」を志向している点だ。工事の設計や施工管理など、川中から川上を主眼に置く。

 「上流から下流まで一気通貫で手掛ければ良いとの意見もありますが、むしろ更に上流を目指すという意識を持たなければならない」

 こう吉野が述べるように、ベステラはその先進性をもって差別化戦略としている。これから主力事業に据えようという3D計測事業もしかり。ライバルが参入してくる頃には圧倒的に前を走っていなければ、いずれは負けてしまうという危機感がある。

 こうした「持たざる経営」を志向するようになったのは、30代で経験した二度の石油ショックがきっかけだ。原油価格の高騰で工事現場の重機に燃料が供給できず、頼みのスクラップもタダ同然にまで値崩れ。一気に給料も払えないほど厳しい状況に追い込まれた。

 吉野はこの時「非常事態に備えるためには、知的財産という形で誰にも侵害されない工法を持つことだ」と痛感。「持って良いのは技術力ただ一つ」と決め、特許の申請に注力するようになった。現在べステラでは、14件の特許を持ち、5件を新たに申請中だ。

技術力こそ牙城

 言わば資金不足から、否応なく「持たざる経営」へ舵を切る必要性に迫られたベステラ。現在、石油火力発電所が危機的状況に立たされるという旨は前述した通りだが、これに対しても吉野の動きは早かった。いずれ必ずやってくる需要を見据え、コツコツと関連特許を取得していたのだ。ベステラが持つ14件の特許中、12件は火力発電所解体のためのもの。これまでは製鉄プラントの解体が多かったが、電力業界にも積極的に進出する構えだ。

 今でも、ベステラの売上げの1割は発電所解体によるものだが、仕事は配管やタンクに止まり、タービンを回すための蒸気を発生させるボイラーには触れられていない。吉野も「ボイラーこそ一丁目一番地。あの解体を手掛けたい」と熱意を見せる。

そのボイラーに関する解体特許の全集を買い、新幹線での移動中に全て確認していったという吉野。自社が持つ知財の独自性に肉薄するようなものが無いと見るや、思わず鉛筆で分厚い本の裏に書きなぐった。「俺の勝ちだ!」

 今後ベステラでは、知的財産が収益を生む段階に入って来る。元は、ベンチャーが勝ち戦をするための牙城として取得してきたものだが、最終的な吉野の悲願は「解体のプロが考えた工法を世に出す」ことだ。

 これまで大手企業を相手にすると、「なぜ俺たちが下請けの技術を使わなければならないのか」と反発され、たとえ高コストでも彼らが自前で持つ技術が優先して使われるという現象が起きていた。

しかし、もはやそれでは国際競争に勝てない時代である。安全ならばコストは度外視するという価値観から、安全を踏まえつつもいかに安く施工できるかを追求する考え方に変わってきた。

 ここでベステラの出番だ。「作った人では壊せない。壊すのは、壊す人の技術に任せなさい」と自信を持って語る吉野の前途は希望に溢れている。



強さの秘密5・チャレンジ精神

自由闊達な社風

 こうした吉野の下に育まれた社風は、自由闊達にして真面目、冗談も解すが仕事への情熱を秘めている、といったところだろうか。そんなベステラの雰囲気をよく表しているイベントが、毎週火曜日の夜に行われる社内勉強会「卵の会」である。

 卵の会という名は、世界で初めて人工雪を生成した物理学者、中谷宇吉郎の著書『立春の卵』に由来する。彼はこの短い随筆の中で、「立春に卵が立った」という新聞記事を紹介。これに疑問を呈した上で自ら実験を行い、「卵はいつでも立つ」という結論を導いた。

「コロンブスの卵」など「普通、卵は立たない」という前提に基づく逸話があるように、「卵は立たないもの」という常識から誰も試みてこなかったが、平らな場所で何度かチャレンジすれば、どんな卵でもちゃんと立つのである。

 吉野はこの『立春の卵』から、視野を広く持ち、常識を疑って柔軟な発想を豊かとするようにとの思いで、勉強会を「卵の会」と命名した。議題は、戦国武将から重力波に至るまで何でもあり。外部から講師を呼ぶこともあれば、社員が手を挙げてプレゼンすることもある。軽食と酒を入れつつ、役職を超えて議論が白熱。自由闊達な意見が飛び交う。

 ある時の議題は、「会社の近くにあるつけ麺屋を買収するとしたらいくら払うか」であった。振れ幅は350万円から1億円という者まで多種多様。350万円と言った社員は、客の入りをつぶさに調べ上げ、立地との兼ね合いから金額を割り出した。一方、買収額1億円をぶち上げた社員は、「つけ麺屋のノウハウが手に入ると思えば安いもの。全国展開すればすぐに元は取れる」と豪語。「私は1億円の方が大風呂敷で好きですね」と吉野は笑う。

 今後ベステラの一翼を担うこととなるであろう3D計測事業にも、この卵の会における議論が生かされている。こうしたフランクな席を通して、吉野は社員を自然に巻き込んでいるのである。さらなる新事業が生まれる母体として、同社には欠かせない会の一つだ。

お前がやるなら勝負しろ

 卵の会に見られるような勤勉さ、自由な発想力と共にベステラの両輪を為すのが、企業家精神だ。同社は、ノウハウが無いような案件でも積極的に受注し、チャレンジを重ねてきた。リンゴ皮むき工法をはじめとする特許技術は言うまでも無いが、焼却炉から出るダイオキシン汚染の環境対策工事などにもいち早く名乗りを上げ、全国で最初に施工を担当した企業の一つとなっている。

 こうしたチャレンジが可能なのも、ひとえに吉野の存在による。通常の企業ならば役員会での検討に長い時間がかかるような高額の案件でも、「お前がやるなら勝負してみろ」と力強く背中を押す。

 2015年9月に東証マザーズへ上場したこともあり、これから人が増えて組織がまとまってくると、内部統制が厳しくなる可能性は高い。ただ、自由闊達で勤勉な社風から生まれる発想力と、常に新しい展開を考え続ける企業家精神だけは失ってはならないことを、一番分かっているのは吉野自身だろう。

 プラント解体のイノベーターとして、ベステラが今後どのようなチャレンジをしていくのか、まだまだ目が離せない。



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