トピックス -企業家倶楽部

2016年05月26日

多様性を受容するだけではなく束ねる力を 

企業家倶楽部2016年6月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.19




多様性が求められる時代へ

 2016年3月、リンクアンドモチベーション(以下リンク)が主催するモチベーションカンパニーアワードが東京・港区の八芳園で開催された。本アワードは、2015年に「社員モチベーション調査」を実施した企業221社から、モチベーション指数の高い企業10社を表彰するもので、今年で6回目を迎える。

 発表を前に、リンク代表の小笹芳央が登壇。製品やサービスの差別化だけではなく、今や人材力が企業の差を付ける時代であることを改めて指摘した。

「高度化する顧客のニーズに応えるために、多様なスキルや経験を持った人材をいかに惹きつけ、活用できるかが企業に問われています」

 しかし、多様性を取り込めば必ず企業が成長するとは限らない。組織が空中分解して、会社全体として成果が出ない恐れがあるのだ。多彩な人材を統合するためには、経営理念や方針、自分たちらしさ、共に協調する意味を作り出さなければならない。

 そのような環境を生み出すことに成功し、今回第1位の栄冠を手にしたのは、ゲーム事業やメディア事業を手掛けるサイバーエージェント(CA)だ。ランク外であった昨年から大きく躍進した。グループ代表の藤田晋に代わり、同社執行役員でCAモバイル社長の石井洋之が、受賞の挨拶をした。

「最初は理念に共感してもらえず、社員が辞めてしまう会社でした。今では新規事業の前に必ず調査を行い、まずは組織の状態を確かめる。社員の声に耳を傾けたことで、会社が救われただけでなく、こうした受賞にも繋がりました」と喜びを語った。

 惜しくも第2位だったが、去年より一つ順位を上げたのは不動産情報サイト「ホームズ」を運営するネクストだ。「日本一働きたい会社」にすると決め、2007年からサーベイを開始。10年間の努力が実った。社長の井上高志は「今、何が問題なのか正しく認識すれば、対応策が考えられるので、すぐに適切な対応ができます。しかし、一番大切なのは経営者が本気になって組織を変えたいと思うこと」と力説した。


多様性が求められる時代へ

企業の資産の半分以上がヒト

では、何が彼らを本気にさせるのか。1位と2位を受賞した2人に加え、小笹とリンク執行役員の麻野耕司が登壇。「モチベーションカンパニー創りの過程から組織創りの秘訣を紐解く」と題し、トークセッションが開催された。

 企業には「5つの資産」と言われているものがある。人、組織、顧客、金、モノ。このうち前者3つはヒトに関することだ。「金」の状況を財務諸表で把握するのと同じで、人や組織に関しても確認が必要だ。組織を構成する人について知ることができれば、会社の実情が明らかとなる。また、データとして結果が出るため、経営者としての目線だけではなく、様々な角度から自社を見ることができる。

 また、企業を退職する原因の半数は上司との相性が合わなかったからだとする調査結果もある。つまり、職場の人間関係は勤続年数に深く関わっているのだ。しかし、上司もまた人である。なかなか部下からの生々しい声を聞くことは怖いだろう。部下にとっても、上司に本音を話すことは勇気が必要だ。

 ここで役に立つのがモチベーション調査である。しかし、限りある経費や時間を「社員のモチベーション」という目に見えないものに注ぎ込む経営者は少ない。そうした中でもモチベーションを重視した前述の2社の例を見てみよう。

 井上が効果を実感したのは企業理念の変更を行った時。変更に伴い、その意図や、新理念に対する思いを社員に伝えた。しかし、離れていく現場の心に井上は悩んだ。そして調査によって明らかになったのは、自分が「伝えたつもり」になっていただけで、社員には思いが届いていなかったということ。これを解消するために、調査結果をコミュニケーションツールとして、徹底的に従業員とのギャップを埋めた。今では、口に出したかどうかではなく、納得してもらえたどうかを重視。結果は、ご覧の通りこのたびの受賞となった。

 一方で石井はというと、「モチベーション調査の特徴は、会社全体だけではなく部署ごとの結果が見えること」と分析する。彼には、新卒採用での苦い失敗があった。迷った末に即戦力を重視して採用した結果、ビジョンが合わず上手く成果に繋がらなかったのだ。しかし、社内の状況を正確に把握したことで、適材適所の人事に繋がった。



モチベーションは山の天気

 石井は「モチベーションは山の天気と同じ」と説く。モチベーションも人の気持ちなので、突如として変わりやすいのだ。維持するためには、継続して確認することが重要。以前は調査結果が示すのは山積する課題ばかりで頭を抱えていたが、今では改善点を見つけて試行錯誤をしてみたり、問題をメンバーと共有して一緒に考えたりするようになった。

 しかし、調査はあくまで定期検診ということを忘れてはならない。井上は「日常に組み込んで常に意識することが大事」と語る。モチベーションを重視する人事コンサルティングを行うリンクでも例外では無く、同社では社員のモチベーションを維持する施策が打たれている。それは、社内のカレンダーでは実際の3カ月を1年に見立てて考えるというもの。例えば、新年はやる気が高まる時期。3カ月を1年に見立てることで、12カ月の中に正月が4回発生し、その都度心機一転できるという。年末年始のような長期休暇も3カ月ごとに設けているというから徹底している。

 ただ、経営者もまた人である。自身のモチベーションが下がることもあるだろう。モチベーションが高くない時期でも工夫を施すことが重要だ。石井は、自分では上手くいかないと判断した時には無理せず人の力を借りる。人と人の間のことなので、相性もあると理解しているのだ。井上など、有名な経営者と自身とのギャップをあえて社員に問いかけるというから驚きだ。その差を埋めて自身の成長に繋げる糧にするのだと言う。

 小笹は「地球儀が必需品。この地球上に住む70億人のうち、10億人は明日の食べ物にも困っているのか……と考えると、自分の悩みなどちっぽけに思える」と語った。世界を俯瞰的に見ることとなり、小笹にとって視野を広く持ち、気分を切り替えるアイテムとなっている。

 どの企業にとっても、組織に関する問題は悩みの種であろう。しかし、上位入賞した企業に共通しているのは、人や組織が事業の発展や企業の優位性を信じていること。「御社だから頼みたい」と言われる会社を作ることができれば、企業の未来は明るいのではないだろうか。



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