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トピックス -企業家倶楽部

2016年06月27日

過去を捨てアパレル界の新境地に挑む/ストライプインターナショナルの21世紀戦略

企業家倶楽部2016年8月号 特集第1部


宮﨑あおいのCМで知られるレディースアパレル、「アースミュージック&エコロジー」で躍進。売上げ1100億円企業へと成長を遂げる旧クロスカンパニー。社長の石川康晴はこの春、22年間慣れ親しんだ社名を捨て、ストライプインターナショナル(以下、本特集ではストライプ)へと変更、ゼロからスタートすると宣言した。そこにはどんな真意があるのか。1兆円企業を目指し、着々と布石を打つストライプの未来戦略に迫る。(文中敬称略)




 2016年2月25日、東京・品川のホテルの一室は、約1500人の人で埋め尽くされていた。大方が元気溢れる若い女性たちだ。今や恒例となった旧クロスカンパニーの社員総会「セカンドファミリーカンファレンス」がスタートした。

 2016年中の株式公開を目指す同社にとっては、記念すべき年、第一部の戦略発表会にも力が入る。各事業部門の熱いプレゼンが終わり、第一部が終了しようというときだった。会場が真っ暗になり、社長の石川康晴が舞台中央に進みでた。会場は何が始まるのかと、静まり返る。

 そして石川が口を開いた。

「最近我々の中では消極的な人間が増えたような気がします。わが社には消極的という概念は要りません」

 舞台中央のスクリーンには大きく“PASSIVE”(消極的)の文字が浮かび上がり、否定の横線が引かれる。

「続いて“STATUS QUO”(現状維持)、要りません。

“COMMON SENSE”(常識)、要りません。

“ACCEPTABLE”(無難)、要りません」

 会場は静まりかえり、石川の声に耳を傾ける。

「“NORMAL”(普通)、これも要りません。そして“BIAS”(先入観)、これも要らない」

 そして次の瞬間、“CROSSCOMPANY”(クロスカンパニー)の文字が浮かび上がり、否定の横線とともに、石川の声が響いた。「クロスカンパニーも要らない。我々はストライプインターナショナルに生まれ変わります」

 社員たちの驚きの表情とともに、会場はあっけにとられたように静まりかえった。壇上の石川は、毅然とした表情でさらに続ける。「我々クロスカンパニーは3月1日から、ストライプインターナショナルに社名を変更します。この2年間ずっと考えてきました。本来なら経営理念と事業領域を変更した昨年、一緒に社名変更を発表したかった。しかし、22年間皆さんとつくりあげてきたクロスカンパニーを捨て、社名変更するのはあまりにも大きく、準備に2年近くかかりました」。1500人の目が壇上の石川に集中する。

「ストライプインターナショナルとして新しい歴史を刻んでいきましょう」

 石川の本気のメッセージに圧倒された社員たちは、突然の宣言に戸惑いながらも、これから起こる新しい世界にワクワクするような表情を浮かべた。

 そしてその後、第二部の懇親会が始まった。この日はいつもと違い全員が仮装するという、異例の懇親会となった。誰もが自分の好きなキャラクター、好きなモノに変身、会場にははじける笑顔が溢れた。勿論、石川も「名探偵コナン」や「SEKAI  NO  OWARI 」のFukaseに扮し、社員たちから喝采を浴びた。そこには22年間培ったクロスカンパニーを脱ぎ捨て、新しい世界に飛び出す社員たちの決意が見て取れた。



過去を捨てゼロからスタート

「過去の成功体験を全部捨て、ゼロからスタートしたかった」と語る石川。売上高1000億円が見えた2、3年前から大企業病に陥り、保守的になっていた。グローバル企業とはいえ海外売上比率はたったの3%。時代の変化を先取りし、IT化を加速、事業領域を変えるというメッセージを具現化するには、社名を捨てて新しく創るしかないと決断、2年間考え続けたという。

「ストライプインターナショナル」という社名についてもどれほど考えたことか。新社名の「ストライプ」は、「自由と革新」の象徴としてフランスの国旗をイメージしたという。

 全ての従業員が個性を活かし、いきいきと働く組織風土と、多様性に富んだグローバル企業を目指す。さらに品格と愛嬌を併せ持つ会社でありたいという想いを込めてストライプとした。そして2016年3月1日、ストライプインターナショナルの新たな歴史がスタートした。

 社名変更に先立ち、経営理念「お客様第一主義」も捨てた。新しい理念に掲げたのは「セカンドファミリー」である。お客様と家族のような関係になれたら、それこそが究極のお客様第一主義と考えたからだ。

 事業領域も「アパレル」から「ライフスタイル&テクノロジー」へと変更。アパレルに限らず、衣食住全般を視野に入れ、ライフスタイル提案型ストアとして、あらたな生活シーンを掘り起こしたいという。そこには勿論、ネットサービスやEコマースも入ってくる。

 既にライフスタイル提案の店として、ケアコスメの「セントオブヴァロ」、とギフトマーケットの「メゾンドフルール」を出店。2015年にはネットでの服のレンタル「メチャカリ」事業も立ち上げている。


過去を捨てゼロからスタート

路線転換で成長

 斜陽産業といわれ、レディースアパレルトップ3が縮小を余儀なくされる中、売上高1103億円、経常利益83億円(共に2015年1月期)をたたき出し、成長を続けるストライプ。その差はどこにあるのか。

「この22年間路線転換の連続だった」と語る石川。セレクトショップからカジュアルなSPA(製造小売)へ、店舗展開も都心から郊外型へと、常に路線変更をしながら、成長を創りあげてきた歴史がある。

「イノベーションというと、技術革新ととられがちだが、ビジネスのイノベーションは路線転換」と石川。岡山市内での高級セレクトショップからSPA(製造小売)へと大胆な路線転換を断行、アースを立ち上げた。この決断がなかったら今のストライプは存在しなかった。店舗展開も、ファッションビルのラフォーレやパルコから、アトレ、ルミネという駅ビルに路線変更。さらにイオンやららぽーとなど郊外のショッピングモールへと路線転換を続けてきた。

 海外展開では2011年に中国本土に出店を果たし、国内から海外へと路線変更。石川自身がかの地に居住して陣頭指揮を執り、成功に導いてきた。そして今、アパレルからライフスタイル&テクノロジーへと領域を広げるという路線転換を敢行。こうした路線転換の連続こそがストライプ成長の原動力となっている。常にアップデート、これこそが生き残りの秘訣といえる。



「メチャカリ」で服のレンタルライフを

 今、石川が一番力を入れているのは「メチャカリ」だ。世界初の普段着のレンタルサービス「メチャカリ」について説明しよう。これは1カ月5800円で、アースなどの服が借り放題という画期的なサービスだ。めちゃくちゃ借りられるので「メチャカリ」と名付けた。

 考えたのは石川本人だが、実際の担当は、ネットとアパレル双方に知見を持つメチャカリ部部長の澤田昌紀である。ターゲットは10代後半から20代前半の女性だ。通学や、通勤で洋服をたくさん必要とするが、まださほど洋服にかけるお金がない女性。毎月5800円で借り放題、しかもコーディネート済みというから便利だ。しかも貸すのは全て新品という。これもSPAならではの強みといえる。さらに返ってきた服は中古品として販売するという画期的な仕組みである。2015年秋からスタートし、今、会員は約4000人という。まずは認知度を上げるのが課題と澤田。石川は5年後には会員30万人を目指すと強気の姿勢を見せる。

 今の若者は所有欲がなく、特にスマホ世代は所有よりもレンタルやシェアに違和感がない。今のエコ時代にも合致すると石川、将来に向けていち早くプラットフォームを作っておきたいという。メチャカリはまさに流通のイノベーションといえる。新品のEコマースも強化、現在EC化率は3%だが、これを10%に上げたい考えだ。



売上1兆円構想

 石川が掲げる売上1兆円構想は夢物語ではない。石川の頭の中には、既に具体的な計画が出来上がっている。その戦略はこうだ。

 グローバルブランドKOEで5000億円。KOEのコンペティターはZARAやH&Mだが、どちらも売上高2兆円を超える。それに続くのがユニクロである。ここと戦うブランドとして、KOEをぶつけていく考えだ。

 アースとしては中国を中心にアジア全体に拡大、アース20億人戦略を実現していく。その内訳は、中国で13億人、日本を含めてその他で7億人だ。中国以外としては、インドネシア2億6000万人、ベトナム8000万人、タイ6000万人、フィリピン1億人、日本1億2000万人、韓国6000万人、香港とシンガポールそれぞれ500万人を全部足すと、ほぼ20億人だという。このマーケットで、アースで1000億円をたたき出す。従ってKOEの欧米を中心としたグローバル戦略とアースのアジア戦略で6000億円という計画だ。

 それに業界再編を視野にM&Aで3000億円。残り1000億円はテクノロジー関連だ。メチャカリで国内300億円、ストライプクラブという新品Eコマースで300億円、その他今後のアプリ開発で300億円。併せて1兆円と石川。すでに具体的な構想が見えている。

 この春、石川は著名な社外役員3名の起用を発表した。ソニー元社長の出井伸之、資生堂元副社長の岩田喜美枝、そしてLINE元社長の森川亮の3人である。この3人には「自分が行きすぎたらストップをかけてもらいたいし、他の役員にはエールを贈ってもらいたい」と石川。3人3様の大物の起用にも、石川の本気度が見て取れる。



グローバルブランドKOEで世界へ

 石川の1兆円構想の半分を占めるのが2014年に投入したグローバルブランドKOEだ。KOEは「自分の声を聞こう、そうすれば世界の声が聞こえてくるはず」という発想から名付けたというが、真意はフェアサプライチェーンにある。

 地方の中堅都市、岡山、新潟、高松に出店、実験を重ね、2015年には埼玉県の富士見ららぽーとに出店した。300坪以上の大型店だが、隣はZARAという立地である。

 KOEのコンセプトは「モードforeveryone」という。アースが10代~30代のレディース中心で「可愛い」をイメージしているのに対し、KOEは「クール」。レディースだけでなく、メンズや子供も含むファミリー層を攻める。実際、子供服が人気で、感度の高い親子が訪れるという。

 数年かけてZARAやH&Mを徹底研究したという石川が、KOEの差別化戦略として中心に置いたのが、「フェアサプライチェーン」だ。現行フェアサプライチェーン商品は高額なものが多いが、リーズナブルな価格で、世界に普及させ、KOEで新しい価値を世界に広めていきたいと意気込む。原料生産地も、つくる人も、着る人も、幸せになる服を世界中に拡大するという。地球環境のことを考える真のグローバル企業になるには重要な戦略といえる。

 今KOEは16店舗だが、2016年秋には東京・自由が丘に、旗艦店を出店する計画だ。ここでは飲食スペースも併設、KOEのコンセプトをわかりやすく提案する計画だ。KOE事業を立ち上げから加わってきたKOE事業部長の篠永奈緒美が語る。篠永はヨーロッパやニューヨーク暮らしが長く、かの地のフェアサプライチェーンの発想を熟知している。石川の想いを共に具現化する心強い存在だ。

 日本ではあまり普及していないが、ロンドンやパリ、ニューヨークなどでは、フェアサプライチェーン的な発想はかなり普及している。地球にも優しい心地よいライフスタイル。ここにZARAやH&MにないKOE独自の差別化がある。もっともフェアサプライチェーンを標ぼうするKOEが世界でどこまで受け入れられるかは未知数だ。



KOE海外1号店はニューヨーク?

 この5月、アメリカ・サンフランシスコとニューヨークに出かけた石川。両方の街を肌で感じながら、KOE海外1号店はニューヨークに出店するとの想いを強くした。勿論、場所は五番街だ。五番街のど真ん中には2011年に出店したユニクログローバル旗艦店がある。そしてその近隣にはKOEのライバルとなる、ZARA、H&Мが揃う。この五番街にKOEを出店、ガチンコ勝負しようというのだ。

 2011年ユニクロが五番街店を出店したとき、柳井正は「世界に向けての発信基地ができた」と喜びの声を発した。ニューヨークは世界のショーウィンドウ、規模感が違う。そして世界中からデザイナーが集まってくる。一方、シリコンバレーを抱えるサンフランシスコは、テクノロジーの集積地。KOE海外一号店とデザインセンターはニューヨークに、そして研究ラボはサンフランシスコに置きたい。出店は2020年頃と、石川の妄想は止まらない。


KOE海外1号店はニューヨーク?

地元岡山愛に燃える

 革新的企業家としてのイメージが強い石川だが、岡山愛は強烈だ。「自分が生まれ育ち、育ててくれた岡山に恩返しをしたい」との熱い想いを具現化。2010年には「オカヤマアワード」を創設した。「才能のある若者を発掘・表彰し、岡山を元気にしたい」との想いからだが今年で7回目を迎える。

 2015年秋には「おかやまマラソン」に特別協賛、会社を挙げて支援、200人以上が参加した。勿論石川自身もフルマラソンに参加した。これほど郷土愛に燃える経営者はいないと、盟友で今や岡山県知事として活躍する伊原木隆太も感心する。

 5月21日、22日の2日間、石川はストライプとして初のイベント「ストライプマルシェ」の中にいた。岡山本社で石川の想いを具現化するのは本社企画部部長の岡田泰治である。ストライプをアピールしようと、マルシェ会場の上にはストライプ模様の旗をディスプレイ。テーマが「パン」ということもあり、会場は大賑わい。普段シニア層が多い表町商店街に、若い女性たちの姿が溢れた。まさにストライプが狙う若い女性たちである。岡田はストライプの顧客とイベントがピッタリ合致したと笑顔を見せた。

「石川さんは多忙なスケジュールの中、両日とも現場を手伝っていました。一番楽しそうでした」と岡田。さまざまなイベントを仕掛ける石川だが、その現場を大切にする姿勢は一貫して変わらない。



留まることを知らない革命児

「過去の延長線上に未来はない」と過去を振り捨て、新しいステージを目指す石川の周りには今、さまざまなプロが集結している。どの人も石川と共に世界戦略に挑む強者たちだ。この総力を結集、どんな戦いを仕掛けていくのか。東証1部への株式公開も目前だ。石川は上場で得た資金をもとに果敢にM&Aを仕掛ける考えだ。

 創業20周年の節目の年に、グローバルブランドKOEを投入。2015年には経営理念を「セカンドファミリー」に、事業領域を「ライフスタイル&テクノロジー」に変更。そして2016年社名をストライプインターナショナルへと変更、ゼロからスタートした石川。その目には1兆円企業への道のりが見えている。それが達成できるのは何時になるのか。最長30年、最短15年と睨む石川。

 自ら「止まったら死んでしまう」と語る石川のチャレンジ精神は留まることを知らない。東京本部に新設した未来妄想室にこもり、妄想するという石川。「売上高1100億円はスタート、これからが本番」と、手綱を締める。その視線の先には、ZARAやH&M、そしてユニクロが見えている。アパレル界の新境地をどう切り拓いていくのか、革命児石川康晴の挑戦はこれからが本番だ。



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