トピックス -企業家倶楽部

2016年06月30日

変化と破壊を怖れない企業家/石川康晴の人的ネットワーク

企業家倶楽部2016年8月号 ストライプインターナショナル特集第5部


2016年3月、ストライプインターナショナルは生まれ変わった。同社を率いる石川康晴は既存の概念にとらわれず、変化を怖れない一方、先達の忠告にも耳を傾ける。自信家でありながら謙虚な姿勢で、事業拡大と社会貢献の両輪で突き進んでいく。 (文中敬称略)



一緒に岡山の未来を創りたい

岡山県知事 伊原木隆太

一緒に岡山の未来を創りたい


 岡山県知事の伊原木が、石川に出会ったのは約10年前。老舗「天満屋」の社長時代、取引先として会ったという。その志の高さと勢いに、「パワフルで、自分で創業した人は違う。この人は将来すごいことになるな」と感じたと語る。伊原木39歳、石川35歳の頃である。以来、同郷の若手経営者として、石川君、隆太さんと呼び合う仲に。

 その石川が、クロスカンパニーを率い、どんどん頭角を現すこととなる。伊原木が感心するのは石川の郷土愛の示し方である。今やすっかり定着した「オカヤマアワード」も、当初は大変だったという。「オカヤマアワードを実現したい。才能溢れる若手を発掘・表彰し、その才能を伸ばしたい、そして岡山を元気にしたい」と熱心に語る石川に、伊原木は「今は止めた方がいい。それより仕事に100%集中し、もっと大物になってからでいいのでは」とアドバイスした。そして「賞というのは偉い人があげることに価値があるもの。我々だと若造が何を生意気な!と思われるのがおち」と説得した。

 しかし、石川の決意は固かった。「将来なんてわからないのでできるときにやりたいんです」。その本気度に圧倒された伊原木は、側面から支援することを約束した。

「石川君は郷土愛をグイグイと前に出してくる。本人がよかれと思ってやっていることも、必ずしも歓迎されないこともある」と地元財界をよく知る伊原木なればこその助言であった。さまざまな壁を乗り越えながらも、2010年、石川主催の「第一回オカヤマアワード」が実現。今や岡山を活性化するアワードとして知られている。

「岡山でスゴイ財界人といえば大原美術館を創設した大原さんと、ベネッセアートサイト直島をつくった福武さんだが、こういう社会貢献は初代ではなく次の世代で行うのが普通。しかし石川君の場合は、現役バリバリの経営者で、自分で稼いだお金で地域振興に力を入れている。彼の志の高さはほかの人とは全く違う」と感心する。

 おかやまマラソンでは本当にお世話になったと伊原木。岡山を売り込み、岡山の皆さんにスポーツに親しんでもらうチャンスとして、実現したかった。しかしなかなかメインスポンサーが決まらない。そこで石川に直談判した。「なんとか支援してもらいたい」。しかしこの時の石川の表情は硬かった。

「隆太さん、ウチは今、株式上場を考えているので、この件は難しい」。しかし「何とかします。岡山のためなら」と特別協賛を引き受けてくれた。

 そして2015年11月、晴れて第一回おかやまマラソンが開催された。当時クロスカンパニーは会社を挙げて支援。石川はじめ200人以上が参加。フルマラソン42・195kmにチャレンジした石川は、制限時間ギリギリにゴールに駆け込んできた。何事にも全力投球なのだ。
 
 伊原木自身、県知事選に出馬したのも石川のバイタリティに触発されたのもあるという。出馬を相談すると「ついにやりますか!」と喜んでくれたという。今は共に岡山の未来を創る同志として励まし合う仲だ。

 岡山愛に燃え、さまざまな形で岡山に貢献する石川だが、地元の人には近すぎて、そのすごさが見えていないと語る伊原木。「このままいくと、石川君は100年後には岡山経済界の偉人になる人。大原孫三郎、福武總一郎、それに続くのは石川康晴だ」と語る。

「石川君の魅力はけた外れのバイタリティと行動力、それを会社だけでなく社会貢献にも向けているところがスゴイ。この勢いで夢に向かって思いっきりチャレンジして欲しい」



ブレない審美眼の持ち主

作詞家 秋元康

ブレない審美眼の持ち主


「君は君らしく生きて行く自由があるんだ 大人たちに支配されるな」

   日本を代表する作詞家、秋元康が新たに手掛けたアイドルグループ欅坂46。デビュー曲の「サイレントマジョリティー」はストライプの新サービス「メチャカリ」のCMソングとして大々的に起用された。

 一般的に、CMに使われる曲は明るい調子のものが多い。一方、今回秋元の選んだ「サイレントマジョリティー」はメッセージ性を重視した作品だ。「石川社長が首を縦に振らない可能性も視野に入れていた」と秋元は明かす。しかし、石川は「力強くて良い曲」と絶賛。当時まだ無名だった欅坂46のキャスティングを、社長自らの感覚で決断した。そんな彼を秋元は、「予定調和を壊す人」と評する。

 経営者として全く新しいサービスを立ち上げようという時には、決して失敗できないと恐れるのが普通だ。「しかし石川社長は、“ メチャカリ”が若い女性にとって憧れの存在となるためには、映像や音楽が尖っていなければならないと判断されたのでしょう。その勇気と冒険心に感服しました」と秋元は語る。

 こうした、自身の感性をブレずに発揮する一面は、秋元と石川が共通の趣味とする現代アートにも通ずる。ピカソやダリといった著名な画家の絵には、既に先人たちが価値を付けているため、値段が一つの指標となる。一方、現代アートは歴史が浅いため、自分の好みか否かが重要だ。石川は、作者の名前ではなく、自らの審美眼を軸として心から「好きだ」と思った作品をこそ収集している。

 以前、食事の席で、石川が秋元にとある家具を紹介したことがあった。石川に渡されたスマホを秋元が覗くと、写っていたのは何の変哲もないテーブル。しかも、付いている椅子はとても重いらしい。だが、これだけで秋元は石川のセンスの良さを実感したという。

「決して、自分のセンスの良さを見せつけるような作品ではなかった。どこの誰が見てもオシャレで機能的なテーブルではなく、むしろ椅子は重くて使い勝手も悪い。しかし、そこも含めて愛おしく感じている石川社長を素敵だと思いました」

 美術も経営も完璧など有り得ず、どこかアンバランスなもの。秋元は、普通の人間が敬遠するそうした不完全さをも、確固たる自身の価値判断に基づいて「良い」と明言する石川の生き様に強く惹かれた。

 そんな石川の持つブレない軸を、秋元は時計の針に例える。

「止まっている時計は一日に二回だけ正しい時刻を示します。でも、1分遅れの時計は、一度たりとも正しい時間を合わせられない。1分進んでいる時計も同じです」

 だからこそ、自分が立ち止まって軸を定めなければならない。時代が変わりゆく中で、流行りそうなもの、評判の良いものを追いかけたくもなる。しかし、それでは目が曇り、針は絶対に合わないのだ。

 また、秋元は石川を「たった一つしかない、複雑な形をしたジグソーパズルのピース」とも評する。多くの人は、自身の意図に反してでも無理に形を変えてパズルにはまろうとする。だが石川は、あくまで自分というピースがはまるポイントを探し続ける。そうして見出したのが、数々の美術作品であり、前述のテーブルであり、今回の欅坂46なのだ。

 秋元をして「彼そのものがアート」と言わしめる石川の生き方では、ほとんどのパズルに適合しないかもしれない。それでも、自分の審美眼や価値観を崩さなかったからこそ、今の成功がある。

「石川さんは常に自然体で背伸びをしないので、一緒にいて気が楽」と語る秋元。「話すと必ず刺激を受けるので、これからも化学反応を楽しみにしています」と締めくくった。



人生の黄金期に挑戦してほしい

クオンタムリープ 代表取締役ファウンダー&CEO  出井伸之


人生の黄金期に挑戦してほしい


 ソニー社長として敏腕を振るい、退職後も百度(バイドゥ)やレノボ、アクセンチュアといった名だたる企業の社外取締役を歴任してきた出井伸之。現在はクオンタムリープを設立し、CEOとして日本発若手ベンチャーの育成を行っている。今もなお、様々な会社から多くの声がかかる中、この男も石川の夢と行動力に惹かれ、ストライプの社外取締役を引き受けた。

 石川との出会いは、新たな事業領域に挑戦する起業家を称える「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2013」の懇親会。当時、審査委員を務めていた出井は、日本大会の優勝者である石川の印象をこう振り返る。「自信に溢れていて、各国の優勝者が集まる世界大会でも当然優勝すると考えていたと思います。スピーチまで考えていたのではないですかね。彼にとって成功と失敗、両面での経験になったことでしょう」

 出井はサマンサタバサ創業社長の寺田和正をはじめ、アパレル業界の著名人と交流がある。業界で存在感を高める石川にも興味があったのだろう。

 しかし、2人を更に結びつけたのは石川のホームグラウンドである岡山だ。岡山大学の特任教授を務めており、親戚が岡山にいるという出井は、この土地とは浅からぬ縁がある。食事を共にしたり、県内の店舗や岡山城を見たりと、親交を深めていった。

 また、二人の共通点は変化を好むこと。近年の日本人は安定を求める傾向にあるが、出井は「安定を求める方が不安定。いつ経済的変化が起こるか分からないのだから」とまで言ってのける。全員正社員を掲げていたにもかかわらず、石川が一転して非正規雇用を導入した際には「変化を恐れない人だと感心した」と語る。

 そんな出井にストライプの魅力を問うと、「伸びしろがまだ多くあること」と笑顔を見せた。同社は創業から20年で1000億円の売上げを達成した企業だ。このような指数関数的な伸びをした企業というだけで稀有な存在だが、グローバル展開や新規事業を狙うなど今後の伸びしろも計り知れない。さぞ出井の挑戦心を刺激したことだろう。

 出井は「人間の人生の黄金期は45歳」と持論を語る。過去の経験が十分蓄積されており、これからのビジョンも見えるからだ。ビジネスパーソンとしての時間も大いにある。そして今、石川はまさにその45歳。この黄金期にどのようなビジネスモデルを構築するかが彼の挑戦になるに違いない。

 最大の挑戦は事業領域の拡大とグローバル展開。「ライフスタイル&テクノロジー」の標語を掲げたからには、ストライプは具体的なビジネスモデルを打ち出さなければならない。様々な業界に革命をもたらす可能性が期待される新規事業だが、出井は「人間にも適正体重があるように、事業にも最適な規模がある。もっと社内をしっかり見て判断したい」と慎重だ。

「社外取締役にはそれぞれの役回りがあるはずだ。私は戦略的なM&A、企業統治などで貢献したい。企業にもマラソンのようにペース配分が重要。いつアクセルを踏んで、ブレーキをかけるか助言するつもりだ」と語る。偉大な先輩経営者が仲間に加わり、石川も心強いだろう。

 そんな出井は石川に、「これからも変わり続けてください」とエールを送った。



日本で最も女性の活躍を推進する企業家

21世紀職業財団 会長 岩田喜美枝


日本で最も女性の活躍を推進する企業家


 厚生労働省で雇用均等・児童家庭局長として女性の労働問題の解決に尽力した岩田喜美枝。現在は公益財団法人21世紀職業財団の代表を務めている。女性の雇用に熱心な石川がストライプの社外取締役を依頼したのも頷ける。

 二人を結びつけたのは、国連の提唱する「WEPs(国連女性のエンパワー原則)」だ。WEPsでは「ジェンダー平等を推進することはビジネスの活力と成長に繋がる」とし、賛同した企業は署名をしている。2012年、内閣府が主催する男女共同参画連携会議でWEPsを推進するチームの副議長を務めたのが石川だった。当時資生堂の副社長であり国連のWEPsリーダーグループのメンバーだった岩田は、有識者としてその会議に参加し、石川を知った。

 しかし、その時は会釈を交わす程度。岩田の印象に残ったのは翌年の国際女性の日、ニューヨークで行われたWEPsを推進するイベントでの石川の姿だった。

「毎年、2~3名が日本から参加されますが、私が知る限りCEO自ら出席されたのは後にも先にも石川さんだけ。女性の活躍に関して本当に真剣に取り組んでいるのだと思いました」

 それもそのはず。女性の活躍は石川のビジネスにとって不可欠だ。社員の9割が女性というだけではなく、石川はより広い視野で考えている。女性がもっと活躍する社会になり、消費者として購買力を手にすれば、同社が狙う市場は更に大きくなるというのだ。「事業上のニーズと日本の社会的な課題を結びつけることは企業の正しいあり方」と岩田は語る。

 石川個人としても、取引先であるルミネや中国銀行にWEPsへの署名を呼びかけた。また、内閣府が主導する「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」の中でも最も精力的に活動している一人だ。

「私自身、働かせていただいている会社や業界のためだけではなく、その先にある日本という国に貢献したい。石川さんも儲けたいから利益ばかり追い求めるのではなく、地域や日本を良くすることを考えていると感じました」と岩田は石川に共感を示す。

 石川の経営者としての魅力について「変革する実行力」だと説く岩田。顕著な例はストライプへの社名変更だ。社員にとって「クロスカンパニー」は自分の働いてきた愛着ある社名だっただろうが、彼はそれを捨ててしまった。「新規事業や海外展開のために、社内風土を変えなければならないという石川の思いではないか」と岩田は推察する。

 また、社名変更へと至る過程で経営理念も「お客様第一主義」から「セカンドファミリー」へ一新した。お客だけではなく、ステークホルダーである株主や取引先、社員……全てを大事にしようと広げたのだろう。

 一方で課題はというと、発展途上のガバナンス。大手企業は制度が整っているものの、組織が巨大であるため変わるのには時間がかかる。中堅企業であるストライプは大手企業のやり方を学びつつ、変革の容易さを武器にすることができる。

 また、創業者でありCEOを務める石川に対しては、「創業社長には権力が集まるもの。今回の社外取締役は石川さんに厳しく言える人を選んだのでしょう。私も石川さんの背中を後押ししたい」と言う。資生堂やJALなど、女性が活躍する大企業の経営に携わってきた岩田は、石川の参考となる事例を多く知っていよう。

 そんな岩田は石川へ、「ここまで会社を育ててくれた岡山のことを忘れないでくださいね。名実共に岡山発のグローバル企業になってください」と先輩からのアドバイスを送った。



ひょうひょうと時代を創っていく人

C Channel 代表取締役社長 森川亮

ひょうひょうと時代を創っていく人


「1度しか会っていないのに、ちょっと早いなと思いました」

 動画ファッションメディアC Channel社長の森川亮が、ストライプの社外取締役を打診された時の率直な感想だ。2015年春、ジェイアイエヌ社長の田中仁から紹介され、石川とは知り合ったばかりだった。

 森川は日本テレビ入社後、青山学院大学院で経営学修士を取得。事業を成功させると私生活が派手になる経営者もいるが、田中は慶應義塾大学、石川は京都大学大学院でストイックに学ぶことを選んでいる点、森川とは息が合う。いずれの企業家も、会社が急成長し、幅広い知識の必要性を実感したことで更なる学びを得ようと本気だ。

 志向が似ていることもあって、おのずと経営や学問について話が弾んだという。森川は同年3月、SNSアプリ運営会社LINEの社長を退任し、4月にC Channelを立ち上げたところだった。

 社外取締役就任は唐突な申し出ではあったが、森川は「面白そうだ」と快諾。アパレル会社の経営を見てみたかったことに加え、出井伸之が社外取締役を引き受けたと聞き、縁を感じたという。森川は日本テレビ退社後ソニーに入社、当時同社の社長を務めていたのが、出井その人だった。大企業のトップと一介の社員の関係から、同じ社外取締役として肩を並べることになった感慨はひとしおであっただろう。「仕事を通して、出井さんから勉強したいと思いました」。

 出井に加え、資生堂の元副社長、岩田喜美枝と共に2016年4月21日にストライプ社外取締役に就任。森川は自分に求められているのはIT分野の知識だと認識している。

「単なるアパレル会社ではなく、ITと融合した新しい会社になるというビジョンが石川社長にはあるのでしょう」。IT技術や、ITトレンドの知識が新たなビジネスのヒントに結びつく。

 継続して成長するストライプの強みを「石川社長が客観的に判断できること」と森川は分析する。商品やブランドへの思い入れが深すぎると、リスクマネジメントがおろそかになりがちだ。しかし、石川は常に一歩引いて冷静に判断する目を持っている。厳格なルールを定め、それに忠実にリスク管理をしている。

 また、会社の規模が大きくなり、多忙を極める現在でも、石川は地方出張などの機会には出来る限り店舗をサプライズで訪問。現場のスタッフとの距離を縮める努力を欠かさないことにも、森川は目を見張る。「不思議な人です。出会った時から本当に変わらない」

 目上に媚びたり、目下を見下したりすることなく、どんな場面でも強気でありながら、ひょうひょうと楽しそうなのが石川のスタイルだ。

「一度くらい、酔っぱらったところを見てみたいですね」

 石川はいつも同じ髪型で、蝶ネクタイを愛用し、ビジネススーツでさえパンツの裾を折り曲げ丈を短くして着こなす。全く隙がなく、生活の匂いがしないので、まるでロボットのようだと森川は笑う。これも石川一流のセルフブランディングなのだろう。

 石川は日本の現代アートコレクターの顔も持つ。森川は勢いを失いつつある日本の芸能文化復興の一翼を担うべくC Channelを立ち上げた。共に転換期にある日本の文化を創っていく企業家と言ってもいいだろう。

 そんな森川から、石川へ向けてのメッセージは「ユニクロが作った時代の次の時代を、必ず作って下さい」。



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