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トピックス -企業家倶楽部

2016年07月19日

我が国ベンチャーキャピタル発展のための処方箋/東京大学エッジキャピタル(UTEC)代表取締役社長 郷治友孝 

企業家倶楽部2016年8月号 キャンパスのキャピタリスト仕事録 vol.7


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。


Profile
郷治友孝(ごうじ・ともたか)

通商産業省(現経済産業省)で『投資事業有限責任組合法』(1998年施行)を起草、2004 年㈱東京大学エッジキャピタル(UTEC)共同創業。3本の投資事業有限責任組合(計約300億円)を設立・運用し、テラ含め16投資先ベンチャーの役員に就任。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士。日本ベンチャーキャピタル協会常務理事。




 今回は、日本のベンチャーキャピタルにスムーズに資金が供給されるようにするベンチャーキャピタル発展のための処方箋について、日本ベンチャーキャピタル協会の取り組みも交えながら、考えてみたい。



●ベンチャーキャピタルの量の拡大及び質の向上  

 日本のベンチャーキャピタルの規模は、国際的に見てどうなのであろうか。年の日米のVCファンドの設立額、設立数、ファンド規模平均の推移を比較しててみよう。 

 2015年度において、米国のVCファンドは設立総額約350億ドル(約4兆円)、設立数242、平均規模約1億5000万ドル(約170億円)であるのに対して、日本は、設立総額2000億円弱、設立数52、平均規模30?40億円程度と、ファンド規模と数にして4?5倍、設立総額にして20倍もの開きがある。1990年代後半にはこの差は10倍程度であったから、20年で更に倍広がったということになる。 日本でVCファンドのサイズが小さいということは、創業段階からエグジット間近まで一貫して支援できるVCが足りないということであり、起業家は、創業してからずっといろいろなVCへの資金調達に奔走しなければならず、グローバルに展開するための事業に専念することが難しい、ということになる。本年5月に金融庁で開催された「第1回フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」でも、起業家委員から、我が国では米国並みの200億円以上のVCファンドがほとんどないため、起業家が投資家対応に時間をとられ過ぎて事業に専念できないという問題点が指摘されたところである。

 
 これだけの日米格差が広がった原因としては、日本では、VCを持続的に発展させるための環境整備や、民間のVCの質向上のための手立てが不足していること大きい。ただファンド規制を強化し政府系ファンドを増やすだけではVCの持続発展は期待できないのである。具体的には、日本でも以下のような処方箋を講ることが待たれている。


●ベンチャーキャピタルの量の拡大及び質の向上  

●金融商品取引法の見直し

 2007年9月に金融商品取引法(金商)が施行されて以降、我が国の投資事業有限責任組合などVCファンドの大半は同法の「適格機関投資家等特例業務」に位置づけられることになったが、金商法上、特例業務のファンドに出資することができる投資家の数は、適格機関投資家以外、「49名」以下に制限されてきた。

 この人数制限は、金商法施行時に、特例業務を「少人数」の「一般投資家」に限って認める趣旨で「少人数私募」要件に倣ったものである。しかし、本年3月の改正金商法施行により、特例業務ファンドに出資できる投資家の範囲が、適格機関投資家以外は、 ①プロ(適格機関投資家)に準じた投資判断能力を有する投資家と②特例業者の密接関係者のみに限定されたことから、少なくとも①については49名以下に制限しなければならない必然性はなくなったといえる。日本のVCファンドレイズ額の拡大に向けて、少なくともプロに準じた投資家については、特例業務ファンドに出資し得る者の数を国際水準並みに拡大することが適切ではないか。



●GP(VCファンドの無限責任組合員)人材の育成

 VCファンドの質の向上のためには、それを担うベンチャーキャピタリストの資質の向上が欠かせない。そのためには、ベンチャーキャピタリストに求められる資質、能力、要件を明確化、基準化し、パフォーマンス指標を具体化することが必要である。また、ベンチャーキャピタリストの育成プログラムの普及も望まれる。日本ベンチャーキャピタル協会では、こうした課題認識から、ベンチャーキャピタリスト養成講座を運営しており、昨年からはベンチャーキャピタリストランキングを開始した。



●ベンチャーキャピタルのパフォーマンスデータの整備

 VCファンドの質を評価するのはその出資者であるから、VCファンドのパフォーマンスのデータが整備され、相互比較が可能になれば、出資者による評価・選別を通じてVCファンドの質の向上が図られる。そうなれば、機関投資家がVCファンドを投資対象に入れやすくなり、好循環が生まれ、結果としてVCのファンドレイズ額の向上も期待できる。日本では、1998年の投資事業有限責任組合法の施行で、ファンドの時価評価が義務付けられることになり、それに伴ってVCファンドのパフォーマンスベンチマークの作成も試みられるようになったが、各々の時価評価手法のばらつきが大きかったこともあって、データが十分に整備されてこなかった。そのため日本ベンチャーキャピタル協会では、経済産業省の委託を受けて「VCファンドのパフォーマンス評価に係る調査報告書」(本年5月公表)を作成し、グローバルな実務に即したファンドの時価評価手法、ファンド運営能力向上に関するガイドライン、パフォーマンス評価のための必要データセットやデータ収集ルールの整備を提言したところであり、今後パフォーマンスベンチマークの作成に取り組んでいく予定である。



●政府系ファンドの民間補完の推進

 昨今は、「官民ファンド」と言われる政府系ファンドの数と規模が増え、2015年3月時点で11種類、それらへの政府投融資額は6306億円(政府保証額は3兆2615億円)にまで増えたとされる。同じベンチャーに複数の政府系ファンドが投資しようとすることも見られるようになった。日本のベンチャーキャピタルが、世界に伍する発展を遂げていくためには、持続的に民間VCの質と量を高めていくことが重要であるため、政府系ファンドには政策目的に合致する民間VCの補完を期待したい。

 
 直近では、政府が東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学に投資子会社を設立させるために2013年3月に1200億円の補正予算を振り込んだ「国立大学出資事業」による民間VCの補完が期待される。この補正予算は、根拠法の制定や事業所管官庁・対象国立大学による検討がなされる前に振り込まれたものであるが、米国やイスラエル等、大学の周囲に民間VCが持続的に発展する環境を作り上げることに成功した国々の例を参考に、制度の構築を行うことが望まれている。



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