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2016年07月22日

理に適っている解体は美しい/ベステラ 吉野佳秀 社長 × 朝日航洋塚田 彊 元社長 キャスター: 宮舘聖子

企業家倶楽部2016年8月号 WBC 熱血企業家!


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。

Profile


吉野佳秀(よしの・よしひで)

1941年、愛知県生まれ。1974年にベステラを設立。2002年、東京に本社を移転。2004年7月、「りんご皮むき工法」の特許を取得。2010年4月、解体ロボット「りんご☆スター」開発。2015年9月、東証マザーズ上場。第18回企業家賞ベンチャー賞受賞。

塚田 彊(つかだ・つとむ)

1939年、愛知県名古屋市生まれ。1963年、東京大学経済学部卒業。トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車株式会社)入社。1988年、トヨタ自動車部長。1987~97年、国際デジタル通信出向(取締役、常務取締役)。1997~ 06年、朝日航洋専務取締役、取締役社長。2006年、フューチャーアーキテクト顧問(現任)。2015年7月、マンダム顧問就任。



苦しい時期を乗り越えマザーズ上場

塚田 まずは2015年9月2日のマザーズ上場、おめでとうございます。解体を専門とする会社では初めての上場だそうですね。

吉野 ありがとうございます。解体業にはコンクリート製のビルディングを壊すものもありますが、私たちが専門とするのは鉄でできた油タンクやボイラーなど大規模プラントの解体です。

 上場に際しては、珍しい業種であることだけではなく、ビジネスモデルが簡単であることも評価していただけたのではないでしょうか。

塚田 直近の売上げはどれほどになりますか。

吉野 2016年1月期の売上げは38億円、利益は4億4400万円になります。商品を製造しているわけではなく、実際に工事を手がけているため、2倍3倍と急激に業績を伸ばすことは出来ませんが、年間20%増を目安に着実に拡大していく予定です。

塚田 石油や石炭から天然ガスにエネルギーの中心が移り、日本中の火力発電の油タンクが不要になってきました。業績はこれから更に伸びそうですね。

 ご出身は名古屋とお聞きしていますが、東京で事業を始められたきっかけはありましたか。

 
吉野 昔、東京に来る機会があり、こちらの市場を知っていたので、この大きいマーケットで展開したいと考えていました。

 
 しかし、当てがあったわけではなかったので、10年以上うまく行かず、塗炭の苦しみを味わいました。事業という体をなしていないほど厳しい状況だったと思います。



早い安い安全なりんご皮むき工法

塚田 苦しい状況を打開するきっかけとなったのが「りんご皮むき工法」というわけですね。独自の技術をお持ちとのことですが、詳しくお聞かせ下さい。

吉野 この工法では、丸いガスタンクの底をくり抜き、上からりんごの皮をむくように続けて切っていきます。切られた部分は重力によってとぐろを巻いて下に落ちていきます。「りんご☆スター」という小型のロボットがタンクを這うように鉄を切断していくので、人手も必要ありません。

塚田 ユニークな工法に目がいきますが、どのような点に優れているのですか。

吉野 クレーンも足場も不要なので安く早く出来ます。思いついた当時、かかる時間やお金は従来の方法の3分の1でした。

 丸みを帯びた鉄板を溶接して作られているタンクなので、従来は解体する際もそれらを一枚一枚外してクレーンで降ろしていました。ただ、この方法ではクレーンで重い鉄板を吊るため、風の影響を受けやすい。高い足場も必要となるため、作業をする人に危険が伴います。

 
 しかし、我々の工法では、重力を巧みに利用することで、切除した鉄が自動的に続けてタンクの中へ降りてくる。風に煽られることもなく安全です。

 地球と仲良くさせていただくことで、お金のかからない仲間が増えたと考えています。

塚田 そのような画期的な方法をなぜ思いつくことが出来たのですか。

吉野 ある時、豊洲の大きな火力発電所のボイラーなどを解体していたのですが、隣にガス会社があったのです。周辺の再開発でガスタンクが不要になるとわかっていたので、なんとかこの大きな仕事を取りたいと毎日上からガスタンクを眺めていました。すると、ふとアイデアが湧いてきた。神様が私の背中をそっと押してくれたと思っています。

塚田 作った方法の逆を辿らず、独自の視点で解体されるのですね。解体後の運搬も便利になると思います。

吉野 ただ単に解体するのではなく、解体の仕組みを作るのが我々の仕事。作った人には、このように壊せません。「より早くより安くより安全に」を合言葉にしています。

 仰る通り、運搬も簡単です。タンクの下にトラックを入れておき、落ちてきた鉄板のとぐろを細かく刻んでそのトラックに乗せてしまえばいいだけです。

 
 我々の工法は理に適っているため、まさに「美しい」という言葉がぴったりだと自負しております。


早い安い安全なりんご皮むき工法

つけ麺屋をいくらで買うか

塚田 東証一部への指定替えを目指されているとのことですが、企業を質的にも量的にも大きくするためには人材が重要になります。人材育成に関して独自の施策はありますか。

吉野 かねてより、「卵の会」という社内勉強会を開催しています。地球物理学者の中谷宇吉郎さんが書かれた「立春の卵」というエッセイをご存知でしょうか。

 昔は世界中で「立春には卵が立つ」とされていました。しかし、立春でなくても卵は立つのです。中谷さんは、「立春以外の日は立たないと思い込んでいるから根気よく立たせる作業が出来なかっただけである」と言っています。人間一個人に盲点があるように、人類全体にも盲点がある。それは思い込みによるものだったという話です。

 
 今までの概念を忘れ、もう一度「なぜだろう、どうしてだろう」と考えるため、このエッセイに由来して「卵の会」と名付けました。

塚田 私も講師として一度参加させて頂きましたが、非常にフランクな雰囲気でした。質疑応答では、たくさん質問がでてきたのが印象に残っています。まさに吉野社長の人柄が反映されている勉強会でしょう。

 普段は自由にテーマを決定するとのことですが、どのようなものがありましたか。

吉野 手を挙げた者に任せますので、戦国時代の武将から重力波まで多岐にわたります。

 
 面白かった議題としては、「本社の前のつけ麺屋を買収するとすればいくら出すか」というもの。繁盛店でしたが、350万円から1億円まで様々な意見がありました。

 
 しかし、重要なのはなぜその数字を選んだのかという理由。350万円だと言った社員は、経理部なので客の出入りを計って利益が出る値段にした。

 
 一方で、1億円と言った者はノウハウを得てフランチャイズで全国展開、何百億円の事業に育てると豪語しました。私は1億円の考え方の方が好きですね。

塚田 面白いですね。役職や部署の垣根を取り払い、自由闊達な意見を述べられる場所は貴重でしょう。

吉野 我々ベステラは考える会社であり続けなければいけないと思っています。

 国を見ても、資源を持つ国と持たない国があります。しかし、先進国には持たざる国が多い。これは資源より知能があった方が優位に立てることを意味しています。

塚田 この勉強会から人材派遣業といった新規事業が生まれたのですから、ベステラはまさに考える組織なのでしょう。

 
 吉野さんご自身も50代後半で新たな工法を発見し、今もなお新しい世界を見つける情熱をお持ちですね。実年齢より10歳は若く感じられますが、その活力の源は何ですか。

吉野 やる気でしょう。努力や工夫のないところに成功はありません。

 私の趣味のゴルフに例えると、グリーンから見てどれくらい飛ばせばいいか逆算して考えるのです。仕事もゴルフも結果が大事ですから、ゴールから見て何をしなければいけないか考えることです。


つけ麺屋をいくらで買うか

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