トピックス -企業家倶楽部

2010年08月27日

損して得する/ニトリ代表取締役社長 似鳥昭雄

企業家倶楽部2010年10月号 私の信条 中





 アメリカへの視察旅行をきっかけに私は人生の目的を手に入れ、それまでの考え方や生き方が一変しました。アメリカに行くまで、私は自分の人生を諦めていました。学校の成績も悪く、社会人になってからも家計が苦しい状況で、自分の未来への展望を持つことができなかったのです。

 私は元々、人のために何かしたいと考えるタイプの人間ではありませんでした。そう考えるようになったのは、アメリカの豊かな住生活を知り、日本にも同じ豊かさを持ち帰りたいと思ってからです。帰った時に元気が出るような家をつくりたいと考えました。

 特に考え方が変わったのは、31歳の時に経営セミナーに参加した時です。当時日本では5店舗出店すると会社が倒産するといわれていましたが、そのセミナーでは11店以上出さないとチェーンストアとはいえないという話を聞きました。アメリカではチェーンストアがあることで、どの地域に住む人も同じように豊かな生活を送ることが出来ていました。

 アメリカでの生活は、私にロマンを持つことが人生を生きる上でいかに大切なのかを教えてくれました。ロマンとは人のために何かをすること、したがってロマンチストとは人のために何かをしたいと思い、またそれを実行できる人のことです。アメリカに行き、私はロマンチストになることを理想として抱くようになりました。

 自分のためだけにする努力よりも人の幸せのためにする努力の方がやる気が出るのです。以前は楽をするのが好きでしたが、誰かのためにと高い目標に向かって皆で努力する達成感を知ったあとは、たとえ休みがなくても仕事が楽しいのです。

 ニトリには、社会貢献できる技術習得を目的とした教育制度があります。期間は20年で、最後に試験を受けてもらいます。試験合格者には、社会貢献につながる仕事をどんどん与え、今度は後輩を指導できるまでに成長してもらいます。どの年代の社員にも自らクリアすべき条件や目標を設定してもらうのです。ですから70歳を過ぎた社員もおり、当社で生き生きと働いています。

 仕事は、思いつきで行動するよりもきちんと手順を踏んで考えていくことが大事です。当社の場合、我流ではなくアメリカを参考にすることでより効率的に仕事を進めることができますし、そこから新しい解決策やアイディアが生まれてきます。

 我々は来客数を増やす為に、たとえ自分たちにとって損でも、お客様に満足していただけるサービスを提供してきました。つまり、損して得を取れです。消費税も私たちが負担していますし、そのほかにも新品交換制度やニトリメンバーズカードの導入など年間総額390億円をお客様に返還しています。その結果2010年2月期の決算では、経常利益が474億円になりました。お客様のことを考えて商売をすれば、お客様はきちんと応えてくれるのです。

 リーマン・ショックがあった今でもアメリカから学ぶことは多くあります。アメリカは世界で一番競争が激しい国ですし、競争によって進歩や発展が生まれます。多くの外国企業が世界各国に店舗を構える中、日本への出店数はまだまだ少なく、本格的な国際競争にさらされるのはこれからです。ただ競争が進歩を生むのですから、日本に外国企業が進出してくるのは私としては良いことだと思います。

 しかし日本政府は法人税が高く、外国企業の誘致を妨げるような政策ばかり行っています。このままでは、日本は国際競争に勝つ力を失ってしまうでしょう。日本は土地柄、国内の枠組みで物事を考えていますが、常に世界の中で日本を客観的に捉えるべきです。



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