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トピックス -企業家倶楽部

2016年10月21日

ストライプのイノベーションと地域貢献/ストライプインターナショナル社長 石川康晴

企業家倶楽部2016年10月号 第18回企業家賞 記念講演





 私は2012年、企業家賞のチャレンジャー賞をいただきました。この舞台には2度は上がれないものかと思っていたので、今回、大賞をいただけるとは夢にも考えていませんでした。ですから本当に嬉しいです。

 ストライプインターナショナルは上り調子に見えるかもしれませんが、過去3回、倒産の危機がありました。それは創業4期目と9期目、13期目です。その3回に共通するのは「同じこと」を繰り返していたときでした。逆に路線転換をしたときは足元の1~2年は大変な闘いになりますが、大きな伸びに繋がります。

 ジャパネットたかたの髙田さんもラジオ、カメラ、テレビへと、エイチ・アイ・エスの澤田さんも旅行からホテル、テーマパークへと路線転換を果たされました。私たち流通業にとっては技術革新ではなく路線転換こそがイノベーションなのです。なまじ成功体験があると、路線を変えることは自分を否定することになります。「失敗したら、どうしよう」とも考えます。それでも踏み込むことでこそ、事業の持続・継続があるのです。

 実際、私はたくさんの路線転換をしてきました。23歳のときに創業したのは、わずか4坪のセレクトショップ。そのときはヨーロッパから買い付けた品物を並べていました。初年度は100万円の黒字。5年目に倒産の危機を迎えたときは瀬戸大橋から飛び下りようかとも考えました。その後、製造・販売を行うSPAに転換し、ノウハウはないものの、果敢にチャレンジしてきました。

 ほかにも路線転換したことが数多くあります。まず出店をファッションビルから駅ビルへシフトしたこと。小型店から大型店へ転換し、さらに国内から海外へ進出も果たしました。またファッションレンタルのアプリも始めました。日常着をレンタルするというサービスは世界中どこにもありません。店舗で買え、ネットで借りられる、ファッションのシェアリング・エコノミーといえます。

 今日は、これらの路線転換について、それぞれ詳しくお話していきましょう。セレクトショップからSPAに転換したのは1999年のことです。私が洋服屋をやりたいと思ったのは14歳のときでしたが、それには3つのものが必要でした。お金、アパレルの勉強、経営の勉強です。そこでアルバイトもアパレルに勤めて、経営を学びました。

 14歳の決意から最短コースで起業すると、虎の子の300万円を握り締めてフランス、イギリスへ買い付けに出かけました。現地のアパレルのアトリエにファックスを入れてから訪ねるのですが、追い返される始末です。しかも渡欧の2日前にプレッシャーで声が出なくなってしまいました。そこで、かすれ声の片言英語で買い付けをし、自分の店では、3倍の値段をつけて売りました。しかし、全店を閉める決意をしてからは、10万円で買い付けたワンピースを500円で売るはめになりました。高級アパレルのセレクトショップからSPAに転換することを決意、スタートしました。これが今のストライプのベースになっています。

 この「仕入れ」から「SPA」への転換のほか、「モード」から「ベーシック」へ、さらに「高価格」から「リーズナブル」への転換も急成長の源となりました。また「国内」から「グローバル企業」への転換もそうです。これまでアパレルではワールドやレナウン、オンワードなどが海外にチャレンジしましたが、大手の先輩方が中国で負けてきていました。そこで2011年、「日本を見せつけてやる!」とチャイナ戦略を練り、中国進出に乗り出したのです。

 中国での日本企業の敗因の一つは意思決定の遅さでした。韓国の企業などはトップが来て交渉するのに、日本の企業は意思決定できる責任者が不在であるために負けたのです。創業者や経営者が直接、現地で陣頭指揮を執ることが大切。そこで私は上海にマンションを買って住み込み、計2年、現地で暮らしました。

 あるとき最大の百貨店に挨拶に行くと、総経理(総支配人)から「お前は決められる日本人か?」と訊かれました。「私は創業者です。上海に家も買いました」と答えると、満面の笑みで握手を求められたものです。また、中国の宴席は「乾杯(カンペイ)」といって、お酒を一気飲みしないと、なめられてしまいます。そこで一生懸命、お酒も飲みました。

 ところが2012年、中国で反日デモが起きます。その年も我々は重慶や蘇州、西安に出店を続けました。北京に「アースミュージック&エコロジー」を出店するとき、総経理に「日系アパレルの出店はやめたほうがいいか」と相談すると、「私服の公安当局を20人立たせた。だから大丈夫だ」と言ってもらいました。そして実際、反日デモの最中に北京の店では中国での最高売上げを記録したのです。ユーザーからも「ドラえもんもジャニーズも好きだし、アースも好き。だから買い続けます!」という応援メッセージをもらいました。当時、他社は投資を止めたりしていましたが、私は住人として現場を見て経営判断ができました。だから上海、北京で成功を収めることができたのです。

 一方、国内の小型店から大型店舗への転換については、こんな出来事がありました。20坪程度の小型店舗戦略を続け、売上1000億円を目前にした頃のことです。ファーストリテイリングの柳井さんから「本社へ遊びに来い」と呼ばれました。それも朝の8時。内心「早いなぁ」と思いながら出かけると一言、「商売は規模だ。何を小さいことやってるんだ!」。「確かにウォルマートも良いですが、セブン- イレブンも高収益ですよ」と反論すると、「違う!」と言下に切り捨てられる始末。その晩、風呂に浸かりながら規模の原理をじっくりと考え、大型店舗へのシフトを決意したのです。

 私は売上げ1兆円構想を掲げていますが、その半分を占めると考えているのが、2014年9月に投入したブランド「KOE」です。これは、ユニクロ、ZARA、H&Mなどの1兆円ブランドに挑戦するためのグローバル旗艦ブランド。KOEは今後、東京での500坪の店をはじめとして、ニューヨークの五番街、イギリスのオックスフォード・ストリートへと、ユニクロを追いかけて展開していきます。このKOEを1兆円ブランドにしたいと考えていますが、それには10年はかかるでしょうし、五分五分の勝負でしょう。

 ストライプにとっては今も主力ブランドは「アースミュージック&エコロジー」と「グリーンパークス」です。これを追いかけるブランドを魂賭けて、欧米・アジアなど世界を代表するブランドへと育てていきます。ハードルはアメリカでの出店です。ユニクロでさえアメリカでは苦戦しています。それでも私はKOEを世界で知らない人のいないブランドにしたいのです。

 さて、ファッションレンタルアプリ「メチャカリ」は「所有」から「所有+共有」への転換であり、メーカーからプラットフォーマーへの転換です。現代の若い世代は豊かさの定義が変わってきています。特に10代のツイッター世代は生まれたときからCDもDVDも買ったことはなく、借りる世代です。そこで月額5800円で服を借り放題できる新サービスを作りました。世界中の洋服を愛する人が「買う+借りる」の習慣になじみ、利益が出るまでには、やはり10年はかかるでしょう。しかし、これは世界の商習慣を変える挑戦であり、勝算はあります。

 このように、ただの洋服好きの14歳が洋服屋になり、中国へ、世界へ打って出て、さらにテクノロジーへ。これが私のイノベーションです。「路線転換」はイコール「事業継続」。イノベーションを起こせる経営者だけが、イノベーションが起き続ける会社だけが、事業を継続できるのです。

 ストライプインターナショナルは恐らく2016年中に上場しますが、これからも次々にユニークな戦略・路線転換を目指します。資金調達したお金はグローバルなKOE、アジアのアース、メチャカリへどんどん突っ込んでいき、次の成長へ繋げます。2020年には欧米に進出するので、そのときはアメリカに住もうかな、とも考えています。ファッションの本場で、アメリカで暴れて帰って来たいですね。ストライプはもはやアパレルではなく、アパレル周り全体、ファッション成長分野に果敢に挑戦していくグローバルファッション商社です。

 最後に、ストライプインターナショナルの地域貢献について、お話します。私は岡山で生まれ、岡山で起業し、岡山大学を卒業しました。そこで岡山の芸術、現代アート、教育を応援しています。芸術交流やアート・イベントを通して観光客が来てくれる岡山を目指したり、シリコンバレーなどと協力して地元大学でアントレプレナーコースを作り、次の起業家を育てたりしています。商売を本気でやり、上場でキャッシュインするお金を遣って、地域に貢献したいのです。つまり恩返しです。「そんなヒマがあったら、商売をやれ」と言われそうですが、私にとって仕事はファッション、趣味は街づくりです。

 レンタルサービスの「メチャカリ」は世に浸透するまでに10年でなく20年かかるかもしれません。岡山に新しいコンテンツが完成するにも同じくらいの時間がかかるかもしれません。でも、そのとき私はまだ65 歳です。そこからが本番ともいえるでしょう。

 ストライプが日本を代表する企業、世界中の人が知っている企業になること。世界での存在意義が明確になること。岡山からグローバルに、テクノロジーへと領域を広げていくこと。それが目標です。今後も、企業家大賞に恥じないよう、精一杯がんばって参ります。



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