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トピックス -企業家倶楽部

2016年09月20日

日本一ウザいエンタメ外食チェーン/物語コーポレーションの強さの秘密

企業家倶楽部2016年10月号 特集第2部


物語的大家族主義の下、直営・FCが手を携えて成長を続ける物語。緻密に計算された店舗展開で自然とお客を呼び込み、元気な挨拶と気持ちの良い接客で魅了する。その下地にあるのは、経営理念「スマイル&セクシー」を体現する社員たち。彼ら一人ひとりの想いが、物語を外食チェーンではなく生業店の集合体として成り立たせ、地元で愛される地域一番店を生んでいる。(文中敬称略)




 CMOという肩書を聞いたことはあるだろうか。こちら、実はチーフ・マーケティング・オフィサーの略。業態や店舗開発に並々ならぬ想いを持つ物語会長の小林佳雄が、その最前線に立つべく、この珍しい肩書を自らに冠したのである。

 彼が最もこだわるポイントはどこか社員に尋ねると、「照明です」と異口同音に答えた。なるほど、「ゆず庵」一つとっても、吊るされたライトの高さ、照明の強さ、柔らかに壁の装飾を照射する光の角度など、細部に渡って計算されている。豊橋本社の会長室が照明に凝った作りとなっているのは言うまでもない。他社の店舗に行ってすら、小林は「この照明をもっと良くするにはどうすればいいと思う?」と社員に投げかける。


 
 そんな小林の感性は物語の至る所に根付いているが、今回は、その彼が初めて焼肉という業態を展開した時の話から始めよう。



強さの秘密1・業態開発力

色彩の魔術師

 元々、小林が焼肉事業を手掛けたきっかけは、「今、誰もが焼肉を食べたいと思い始める直前期だ」と直感したため。1995年当時、焼肉と言えば店舗は汚く、和牛を使った価格帯の高い店しかなかった。しかし、安いアメリカの輸入牛でも味付け次第で美味しく食べられることを知っていた彼は、郊外に大型店を作ったのである。

 結果は惨敗。低価格の店を出したからと言って、「焼肉は高い」という固定観念が払拭できず、お客は来なかった。そこで今度は、意図的に赤、黄、緑といった色を看板に入れ、店を派手に仕立て上げた。低価格を強調するため、ダメ押しで多くののぼりまで立てたというから興味深い。

「黒色では高級な専門店に見える。一方、外装に派手な色を使うほど、お客様は価格の安さや入りやすさを感じるため、敷居が下がります」

 この小林の読み通り、店はお客で溢れ、一気に繁盛店となった。ただ、この様子を見た他社が、小林のやり方を模倣。そこで今度は、安っぽい色を止め、落ち着いた黒や茶色を使用した。黒い瓦屋根を取り入れつつ、看板だけは黄色を残すことで、店舗からは洗練された美味しそうな雰囲気を醸し出しながら、低価格であることを強調したのである。

 色の変化だけで店を繁盛させてしまうとは、まさに「色彩の魔術師」小林の真骨頂と言えよう。追い込まれてこそ、知恵は出るもの。一度失敗したり、他店舗に迫られたりしても、試行錯誤を繰り返して決して諦めない小林のスタイルは、今なお企業文化として受け継がれている。


強さの秘密1・業態開発力

強さの秘密2・店舗開発力

ファミリー層を狙う

 こうして作られた一店舗ごとに、物語による試行錯誤の歴史が詰まっている。実際に彼らの店舗を見れば、それが経験と科学的見地に裏打ちされたノウハウの塊だと理解できよう。

 物語のターゲットはズバリ、ファミリー層である。そして、目指すは地元の人々に愛される「地域一番店」だ。

 そのために、まずは立地。物語は「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」「お好み焼本舗」「寿司・しゃぶしゃぶゆず庵」など多様な業態を有しているが、その店舗の多くは郊外型だ。必然的に、お客は地元の住民か、車を利用して訪れる人々となる。いずれにせよ、物語がターゲットとするファミリー層だ。

 価格帯も絶妙である。例えば、「お好み焼本舗」の6割のお客が食べ放題コースを選択する。「お好み焼・焼そば 食べ放題コース」が大人ひとり1980円(税抜)。食べられる量を考えればリーズナブルな上、小学生は食べ放題が半額とあって、ファミリーで来れば俄然お得感が増す。

 お客にとっては嬉しい食べ放題コースだが、物語側からすればデメリットも少なくない。食べてもらえばそれだけ利益が上げられる単品と異なり、お客が食べれば食べるほど当然原価率は上昇。また、90 分や100分という時間の縛りがあるため、短時間で帰るつもりだった客もつい長居をし、それだけ店の回転率が落ちてしまうという。

 しかし、時間に区切りがあることで席が必ず空くため、次に待っているお客を案内しやすくなり、食べる量に関わらず一定の金額を取れるので、売上げが安定するといった美点もある。そして何より、満足してもらうことでお客の再来店に繋がり、前年比を上回る業績を残せるのだ。


 強さの秘密2・店舗開発力


看板こそ店舗の命


看板は、物語の店舗展開における最重要部分である。前述のように、車を利用して訪れるお客が多いため、集中して運転していても自然と目に飛び込んでくる看板を掲げなければならない。大通りの両側からよく見える位置に立てるのは基本中の基本だが、大きさやデザインにも工夫が求められる。

 例えば「ゆず庵」花小金井店では、元々店名である「ゆず庵」を掲げていたが、「寿司・しゃぶしゃぶ」の文字を大きく中心に据える修正が図られた。改善のスパンがあまりに短いため、店舗を出すたびに看板が異なっているケースもあるという。

 実は、前述した小林の焼肉事業以来、物語の看板に対するこだわりは業界でも有名。同社が戦略的に打ち出したデザインや色彩が他社の店舗に盗まれることは少なくない。しかし、他社が舌を巻くほどのスピードで物語の看板が変化していくため、とても追いつけないというのが現状だ。まだ老朽化にほど遠い段階で看板を作り変えてしまう企業など、物語の他には無いのである。

 
 そんな物語が、店舗の外装・内装にも力を入れるのは言うまでも無い。「丸源ラーメン」や「お好み焼本舗」によく見られるのは、壁面がガラス張りになっているスタイル。外から店内がよく見えることで、安心感を持って入店してもらえるという。

 反対に「源氏総本店」向山店は、古風な門構えから敷居の高さが感じられた。店内は、本来ならば2階席まで作れそうな広々とした空間を贅沢に使い、オシャレな高天井となっている。ライバルの「木曽路」が目と鼻の先に店を構えていることもあり、「地域一番店は決して譲らない」という意地と誇りが伝わってくるようだ。

 どのような客層をターゲットとし、どのような料理をどれくらいの価格帯で出すのか。これを外側から一目で感じ取れなければ、お客は二の足を踏んでしまう。小林も「いくら美味い料理を出しても、まずは店に入ってもらわなければ意味が無い」と説く。料理を食べてもらうのが本分の外食業界だが、実は店舗に入ってもらう手前から勝負は始まっていると言えよう。



強さの秘密3・生業店魂

ウザさが満足度の秘訣

 ここまで緻密な計算の下に作られた物語の店舗。入ってみると、気持ちの良い「いらっゃいませ!」の声で迎えられる。経営理念である「Smile & Sexy(以下スマイル&セクー)」を体現した、マニュアルではない笑顔が、こちらの気分も爽やかにする。

 そして、地域一番店を目指す上で彼らが武器としているのが、料理や食材の知識だ。これをお客に語り、食の背景を感じながら食べてもらうことで、満足度が大きくなるという。

 思えばこれは、小林の系譜を受け継いでいる。「これはこの近くの漁港で獲れた旬の魚で、今が一番美味い。奥までじっくり噛みしめながら食ってくれ」。こんな具合に語る小林の背中を見続けてきた新業態事業部長の岩崎昭彦が、店舗の柱に据えたのが始まりだ。

 また、こうした料理の知識は、現社長の加治幸夫が提唱する「調理させ技術」にも繋がってくる。物語は焼肉、お好み焼、しゃぶしゃぶといった、素材を提供してお客自身に調理してもらう業態が多い。通常、頼まれもしない店員が現れて口を挟むことは無いだろうが、物語の店舗では違う。例えば「ゆず庵」では「下にゆずを敷いて、お肉で巻いて食べてください」、「焼肉きんぐ」では「固い肉はこちらで切りましょうか」といったように、頻繁に気にかけてくれる。

 加治が目指すのは、「日本一ウザいエンタメ外食チェーン」。「ウザい」という本来ネガティブな言葉を標榜するあたりインパクト抜群だが、あくまで彼らは本気だ。「お客様からクレームが来るぐらいお節介してみろ!」と加治は息巻く。

「調理させ技術」に止まらず、お節介は至るところで見受けられる。聞かずともオススメの品を教えてくれるのは序の口。「げん屋」を接待に使うと、相手先の企業ロゴが描かれた特注のコースターを用意して驚かせる。「丸源ラーメン」でも、2人席で「少し狭いな」と思った矢先、その心の声を聴いていたかのように空いている4人席へと案内された。この「ウザさ」が結果として、高い満足度、ひいてはリピーターに繋がっているのだ。


強さの秘密3・生業店魂


アルバイトにも理念浸透

 そんなお節介が、アルバイト(物語では「パートナー」と呼ぶ)にまで透していることを見せつけられたのが、6月16日に「焼肉きんぐ」駒沢公園店で行われた「ホスピタリィパートナーズコンテスト」だ。

 こちら、ただのロールプレイングコンテストにあらず。実際に営業中の店舗で開催される点が、実践的で緊張感を高めている。目の前にいるのは本物のお客。その中でも笑顔を保ちながら、気配りもせねばならない。

「お願いします!」「あいよ!」

 気持ちの良い元気な挨拶が定着しているのは一目で分かったが、よく見るとパートナーたちは自分の動線上のテーブルをチラリと見ながら料理を提供。厨房まで戻る道すがら、最も効率の良い方法で食器を回収していた。一人で全てのテーブルに気を巡らせることはできない以上、パートナー同士の信頼関係無くして営業は成り立たない。

 裏方を支えるパートナーも、目の回る忙しさだ。「実は片付けと洗い場は店舗の生命線」と広報室シニアマネジャーの奥原拓郎は明かす。ここの早さが店舗の回転に直結するため、繁盛店ほど片付けが迅速で、かつ次に食器を出しやすいよう並べ方も丁寧なのだという。

「料理が美味しいのは当然重要ですが、『あの元気な兄ちゃんに会いたい』『女将の笑顔が素敵だから来た』と言われる店を目指したい。それこそ僕らの付加価値となる部分です」

 この岩崎の言葉こそ、まさに同社が掲げる「生業店」の思想だ。地元の人に愛される「地域一番店」を目指し、今日も物語の店舗には笑顔が溢れていることだろう。



強さの秘密4・人財力

ダイヤの原石同士で磨き合う

 生業店を貫くためには、人材採用・育成が肝要となる。感動経営コンサルタントで物語社友の臥龍こと角田識之の表現を借りれば、「ダイヤの原石同士で磨き合う」のが物語の人材育成。では、その原石はどうやって探し出すのだろうか。

 まずは、募集の段階で多くの人材を目に止めている。その中から原石を見極める方法としては、「意思決定セミナー」(詳細は第1部を参照)に言及しないわけにはいかない。応募者は受講が必須。ここで小林自ら2時間以上に渡って「生き方」の話をし、それに共感した人が順次面接へと上がっていく。

 自分は、小林のような生き方をしたいか。その理由をロジカルに突き詰められるか。そして、実際に踏み出す行動力はあるか。最後に、そうした自分を誰かに表現する力はあるか。これら全てが備わってこそ「原石」と呼ぶに相応しい。自立した思考を持ち、人間味豊かで、堂々と意思表示できる。それこそ同社の経営理念「スマイル&セクシー」なのである。

重責の店長もしっかりケア

 こうして入社した社員を大切にする文化も物語流である。実は彼らが大型店を出すのは、社員への配慮も考えてのことだ。大きな店舗ならば交代制が成り立つため、ローテーションを組んで週休二日を取ることが可能。もし悩んだ時にはすぐ横に社員がいて、相談相手となる。

 また、店舗の責任を一身に引き受ける店長も、エリアマネジャーがしっかりケアする。店長を務めていると、パートナーから辛辣な言葉を浴びせられることもしばしば。現在「ゆず庵」花小金井店店長を務める村上淳一もその一人だ。前に店長を務めていた店舗で「あなたが店長だと店が潰れる」とまで言われた経験を持つ。

 当時は辛さのあまり、逃げ出したいと思ったこともあったが、エリアマネジャーと泣きながら2時間に渡って電話。「君のやり方は間違っていない」と繰り返し諭されたことで心機一転し、踏み止まって店を復活させることが出来た。それ以来、CSでもESでもない、PS(パートナー・サティスファクション)を重視した店舗経営を心掛けている。

 このように、こだわりの店舗設計から活気ある運営、それを支える人材まで揃い、好調に業績を伸ばし続ける物語。そんな同社にも絶望の底まで落ちた歴史があったことは、今なお多くの社員の胸に刻み込まれている。



強さの秘密5・FCと共存共栄

BSEで倒産の危機

「万が一のことがあるかもしれん。荷物をまとめておけ」

 2001年9月、小林は家族に向かってポツリと言った。焼肉事業を中心に約20店舗を展開し、好調に売上げを伸ばしていた同社。ここで勝負とばかり、20億円を投下して一気に十数店舗の拡大を図ろうとした矢先、BSE問題が発生したのであった。

 すでに地主との契約も終え、毎週のように店舗はオープンしていく。しかし、お客は牛肉を避けて店は閑古鳥状態。小林の頭に、倒産の二文字がよぎった。

 そんな物語史上最大の危機にあって、一つだけ大当たりしている業態があった。愛知・三河安城に構えた「丸源ラーメン」が、月間のべ3万人ものお客を集める大繁盛店となっていたのである。当時の三河安城の人口が14万人と聞けば、いかに一大旋風を巻き起こしていたか知れよう。

 まさに、闇の中に灯された一寸の光明。もはやこの事業で苦境を乗り切るしかない。だが、物語本体にその余力は無かった。小林は、これまで焼肉事業で関係性のあったFCオーナーらに頭を下げ、会社の窮状を洗いざらい開示。それを知ってなお手を挙げた相手に、「丸源ラーメン」のFC運営を託した。

 結果、皆の期待を一身に背負った「丸源ラーメン」は爆発的に拡大。物語は苦境から脱出し、再び軌道に戻ることとなった。

FCとの間に隠し事無し

 こうした背景もあり、物語と各FCオーナーとの間に隠し事は一切無い。

 本部と店舗を繋ぐエリアマネジャーの担当が、直営店とFC店という区分ではなく、その名の通り「エリア(区域)」によって分けられているのも、物語とFCとの関係を示す特徴の一つ。必然的に、直営・FC両店舗に対する扱いは同等となり、それぞれに情報が行き渡る。

 FC事業推進本部長の髙橋康忠も、FCオーナーと何でも言い合える関係を築いている。時にはオーナーにとって耳の痛いことを言わねばならない立場だが、髙橋は物怖じしない。

 ただ、たとえ善意あるアドバイスでも、頭ごなしに言われて気分の良い人間がいないことは、彼も分かっている。髙橋らFCと関わる社員は、普段からオーナーたちとオープンに接し、時に飲み、時に遊ぶことで、信頼関係を構築。物語とFCとの円滑な関係は、そうした基盤の上に成り立っているのだ。

生涯一書生を貫く

 髙橋は「直営とFCでは伝え方がまるで違う」と明かす。直営店に対しては「決定事項なので、こうしてください」と言えば通る案件でも、FC店からは必ず理解と共感を得なければ話が進まない。前者は「命令」だが、後者は「説得」なのである。

 
 しかし、小林にとって、これはまさに望むべきこと。エリアマネジャーが鍛えられる他、正しい意見を吸い上げられるというわけだ。実際、ゆず庵事業部エリアマネジャーを務める五十嵐和利は「FC店からメニューに関する改善要求があり、それを取り入れたこともある」と述べる。

 小林の口癖は「生涯一書生」。物語も風通しの良い社風だが、社員となると遠慮する者もいる。しかし、FCが本部に遠慮する必要は無い。「本音でうるさく言って欲しい」と願う小林にとって、厳しい指摘も辞さない彼らは得難いパートナーなのである。

 これら、物語と社員、そしてFCの絆を確かめ合う、物語的大家族主義の集大成としての場が、毎年行われるファミリーコンベンションだ。元々は商工会議所の一室で始まった社内報告会だったが、FCオーナーにも様子を見てもらおうという意図で進化を遂げ、今では大ホールに1200人以上が詰めかける一大イベントとなっている。

 会社の規模が大きくなるにつれて、個人は埋没していくもの。しかし物語は、それに抗い続ける。社員一人ひとりが個性豊かに力を発揮して、お客一人ひとりと向き合う。今後、拡大を続けていく同社が、その社風を失わずに前進できるか、ここからが勝負と言える。



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