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トピックス -企業家倶楽部

2016年09月26日

【佐藤綾子のパフォーマンス心理学】vol.35 3点絞りのテクニック

企業家倶楽部2016年10月号 トップの発信力


Profile

佐藤綾子

日本大学芸術学部教授。博士(パフォーマンス心理学)。日本におけるパフォーマンス学の創始者であり第一人者。自己表現を意味する「パフォーマンス」の登録商標知的財産権所持者。首相経験者など多くの国会議員や経営トップ、医師の自己表現研修での科学的エビデンスと手法は常に最高の定評あり。上智大学(院)、ニューヨーク大学(院 )卒。連載月刊誌8誌、著書161冊。18年の歴史をもつ自己表現力養成専門の「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰(体験随時)。

連絡先:information@spis.co.jp

詳細:http://spis.co.jp/seminar/



1.東京都知事選の例

 東京都知事選で3人の目立った候補が、それぞれ3項目ずつキャッチコピーを挙げたことで話題になりました。なぜ、演説する時に3つがいいのか、という新聞とテレビの取材を私も数社から受けました。では、なぜ「3」がよいのでしょうか。具体例をひとつ挙げてから謎解きをしていきます。

 まず、鳥越氏は3つのよしとして、「住んでよし、働いてよし、環境によし」。

 増田氏は東京の3つの不安解消として「年寄りと子どもが安心できる東京。大火災・大災害の不安を解消する。世界一魅力あふれる東京」の3つを挙げました。

 小池氏に至っては3つのシティとして「セーフシティ・ダイバーシティ・スマートシティ」を挙げました。

 もちろん、正確に言えばセーフシティとスマートシティは本物の都市を表すシティ(city )ですが、ダイバーシティ(diversity )は一つの単語であり、sityであってもcityではなく、どこの市とも関係ありません。ただ、耳で聞いた時に3つのシティだ、と言う風に聞きやすいのが特徴です。3つだったらよく記憶もできます。

 これについて学術的に究明できないか考えてみると、紀元前4世紀のアリストテレスの弁論術に行き当たります。「アリストテレス レトリケス」という書物は、「アリストテレス 弁論術」という訳本になって日本でも演説やスピーチを学ぶひとたちの古典になっています。このなかでアリストテレスも3つの言葉を並べることを多用しているのです。

 例えば、演説をしていてその人の言うことを「なるほど、本当だ」と思わせる人、すなわちエトス(信憑性)については、時間軸で3つのエトスが必要だとしています。

●事前エトス

●由来エトス

●終結エトス

の3つです。

 話す前から、「こんな素晴らしい肩書の人の言うことだから本当だ」と感じさせるのが事前エトス、聞きながら「なるほど、いくつも証拠が出ている」と思うのが由来エトス、そして話が終わってから「よくまとまっていて説得力があった」と思うのが終結エトスです。

 そしてこのエトスを獲得するために、スピーチをするひとりひとりが持っている性質がまた3つあると彼は言うのです。

 その3つは以下です。

●話し手の知性

●性格

●善意

 もちろん、当時は心理学の実験データをとっているわけではないので、アリストテレスは自分の弁論術を学校で教える時に、この3点を強調しました。

 世の中のトップに立つ政治家は人を納得させるためにこの3つの力が必要だ、とアリストテレスは説いたわけです。都市国家「ポリス」の住人に政治家が主張をアピールする行為が「ポリティケス」(現在の「政治」)の話術です。このギリシャの伝統は、脈々と弁論の国とアメリカに受け継がれました。



2. 西洋流の話し方(ロジカルプレゼン)の原点になった偉大なるスピーチ

「政治家で偉大なスピーチをした人は誰か?」と問われたら、読者諸氏は誰と答えられるでしょうか?

 一人の人を思い出してください。アメリカ南北戦争の時代に、颯爽と3つのビジョンを掲げて大統領に就任したのがアブラハム・リンカーンです。「of the people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための政治)」、この有名な「ゲティスバークアドレス」がまた3点絞りでした。

 紀元前から19世紀、そして現在の21世紀にかけて「3」という政治家の演説ポイント数はずっと引き継がれていることが分かります。


2. 西洋流の話し方(ロジカルプレゼン)の原点になった偉大なるスピーチ

3.聞きやすさの実験

 私も自己表現の「リスナーズアビリティ(聞き手の能力)」の1つとして、聞き取り力の実験データをとったことがあります。

 1分間相手の話を聞いて、記憶していることを書きだしてもらうのですが、1分間の文字数は266・5文字(平仮名と漢字がほどよく混じっている条件)として、その中で「大事なことは3つあります」と言い、例えばある商品について「丈夫さ、安さ、使いやすさ」の3つを言ってみたのです。すると、聞き手はちゃんとその3つを記憶していることができました。

 さらに、このように短く絞ったポイント3点に対して1行ずつ解説を入れても、266文字あれば言い終えることができます。これを実験してみると、聞き手は見事3点とその短い説明を覚えていて、言うことができました。

 ところが、1分間のなかに4つ入れてしまうと、最後の1つしか覚えていません。もちろん、5つ言えば最後より前の4つがなかなかきちんと思い出せません。

 これについて考えられる推測としては、文字で書いて視覚を使って見ていれば、3点以上暗記が可能だとしても、耳から聞こえる情報は聞くと同時に、流れ去っていきます。メモをとって聞かない限り、聞きながら頭で暗記していくのには、情報量に限界があるということでしょう。それがせいぜい3つまでだ、というわけです。

 アリストテレス時代では実験データをとったわけではないので、習慣として3つがインパクトがある項目として教えていたのでしょう。

 さらに、リンカーンは耳で聞いた時のリズムをとるためにも「of the people, by the people」だけだと2回韻を踏んでいるだけで終わることにも気づいていたはずです。そこに「for the people」が入るので最終的な韻は3回。ここでリズムが「連辞」というテクニックになって誕生しています。ホップ・ステップ・ジャンプもそうです。能の足の踏み方「序・破・急」、そしてスピーチの作り方「序論・本論・結論」、アリストテレスの演劇の作り方、「はじめあり・なかあり・おわりあり」。すべて3つのステップで構成されています。現在の商売の原則にもなっている「三方よし」も「自分よし、相手よし、世間よし」です。「3」という数字が人々に記憶されるのに慣れ親しんだ数字だということが分かるでしょう。トップの立場にある人は知識も多く、いろいろ言いたいことがあると思いますが、最大でも3ポイントに上位項目を絞った方が聞いてもらえます。そして必要ならばさらにその下にいくつかの下位項目をグループ分けして入れていく方が、聞いた人はよく理解します。3つの主要点を挙げて、その3つそれぞれの中身をまた3つ言うやり方です。

 試しに3点絞りをあちこちで使ってみてください。指で3つを示してから話すと、相手が最初から注目してくれるのでさらに有効です。



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