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トピックス -企業家倶楽部

2016年09月30日

【竹中平蔵の骨太対談】日本の人材開発部として世界に羽ばたく/vs リンクアンドモチベーション会長 小笹芳央

企業家倶楽部2016年10月号 竹中平蔵の骨太対談




「モチベーション」をビジネスに

竹中 小笹さんはモチベーションに焦点を当てたコンサルティングという非常にユニークな事業をしていて、業績もドンドン伸長しておられますが、モチベーションをアップするのはなかなか難しいのではないでしょうか。

小笹 そうですね。モチベーションは「やる気」とか「動機付け」などと言い表されることが多いですが、人間は複雑なので一言では言い表せません。

竹中 なるほど、確かにモチベーションは様々な要因と密着していると思います。今進めている事業の内容を具体的に教えてください。

小笹 事業の最終的な領域は拡大して、多様化しているのですが、中核の事業をモチベーションエンジニアリングと定義しています。

竹中 それはどのようなものですか。

小笹 モチベーションエンジニアリングは大前提として、2つの哲学的な考え方を下敷きにしています。

 一つ目はまず人間観です。組織とは完全合理的な経済人ではなく、限定合理的な「感情人」であるとわれわれは考えています。

 そういう人間観を持っているからこそ、企業が社員に提供する報酬というのはもちろん『金銭報酬』は大前提ですが、それ以外の報酬が今後さらに重要な意味を持つと思います。

 具体的には承認欲求を満たすこと、貢献欲求を実感させること、成長欲求を感じさせること、親和欲求を満たすことなどを指します。これらを『金銭報酬』に対峙する形で、『意味報酬』と名付けて括っています。『金銭報酬』は誰かがたくさんもらえれば、誰かは我慢しなければならないという、ゼロサムゲームの宿命にあるのに対して、『意味報酬』は企業や経営者や人事セクションの取り組みによって、自家発電、自家内生産が出来るのが大きな違いですね。

竹中 『金銭報酬』に加えて、『意味報酬』を大切にされているわけですね。

小笹 はい。そして二つ目はそういった人間が複数あつまる組織観です。

 われわれは組織とは、要素還元できない「協働システム」であるという見方をしています。つまり、モチベーションエンジニアリング的には組織の問題は、個人ではなく、人と人との「間」にあるということです。

 例えば営業部門と技術部門の間や本社と店舗の間、トップとミドルの間などのコミュニケーションの滞りが、機能不全を起こすと考えています。竹中 社会科学を勉強している人間としてはとても面白くて、深い説明だと思います。

 私も同じように「間」という概念はとても大切だと思っています。そもそも「間」という言葉は重要な日本語のキーワードです。考えると日本語には「間」がついた言葉がすごく多いことが分かります。「間違う」、「間が抜ける」、「間が悪い」といった具合です。



「リセット」することの大切さ

竹中 現在では、モチベーションという言葉も一般的に知られていますが、2000年の創業当時はまだモチベーションに対する理解もなく大変だったのではないですか。

小笹 そうですね、それまでは心理学の世界のマニアックな人しかその概念を知りませんでした。

 契機となったのは、2002年の日韓共催のワールドカップです。そのときサッカー選手がモチベーションという言葉を使い始めて、一気に世の中に広まりました。以後、モチベーションと名の付いた本を書くと部数もグッと伸びるようになり、ひとつの節目となりました。

竹中 それがきっかけで一般の人へのモチベーションへの理解が一気に高まったのは分かりますが、企業の経営の中での難しさは2008年の上場までにまだあったのではないですか。

小笹 そうですね。特にコンサルティングという業態的には、どうしても人材資源に依存する部分があります。そのため、いかに優秀な人材を惹き付け、その後のモチベーションをどう維持していくのかが大切になるので、顧客だけでなく自社でも色々な取り組みをしてきました。

 例えば、カレンダー上で3カ月を1年と考えるのもその一つです。実際に社内では3カ月ごとに年末年始と休暇を設け、1年間は4年と考えていました。

 人間は正月になると今年はこんな風に頑張ろう、お酒を控えようなど目標や志を立てますが、2月の後半になると忘れていることがほとんどです。そのため、心新たになる機会を意識的に作りました。これはとても効果的な取り組みでした。

竹中 つまり、モチベーションを高めるには早目のリセットが必要ということですね。

 似たような言葉に世阿弥の「初心忘れるべからず」という言葉があります。重ねて世阿弥は「初心はたくさんある」とも言っています。つまり、小学校に入ったときの初心、大学に入ったときの初心、社会人になったときの初心、それらの初心を積み重ねて成長させていくことが重要だということです。

 だから、3カ月を1年と考えリセットしていくことは経営の手法として大変興味深く感じました。


「リセット」することの大切さ

見えないものを可視化する

竹中 小笹さんは他にも、「モチベーションサーベイ」というものを推奨されていますが、それは具体的にどんなことを行うのでしょうか。モチベーションという目に見えないものをどのように可視化していくか、とても興味があります。

小笹 実はこの「モチベーションサーベイ」は当社の主力商品の一つです。

 これは簡単に言うと、わが社で作る思考ツールのことです。社員のモチベーションの高さではなく、会社と社員の関係性を数値化しています。これもまた「間」の概念です。

 個人がA社に所属しようかB社に所属しようか、はたまたC社に所属しようか、自分が帰属する集団を選ぶ要因はいくつかあります。待遇や立地、事業内容、そこで働く人に対する憧れなどが挙げられます。

 それをわれわれは16個の因子に分解しています。そしてこの16個の因子に対して社員に無記名のアンケートを取ります。

 簡単に言うと給料や労働状況について項目別に「期待値」と「満足度」を問うものです。最終的には縦軸が期待値、横軸が満足度となり、一見して分かるように表されます。 
 
 
 16個の因子の中で一番問題なのは期待値が高いにもかかわらず、満足度が低い因子です。これは会社によって異なります。そしてその因子の原因を分析し、改善策をわれわれが提案していきます。

竹中 これは日常でもやってみたら面白いかもしれないですね。やはり会社側の事前に持っていたイメージと実際の調査結果が大きく異なる場合もあるのですか。

小笹 はい、あります。内部のモチベーションマネジメントの向上は採用活動と切り離して考えられないので、採用局面も含めた改善策を練り、クライアントに提案します。

 そして2、3年かけてだんだんこの数値を改善していきます。その際は企業を強化し個人を開発することだけでなく、この両者を繋ぐことを強く意識しています。



カンパニードックの実施

竹中 御社が5年ほど前から開催している、『モチベーションカンパニーアワード』がありますね。「モチベーションは山の天気と似ている」と聞いたことがありますが、その通りモチベーションはすぐに低下します。継続的にやっていくことはすごく大事だと思いますが、どうして始めたのか、そしてどういう効果があったかについて教えてください。

小笹 わが社では年間350社から400社に「モチベーションサーベイ」を実施していただいており、そのデータベースを生かして他社との比較ができるよう各社の偏差値を作っています。それが高いトップ10の企業を表彰しているのが、『モチベーションカンパニーアワード』です。

 毎年約300人から400人の方に出席して頂いており、様々な苦労の中、どういうふうに企業を活性化させたのかという具体的な取り組みを多くの企業に知ってもらおうという意図で実施しています。

 それと同時に、過去のデータに基づいて短期サイクルで行うことで成果が出やすかった施策などを説いて、それを継続的に行うことを促しています。

竹中 まさに人間ドックならぬカンパニードックですね。アワードを受賞して大きく変わった企業はありますか。

小笹 もちろんあります。受賞した人だけでなく、今年は11位でギリギリトップテンに入らなかったが、来年は絶対入るぞと意気込んで一生懸命施策を組織内に浸透させている人もいて、経営者のモチベーションに貢献できていると実感しています。


カンパニードックの実施

世界の人事部に向けて

竹中 モチベーションを活用した考え方は、例えば消費者の購買意欲など様々なことに応用が出来ると思うのですが、それはどのようにお考えでしょうか。

小笹 事業として直接はやっていませんが、一部企業組織を強化していくお手伝いの延長線上に企業の販売や営業部門の顧客、マーケットとのコミュニケーションの取り方を指導、助言させていただくことがあります。その際に「モチベーションサーベイ」の原理で消費者の購買モチベーションを分解すると、商品そのものの機能、価格や付随するサービスなど様々な因子があることが分かります。今後はそれを使って「顧客」と一元的に捉えるのではなくて、どの部分を重視する顧客をターゲットにするのかなどに応用できると思います。

竹中 小笹さんの話は聞けば聞くほどのめり込みます。勉強をする受験生のモチベーションを高めることもできるかもしれません。今後はそのような新たな領域に入っていくと思いますが、将来のプランはどのようにお考えですか。

小笹 株式会社日本における人材開発部の役割を果たしていきたいと思っています。

 そのためには今の人口減少の中で一人ひとりの生産性を高めていくことが大切です。例えば、プログラミングスキル、ITスキル、語学スキルをもっと子どもの頃から身につけていくことも重要です。また、新たな労働力を促進することにも同じように重きを置いています。

 日本の人材開発部として今日本が置かれている環境をしっかり分析し、自分たちの得意分野で国に貢献するためにはどうすればいいのか、大きな構図で描きながら事業活動を進めていきたいと考えています。

竹中 モチベーションに関して、小笹さんが日本全体のコンセプトリーダーであり、ビジネスリーダーのようですね。

 日本の人事部を目指すという非常に大きな夢をお持ちですが、これからのグローバル環境を見据えると、アジアの人事部や世界の人事部になっていくと思います。

 今、海外に拠点をお持ちだと思いますが、今後の海外への意識はどのようなものですか。

小笹 現在、企業側の新卒採用でアジア各国へのニーズが高まっており、特に需要のあるベトナムやインドネシアに対してはすでにリクルーティング拠点があります。そしてそこの優秀な方々を日本で働いていただく制度を実施しています。

 しかし、まだまだ貢献する余地はたくさんあります。実は日本で働きたいと言う外国人はたくさんいるので、ヨーロッパやオーストラリア、香港などにも拠点を作って、ネットワークを充実させていきたいと思います。

竹中 まさに世界の人事部ですね。最後に個人の夢をお聞かせ下さい。

小笹 私個人としては、しっかり哲学と理念を持った経営者をたくさん作りたいです。売上げを100億作れる経営者が100人いれば1兆円作れます。

 たくさん経営者を輩出して、ある程度の年齢になったらその経営者のお茶のみ友達や相談相手になれたらいいと思っています。

竹中 大変興味深い話をありがとうございました。




PROFILE


竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73年一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年小泉内閣に初入閣、04 年参議院議員に初当選。06 年政界引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長就任。14 年国家戦略特区の特区諮問会議のメンバーに就任。16 年4月東洋大学教授に就任。「アートと社会」、「バブル後25 年の検証」(東京書籍)を出版。

小笹芳央 (おざさ・よしひさ)

1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、リクルートに入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、00年リンクアンドモチベーションを設立、代表取締役社長に就任。07 年12 月東証二部に上場。08 年12月東証一部に指定変更。08 年第10 回企業家賞受賞。2013 年代表取締役会長に就任。同社は、「人のやる気」にフォーカスを当てたコンサルティングで成長を続ける。



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