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トピックス -企業家倶楽部

2016年10月27日

日本を真のロボット大国へ/MUJIN CEO 滝野一征

企業家倶楽部2016年10月号 スタートアップベンチャー




ロボットの「脳」の部分

「ロボット業界は日本が獲りたい!」 

   こう語るのは、MUJINの共同創業者でありCEOを務める滝野一征。同社はロボット界のOSを開発した日本発のベンチャーだ。ロボットは分解すると鉄の棒とモーター出来ている。同社が得意とするのはロボットに指示を出すいわば「脳」の部分である。

 MUJINの事業領域は、日本がロボット大国と呼ばれる所以である産業用ロボット分野。日本製は安くて丈夫な上、正確であると好評だ。しかし、問題は操作が難しいこと。細かい文字が並ぶ操作盤をようやく使いこなせるようになっても、そのロボットは事前にプログラミングされた仕事しかできない。つまり、使用できる場所が限られている。

 事実、産業用ロボットの6割が溶接作業に限定されている。塗装や簡単なピッキングを含めて99%だ。ロボットが多用されているイメージのある車業界ですら、ロボットが行うのは全工程のわずか5%ほど。この伸びしろにこそ、MUJINの勝機はある。

 同社が開発するのが、画期的な「MUJINコントローラ」。これを接続したロボットは、プログラミング不要で動かすことができる。必然的に、産業用ロボットを活用できる分野を増やせるという代物だ。この製品の根幹となるのが「動作計画」という唯一無二の技術。この技術の第一人者は、CTO(最高技術責任者)のデアンコウ・ロセンである。ロセンは米カーネギーメロン大学でロボット工学を学び、同業界では名の通った有名人の一人。大学卒業後に来日し、東大に籍を置きながら、製品化のため研究を続けた。なお、学生時代に日本文化に触れ言葉は独学で習得したほどの日本通だ。流暢な日本語を話すが、社内の公用語は外国人が多いので英語と言う。製造業発のベンチャーは難しいと言われる中、MUJINは創業わずか5年目ながら、2015年度の売上げは2億円を超えた。今年度は約5億円を見込んでいる。


ロボットの「脳」の部分

物流業界に革命を

 滝野とロセンの出会いは、2009年に日本で開催された国際ロボット展に遡る。当時、滝野は大手メーカーのトップセールスエンジニアであったが、縁があって会場を訪れていた。当初のロセンの印象は「現場のことを知らない学者」。何度かメールのやり取りを重ねていたが、多忙な日々の中、再会することはなかった。

 しかし、滝野が関西の実家に立ち寄った際、ロセンから一本の電話があった。「大阪にいます、会ってください」。正直気乗りはしなかったが、その熱意に根負けして出向いた滝野。最終的にはロセンから論文のプレゼンを何十回も聞くこととなる。

「成功する確信はありませんでしたよ。ただ、これだけ粘り強いのだから、2、3回失敗してもまた挑戦できると感じました」

 また、ロセンが「嘘をつかない人」だったことも共に創業した決め手だ。「人格者であれば、ビジネスモデルが間違っていても必ず修正できますから」と信頼を寄せる。しかし、技術が確立していても、実際に現場で使えるとは限らない。

 試行錯誤の末に着目したのは物流業だ。莫大な種類の商品を抱えるため、仮にロボットを使うとなれば、商品一つにつき何億通りものパターンをプログラミングしなければならない。したがって、従来のロボットで参入することは、不可能とされてきた。しかし、同社のコントローラを接続すれば、ロボットが自分で判断して商品を取り、運ぶことができる。つまり、コントローラを付加することで、既存のロボットがより「賢く」なるのだ。

 どのメーカーのロボットにも繋げることができるのが同社の強み。しかし、CPU部分全てをMUJINのコントローラで代用するわけにはいかない。ロボットは、モーター、減速機、鉄、ベルトの4つで構成されていて、ソフトウェアであるCPUの性能で差を付けている。にもかかわらず、その根幹を他社であるMUJ INのものに入れ替えてしまうわけにはいかないのだ。また、ロボット事業は大企業の一部門であることが多い上、納品している相手先の企業のこともある。事業部の独断で勝手に搭載するCPUを変えることはできないのが現実だ。

 
 しかし同社のコントローラを使用することによって、業界全体の活性化が期待されている。ロボット化できる分野が増えれば、ロボットメーカーも受注が増え、ロボットを導入している工場も更に効率化されるだろう。また、膨大なプログラミングを不要とするため、すぐにデモンストレーションを完成させることも可能だ。滝野は「ロボットメーカーとしては、販売までにかかる時間が10分の1になります。結果的に、売上げは3倍、5倍になるでしょう」と可能性を示唆する。



ロボット業界のグローバルスタンダードへ

 MUJINのもう一つの事業は、中国メーカーへのCPUの提供だ。近年、中国ではロボットメーカーが次々に興っている。数年前は数社しかなかった中国メーカーだが、現在は上海だけで50社を超えた。しかし、ハードウェアであるロボットの形は作れても、それを動かすソフトウェアであるCPU部分を自前で開発する技術はない。そこで、MUJINのコントローラを導入すれば、それらのロボットを動かせるようになる。中国では、「良いものはとりあえず導入する」文化があり、問い合わせも殺到している。

 現状では、中国のロボット産業を脅威だと思っていない日本メーカーが多い。中国メーカーがCPUを搭載したロボットを作るようになれば、国内のメーカーも「自前のCPUを変える必要はない」などと悠長なことは言えなくなるだろう。

 こうした事業展開から、「国内のロボットメーカーを見捨てて中国に肩入れしている」と誤解されることもしばしば。しかし、滝野は「日本がロボットのCPU界でグローバルスタンダードにならなければならない」と説く。かつての日本は携帯電話業界を得意としていた。しかし、スマートフォンの誕生によって、アンドロイドとiOSという2つのOSが主流になり、日本メーカーはハードウェアを作ることしかできなくなってしまった。同じ徹をロボット業界で踏んではならない。「ロボットはもはや国策として推進すべき分野だ」と滝野は強い危機感を抱く。

 
 幸い、MUJINにはロボットのCPUをいち早く開発したという強みがある。「マイクロソフトオフィス」や「インターネットエクスプローラー」を搭載していたWindowsを、「皆が使っているし、慣れているから」という理由で使い続けている人は多いだろう。同じように、同社製品の操作盤に慣れてしまえば、そのまま同じものを使いたいと思うはずである。こうして日本発の企業としてグローバルスタンダードを作ることが重要だ。

 滝野の夢は「誰もがロボットメーカーになれる世界を作ること」。第一段階として、現場の技術者ならば誰でもロボットを活用できるようになった。そして次は、MUJINコントローラを使い、誰もがロボットを知能化できるようになるだろう。ロボット業界の革命家になりうるか。これからの活躍に目を離せない。

【企業概要】

社 名 ● 株式会社MUJIN

本 社 ● 東京都 文京区本郷 4-8- 13  TSKビル1F

創 立 ● 2011年7月

資本金 ● 3億4090万円



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