• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル

トピックス -企業家倶楽部

2016年10月28日

幼児教育で未来を創る/幼児活動研究会の21世紀戦略

企業家倶楽部2016年12月号 特集第1部


幼稚園・保育園に社員を派遣し、体育指導を行う幼児活動研究会(以下、幼児活動)。今や全国1000の園と共に歩む同社の原点は40数年前、社長の山下孝一がたった一人で始めた体操指導だった。子どもの教育に携わることは、日本の将来を創ることと同義。「子どもの可能性は無限」との信念を胸に、幼児教育に貢献し続ける同社の未来戦略を垣間見る。(文中敬称略)


「これからも、お父さんとお母さんを喜ばすことができる立派な人になります!ありがとうございました!」

 体育館中に響き渡る大きな声。子どもたちが一人ひとり、両親へ感謝の言葉を述べていく。どの子も、まさに全身全霊を賭しているといった面持ちで、腹の底から力を振り絞り、真っ正直な気持ちをぶつける。そこに、「言わされている感」は微塵も無い。

 ここは、鹿児島県霧島市にある高千穂幼稚園。同園は、一度は閉園の憂き目に遭いながらも、幼児活動が経営に携わったことで再興。今では全国から引っ越してまで子どもを入園させる親がいるほどの人気園となった。

 学習発表会の場では、園児たちが日ごろの練習の成果を見せるべく、一生懸命に逆立ちをして歩き、背丈よりも遥かに高い10段の跳び箱を飛ぶ。そして極め付けが、冒頭で紹介した両親への謝辞だ。

 果たしてどれだけの人が、このように素直な感謝の気持ちを述べられるだろうか。これを見て泣かない親は、よもや居るまい。「子どもの可能性は無限」という信念の下、体育指導を通じて、しつけ、道徳、諦めない心、ひいては人間としての生き方を園児に教えているのが、幼児活動という企業なのである。



全国1000園と提携

 幼児活動は1972年に現社長の山下孝一が創業。以来、契約した幼稚園・保育園に社員を派遣し、40 年以上に渡って正課体育指導を行ってきた。同社の社員は週に一度、担当の園に赴き、園児たちに指導を施す。

 今や契約園は1000園に上り、業容もスポーツクラブ運営から幼稚園、社会福祉法人の経営まで多岐に及ぶ。業績は地道ながら増収増益を積み重ね、2016年3月期は売上げ63億円、経常利益8億6200万円を達成。2017年も売上げ64億円、経常利益9億5000万円と堅実な伸びを見込む。

 少子化が進む中、一見すると幼児活動の市場は縮小傾向にあるようにも思えるが、実はその逆。もともと幼児への体育指導と言えば、幼稚園・保育園の先生が遊びながら教える程度だった。しかし、園同士の競争が激化したことで、差別化戦略の一環として、幼児活動のようなプロの体育指導が取り入れられるようになったのである。

 また、特に都市部では自然が減少し、公園内の規制も厳しくなって、子どもたちが自由に遊べる場が消えてしまった。これも、幼稚園・保育園内での体育指導が着目されている要因の一つだ。

 子どもの教育に携わるだけならば、学習塾やスイミングクラブを経営する選択肢もあったはず。だが、山下には「日本中の子どもを良くしたい」という志があった。子どもは大抵、幼稚園・保育園のどちらかには通っている。ならば、そうした園との提携こそ、関われる子どもの数を飛躍的に伸ばす近道というわけだ。

 幼児活動が主軸とする事業は体育指導だが、それを通して「人としての基本」を教え、幼児教育全般に貢献するのが彼らの本分。10段の跳び箱を軽々と飛ぶ。逆立ちで歩き続ける。これらは彼らが体現する教育の表層部に過ぎない。

「日本の未来を背負う子どもを育て、ひいては日本社会に貢献する」

 この山下の宣言通り、幼児活動の社員は常に志高く、誇りを持って仕事に取り組んでいる。だが、今でこそ統制のとれた企業として注目を集める同社も、一朝一夕に出来上がったわけでは無かった。



夢破れ嫌々体操指導

 実は、山下が最初に志望していたのは中学・高校の国語教師。教員免許さえ取れば自動的に教師の口が約束されているものと考えていた山下だったが、現実はそう甘くはなく、就職浪人することとなった。落胆している山下に、「幼稚園の体操の先生をやらないか」と知人から声がかかる。中学・高校時代、器械体操部に所属し、オリンピックまで目指していたという山下の力を見込んでのことだった。

 園の若い女性職員も見ている前で体操指導をするのは恥ずかしくて仕方が無かったが、他に働き口は無い。先見性も理念も無いまま、嫌々ながら園に通った。指導自体にも最初は全く魅力を感じなかったが、幼稚園に行くたび子どもたちが自分を待っていて、「楽しい!」「もっと教えて!」と群がってくる。これには顔をほころばす山下。「この子たちだけは自分を必要としてくれている」。そう思うと営業にも熱が入り、いつしか一週間の予定はびっしり指導で埋まっていた。



一番嫌いなものは社員

 だが、営業を重ねるうち、山下一人で指導日程をこなすのは限界になり始めた。これ以上の新規契約を取るためには人を雇うしかなくなり、2名の新卒を採用。仕事に一生懸命取り組む彼らの姿を見て、山下も晴れ晴れとした気分であった。しかし、充実感を覚え始めたのも束の間、翌年2月に突如としてこう告げられた。

「来月で辞めさせていただきます」

 今までそんな話は一度も無かっただけに、山下にとっては寝耳に水。「一体どうしたんだ」と驚いて聞くと、二人は口をそろえて言った。

「僕たちは教員志望ながら一度失敗し、一年間働かないわけにもいかないので、最初から腰掛のつもりで入社しました。先日、教員試験を受け、無事合格しましたので退職します」

 簡単な礼だけ言い残し、嬉しそうに去っていく二人。山下は「これまで一緒に奮闘した日々は何だったのか」と肩を落とした。

 しかし、落ち込んでばかりもいられない。二人分の契約を広げてしまっている以上、再び人を採用しなければ会社が回らなくなってしまう。初めて新聞に求人広告を出したのもこの時だ。子どもを相手にする職種ということで、面接に来るのは100%が教員志望者。それも、十中八九が就職浪人中の面々である。最初は神妙にしていても、10分も話を聞けば徐々に本音が出てくる。

「社長、私はこの会社に長く居るつもりはありません。教員試験に受かったら辞めます」

 山下が、「辞めるのはいいが、少なくとも一年間は働いてもらわねば困る」と念を押すと、皆「分かりました」と言うだけ言って、実際には試験に合格した途端に退職してしまうのが常であった。

 ここから負の連鎖が始まった。山下としては、人がいないので選り好みせず採用するしかない。すると、見事に短期間で辞めていく。しわ寄せが行くのは残った社員だ。「また仕事が増えた」「給料を上げろ」と文句が噴出。挙句の果てには、彼らまでも辞めてしまう。時には、苦労して採用した新人が入社した途端、元からいた社員が「この会社は良くない。俺は辞めるんだが、お前も辞めないか」と誘うこともあった。

「私は社員の顔も見たくなかったし、向こうも同じでしょう」と当時の心境を吐露する山下。幾度となく「なぜ社員など雇ったんだ」と自問自答する毎日に、ほとほと嫌気が差していた。



社員第一主義に転換

この状況に変化をもたらしたのは、二つの出来事であった。

 一つは、ある社員が大学の同期に会った際の話を聞いた時のことだ。相手は今でも憧れている高校の体育教師。片や自分は幼稚園で週一回体操を教えている名も無き企業の社員。恥ずかしくて、咄嗟に職業を隠したというのである。

「社員は自分の仕事を誇りに思えず、我慢しながら働いている」。そう思うと、山下は情けなくなると同時に、「何としても社員が誇りに思える仕事、会社にせねば」と心に誓った。

 もう一つは、初めて社員の結婚式に呼ばれた時のこと。社員と奥さんが二人で幸せそうに並んでいるのを微笑ましく見ていた山下だが、ふと「彼の給料で奥さんを養えるのか。子どもが生まれたらどうするのか」と深刻に考えた。「大変だ。社長は社員の家族にまで責任がある」と初めて自覚した瞬間だった。

 それまで山下は、社員のために経営をしようなどと考えたことは一度も無かった。社員は雇うのに人件費がかかる割に、育てようとしてもすぐに辞めてしまう。「給料を払っているのだから働くのは当たり前」と考えていた。

 だが、社長一人では売上げが成り園児全員が逆立ちで歩く立たないのもまた事実。実際には、「社員が社長の給料を払っているのだ」と思い直した。お客様第一とは言うものの、お客にサービスを提供するのは社員だ。社員満足無くして、お客様満足は無い。こうして山下は、経営の第一の目的として「社員とその家族を幸せにすること」を掲げたのである。

 折しも、銀行から人が来た。「これから少子化が始まります。御社のような子どもありきの事業は止めた方がいい。本当に潰れますよ」。そう言われ、山下の心は揺れた。確かに銀行の言う通りかもしれない。だが、幼児教育以外にやりたい仕事など無い。ならば、このまま潰れるか。社員との関係が上手くいっていないことは明白で、倒産のシナリオは容易に想像がついた。悩み抜いた末、山下が下した決断は、誰もが予想だにしないものであった。

「どうせ潰れるのならば、一つ日本一に挑戦しよう」山下の覚悟が決まった瞬間だった。潰れるか日本一か10周年を迎えたその日、スーツ姿にネクタイを締めた山下を見て、社員一同は騒めいた。

「社長、何ですか、その格好は」

 どよめく社員たちを前に、山下は言った。

「俺は決めた。この会社を日本一にするぞ」

 一瞬ポカンとした社員たちは、どっと笑い出した。日本一と言えば、トヨタ自動車。山下はこの兆円企業を抜くと豪語したのだから、とても信じられるわけがない。しかし、山下は本気だった。社内改革の手始めとして、まずは服装を改めた。それまでは社長以下、全員ジャージで園に通っていたが、白いワイシャツ、ネクタイ、靴下の着用を義務付けた。これには社内の反発が強かった。「堅苦しくないからこの会社を選んだのに、社風を変えるなら辞めてやる」「そこまで言うならスーツ、ネクタイ、靴を支給しろ」。しかし、山下の決意は固かった。社員がいなくなれば潰れる。だが、その時はまたゼロから始めればいい。

「おい、お前たちは家で子どもに仕事を聞かれたら、恥ずかしくて言えないのだろう。一生誇りも持てないまま働くつもりか。そんなの、俺は嫌だ。必ず一流会社にする。辞めるなら辞めてくれ」

 その場は静まり返り、そして一人の社員がポツリと言った。

「社長、ネクタイ・スーツ着用にしたら、本当に一流会社になれるんですか。俺だって、一流会社がいい」

 山下の熱意は、確実に社員に伝わった。この「ショック療法」の結果、30人近くいた社員の半分が退職。だが、これによって社内は急速にまとまっていった。



挨拶・掃除を徹底

「いらっしゃいませ!」

 東京・五反田にある幼児活動の本社を訪れると、社員が全員立ち上がり、元気な挨拶で迎えてくれる。この挨拶に関しても、10年目の社内改革で特に徹底した事項の一つだ。それまでも来客に対しては挨拶をしていたが、たとえ配達の人が来た時でも、社員全員が仕事を中断し、起立して挨拶をすることに決めた。中には「仕事の能率が下がる」と反発する社員もいたが、山下は「能率が下がってもお客様に嫌われなければ会社は発展する。逆もしかりだ」と撥ねつけた。

 掃除にもこだわった。飲食店一つとっても、繁盛店に共通しているのは料理やサービス以前に店内の清潔感である。そこで幼児活動でも、まずは会社のオフィス、それから自分たちとは直接関係の無い周辺の廊下まで掃除するよう心掛けた。

 トイレに至っては社長の山下自ら、朝6時から出社して磨き上げた。「正直トイレ掃除は嫌いだった」と明かす山下。しかし、綺麗にトイレを使いたいとの想いで掃除をした。

「人に会ったら挨拶するのが当たり前。自分が汚したものを掃除するのは当たり前。そうした当たり前が通用する会社でありたい」と山下。彼の言う「平凡× 継続=非凡」とは、まさに幼児活動を表す方程式だ。

 こうした徹底力は、顧客である園でも現れた。社員たちはスーツ姿で園に着くと、雨の日でも鞄を地面に置き、必ず気を付けして一礼する。お辞儀は踵を付け、背筋をピンと伸ばし、斜め45度。それから園内に入ると、きちんと靴を揃え、ジャージに素早く着替えて、体育指導へと向かう。また、プログラムを終えてもすぐには帰らず、園内の掃除、整理整頓を行い、窓の開閉までチェックした。

 すると、これまでと同じ指導内容にもかかわらず、園からの評価が高まり始めた。幼稚園・保育園の先生とて、学校を卒業したばかりの職員も多い。そうした中で、「幼児活動の社員を見て真似すれば間違いない」と言われるまでになった。そんな社員たちの言動は、子どもたち、ひいては保護者にまで信頼と安心感を与えるようになり、「幼児活動と契約したら園児が増えた」と喜ぶ園もちらほら。噂が噂を呼び、契約はさらに広がっていった。



日本の未来を創る

こうして軌道に乗った幼児活動。現在1000の園と契約を結ぶが、全国を見渡せば私立幼稚園が8000園、私立保育園が1万2000園の合計2万園がひしめいている。まずはこの中の10%に当たる2000園との契約が目標だ。

 幼児教育に対する社会の理解が深まる中、同社は売上げ1000億円を目指して業容をさらに拡大させていきたい考え。これまでは、直接の体育指導を主軸としてきたが、幼児教育そのものに携わる業態を思案中だ。

 園への経営コンサルティングもその一つ。以前、幼児活動が指導に入っていた幼稚園が園児不足のために経営破綻してしまったことがあった。山下は、「契約している園が潰れれば、うちも連鎖的に打撃を受ける」と痛感。その危機感から、多くの園を見てきたノウハウを駆使して、様々な園に向け園児募集のアドバイスなどを行っている。

 もう一つは、幼稚園・保育園の園長代行だ。後継者不足に悩む園を引き受け、社員を園長として送り込んで経営を担う。現在も幼児活動が直接経営している園はあるものの、まだまだ数は少ない。今後、そうした園が増えれば、社員たちも「自分の幼稚園」という当事者意識を抱き、自分が子どもたちを育てているとの実感をより強めるだろう。

 また、「小学校教育にも携わりたい」と同社事業部参与の鶴岡義彦は語る。残念ながら、幼稚園時代にはきちんと規律を守れた子どもでも、小学校に上がった途端、周囲に流されて挨拶すらできなくなってしまうケースは多々ある。幼児活動が小学校教育にまで手を広げることで、より広範囲の児童に徳育を施すことができるだろう。

 現在、幼児活動が関わっているのは基本的に私立の幼稚園・保育園だ。小学校となると税金を使っての義務教育なので、本格的な参入は難しいかもしれない。しかし、近年では地方創生が叫ばれるなど、地域で特色を出していこうとする流れもある。あるいは、市町村単位での契約も考えられよう。

 これまで幼児活動が世に送り出した児童は、のべ数十万人にものぼるのではなかろうか。その一人ひとりが社会で活躍し、世の中に貢献していると考えると、同社の存在意義の大きさが改めて身に染みる。

「弊社の成長が1日遅れれば、日本の成長が1日遅れる」

 山下は常に、口を酸っぱくしてそう語る。その矜持を胸に、山下らは今もまさに、幼児教育を通して日本の未来を創っている。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top
日本のオンラインカジノでオンラインでプレーすることの本当の魅力は、実際に交流するプレーヤーがいないという事実です。 ご存知かもしれませんが、多くのプレイヤーは賞金を他の人と共有することを望んでいません。 したがって、彼らは楽しみのためにプレーし、お金を失うリスクを冒すことはありません。 その結果、ゲーム全体をオンラインで無料でプレイできます。 日本のオンラインカジノ これは、お金をかけずにゲームをプレイしたい人に最適です。 しかし、あなたが本当のオンラインカジノで本当のお金を勝ち取ろうとしているなら、あなたはいくつかの秘訣と戦略を学ぶために読み続けたいと思うかもしれません。