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トピックス -企業家倶楽部

2016年10月31日

【ベンチャー三国志】vol.40 アイスタイルなどネットベンチャーが活躍

企業家倶楽部2016年12月号 ベンチャー三国志


アイスタイル、リブセンス、クラウドワークスはネットベンチャーの三銃士だ。ともに、2000年を越えた段階で頭角を現してきた。アイスタイルは化粧品情報を、リブセンスはアルバイトなどの情報を、クラウドワークスは企業と個人を結び、それぞれインターネットを通じて情報を提供している。アイスタイルを除いては、赤字状態を脱し切れていないが、これからの有望ベンチャーであることは間違いない。(文中敬称略)【執筆陣】徳永卓三、三浦貴保、徳永健一、相澤英祐、柄澤 凌、庄司裕見子



アイスタイル

 コスメ情報を提供する「アットコスメ(@cosme)」を運営するアイスタイルは99年7月に資本金300万円の有限会社として、スタートした。「アットコスメ」は美容関係のクチコミサイトである。化粧品の効能、値段、ターゲット層などの化粧品会社や美容業界のプロからの情報に加え、一般の消費者が、化粧品を実際に使用した意見や感想を投稿できる点が支持された。企業の売り文句ではなく、正直な声を聞きたいという女性の要望を汲み取ったわけだ。ユーザーはクチコミを自由に閲覧して、自分の年齢や肌質などにあった化粧品を選ぶことができる。多くの商品は同サイトから購入可能だ。

 社長の吉松徹郎は取締役の山田メユミとこのサイトを共同開発した。当初は「会社を設立したら、すぐに1億円ぐらい投資する」とベンチャーキャピタルは気前が良かったが、いざ、会社を設立すると、ちょうどバブルが弾けて、途端に不景気になった。

 吉松と山田は金策に走り回らねばならなかった。当時、2人は不景気を嘆いたが、後から考えるとカネのありがたみがわかって、良かったのではないか。ベンチャーがスタート時にあまりカネの苦労をしないと、ロクなことはない。生き残っているベンチャーでカネの苦労をしなかった企業は皆無に近い。

 吉松たちも資金繰りには苦労した。2000年6月期の売上高はわずかに94万円。社員(3人)の給料も満足に払えなかった。知人から九州に投資家がいるというので、九州に行った。

投資家「何をやるんだ」

吉松たち「化粧品の情報をユーザーに提供します」

投資家「どうやって」

吉松たち「インターネットを使います」

 しばらくして、また投資家「何をやるんだ」

 昼過ぎから深夜まで“禅問答”みたいな会話が続いた。投資家は「わかった」と言って、9975万円の小切手を渡してくれた。条件は一切なし。本物のエンジェルはこういう人かと吉松たちは思った。

 次は広告営業である。ユーザーに化粧品情報を提供する代わりに、広告を見てもらえなければならない。この広告料がアイスタイルの収入になる。

 吉松はいきなり、化粧品最大手の資生堂を攻めた。資生堂を攻略したら、あとは簡単だ。ベンチャーの中には、小物を狙う企業もあるが、吉松はあえて大物企業から攻略した。吉松は直前まで、アンダーセン(現アクセンチュア)というコンサルティング会社に勤めていたので、攻略法を知っていたのである。

 しかし、資生堂は難しかった。はじめは聞いてもらえなかった。何度かトライする中で、1人の担当者が理解を示してくれた。取引が始まると、今ではほとんどの化粧品会社の広告が取れるようになった、と吉松は語る。


アイスタイル


100人が壁

 3人からスタートして、2年目に10人、3年目には20人に社員が増えた。ここまでは赤字だったので、全員必死だった。仕事が終わったら飲みに行ったりして、これがベンチャーだという雰囲気を楽しんでいた。その後も40人、80人、100人と増えると、僅か2、3年で75パーセントの社員が創業の苦労を知らない人間になった。すると、混乱が始まった。「ベンチャーにとって社員100人はひとつの壁ですね」と吉松は言う。

 中途で転職してきたメンバーの一部からは、「前職ではあったものがない」、「なぜ、そんなに働くの?」といった不満の声があがりはじめる。それを解消しようと合宿の回数が増えるなど、よくあるベンチャーの風景が見られるようになった。

「文化が大事だ」というようになったら、危険なサインだ。それがなくても回っているときが社内は良い状態だという。

組織は不安定な方がいい

 逆説的だが、吉松は「不安定であること」が大事だと考えている。不安定だから前に進んで行こうとする。理系である吉松は、ホンダの二足歩行ロボット「アシモ」の話が好きで社員によく語る。アシモはバランスをとって歩かせようとプログラムを作っている限りはいつまでたっても歩かなかった。ところが、頭を前に出して不安定な状況にして、それを安定化するというアプローチにした途端にプログラムがシンプルになり、歩き始めたのだという。

 吉松は組織も同じだと考える。社長が一人で頑張っても、組織は自浄作用で倒れないというパワーが働く。さらに社長がバランスを取りに行くと瞬間的には幸せな会社になるかもしれないが、前に進まなくなるのではないだろうかと。社員を信じて、頭である社長は常に前のめり気味の方が会社は前に進むと考えている。

 今はまだ明確な競合はいないが、いずれは明らかに出てくる。アイスタイルも過渡期にあり、すぐにでもアットコスメやコスメコム、アットコスメストアなどの競合は多く出てくることが考えられ、それらに対する脅威は感じている。また、アイスタイル自体の規模が大きくなってきた。昔からの流れが重しになるのではないかと危機感を持っている。吉松は「わが社はマーケットデザイン・カンパニー」とよく言う。そうした考えを一歩前進させたのが、07年3月にオープンしたルミネエスト新宿の直営店舗「アットコスメストア」だ。売り場面積70坪で、現在年商10億円強を計上している。

 吉松は言う。「アットコスメでの評価と化粧品売り場での棚割りは必ずしも一致しなかった。アットコスメの評価が正しいことを実際の店舗で証明したかった」。周囲からの猛反発を受けて、実行したが、今ではアイスタイルの言っていることが受け入れられている。現在13店舗まで拡大している。

 吉松が一目置くのは、ブックオフ創業者の坂本孝。書籍と外食という業界を変える流れを2回も作り出した。吉松も目に見えて変わったという何かを作りたいと考えている。



リブセンス

 大学在学中にリブセンスを創業した村上太一は2011年12月に史上最年少の25歳で東証マザーズに上場を果たした。創業は2006年2月。アルバイトの求人情報サイト「ジョブセンス」を立ち上げた。08年には正社員の求人サイト「ジョブセンスリンク」を、09年には派遣求人サイト「ジョブセンス派遣」を、10年には不動産賃貸情報サイト「DOOR賃貸」と次々に新規事業を立ち上げた。

今は苦戦中

 しかし、今は苦戦している。2015年12月期の連結決算は売上高が前期比18・46%増の50億6900万円、経常利益は同30分の1の1900万円と冴えない。しかも、2016年12月期の中間決算では1億2800万円の最終損失となった。村上にとってはひとつの試練である。

 
 なぜ、業績が落ちたのか。もともと、同社のビジネスモデルは真似されやすい。競合他社が真似すると、業績が厳しくなる。誰にも真似されないビジネスモデルの構築が必要となろう。

 考え方は若いのに似合わず、哲学的だ。ロゴマークがユニーク。「?」をひっくり返したようなマークである。村上は言う。「『雨だれ、石を穿つ』という諺のように、リブセンスでは奇をてらうのではなく、コツコツと小さな努力や改善を繰り返し続けていく企業文化を大切にしています。このしずくをさかさまにすると『?』マークになっており、常識に疑問を持つことで新しい『あたりまえ』を生み出す姿勢を表しています」

 いつもニコニコ爽やかな笑顔で、どこにでもいる好青年といった印象の村上。しかし、ビジネスの話になると、叩き上げの企業家の一面を見せる。

 村上に20年後の未来を聞くと、目を輝かせて答えた。

「コンピュータの計算速度が上がって、人間の脳を超えている可能性があります。相手の想像していることが分かったり、機械が空を飛んでいたり、医学の進歩で人の死亡率が激減しているかもしれませんね」

 では、その中でリブセンスの立ち位置はどうなるのか。現在29歳の村上は、20年経ってもまだ50歳手前。事業内容は世の中の変化に応じて変わっていくだろうが、ビジョンを変えるつもりは無い。

「日本だけでなく世界中に良い影響を与えて、誰もが日常的に使い、無くなったら困る当たり前を発明したい」

 追う立場から追われる立場になりつつある村上。「5年後には間違いなく海外に出ている」と事業意欲は底知れない。少なくとも、今後20年でリブセンスが現在の事業に留まっていないのは明白だ。いずれ、同社が求人サイト運営からスタートしたという事実に驚く人が大半になるだろう。今後、村上が自社をどのように飛躍させていくのか、目が離せない。



クラウドワークス

 企業が個人に仕事を委託するプラットフォームを立ち上げているのがクラウドワークスである。2012年3月より事業を開始。現在、企業数14万社、登録ユーザー数100万人に達し、トヨタやソフトバンクなど有名企業が名を連ねている。

 同社の2015年9月期決算は売上高8億1100万円と前期比倍増したものの、経常利益は6億4900万円の赤字である。まだ、立ち上げ期で仕方がないだろう。2016年9月期の中間決算では、売上高6億1100万円、経常利益2億4100万円の赤字と赤字幅は縮小した。これを評価して株価も1000円台に上昇している。

企業と個人の中だち

 従来、企業は業務を発注する場合、企業に発注するケースが多かったが、同社のプラットフォームを活用して、個人に発注するケースが多くなった。個人のユーザーも同社のプラットフォームを利用することが多くなり、今では年間1000万円を稼ぐ人が出てきている。

 個人の力が増すことによって、「オープンイノベーション」という考え方も期待が出来る。企業では解決出来ない問題を優秀な個人に解決してもらうのだ。企業のマーケティング、商品開発、企画などを優秀な個人にゆだねようという寸法だ。このように、クラウドワークスの業務は広がりを見せている。

 孫正義やスティーブ・ジョブズといったIT業界の経営者たちは20代で創業した者が多い。37歳の時にクラウドワークスを創業した吉田は遅咲きの企業家だ。起業する前には、IT企業の営業担当役員をしていた。

「自分ならもっと上手く経営できる」と、初めての会社を設立。しかし、役員と社長では大違い。売るものも無く、外部から持ち込まれた仕事をそのまま受け入れた。上海でワインビジネス、ドバイで派遣業、ベトナムでアパレルにまで手をつける。多少の儲けは得たが、会社は目的を失い、役員が取引先を抱えて離反してしまう有様。信用していた社員の裏切りは吉田に深い傷を与えた。

「何がいけなかったのか考え直しました。無一文になることを恐れ、単なる金儲けをしていたのです」と吉田は当時を振り返る。「社員が仕事を通じて、追い続けたくなる夢が必要だ。そして、その夢は自分の強みの先になければいけない」と一念発起。再スタートを切るべく、新しいビジネスを模索する。

 初めての起業では資本金を全て自分で出していた吉田。しかし、「過去の成功者に引き上げてもらうことが大事だ」と気付き、投資家を探し歩いた。クラウドソーシングとの出会いも「吉田さんが得意そうなビジネスがある」という出資者からの紹介がきっかけだ。吉田はすぐさま、クラウドソーシングの長短を直感し、自分の得意分野だと確信する。

 クラウドワークスは、今まで信用を得られにくかった人々が自由に、安心して仕事ができる世の中を構築することを目指す。「21世紀のワークスタイルを変える」と力を込める同社の活躍に目が離せない。



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